交錯する世界   作:奇稲田姫

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遅くなってしまいましたけど、予告通り新しい深海艦の紹介パートです←


多すぎる登場人物の都合上台本形式になってしまいました。
姫の技術不足ですみません(泣)


それでも読んでくれたら嬉しいです♪


交錯する世界 番外編4

「…………。」

 

現在、私は戸惑っていた。

 

「…………どうしてこうなった?」

 

本編の方で使用予定でいる、一連の騒動を起こした張本人の所謂ラスボス役を任せた彼女に座ってもらおうと思っていた石造りの玉座セット。部屋の内部の装飾も深海の冷たさと不気味さを最大限に引き出す造りとなっており、比較的広めに設計した部屋には入口から玉座のもとに掛けて広めの幅をもつ真紅の絨毯が敷かれていた。地上にはそのスペースが取れなかったため地下に作られた舞台セット、ちなみにこれもうちの技術屋2人(両サイドの夕張)の趣味と技術の結晶な訳だが。

 

そんな玉座になぜだか今は、私が座っているのだ。

 

いや、座らされているのだ。

 

それも、いつものジャージ姿や私服姿でいる訳でもなく、真っ黒に染められてポイントポイントに真紅のラインが刻まれたワンピースに、襟が比較的高く裏地が紅くなっている黒いマント。瞳には真っ赤なカラコンを入れられて、頭には空母Ο級(クロン)の捻れ角を模したカチューシャを装備、私の手よりも1回りも2回りも大きく鋭い爪が付けられているような黒い手袋に、全身の色に合わせられた黒いニーソックスとブーツと言うような完全装備で座らされていた。

 

本来私の座る位置はカメラの後ろの所謂監督椅子なんだけど……。

 

足を組んで頬杖を付きながら、どうしてこうなったのか考える。

 

確か今日は朝から木曾の稽古に付き合ったり、飛行場姫(リコ)戦艦Ψ級(シャル)戦艦Μ級(ミルト)と甘味処で談笑したり、青葉を軽く尋問したりしていた訳だが、午後からYamatoが深海組の新メンバーを勧誘もとい拉致してくるとの事だったので団長としてきちんと挨拶をしようと自室で準備していたら、いきなり戦艦ル級(ルーク)と真昼が現れてあっという間に今の服装に着替えさせられたかと思うと、私の意見などガン無視で状況を理解する頃には既に玉座に座らされていたのだ。そして、目の前にはずらりと深海組の面々が絨毯を挟んで両側に綺麗に1列に並んでいるのだ。しかもそれぞれが真剣な顔をしており、言葉を発するものすらもいない状態の緊迫した静寂が空間一帯を支配していた。

 

玉座のすぐ近くに控えているのは私から見て左側に漆黒のワンピースに額から伸びた角が印象的な戦艦棲姫(カレン)、右側には真っ白に煌めく長髪に、紫色の瞳と胸のあたりから伸びた大きな角が印象的な深海軍、Yamato(ヤマト)。そして、後ろの背もたれに寄りかかるようにして、交錯する世界のオリジナルとなる深海棲艦「■■■■」を演じる少女、風霧(かざきり) (みやび)も撮影時同様に衣装とメイクを完璧に済ませており、体の左半身に走り抜ける赤、青、黄、緑のラインが怪しく煌めき、さながら本番であるかのようにキャラクターになりきっていた。

 

