前半はカメラを回すTaiho視点で、停止ボタンの後から記載された視点に切り替わっていきます←
分かりずらかったらすみません←
──○REC──
ふぅ、これでよし。
コホン。
改めまして、Taihoです。
「"Ryujoだよ。"」
執務室に着きました。
やはりこの施設の重要拠点だけあってこのピリッとした空気感や雰囲気もほかの部屋とは明らかに異なっています。
扉に手をかけるだけで緊張してきますね。
今日の午前中はまずこの部屋で書類作業を…………。
「"おう、TaihoにRyujo。お前ら早いな。"」
「"私達が遅いだけだと思う。防空が起きないから。"」
「"寝心地よかったんだよ。はじめてベッドってやつを使って寝たからさ。………………って、何やってんだ?"」
1日のりぽーとです。
「"そうそう、なんか団長さんから言われたの。"」
「"あいつから?"」
「"……何がしたいのかイマイチ理解できませんね。"」
「"ん〜、ボクも分からないよ。"」
当然のごとく私も知りません。
「"おまえら、よく分からずやってんのか?"」
大きなお世話です。
とはいえ、そろそろ時間なのでかめらを回しながら今日は作業しようと思います。
なれない事なので少々お見苦しかとは思いますが、お付き合い下さい。
「"…………固ぇな。"」
「"だから、Taihoさん真面目すぎだよ。"」
真面目なのが私なんです。
そういうわけで、入りましょう………(ガチャガチャ)………おや?
「"?どうした?"」
いや、開かないです。
「"は?"」
「"ふむ。
「"おい軽姫、冷静に分析してる場合じゃないんじゃねぇか?"」
その通りです。
見かけによるよらないは別として、私達はこの部屋に入れないと仕事が出来ないのですよ。
どうしましょう。
今の時間この執務室に来る人なんてそうそう…………。
【カツン、カツン】
「"…………だから、そろそろ鎮守府としての機能もある程度しておかないと資材の供給が止まるんだクマ。"」
「"確かに資材供給が止まるのは困る最近は撮影云々とかなんとか言い訳しながら出撃をサボっ…………………………ん?あれは、この前入ったばかりの新人4人じゃないか?"」
「"そうみたいクマ…………で、なんでカメラなんか回してるんだクマ?"」
あなた達は…………。
「"球磨達はこの劇団『鎮守府』の副団長、もとい秘書艦の球磨型軽巡洋艦一番艦の球磨だクマ。"」
「"同じく副団長兼秘書艦のビスマルクだ。で?どうしてお前達は姫の部屋の前で集まってるんだ?"」
じ、実はですね……。
─────(かくかくしかじか)─────
「"あぁ、そういうことかクマ。"」
「"そう!そういうことなの!球磨さん達は団長さんがどこに行ったか知ってる?"」
「"これじゃいつまで経っても仕事とやらが始めらんねぇぜ。それならそれでもいいんだけどな。"」
「"防空の言う通りだ。悪いがなにか心当たりはないだろうか?"」
「"心当たり、と言うと…………そういやこの時間姫は。"」
何か知っているのですか?
「"まぁ、知ってるも何もこの時間なら姫は多分外にいるクマ。日課のランニングクマよ。"」
「"ランニングって…………。"」
「"走ると脳が活性化されていいアイディアが浮かぶんだと。"」
はぁ……。
それでは屋外に出れば会えるという事ですね。
「"そういうことになるクマ。"」
ならば行くしかありませんね。
気乗りはしませんが。
「"なんで気乗りしねぇんだよ。"」
言ってみただけです。
さぁ、早いところ団長を見つないと。
行きましょう。
「"行こう行こう〜♪"」
「"元気だなお前ら。ま、ウチらも行こうぜ軽姫。ちょうど試したいこともあったしな。ククク。"」
「"…………ま、気乗りはしないですが。"」
「"……程々にするクマよ。球磨達はとりあえず上からの指令書に目を通さなきゃならないから。のんびりしてくるクマ。"」
「"この時間はいろんなやつがその辺にうろついているからいろいろ気をつけろよ。あ、そうだ。Taiho。"」
はい、なんでしょう?
「"外に出たらこいつを団長に渡してくれ。"」
?
