ストライクウィッチーズ~異世界から舞い降りた翼~ 作:疾風海軍陸戦隊
突如ウィッチを殺害する通り魔ネウロイの襲撃から翌朝・・・
「どうした鳳軍曹!旋回半径が虹野軍曹よりも落ちているぞ!」
「は、はい!」
早朝、鳳と虹野と椛は森中尉とともに飛行訓練をし、現在。海面に設置してある障害物をよける訓練をしていた。だが、その中で鳳だけがなぜか他の隊員よりも遅れていた。
「どうしたんですか麗央さん?」
「ほんとですよ?いつもの鳳さんなら、余裕で躱していたじゃないですか?」
「う・・・・うん」
二人が心配そうに訊くと麗央が元気な下げに頷く。すると森がやってきて
「何悩んでいるのか知らないけど、実戦でこれじゃあ死ぬことになるわよ?」
「す、すみません・・・・・」
「はぁ・・・・・今日はここまでにしよっか。もうすぐ朝食だし。全員基地に帰投!」
「「了解!」」
「りょ…了解」
そう言い4人は帰投する中、虹野は何か悩んでいる麗央の顔を見る
「麗央さん。本当にどうしちゃったんだろ?」
「また隊長に怒られたのかな?」
「いや、それはないですよ。この頃怒られるような失態もしていないのに・・・・・・・あ、そう言えば」
「何か心当たりがあるの虹野さん?」
「うん。昨日の夜。隊長が麗央さんを背負って帰ってきたのを見たって夜間哨戒の鈴仙さんが言ってました。多分その時に何かあったんじゃないですか?」
「あ~たぶん。その時に・・・・」
「あんたたち!無駄口叩いていないで戻るわよ!!」
「「す、すみません!!」」
森に注意され二人は慌てて謝る中、麗央は別のことを考えていた
「(まただ・・・・またあの変なのが見えた・・・)
麗央はこの頃あの時の出撃で見た川のような変な流れをよく見るようになった。それが気がかりで訓練に集中できなかったのだ
「(そう言えば隊長は、またあれを見たら教えてくれって…隊長は何か知っているのだろうか・・・・いや。それよりも昨日、なんで隊長は私を殴ったんだろう?)
そう疑問に思いながら麗央も基地に戻るのであった
「それで、その殺人事件の犯人はネウロイだったと少佐?」
「ああ。大きさは二メートル弱。土星に似た形をして輪っかの部分が赤いレーザーで電気鋸のように回転していた。しかも動きも素早い。まるで戦闘機のような機動性だ。あっという間に背後をとってきた」
隊長室で疾風はコーヒーを飲みながら、宮辺にそう言う
「厄介ですね・・・・暗闇に紛れて背後を襲うネウロイ・・・しかも素早いとすると」
「ああ。とても厄介だ。おそらく奴は地上でもなく空中戦も今までのネウロイよりも手強い相手だろうな」
「そんなネウロイがいるなんて・・・・・・」
「恐らく、対ウィッチ用のネウロイだろうな。向こうもただ町を破壊するだけじゃない。その邪魔をするウィッチを殺すための個体を生み出しているというわけか・・・・」
疾風はそう言いコーヒーを飲む。すると宮辺は
「それで隊長。鳳軍曹の方は怪我はなかったのですか?」
「大丈夫だ。怪我する前に叩きのめしておいた(※”ネウロイ”と”麗央”を)」
「よかったです・・・・・それで鳳軍曹は?」
「うん。そろそろ戻ってくるころだろうな・・・・・」
「隊長!酷いじゃありませんか!!助けに来たのに私を殴って気絶させるなんて」
麗央の様子を見に来た疾風に最初に言われた言葉は、麗央の非難の声だった。
「麗央・・・・俺があの時、お前を気絶させ倒さなければ、お前は死んでいたんだぞ?」
「なんですって!?」
疾風の静かな言葉に麗央は驚く。
「あの時、お前は襲い掛かるネウロイにシールドを張ろうとしたな?」
「は・・・はい」
「奴にはシールドを切り裂く能力を持っている!」
「シールドを?」
相手がシールドを切り裂く能力を持ったネウロイだと言われ麗央は疾風に訊くと疾風は頷き
「ああ。警察からの事情聴取から聞いた情報でな。被害者はみんな亡くなっているが遠目で見たものがいたらしい。その人の証言によれば、被害者のウィッチはとっさにシールドを出して防ごうとしたが、シールドごと真っ二つにされたらしい。もし、お前があの時シールドを張っていたら。胴体が真っ二つになっていたんだぞ?」
「・・・・・」
疾風の言葉に麗央は黙る。もしあのまま疾風が自分を殴っってくれなければ、シールドを張ってネウロイの攻撃を防ごうとした。だが、もしシールドを張れば・・・・・そう思うと麗央はぞっとした
「隊長・・・・あのネウロイに勝つ方法は・・・・どうすれば勝てるんですか?」
麗央は疾風にそう言うと疾風は
「理屈を言うのであれば簡単な話だ麗央。敵は素早い動きと旋回性能で背後をとる。ならばこちらもそれ以上の速い旋回性能で敵の背後を突き攻撃する。それ以外奴に勝てる方法はない」
「あの速さより・・・・・」
「麗央。お前今朝の訓練で何やら戸惑った顔をしていたな?森中尉から聞いたぞ?」
「え?」
「また、お前の言う川の流れみたいなのが見えたんじゃないのか?」
「は、はい・・・・」
「それは風の流れだ」