そして、絨毯を挟んで左側には深海棲艦の面々、近いところからいくと、有給から呼び戻されたのかそれとも興味本位なのか分からないが何故かいるリコを含む陸上型の3人(深海棲艦組の中で1番胸が大きい港湾棲姫(コウ)飛行場姫(リコ)は知ってのとおりバカで、まだ幼さの残る北方棲姫(ホッポ))、真っ白な長髪を左側でサイドアップにまとめている装甲空母姫(ネル)、ほんわかユルユルの雰囲気を漂わせた白い長髪の空母水鬼(スイ)に衣装のせいで黒い岩のようなデザインの襟で口元をスッポリと隠している無口の中間棲姫(アスカ)、真っ白なツインテールが特徴の南方棲鬼(ナキ)、それからセーラー服の左肩に肩当を装備して背中にはマントを靡かせた戦艦タ級(タロット)に私服とは違い上着、デニム共に真っ黒な衣装に身を包んだ戦艦ル級(ルーク)、黒ビキニの上にフード付きのパーカーを着た戦艦レ級(レン)、頭に艦載機の格納庫付き艤装を乗っけた空母ヲ級(ヲルト)に赤い瞳を灯したショートヘアの重巡リ級(リン)、顔の殆どの部分をマスクで覆った雷巡チ級(ライチ)がそれぞれ綺麗に整列していた。

 

絨毯の右側にはYamato率いる深海軍の面々、前から妖艶な黒い着物に右太腿の外側に真っ赤な桜の刺青の入ったAkagi(アカネ)、アカネとは対照的にこちらは白い着物にスカイブルーの瞳、太股の桜も水色に染められたKaga(カガリ)、いつの間にかひょっこり帰ってきていた怪しく揺らめく緑色のラインに露出の多い黒い衣装を纏ったBismarck(ヒスイ)、ヒスイのように露出の多めな衣装に黄金色のラインが目を引くTirpitz(コガネ)、肩の露出した黒い衣装に紫のラインが体に走っている旗艦Ν級(アラタ)、小柄で半開きの瞳に金色の色を灯した 戦艦Ψ級(シャーロット)、黒髪長髪て前髪を綺麗に切りそろえ、凛と澄ました戦艦Μ級(ミルト)、頭に大きな捻れ角を装備した長髪の空母Ο級(クロン)重巡Ω級(ユメカ)が不在で、左目に黒と紫の包帯を巻いたような装備をつけた重巡Ι級(イオタ)と両目全体を覆うゴーグルのようなものを付けている軽巡Η級(イータ)の巡洋艦姉妹に左手にナックルのような艤装を携えた近接戦闘の得意な軽巡ei級(アイ)、最後に本来ならば艤装の口の中で両手足を触手によって拘束されて引き篭もっている駆逐艦Γ級(ミタマ)は珍しく外に出ていた。

 

そして深海軍のネームド級や深海棲艦の姫級鬼級以外はしっかりと艤装をフル装備。

駆逐艦Γ級(ミタマ)に関しては海上専用の艤装のため今は艤装の中から出てきているが、あの小さな体で腕を組んで仁王立ちをしているので何だか少し微笑ましさすら感じる。しかし、それを顔に出せる空気なんかじゃないほどピリピリとしていた。

 

 

 

…………わけわかんない。

 

 

 

と言うか、Bismarck(ヒスイ)Tirpitz(コガネ)は帰ってくるんなら一言私に連絡入れなさいよ!

 

そんなことをブツブツ考えつつ、ピリピリと緊張の糸が張り詰める舞台セットの静寂を破ってみる。

 

「……で?どうして私はこんな格好をしてこんな所に座らされているのかしら?あんたの差金でしょ?ル級(ルーク)。」

 

ルーク「オイ、ソレハ誤解ダ。何デモカンデモ私ヲ疑ウンジャナイ!確カニ衣装ノ選定ハ私ダガ、事ノ発端ハ私ジャナイゾ!」

 

「……衣装は認めるのね?」

 

「完璧ナチョイスダロウ?」

 

このやり取りのおかげで緊迫した空気が一気に緩む。

 

アカネ「はぁ、姫のせいでこのピリピリした空気が台無しね。」

 

Akagi(アカネ)のため息とともにしんと静まり返っていたセット内から一転し、ガヤガヤと各々が話し始めた。

 

アカネ「せっかくここまで雰囲気出てたんだから空気くらい読みなさいよ。まったく。」

 

「アカネ。空気を読むのなにもなんにも状況の説明すらもされないままどう空気読めとおっしゃるのかしら?」

 