ビスマルクさんと球磨さんに別れを告げ、私達は3階からいっかいに直通のえれべーたーとやらに乗り込みました。
…………気をつけろ、とは?
なにゆえ気をつけろなのでしょうか。
私には想像もつきません。
まぁ、それはおいおいとしましょう。
今は…………
「"なぁ、Taiho?さっきから1人でなにブツブツ喋ってんだ?"」
一日のりぽーと中ですから。
「"だからっていきなり1人で喋り出したらびっくりするよ〜。"」
「"深海軍の方はなんの前触れもなく突然喋り出す変な種なのですね。"」
「"ほらぁ!変な印象与えちゃったじゃん!!"」
Ryujoさん。
考えすぎですよ。
言葉の表面だけに惑わされてはいけません。
もっとその言葉の深層を……
「"すみません。言葉通りの意味だったのですが。"」
…………。
「"Taihoさ〜ん(泣)"」
……泣顔のRyujoさんはなかなか絵になりますね。
「"Taihoさん!!"」
「"プッ…………クククク……あはははははwwwwww傑作だぜこりゃww"」
(ウィ〜〜ン)←エレベーターの開閉音。
おっと、そろそろりぽーとに戻らなければいけませんね。
今、1階に着きました。
<「"あはははははwwwww腹痛てぇww"」
…………後ろで防空さんにすごく笑われているのですが何故でしょう。
とてもモヤモヤします。
それはさておき、正面玄関に着きました。
とりあえず外に出てみましょう。
【ガチャリ】
……さて、外に出たはいいものの、団長さんはどこにいるのでしょうか。
どこに…………。
「"あ、いたよ団長さん!あそこ!"」
ん?Ryujoさんが見つけたようですね。
どこにいるので………………えぇ!?
「"いや、まぁ、その反応になるわなこりゃ。"」
「"どうしてこのような状況になっているのでしょうか。"」
「"これじゃまるで…………"」
屍ですね。
玄関の入口………………から数百メートルは離れているであろう場所で行き倒れの旅人のように倒れている団長さんを発見しました。
「"だ、団長さん!"」
「"あ…………りゅ、Ryujo?ち、ちょうどいい……ところに…………み、水、ちょうだい…………。"」
「"水!?"」
はい、Ryujoさん。
これを団長さんに。
先程ビスマルクさんから受け取った飲料水をRyujoに渡します。
「"あ、Taihoさんありがとう!はいこれ!"」
渡された団長さんはそれをひったくるように掴んで、一気に煽りました。
「"(ぷはぁ〜!)あ、ありがとうー!恩に着るわ〜Ryujo!……あんのクソ妖怪次会ったら覚えてなさいよ。"」
「"ん?大丈夫?"」
「"え?あぁ、大丈夫よ。ありがとう。"」
生気が戻りました。
「"戻りましたね。"」
「"戻ったな。"」
「"よかった〜"」
それで、どうして団長さんはこんな所で砂漠で行き倒れた人間みたいな格好で寝ていたんですか?
「"みたいなじゃなくてほんとに行き倒れてたのよ。"」
「"なんでまた……。"」
「"いや……………………に、日課のランニングしててさ、たまには違う道でも通ってみようかな〜と思って今日だけルートを変えたのよ。そしたら…………"」
「"そしたら?"」
「"…………気づいたら知らない山の中で遭難……。"」
「"いやなんでだよ!?"」
防空さん。
つっこみ鋭いですね。
「"大きなお世話だ。なんでランニングしてたら遭難するんだよ!"」
「"それがわかってたらこんなことにはならなかったわよ。今日に限って水筒忘れてくるし…………もう散々。はぁ、…………そういや、ちゃんとカメラ回せてるみたいね。Taiho。"」
お陰様で。
「"今朝の空母寮での騒動は見なかったことにしてあげる。"」
…………。
「"ま、見学はもう少ししたらでいいから。というか、少し休ませて欲しいからその間好きに見て回っていいわよ。"」
そう言い残して団長さんは飲料水の容器を1口煽り、左手をヒラヒラさせながら背を向けました。
まぁ、自由行動との事なので……どうしましょうか。
「"自由行動ね……。やることはひとつしかないだろ?"」
不意に防空さんが横目だちらりと団長さんの後ろ姿を見ながら右手の指をパキッと、鳴らしました。
そして次の瞬間。
(ヒュッ)
!?
