早速だが、私は頭を抱えていた。
今朝新規にこの鎮守府に着任する予定だった第六駆逐隊の子達を迎え、眠気を抑えられずに机に突っ伏していたのだが、思いのほか長時間寝てしまったらしく時計の針は正午を過ぎてしまっていた。
それもそれで頭の痛い話なのだが、本題はそこじゃなかった。
私は球磨から渡された1枚の書類を見ながら半分泣きそうになりながら執務室の机で頭を抱えていた。
「なんでよ……」
「てーとくの言いたいことはよーーーーーーーーくわかるクマ」
球磨も私の前で呆れたようにため息をついた。
「なんで!?おかしくない!?この数字!」
「てーとくの言いたいことはよーーーーーーーーくわかるクマ」
現在私が確認している書類…………それは……。
今月の資材消費の報告書。
「おかしいじゃない!確かに先月も先月でおかしかったけどさ!なんでほかの資材と桁が3桁も違うわけ!?私今月は出来るだけ空母の出撃抑えてたのよ!?」
そう、資材消費がボーキサイトの欄だけ無残にも荒れていた。
先月も先月で近くに深海棲艦の拠点が見つかったとかなんとかで大本営から出撃命令が出たおかげで仕方なく戦艦が足りない我が鎮守府では空母をフル動員して鎮圧に向かったおかげでボーキサイトが赤字になってしまっていたのだが、何故か今月はそれ以上に悲惨なことになっていた。
「まぁ、考えられることは…………「つまみ食い」かもしれないクマね~」
「ということは何?今月はロクに出撃もさせてもらえなかったからその腹いせにって言いたいの?」
「可能性として十分クマ」
「そうは言ってもどうせ主犯はあの2人以外考えられないんだけど」
そう言って私は書類を机の上に投げる。
この鎮守府には正規空母、軽空母合わせて20人弱の空母がいるのだがその中でも特にボーキサイトを消費する艦はそう多くはなく、軽空母の面々は意外と消費は少ない。そして、燃費と火力のバランスのいい雲龍型と翔鶴型はそもそも性格上つまみ食いをするような性格じゃない。そして、大鳳はそもそも真面目すぎる。となってくると残るは二航戦の2人と一航戦の2人なわけだが…………。
「二航戦の2人はこんなことを進んでするタイプじゃないしね~。球磨。私の言いたいこと、分かるわね?とは言っても、恐らく二航戦の2人も共犯の可能性が高いわ。進んでするタイプじゃないけど断れないタイプでもあるから」
たまにはお灸を据える必要があるようだ。
「りょーかいだクマ」
「流石に温厚で優しくて美人で有名な真昼さんでも堪忍袋ってものがあるのよ」
「それを自分で言うのかクマ?」
「いーからあいつらを連れてきなさい!」
球磨は再びため息を漏らすとくるりと踵を返した。
「あ、そう言えばてーとくが寝てる時に金剛さんが来たクマよ?てーとくなら寝てるって伝えたら帰ったけど」
「あぁ、多分デイリー任務の報告じゃない?建造と開発を頼んでおいたの」
「珍しいクマね。いつもは夕張あたりに頼んでるのに」
「いや、先月戦艦がいなくて泣きを見たじゃない?それを
「そうクマね」
「そしたら私は重大なことに気づいてしまったのよ」
「あぁ、理解したクマ」
「察しが早くて助かるわ」
要するに確かに戦艦は着任させてもらったけど、装備の方はなんとかしろと言われてしまったのだ。
それまでは空母が主体の編成、もしくは球磨の妹艦である北上や大井、木曾と言った重雷装巡洋艦娘をメインに編成していたため使える主砲と言うのが良くて重巡洋艦タイプの物しかなかったわけ。
だから、戦艦の金剛さんに任せる方が効率的かなと思って任せてみたってことだ。
金剛さんが来たってことはなんとか戦艦用の主砲は出来たのかな?