アカネ「(わたくし)達の団長なのであればこの状況から察することなど他愛もないでしょう?」

 

「何言ってるのやら。で?Bismarck(ヒスイ)Tirpitz(コガネ)はいつから帰ってきてたわけ?」

 

ヒスイ「昨日。」

コガネ「一昨日(おととい)。」

 

「どうして割れるのよ!」

 

ご覧の通り姉妹であるのにもかかわらず、また一緒に行動していたにもかかわらずなぜだかどうして入団当時から主張が噛み合わない2人に溜息をつく。

 

雅「あはは。まぁまぁ、また劇場内が賑やかになるからいいじゃない。」

 

それに対して背もたれに肘をついていた雅が小さく笑った。

 

「良くないわよ。タダでさえわけのわかんない書き置きをデスクに残してフラっとどっか行っちゃっただけでも本当は問題なのよ?本当は。それ以外も色々あるけどさ。」

 

ヒスイ「でも帰ってきたじゃないか。」

 

「なんでそんな自慢げな顔をヒスイ(あなた)がしているのか分からないけど、帰って来た来ないじゃなくてそれの報告がなんにもない事が問題なのよ。分かってるの?」

 

コガネ「でもこうしてちゃんと顔合わせ出来た。」

 

「たまたまね。この意味不明な演出がなかったらどうしたわけ?」

 

ヒスイ「部屋に押掛けるつもりだった。」

コガネ「提督室を覗きに行くつもりだった。」

 

…………ご覧の有様。

 

「あなた達…………本当に姉妹なの?」

 

ヒスイ「当たり前だ。失礼なやつだな。」

 

コガネ「さすがに、怒るよ?」

 

「……怒りたいのはこっちなんだけど?」

 

リコ「姫ちゃん姫ちゃん、怒るとシワが増えるよ?」

 

ホっポ「増えるよ〜♪」

 

呆れてため息をつく私に追い打ちをかけるのは次女のリコに肩車をしてもらっていた末っ子のホっポ。

 

「ホっポ……。あなたはお姉ちゃんに毒されないで純粋なままでいて。」

 

ホッ「うん?うん。」

 

リコ「いや、待て待て、それじゃあ私が…………」

 

南方棲鬼(ナキ)「間抜けな馬鹿空港www」

 

装甲空母姫(ネル)「深海の大うつけ。」

 

リコ「あ、ピッキーン!そこまで言われるとどんなに温厚なリコ姉ちゃんでも怒っちゃうもんね!必殺!神風特攻…………。」

 

港湾棲姫(コウ)「止めなさいリコ。…………今、ホっポ投げようとしたでしょ?」

 

リコ「なんのことですか〜」

 

Kaga(カガリ)「主ら……。もう少し静かに出来んのか?」

 

アカネ「あら、あなたも騒いでいいのよ?ふふ。」

 

カガリ「遠慮しておく。」

 

重巡Ι級(イオタ)「なになに?カガリ姉ちゃんはっちゃけるの!?これはレア物レア物♪フフフ。イータ、カメラは?」

 

軽巡Η級(イータ)「ここにあるよ姉さん。」

 

カガリ「やめんか。」

 

「あのさ……」

 

もはやさっきまでのピリッとした空気が嘘のようにワイワイガヤガヤと賑やかになった舞台セット内。

 

なんとなくこういうのが理想なんだろうな〜とは思いつつ、玉座という1段高い位置からぐるりと深海組のメンツを眺める。

 

こうして見ると人間や艦娘となんにも変わらない気がするのに、何故か。

…………あぁ、そう言えばここに居るのは事情や性格が特殊な奴らばかりだったわね。

普通の深海棲艦や深海軍に自我という概念はほぼ全くと言っていいほどないんだった。

 

今回も勧誘と言うよりはまた新しく自我持ちの深海組が生まれたから勧誘という名目である意味保護するようなものだし。

 

確か…………軽巡棲姫、防空棲姫、Taiho、Ryujoの4人か。

 

ヤマトから受け取った写真付きのリストを眺めながらストンと肩を落とす。

 