き、消えました。
咄嗟に軽巡棲姫さんに視線を向けると彼女も団長さんの方を見ていました。
腕を組んで。
団長さんの方に視線を移すとそこにはちょうど団長さんの死角になる位置で大きく拳を握りニヤリと笑みを浮かべている防空さんがいました。
い、いつの間に。
その速さゆえか、団長さんはまだ気づいていない。
このまま行けばクリーンヒットする!
慌てて私は声を出そうとしたのですが…………。
「"まぁまぁ、見ていたまえよ。"」
砲塔と言うよりなっくるに近い艤装が私を制しました。
確か………………
「"ei級……。"」
「"いかにも。私は軽巡洋艦ei級。気軽に「アイ」とでも読んでくれたまえ。それよりも、面白いことになってるではないか。次からこういう面白いイベントには私も呼んでおくれよ。"」
?
そんな疑問符が私の頭に浮かんだ次の瞬間。
防空さんがその右手の拳を思い切り振り抜きました。
「"……イッタな。"」
ふぅ、と息をつく軽姫さん。
いや、私たちの団長をやったらダメだと思うのは私だけなのでしょうか。
激突の衝撃が辺りに大きく撒き散らされました。
防空さん…………相当力を込めて殴りましたね。
これ、生きているのでしょうか…………。
「"まぁ、生きてはいるだろう。ただ、気絶はしてるだろうが。"」
?
どういう意味で…………。
「"まったく……人が疲れてる時に不意打ち仕掛けてくるバカがどこにいんのよ!"」
!?
不意に砂塵の中から響いてきた声に一瞬私たちは言葉を失いました。
……当然アイを除いて、ですが。
「"別にいいわよ?深海艦のことはだいたい分かっているつもりだからさ。力試しとか変なプライドとかあるのは知ってるから。新参の深海艦はよく私に向かってくるけど…………疲れてる時だけは止めてよね〜手加減できなく…………ん?アイ?なんであんたがいるのよ。"」
砂塵から姿を現したのは…………団長さんでした。
しかもあの規模の攻撃を受けて外傷ひとつ見当たりません。
その代わりに、右肩には気絶した防空さんを片手で担いでいました。
え?
いや!
どういう事ですか!?
「"なんでとはまたひどい言われようじゃないか。私がいちゃいけないのかい?マイハニー♪"」
「"はいはい。で?Taihoはどうしたの?"」
いや、この状況の説明を要求します!
「"この状況?あぁ、防空のこと?大丈夫よ。気絶してるだけだから。だって、おでこにデコピンかましただけだし。"」
デコピン!?
それで気絶って…………彼女は深海棲艦の中でも姫級と言われる艦なのではないですか?
「"そうよ。それがどうかしたの?"」
「"ま、うちのハニーはこの鎮守府のメンバー全員が束になったところで勝てはしないだろうからな。"」
「"ハニー言うな。"」
は?
「"ほぇ〜。団長さん強いんだね。"」
「"…………。"」
ん?
軽巡棲姫さん?
いきなり黙り込んでどうしたのですか?
「"……いや、純粋に強い人間がいたものだと思っただけ。たいしたことでは……"」
「"の割には右手が腰の刀に伸びているのは何故かな?軽巡の姫?"」
「"この人ならば、私の本気を受け止めてくれるかもしれない。団長殿!"」
「"なによ。あ、そうだアイ。この防空を後で
「"任せたまえマイハニー♪"」
…………。
団長さんは肩に担いだ防空さんをアイさんに任せると再び軽巡棲姫さんに向き直りました。
「"で?なに?"」
「"手合わせを願いたい。"」
「"唐突ね。ま、いいわよ。それであなたの気が済むならね〜。どうせ自分の全力をぶつけてみたいとでも思ったんでしょ?"」
「"………………わかってしまうか?"」
「"顔に全部出てるわよ。"」
「"そうか。"」
「"いいけどさ。あ、その前にちょっとだけ電話していい?"」
「"電話?"」
「"そう、電話。……………………あ、もしもし?頼みがあるんだけど……は!?じゃあ甘味処の特上パフェ奢れ?冗談じゃな…………うぐっ…………わ、わかったわよ。奢るから頼みを聞いて…………うん、うん、そう。分かってるじゃない。じゃあ、よろしくね……はーい。…………よし、OK。いつでもいいわよ〜!!"」
電話で何やら誰かと話しながら私たちから少し距離を取った団長さん。
腰の刀に手をかけている軽巡棲姫さんを前に構える素振りすら見せていませんが…………大丈夫なのでしょう?