「風の・・・・・流れ?」
疾風の言葉に麗央は復唱すると、疾風は杖を突き歩き出し、麗央もそれに続く
「お前が見たのは風の流れだ。普通の人には見えないのだが、一部の戦闘機乗りが見えることがあるという」
「あれが・・・・・・」
麗央は先ほど見た流れを思い出す。その中、疾風は言葉を続ける
「そして空を飛ぶものは皆、風の流れに沿って動いている。鳥も飛行機もそしてウィッチもだ。風の流れを逆らうことはまずできない。だが、一つだけその流れを逆らうことのできる技がある。その技は海軍秘伝と言われる大技、左ひねり込みを大きく上回る大技だ」
「捻りこみを上回る・・・・・・そんな技があるんですか?」
「ある。しかし伝授できたものは限りなく少なく会得できるものもほとんどいない幻の技だ」
「その技はなんていうんですか?」
麗央がそう言うと疾風は振り返り
「燕返しだ」
「燕返し?」
聞いたことのない技の名前に麗央は首をかしげる
「今までの空戦機動は風の流れに沿って動いてきたものだ。だが燕返しは違う。あの技は風の流れを断ち切り、なんといえばいいのかな・・・・瞬間移動に近い技だ。俺も完璧に口で説明することはできない」
「瞬間移動・・・・・その技さえ会得すれば、あのネウロイに勝てるかもしれないんですね?」
「麗央!その程度の意思で挑むな!お前は何のためにウィッチになった?第二の故郷である扶桑を・・・いやこの地球を守るためじゃないか?国を祖国を…愛する仲間を・・家族を守るため。お前は勝たなければいけない!!」
麗央は不安そうに言うと疾風は厳しく麗央にそう言う。彼女が不安がる気持ちもわからなくはない。だがその覚悟では相手に勝つことができない。そのために疾風ははっきりとそう言ったのだ
「す、すみません・・・・少し自信が持てなくて」
「そのために強くなるんだろ?麗央」
疾風が彼女の不安を取り除くかのように優しい笑みを見せると麗央はその顔を見てにっこりと笑い
「はい!」
と、元気よく返事をするのであった。そして疾風は麗央を連れ、波止場へと向かうと宮部に会う
「あ、隊長。どこかへお出かけですか?」
「ああ、宮部さん。少し麗央を連れて本土にね。構わないか?俺はすぐに戻るが、彼女は少し遅くなると思う」
「・・・・・・」
疾風の言葉に宮辺は麗央をちらっと見ると
「・・・・・わかりました。構いませんよ」
「すまない・・・麗央。先にタグボートに乗っててくれ」
「は、はい!」
そう言い麗央はタグボートに向かう中、宮部は
「それで隊長。隊長のことですから鳳軍曹に修行をつけるのですか?」
「ああ、ある技を教える。今の隊員の中で俺の教える技を覚えられるかもしれないのは今は麗央だけだ」
「そうですか・・・・・彼女の目を見て必死なのが分かります」
「ああ。背中に大事なものがいるんだろ。あいつにも」
そう言い疾風もタグボートのところへと向かうのであった
「大事なものですか・・・・・」
疾風の言葉を聞いた宮辺はどことなく嬉しそうな表情をしていたのだった。
しばらくして、二人は扶桑本土の横須賀港に到着し、そして疾風は横須賀の山の奥へと麗央を連れて行った。そしてたどり着いたのは誰もいない森の奥深くにある、滝であった。
「・・・・・・え?隊長。今なんて言ったんですか?」
「この滝の水を斬れ・・・・・そう言ったんだ」
滝に着くや否や疾風が麗央に行ったのは流れ落ちる滝の水を斬れっというものであった
「こ・・・・この滝を!?」
「そうだ。滝の流れは決して途絶えることのない・・・・つまり風の流れと同じだ。この滝の水を斬り流れを一瞬でも止めることができれば、風の流れを断つなど簡単な方法だ」
「ま、待ってください隊長!?いくらなんでも無茶苦茶です!!こんな滝斬れるわけが・・・・・」
麗央の言うことはもっともだ。水の流れを一瞬でも断ち切るなんて普通の人間でもましてはウィッチでもできるはずはない
麗央がそう抗議する中、疾風は
「見てろ・・・・・」
そう言い疾風は滝の方を見てそして・・・・・
「てやぁ!!!!」
杖を真一文に振りかざすと、滝の水はほんの一瞬だけ断ち切れた
「あ・・・あああ・・・・」
その光景に麗央は思わず息をのんだ
「怪我人であり魔法力もない俺ができたんだ。お前にできない道理はない。麗央。滝の水が斬れるまで出撃は許さない。いいな?」
そういい疾風は麗央に背を向け
「お前ならできる・・・・自分を信じろ麗央」
そう言い疾風はその場を立ち去りその多岐には麗央だけ残っていた。あたりは何の音もなくあるとすれば滝の轟々とした水が落ちる音だけだった
「やるしか・・・・ないんだ」
麗央は滝つぼに入る。秋が近づく中、水はまるで氷のように冷たかった。
「(つ…冷たい!?でもやるしかない!!)はあぁっ!!!」
麗央は滝に手刀を振り上げる。だが、水飛沫を上げるだけで滝の水が斬れることはなかった
「・・・・・・いや、まだ諦めちゃだめだ!私が頑張らなくちゃいけないんだ!」
そう言い麗央は冷たい水に足をつかりながら特訓を再開するのであった