後で聞いておこう。
だけど、今はそれどころじゃない。
「話がそれたわね。あいつら呼んできなさい。あ、ついでに多摩の所行ってきて」
「はーいクマー。理解したクマ~」
そう言って球磨が執務室を出ていった。
そう言えばここの第三号鎮守府についてあまり触れてなかったかも。
この鎮守府は第三号と言うくらいなので三番目に出来た鎮守府…………という訳でもなく、名前は特に意味はなくつけられたらしい。設立してまだ1年経ってないまだまだ新設と言われても違和感がないような鎮守府だ。
設備の方は艦娘が出撃するための港の正面に見える建物が本館。本館から出て右手に進めば食事処の間宮、室内練習場などの設備があり、逆に左手に進めば艦娘の建造や装備の開発などを行う工廠、資材を保管しておく資材保管庫があり、さらに奥に進むとそれぞれの艦種ごとに艦娘寮が設けられていた。ちなみにこの鎮守府は書類作業などの執務を行う執務室と、出撃作戦時の作戦司令室が別々の部屋が用意されている珍しい間取りをしていた。
にしても。
はぁ、なんでよ。
何でこんな真夏の昼間っから冷や汗を出さなきゃいけないのかねぇ~。
私は球磨がボーキ大量消費の犯人を引きずってくる間執務室の椅子の背もたれに体を預け、天井を見上げた。
冷暖がガンガン効いた執務室でため息を漏らす。
確か、ため息を1回する事に幸せが逃げていくとかなんとかあったけど、そんなものは関係ないな。
出る時は出るのだ。
とまぁそんな下らないことに思考を巡らせていると、いきなり執務室の扉が開かれた。
「Hey!そろそろテートクはWake upしてますか~?」
そして、やたらテンションの高い女性が入ってくる。
白が基調の…………これはなんて表現すればいいんだ?巫女服?和服?まぁ、近いのは巫女服?を纏って、頭に黄色の電探を装着した女性だ。彼女が最近うちに着任した4人の戦艦のうちの一人、金剛型戦艦のネームシップ、金剛。何となくそのオーラから私は金剛「
「あぁ、金剛さん。グッドタイミング!球磨が一航戦二航戦を引っ張ってくるまで暇だったのよ!」
「Why?赤城と加賀が何かしたんデスか?」
「…………ん」
「どれどれ……Oh…………。これはヒドいネ」
私は無言で先ほどの資材消費報告書をみせ、分かった?と視線で問う。
その合図にすぐ対応できる当たり流石ではある。
金剛は苦笑いを浮かべながら2回ほど頷いた。
「で?あなたが来たってことはデイリーの建造と開発の結果でしょ?どうだったの?」
「オー、そうでしタ。取り敢えず4回開発したうち3つは主砲が作れましたヨ。35.7cm連装砲が2つと41cm連装砲が1つネ~。46cm砲は出来なかったヨ」
いやいや、取り敢えず戦艦用の主砲が3つ出来ただけでも収穫だ。
空母に好かれてるのかどうか分からないが、私は戦艦用の
「全然いいわよ。3つ出来ただけでも大収穫よ。ありがとね、金剛さん。それと、建造の方もやったんでしょ?どうだった?」
「建造…………Oh、私としたことが忘れてましタ」
「あなた……結構しっかりしてるように見えて抜けてるわね。まぁ、建造は無理にやんなくても良かったんだけど」
「今後は無いようにするネ~」
「いいっていいって」
私は汚れが気になったメガネを拭き吹きしながら言った。
「あ、そう言えば、提督は今暇何ですヨネ?私達これからティータイムなのですケド、ご一緒にどうですカ?」
「ほんと!私も行きたい!…………行きたい、けど、ね?」
「あ、そうデシタ」
「うちの馬鹿共の説教が終ったら行くわね」
「OK。待ってるネ」
とそんなことをしているうちに球磨が執務室に帰ってきた………………両肩に赤城と加賀を担いで。
「は、離してください!一人で歩けます!!」
「流石にこの格好は…………」
「連れてきたクマ~。って、金剛さんもいたクマ?」
「Oh…………うちの軽巡は正規空母より強いのデスか」
「まぁ、球磨は最古参だし。練度もカンストだしね。この鎮守府で球磨の次に強いのが多摩だから覚えておくといいわよ。」
「心得ておきマース」
そう言い残すと金剛は執務室を出ていった。