結構余裕そうに腕を振ってますが…………。
それから、さっきは誰に電話をかけたのでしょうか。
「"ふむ、まぁ、だいたいこういうタイプの時には…………あの人位しか思い当たらないな。"」
「"あの人?"」
「"そうだとも。まぁ、見てればわかるさ。"」
「"…………っ!!…………ァァ……ってェ……クソ!どうなってやがるんだ!"」
あ、防空さんが意識を取り戻しました。
「"おぉ、防空の姫はタフだな。姫のデコピン喰らって数分の気絶で済んだのだからな。ハッハッハ。"」
「"そんなに凄いの!?団長さんのデコピン!"」
「"…………ありゃ、凄いなんてもんじゃねぇぜ…………一瞬で意識を持っていかれた……。"」
それ既に人間辞めてませんか?
【ピピッ……ピピッ……】
あ…………すみません。1度かめら止めます。
──□──
✼••┈┈••《三人称視点》••┈┈••✼
今までずっとビデオカメラを支えていた右腕に若干のしびれが走るのを感じながら録画の停止ボタンを押したTaihoはモニタをパタンと閉じなからひとつ息をついた。
「ふぅ。電池が切れそうです。換えのばってりー…………あ、部屋に忘れてきてしまいました。」
「Taihoさんはドジっ娘さんだ。」
「Ryujo、からかわないでください。」
「残念だなぁ〜。団長のじゃれ合いシーンなんて滅多にお目にかかれないというのに。」
「……あれで『じゃれ合い』かよアイさん。」
「君はただデコピンされただけだろう?あれじゃハニーの1割未満だ。」
「1割未満!?…………あいつバケモンか。おい!軽姫!負けんじゃねぇぞ!!」
「静かにしていろ。集中出来ない。」
軽巡棲姫は一瞬たりとも目の前の自分より小柄な少女から視線を外さないまま一言言い放った。
そして僅かに右手を揺らし刀特有のチャキっと言う乾いた音を響かせる。
距離にして10メートルほど離れた団長と軽巡棲姫。
刹那の静寂が訪れたあと、軽巡棲姫が瞬時に腰を落として居合の構えをしながら地面を蹴った。
✼••┈┈••《団長視点》••┈┈••✼
はぁ、何となくわかっていたけど、毎度の事ながら新しい深海艦が入団するのと共にその新人と1戦交えるのは少々複雑な気分ではある。
なぜなら、言い方は悪いが上下関係をハッキリさせないといけないのだ。
嘗められたらそこから今まで築き上げてきた劇団『鎮守府』という設定そのものが崩壊しかねないから。
「(はぁ、とは言え新しい家族を叩きのめすのも結構覚悟いるのよねこれが。でも、いつも通り軽くやろう。)」
私は軽く腰に手を当てながら後ろ頭を掻いた。
ちょうどいい枝は…………運良く足元にあるな。
ちょうどそんなことを考えてため息をついていると、やっと話し合いだかおしゃべりだかが終わった軽巡棲姫が腰を落とした。
しかし次の瞬間。
「(っ!?)」
一瞬で間合いを詰めた………………いや、そんな生温い技じゃない。
「(ま、間に合うか!?)」
私は目だけを足元に移し、枝を蹴りあげる。
【ガン!!!!!】
【ザッ】
✼••┈┈••《三人称視点》••┈┈••✼
衝突と同時に先ほどの防空棲姫のものとは数倍……いやそれ以上の衝撃波が巻き起こった。
「わっ!」
「なんて衝撃でしょう……!」
「相変わらずなんてパワーだよ軽姫のやつ……。」
Ryujoは衝撃で思わず目をつむり、Taihoと防空棲姫は片目だけ閉じながら片腕で目を守っていた。
しかし、アイだけは心底驚いたというような表情をしていた。
「軽巡の姫……か。驚いたな。」
「当然だろ?あいつの力は……」
「違う。ハニーの足元を見てみたまえ。……ここからでは少々わかりづらいだろうが。」