「で?この4人は大丈夫な娘なんでしょうね?あなたの時みたいに出会い頭にいきなり発砲されるのは勘弁なんだけど。ヤマト。」

 

ついでに横目でじろりとヤマトの方に視線を向け、危険はないのか確認をとる。

 

Yamato(ヤマト)「うっ……。それは言わない約束よ。」

 

戦艦棲姫(カレン)「返り討ちに遭ってたものね?フフフ」

 

ヤマト「何よカレン、喧嘩売ってるのかしら?」

 

カレン「まさかw」

 

「あぁ、もう喧嘩なら他所でやりなさい!もうちょっとで約束の時間なんだからシャキッとしてなさいよ!あんた達もそろそろ黙んなさい。」

 

そんな問答を行いながらリストをさっきから背後で私の髪をちょこちょこいじっていた雅に渡し、深海の面々を黙らした。

 

「もう時間ね。みんな、やるんだったら徹底的に。中途半端は絶対に嫌だから。分かってるわよね?」

 

その一言だけで場の空気が一変するのがよく分かる。

 

ざわついていたセット内も、一瞬にして緊張の糸が無数に張り巡らされた。

 

それは演者としてのスイッチが入った証でもある。

 

「さて、じゃあ、ユメカに連絡取りなさい。準備出来たって。あとどんなキャラで行けばいいかの確認もとって。」

 

雅「流石姫ちゃん。ユメカ不在の理由分かってるね。」

 

「むしろそれ以外何があるのよ。」

 

雅「ま、そうよね。」

 

そうクスリと笑い、ちょっと待ってねと言って耳に取りつけた小型のインカムに指を当てながらユメカと通信を取る雅。

 

雅「……うん、うん。了解。伝えとく。あと、もう連れてきていいってよ。そう。全員。うん、それじゃあよろしくね。(ピッ)もうすぐ着くって。で、キャラなんだけど、なんか「深海の親玉みたいに迫力ある感じ」でお願いって言ってたよ?」

 

「なによそれ。…………分かった。私なりに雰囲気作ってやろうじゃない。」

 

雅「頑張って〜。」

 

「あんたもやるのよ。」

 

雅「分かってるって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピリッとした空気が舞台セット内を静寂とともに支配してから数分後。

 

 

 

 

 

まるで本物の石で出来ているような重厚感溢れる扉の外からカツン、カツンという足音が響き始める。

 

その足音はユメカからの合図で、新人を連れてきたという意味と、演技本番の開始を意味するものだ。

 

ちなみに、こんな茶番に台本なんてものは存在しない。

全てのセリフは各々のアドリブ。

茶番を楽しむついでにとっさの判断力と機転の効きを試してみてもいいかもしれない。

 

今回はどんな娘が来ることやら。

 

そんなことを考えながら肘掛に肘をついて頬杖を着きながら私は作ったキャラで不気味さを最大限に引き出すようにニヤリと口元を歪ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、扉の前で足音がピタリと止まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

続けて、石造り(夕張製)の扉の奏でる重厚感満載の音とともに外からの逆光を背に受けながら、その中心で背後に4人の深海艦を連れたユメカがⅢ型の姿で現れた。

 

そのまま扉から玉座の真下まで延びた絨毯の上をわざと部屋の中に

足音を響かせるようにしながらゆっくりと歩を進める。

 

先頭を歩くユメカは特に動揺した様子もなく堂々と歩いているが。

 

後ろの4人はそういう訳にも行かないようだった。

まぁ、当然といえば当然か。

 

常に両脇からプレッシャーをかけられ続けているわけだからね。

 

…………うわぁ、私こんな空気の中でなんて歩きたくないわ、絶対。

 

 

そして、玉座付近の階段の真下まで来たところで、ゆっくりと胸元に手を当てながら無表情のまま淡々と片膝をついて目を伏せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重巡Ω級(ユメカ)「お待たせ致しました。この度我が軍へ配属することになった4名をお連れしました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご苦労様。下がりなさい。」