「さぁ~てと?球磨?2人をそこに下ろしなさい?」
「了解クマ~」
と、若干語尾を伸ばしながら担いでいたふたりを床に下ろした。
「そこの扉のところで固まってるふたりも入って来な!」
「ひゃい!?」
「ば、バレてるよ~!どうするひりゅ……」
「入って来いって!」
「はいっ!!」
私の怒声に反射で返事を返した二人も入ってくる。
球磨が担いできた2人は上半身は同じ白いの衣装に袴の部分で色分けされていた。ちなみに赤い袴を着ているのが赤城で青い袴が加賀。そして、恐る恐る入ってきた2人が山吹色が基調の衣装を着た飛龍と薄めの青緑が基調の蒼龍。
「さぁて?4人ともそこに正座しな?私が言いたいこと……分かるわよね?」
私は資材消費報告書をヒラヒラさせながら机に足を組んで腰掛け、正座をさせた4人を見下ろして声のトーンを下げた。
「……わ、私と蒼龍は赤城さんに連れられて……。」
「(コクコク)」
「誘われたからって、断ればいいじゃない。断れなかったんなら同罪よ。」
「提督の言いたいことは…………分かりますけど。本当に私たちがやったって証拠はあるんですか?」
「証拠がないなら…………。」
「証拠出せばいいのね?球磨!あれ頂戴。」
「はいはいクマ。」
加賀の言葉を遮るように球磨からあるものを受け取る。
「証拠ならあるわよ?ほら、監視科から貰った資材保管庫付近の監視カメラの写真。深夜0時18分、ここに写ってる4人の人影。これ、どっからどう見ても貴方達よね?これについての言い訳は?」
私は受け取った写真を4人に見せる。
そこにはハッキリと自分たちの姿が記録されていた。
「うぅっ…………まさか、監視カメラなんて。」
「油断してました。」
「だから止めようって言ったんだよ~。」
「バレたらやばいからって~。」
と、口々に喋り出す4人。
赤城と加賀は何故か悔しがり、飛龍と蒼龍はもはや半分涙声。
「はぁ、いい?確かに今月はあんまり出撃させてあげられなかったわよ?それには理由がちゃんとあるのよ。先月この鎮守府の近くに深海棲艦の拠点が見つかって出撃命令が出たでしょ?それで、あんた達4人にはすごく活躍してもらってさ!何から何まで助けてもらったからさ!そんなあんた達が何も気にせずに戦えるようにボーキサイトは惜しみなく使ったよ!そのおかげで作戦は成功。その月は確かにボーキサイトは荒れてたよ?でも、それはあんた達が何の気兼ねなく戦いに集中出来るようにって使ったから後悔とかそういうのは無かったさ!だけどさ!今月はさ!先月頑張ってくれたからさ!ボーキが集まってくるまでゆっくり休んでもらおうと思って出撃は控えてたのに!どうして?どうして出撃をしまくった月より消費が多いのよ!もしかして、先月あんなに出撃させたこと根に持ってるの!?それか、今月出撃させなかったこと!?そもそも、なに?ボーキを食べてるの!?あれ、アルミよ?金属なのよ!?食べれるわけないじゃない!あんた達の胃はどうなってんのよ!!!?はぁ……はぁ……はぁ……。」
「てーとく。話が脱線してるクマ……。」
「はぁ……喋ったわ。一息でこれは辛いわ。で?私の言葉に何か言うことはある?」
私は肩で息をしながら4人を見渡した。
4人「この度は本当に申し訳ありませんでした……。もうしません。」
そして、少し間を置いてから4人が一斉に頭を下げた。
「よろしい。はぁ……あ。怒鳴る方も怒鳴る方で疲れるんだから次から気をつけてよね?次やったら球磨と1対1で演習してもらうから?」
ガタン!
私がアポなしで振ったことで自分の執務机の椅子に座っていた球磨が驚いてひっくり返った。
「き、聞いてないクマよ!!」
「言ってなかったもん。そうねぇ。魚雷2発ノーガードの刑とかどうかしら?」
「何言ってるクマ。この前の作戦にいた装甲空母姫だって1発ですら耐えられなかったのに2発なんて入れたらそれこそ大破じゃ済まないクマよ。テキトーに決めすぎクマ。」
という球磨の1言にそこにいた4人はもうボーキサイトの つまみ食いだけはしないようにしようと心に固く誓うのだった。
とりあえず初めは艦これサイドから。
あ、もし、誤字とか脱字とかあったら教えてください。