「足元?」
「足元、ですか?……結構踏ん張っていますね。やはりそれほどまでに軽巡棲姫さんの力が……」
「それもある。だが、私が言いたいのはそこじゃない。」
そう腕を組むTaihoに向かってアイはそのひきつった顔を崩さないまま小さく答えた。
「……今までいろんな奴がうちのハニーに向かっていった。当然私も含めて。それこそここにいる深海艦のほとんどのやつが新人の時にハニーに自分の力を誇示するためだとか鎮守府を壊滅させるためだとか何かと理由をくっつけてはハニーに向かっていったのだ。だが……」
そのセリフを聞きながら三人はごくりと生唾を飲み干した。
「私が知る限り……ホントに数ミリ単位だとしてもハニーに後ずさりをさせたには、軽巡の姫を含めて三人しかいない」
「な!?」
「え!?」
「…………。」
「軽巡の姫、彼女の実力は…………。」
その先の言葉を言いかけたその時。
何とか…………軽巡棲姫の一撃を木の枝1本で受け切った団長がこちらに向かって声を張り上げた。
「アイ!!」
✼••┈┈••《団長視点》••┈┈••✼
ギ、ギリギリ間に合った。
「な、なっ…………木の枝、なんかで!!?」
悔しそうに唇を噛みながらなおも力をぬこうとしない軽巡棲姫に、私もいっぱいいっぱいだということを悟られないように軽く口角を上げてみる。
「ふぅ。結構やるじゃない。」
「余裕そうだな。」
「余裕だから…………っ!」
再び軽巡棲姫が私の言葉が終わらないうちに枝を無理やり押し返すと、今度は刀を横薙ぎに振るってきた。
「セリフくらい最後まで喋らせてよ。」
「生憎、こちらにそんな余裕はないんでな。フッ!!」
「あ、そう。はっ!!」
軽口を飛ばし合いながら軽巡棲姫の剣技を私の力を乗せた木の枝を起用に扱いながらいなしていく。
しかし、それでも無意識のうちに体重は後ろにかかってしまう。
「(凄い力ね…………。これはちょっと…………やるしかない、みたい。)」
「(……押しているか。悪いがこのまま貰うぞ!木の枝ごときで応戦したこと、後悔するがいい!)」
「っ!?」
連続で切り込んでいた軽巡棲姫は不意に連撃のテンポを僅かに遅らせ、力を込めるタイミングが完全に外れた私の枝を下から思い切り上へ弾いた。
「お?」
カランと音を立てながら私のはるか後方へ落ちる木の枝。
無防備になった私の首元へ軽巡棲姫が刀を突き付けてくる。
はあ、まったく、今回も相当やんちゃな娘が来ちゃったわね…………。
「終わりだ。お前もこの程度のようだn……」
「アイ!!」
私はさっきとは立場が逆、軽巡棲姫の言葉を遮るように大きく声を張り上げた。
「なんだいハニー?」
「そこ、どいてて。」
「承知した。加減はしてくれよ?」
「分かってる。」
その言葉に軽巡棲姫がフッと小さく笑う。
「やはり自分の負け姿は見られたくないか。」
「はぁ、そんなわけないでしょ。ちょっと軽く遊んであげようかな〜って思ってたら、そんな場合じゃなくなっちゃったんだもん。」
「軽く遊んで、だと?本気じゃないのか?」
「当たり前でしょ?」
「何故本気を出さない。でなければ勝負を挑んだ意味が無い。」
「はぁ?本気なんて出すわけないでしょ?だって本気なんかだしたら………………。」
「っ!」
私は首元に刀を突きつけられながら声のトーンを落とす。
「あなた、死んじゃうし。」
そんな低いトーンから幾分にも凄みを増して放たれた一言に軽巡棲姫が1歩後退りする。
「悪いけどあなた達相手にするのに死なないよう手加減すると全力の1割が限界なのよ。それ以上はどうなるか分からないから。」
「1割だと?」