 

 

 

 

 

 

ユメカ「はっ。」

 

 

短く返答し、伏せていた顔を上げながらカーペットの上から外れ、自分の場所へ戻っていく。

 

ちょうど顔を上げたタイミングでユメカがパチンと器用にウィンクをした。

あぁ、後はよろしくってことね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフ、よく来たわね。まずは歓迎するわ。ようこそ、私の艦隊へ。」

 

玉座の上でユメカからバトンを受け継いだ私は口元に歪んだ笑みを浮かべながら両手を軽く広げてみせる。

 

その仕草だけで私から見て一番右にいる艦がピクリと身体を震わせた。

 

ほかの3人も僅かに眉を動かしたり、咄嗟に手を上げかけたりと各々面白い反応を見せてくれた。

 

ということは、だ。

 

私のこのキャラは、意外と雰囲気出てるらしい。

 

心の中で安堵のため息をついた。

 

続けてゆっくりと頭を俯瞰気味に動かしつつ、僅かに細めた瞳で階段の下の4人を見下ろす。

 

「では、1人ずつ名乗りなさい。まずは………………あなたから。」

 

?「え!?ぼ、僕!?」

 

「(僕?)そうよ?一番右のあなたから、名乗りなさい。」

 

とりあえず自己紹介でもさせてみようとキャラの雰囲気を崩さないようにしながらビシッと一番右に位置する水色のショートヘアでなぜだか分からないがフォークとヤカンを持っている深海艦を指名したものの、返ってきた意外な一人称に反射的に眉をぴくりと動かしてしまった。

 

とはいえ、目の前の4人にそんな些細な仕草など気づくはずもなくそのまま演技は進んで行けるのだが、そのバックに控えるうちの娘(演者)連中にはほぼ全員に気づかれているのだろう。

 

…………リコとナキなんて必死に笑うの堪えてるし。

 

そんな様子のバックを無視し、4人に向き直る。

 

同時に4人のうち一番右で私の指名を受けた小柄な深海艦が1歩前に出た。

 

Ryujo「ぼ、僕はRyujo。艦種は軽空母。よ、よろしくお願いします!」

 

見るからに緊張した様子のRyujoと名乗った深海艦。

水色のショートヘアから伸びる黒い捻れ角に、比較的小柄な彼女は胸と股の部分だけを隠していた。太ももまでのニーソックスと高さのあるヒールのついたブーツで身長を少しでも高く見せようとしているのが分かる。

…………なるほど、ショタか。

女の子だけど、一人称と自己紹介の感じからしてまず間違いなさそうだ。となると…………。

 

私は視線だけをとある艦に移す。

 

コウ「………………っ!?///」

 

案の定コウの母性本能が掻き立てられてしまっていたらしい。

 

私の視線で我に返ったコウは、何事も無かったかのように演技に戻ったけど。

 

Ryujo「……あ、あの?」

 

「ん?あぁ、ごめんなさい。Ryujo。これからよろしくね。じゃあ、その隣。」

 

続けてその隣の艦に話を振る。

 

?「…………。」

 

正直いって彼女が1番この中じゃ危険分子かもしれない。

 

だって、艤装の感じが他の3人とは桁違いにおかしいんだもん。

 

龍みたいな姿をした艤装なんて初めて見た。

シャルやミルトの艤装がかわいく見えてくるほどの迫力はあるな。

 

そんなことを考えているうちに体中に走る赤いライン、ほとんど全身を拘束しているようなベルト状の拘束具と両腕にはセパレートタイプの巫女服でよく見る袖が特徴的な2人目の少女が1歩前に出た。

 

Taiho「Taihoです。艦種は装甲空母。以後お見知り置きを。」

 

それだけ口にするとTaihoは私のことをキッと小さく睨んでから元の位置に戻った。

 

ひぃ、怖。

やっぱり艤装外させておいて正解だったかも。

Yamatoの時の二の舞になる所だったわ。

 

「えぇ、よろしく。次。」

 

3人目。

白い長髪に頭から伸びた2本の大きめな捻れ角、胸には黒い胸当てと真っ白な布地の衣装に身を包んだつり目が特徴の少女だ。

 

防空棲姫「私は防空棲姫。艦種は防空駆逐艦だ。対空射撃なら任せてくれ。」

 

防空艦か。

対空射撃は任せてくれとは言ってもうちで出撃なんて………………あぁ、演技力のセンスがよければそういう使い方をするのもありか。

 

 

「えぇ、その時は任せるわね。さて、次で最後ね。」

 

4人目。

防空棲姫と入れ替わるように最後の深海艦が前に出る。

両目をすっぽりと覆ったマスクとその額から伸びる2本の角、防空棲姫よりも僅かに高い身長が特徴だが、おそらく最も目を引くのはその腰に刺した刀だろう。

 

特にこれと言って怪しい行動を起こすようにも見えなかったので刀は外さなかったが、どうだろうか。

 

ま、もし何かあればうちの娘達が何とかするでしょ。

 

ダメでも私が手を出せばいいか。

 

とブツブツ考えながら目の前の深海艦を見下ろす。

 

軽巡棲姫「軽巡洋艦の軽巡棲姫。本日よりこの鎮守府の厄介となることになりました。」

 

まるで剣士のような佇まいの軽巡棲姫は深海艦としては珍しく、マスクのせいで読み取りずらい表情のまま綺麗に腰を折った。

 

…………私の考えすぎだったか?

 

まぁいいか。

なにはともあれ一通り自己紹介してもらったし、進めよう。

 

「さて、晴れてあなた達4人は私の鎮守府の一員よ。ふふふ、改めておめでとう。」

 

もう一度、ニヤリと口角を上げなから両手を広げてみせる。

 

「これで戦力は大幅に強化されたわ!明日からの地上侵攻が楽しみね。あなた達もそう思うでしょ?戦艦棲姫、Yamato。」

 

ヤマト「キヒヒヒ、えぇ、そうねぇ♪ヤツらの恐怖に歪んだ顔が目に浮かぶわ。」

 

カレン「おっしゃる通りで。」

 

私の振りに少しも動揺することなくアドリブで返せる辺りやはりこの2人は頭の回転は早いな。

 

「ククク、だからあなた達も協力してもらうわよ?あぁ、ついに深海の時代が来るのね。フフフフフ。」

 

ふふん。

 

我ながら雰囲気はよく出てるでしょ?

これでも一応演技派なんだから。

 

そんなことを考えて愉悦に浸っていた私には気づくことは出来ないでいた。

 

私の姿をじっと見ていた…………Taihoの視線なんて。

 

Ryujo「ま、待って、僕は………………?」

 

私の言葉に異を唱えようとしたRyujoを片手で制し、私から一瞬たりとも視線を外さないまま僅かに低いトーンでTaihoが口を開いた。

 

Taiho「嘘ですね。もしくは私達のことを試しているか。どちらかですか。あなたの言動には違和感がありすぎる。」

 

「…………。私が?試す?何をもってそういうのかしら?」

 

Taiho「まず、1つ。あなたが本当に地上侵攻を考えていて私たちを呼んだのならば、自己紹介などという時間の無駄になる行為は決して行わない。」

 

「へぇ〜。」

 

Taiho「2つ目。本当に私達の能力を見極めようとするなら私達から一瞬だとしても目をそらすことはありえない。」

 

「…………。」

 

Taiho「最後に、本気で地上侵略を考えている人が『明日からの』なんて言葉は使わない。即戦力として直ぐに出撃させるはずだから。以上のことから今までのあなたの言動は嘘もしくは私たちを試す為の演技、という結論を出しました。違いますか?」

 

参った。

グウの音も出ないとはまさにこの事か。

 

私は心の中でため息をついた。

 

彼女、艤装を外しても恐ろしいわね。

 

そんなことを考えつつ、もはや隠し通せないかと思いながらタネ明かしでもしようかと思った矢先。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リコ「プッwwwwwww」