「そう、上限1割。…………と思って今日も望んだんだけどね。あなたの力が予想以上に強かったのよ。それは誇っていいわ。」
「…………。」
「だから…………。」
【ヒュッ】
「なっ!?き、消えた!?うっ……!?」
消えたように見えるほどのその一瞬。
軽巡棲姫が喋りきるよりも早いスピードで私は背後から軽巡棲姫の脇腹に回し蹴りを叩き込んだ。
その次の瞬間には既に軽巡棲姫の体は本館の壁に勢いよく背中からぶち当たる。
しかし、そんな異常なまでの衝撃が襲ったにもかかわらず壁にめり込むどころか打ち付けられた反動で跳ね返った。
いや、
「かはっ!!?」
その拍子に一瞬だけ息を詰まらせる軽巡棲姫。
続けて跳ね返ってまだ地面にすら足がついていない状態のまま瞬時に死角に潜り込むと今度は同じ重さの衝撃を背中のド真ん中に叩きつけた。
ミシミシと背骨がイカれる音を聞きながら軽巡棲姫が辛うじて視線を後方へ移す。
ゆらりと紅い眼光で自分の背中に蹴りを入れている私の姿をその目に焼き付けさせた。
刹那。
本館とは真逆の方向に通常ならありえないほどのスピードで軽巡棲姫を蹴り飛ばした。
「…………後よろしく。
それから私は蹴り飛ばした先で肩を落とす白と紫の影に向かって小さく呟く。
✼••┈┈••《三人称視点》••┈┈••✼
「よっと。キヒヒ、団長もまた派手に叩いたねこりゃ。」
団長に蹴り飛ばされて高速飛行する軽巡棲姫を片手で受け止めながらその女性は不敵な笑みを浮かべた。
「…………っぐ…………ヤマト…………さん……。」
「あら、団長の
「それは…………」
「ま、おいおい分かるわよ。気長に待っていなさいな。……これからすっごいこき使われるから。」
そうため息交じりにしゃべると深海艦の女性、ヤマトは軽巡棲姫をお姫様抱っこのように持ちかえて小さく笑った。
「軽姫!!!!」
そんな二人の周りに新人三人衆が全速力で走ってきたのだろうかなり荒い呼吸を繰り返しながら、心配そうな顔で集まってきた。
その後ろからはアイがやれやれと言いながら歩いてくるのが見える。
「おい!軽姫!!大丈夫か!!?」
その中でも防空棲姫は特に興奮している様子で今にも泣きだしてしまうのではないかと思うほどの形相で詰め寄ってきていた。
「防……空……。」
「軽姫!よかった……。」
「ま、運がよかったというか悪かったというか。奇跡なのか必然なのか。」
「……ヤマトさん。どういう意味ですか?」
「う~ん。そうだねぇ……。」
「普通の深海艦であればハニーの2割なんかもろに受けたら意識なんて保っていられない。むしろそのまま永眠してもおかしくはなかったってことさ。ゆえに運がいい。ただ、ハニーがここまでやるってことはそれなりの理由がある。まぁ、大体は脚本上肝になる役や相当めんどくさい役を押し付けられる役回りになるくらいくらいだろうが。ゆえに運が悪い。ものは考えようとはよく言ったものだ。」
「そうね。ま、意識まで奪わなかったのは団長の不器用な配慮かもしれないけど。キヒヒ。」
「ボ、ボク、そんな怖い配慮嫌です。」
「大丈夫よ。めったなことしない限り団長があそこまでの力を出すことなんてないから。」
そう言いながらヤマトが軽巡棲姫を抱えながら微笑んだ。
「…………
不意にTaihoがとある疑問を二人に投げかける。
「……。」
「……。」
その言葉に入渠ドックの方へ歩きかけていた2人の足が止まった。
「的はずれなことでしたら申し訳ありません。その、団長は………………」
2人がゆっくりと振り返る。
それから、信じられないことを口にした。
中編終わったけどどうでしょうか←
本当に番外編が本編になりつつあって地味に焦ってます←(笑)