ナキ「プッwwwwwww」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リコ「あはははははは、あぁ、おかしwwww姫ちゃん姫ちゃんwww一本取られてやんのwwwwwwwww」

 

ナキ「図星突かれた時のwwwww姫の顔wwwwひひひwwwwさ、最高wwwwwww」

 

コウ「だwwwwダメよリコwwwww笑っちゃwwwwふふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さっきまでちゃんと笑うのを堪えていたリコとナキがここぞとばかりに吹き出して大爆笑を始めた。

止めに入ったコウまでつられてツボにハマってどうするのさ。

 

 

それをきっかけに今までピンと張り詰めていた糸が一瞬にして緩んでいく。

 

 

 

 

 

ルーク「オイw劇団ノ団長トモアロウ人ガwww演技ヲ見破ラレテドウスルwwwwww」

 

イオタ「イータwwwし、写真、撮った?wwww」

 

イータ「wwww///(コクンコクン)wwww」←(ツボった)

 

戦艦レ級(レン)「アハハハハハwwwww腹痛テェwwwwww」

 

アカネ「クスクスクスwwwwwww」

 

旗艦N級(アラタ)「…………wwwwww」←目を逸らして肩を震わせてる

 

 

ネル「あのアラタですら爆笑してるわwwwwww」

 

 

 

 

 

 

先程の空気から一変して爆笑の渦に飲み込まれたセット内。

 

当然Taiho以外の3人は唖然としている訳だが、私は溜息をつきながら頭をガリガリと掻く。

 

「あぁ、もう//うるさいわね。えぇ、そうよ。全て演技。でも、別にあなた達を試そうとしたわけじゃないわ。」

 

Taiho「では何故?」

 

「そんなもん私が聞きたいわよ!」

 

Taiho「は?」

 

「私だってどうしてこんなことしてるのか分からないのよ。私の意見なんてガン無視でこの企画が進んでたんだから。文句があるのは本当なら私の方なんだからねルーク!!」

 

ルーク「ウヒヒwwwイヤ、ダカラドウシテ私ニナルノダwww」

 

「八つ当たり!」

 

ルーク「勘弁シテクレwwwww」

 

「はぁ、まぁいいわよ。とまぁ、うちはこんな感じの雰囲気よ。早く慣れなさいよ?」

 

防空棲姫「まぁ、善処する。」

 

軽巡棲姫「左に同じ。」

 

Ryujo「僕だって。」

 

どこか腑に落ちないと言った感じの軽巡棲姫と防空棲姫、なぜだか知らないがふんすとガッツポーズをするRyujo。

 

そこに意外な人物が近づいていく。

 

駆逐Γ級(ミタマ)「ふむ、みな良い面構えじゃのう。よきよき。とはいえ、主らはわしの後輩じゃからのう?ククク、これでやっとわしも先輩じゃな♪どんと頼って良いからの♪」

 

…………いや開口一番何を言っているのかこのロリババアは。

 

かなりのドヤ顔で仁王立ちしているが、ミタマはどんなポーズをとってもどんないいセリフを吐かせてもどうしても「ちまっ」ていう効果音が似合ってしまうほど体が小柄な上に、普通の平均的な身長の女性からしたらちょうどいい位置に彼女の頭が来るため、つい反射的に抱きしめたり撫でたりしたくなってしまうのだ。

 

ある意味一種の才能なのではないかと思っている程に。

 

ちなみに、ミタマは陸上型三姉妹に継いで一般民衆と打ち解けたうちの一人だったりする。

つまり、小学生から絶大な人気を誇っているという事だ。

 

まぁ、おそらくこのあとの展開は…………

 

Taiho「え?あ、はい?……(ナデナデ)…………っ!?わ、私は何を!?」

 

ミタマ「な、撫でるでない!///」←でも満更でもない顔

 

「……まぁ、そうなるわよね。」

 

なんとなくつい反射的にミタマの頭を撫でたTaihoが思わず手を引っ込めるのとほぼ同時だった。

 

…………セット内が更に騒がしくなったのは。

 

皐月「あぁ!ミタマ抜け駆けはずるいぞ!!僕だってTaihoさん狙ってたのに!!」

 

いきなりセットの袖口がバッと勢いよく開かれたと思うとそこから金髪の駆逐艦が飛び込んできた。

 

そいつはそのままTaihoの右腕にしがみつく。

 

皐月「Taihoさんは渡さないからな!」

 

ミタマ「何故お主がここにおる!?しかし皐月。お主とわしとじゃ勝負にならん。大人しく引いておいた方がいいのではないか?」

 

皐月「なに〜!」

 

ミタマ「んぎぎぎぎ!」

 

Taiho「な、なんなんですか!?これは!」

 

「ごめん。そうなったら私じゃどうにも力になれそうにないわ。コウとリコにでも頼んでくれる………………あぁ、コウはあそこの爆乳一本角の深海艦でリコはその隣でお腹を抑えて床をのたうちまわりながら大爆笑してるアホよ。」

 

Taiho「ふざけないでください…………って、ちょっと引っ張らないで!」

 

右手で額を抑えるのと同時に大きくため息を吐き出し、両腕に駆逐艦を装備しながらまだ何か言いたげなTaihoを陸上型にぶん投げて、もう一度4人を流しみる。

 

Taihoは何かと文句を言いながらも律儀にコウとリコに助けを求めているようだ。

 

Ryujoも初めて敵以外で艦娘や艦隊少女と接することにドギマギしつつも、彼女のキャラであるボクっ娘がチャームポイントになって、戦艦系や空母系の娘達から色々と可愛がられている様子。

 

防空棲姫と軽巡棲姫はなぜだか近接戦闘マニアの軽巡ei級(アイ)から目をつけられたようだが、満更でもなさそうなのでおそらく同類なのか。勘弁して欲しいが。

 

他の娘達も早くも4人との交流を始めていた。

 

その中にはいつの間にセットに入ってきたのか…………いや、いつから見ていたのか分からないが艦娘や艦隊少女の姿もチラホラ見受けられたので安堵したのは事実。

 

 

 

「あぁ、ちょっといいかしら?これから4人にもここで活動してもらうわけだけど、部屋わかんないだろうから説明してあげて。空母寮はアカネよろしく。TaihoとRyujoはアカネについて行ってね。で、防空棲姫と軽巡棲姫はとりあえず巡洋艦寮でよろしく。ユメカ、球磨に説明するように言っといて。」

 

アカネ「了解よ。」

 

ユメカ「伝えとく。」

 

さて、これで新しい娘たちも迎えたことだし、私はまた部屋にこもって脚本の続きでも書こうかな。

 

4人の演技指導や表現力養成は明日からでも十分間に合うし。

 

今はここの雰囲気とルールに慣れてもらわないとね。

 

というわけで、

 

 

 

 

「はいはい。そろそろ解散するわよ。解散解散。あ〜、4人は後ででいいからもう一回私のところに来て。配属手続きとか色々と書類仕事があるから。じゃあ、私は部屋に戻るから。あとはよろしくね〜。」

 

 

 

それだけ言い残して私は地下の深海玉座セットの部屋から出る。

 

 

背後ではまだワイワイガヤガヤとお祭り騒ぎの真っ最中であるが、そんな騒がしさもまたこの劇場のいい所。

自然の笑みがこぼれるというものだ。

 

「ふふふ♪」

 

 

 

 

球磨「………………なにニヤけてるクマ?」

 

ビスマルク「嬉しいのはわかるが顔には出さない方がいいぞ?」

 

「分かってる。ビスマルクそれ以上は言わないで。」

 

いつの間にか様子を見に来ていたのだろうか球磨とビスマルクと廊下で鉢合わせた。

 

「ま、いいんじゃない。頑張ってくれるわよ♪あの4人なら♪」

 

それだけ言い残して私は階段を駆け足で登った。

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