「うっ……」
自室の窓から差し込む日差しで俺は目を開けた。
ソファに座ったままということは昨日あれから2人で飲んだあとそのまま寝てしまったというわけか。
と言うより、動けなかったと言うのが正しいのか?
若干ガンガンする頭を回転させ、自分の右肩にもたれ掛かるようにして寝息をたてるビスマルクを見る。
「こんなの見せられたら動けないよな~」
俺はため息をついてソファの背もたれに頭を預けた。
昨日の夜は珍しく執務の方も夜の9時位にお互い片付けられたため、たまには一緒に食事でも行こうということになった訳だが、不運にも食堂を高雄に占拠されたとの情報が入り、急遽部屋で飲むことになった。
お互い酒にはあまり強く無いこともあり、缶ビールを1本ずつで留めておいたが、だめだ。俺には缶ビール1本でもなかなかきつい。もうひと眠りしたい所だな。
そう思って目を閉じかけたその時。
コンコン。
部屋に扉のノックの音が響いた。
全く、人が気持ちよく寝ようとしている時に……
俺は起こさないようにビスマルクの頭を肩から外すと若干の腹立たしさをかんじながら扉の方へ。
「はいはい。で?なんか用…………か?」
そして、いかにもダルそうに扉を開いて……固まった。
「おはようございます♪ご主人様♪はい、とても重要な用事があってお伺いし…………」(バタン!)
彼女が言葉を言い終わらないうちに急いで扉を閉めた。
「………………!」
閉めた扉を自分の背中で抑えながら、一瞬にして眠気と酔いが飛んだ頭で壁掛け時計に目を向ける。
時計の短針はしっかりと正午を回っていた。
顔から血の気が引くっていう感覚はこういう感覚なのか……。
「どうしたんですか~?ご主人様♪この扉を開けてくれないと
「い、いや……これには深い理由が…………」
「そうなのですか?それなら 是 非 と も 、その理由というものを聞かせて欲しいものですね♪執務をサボってまでしなければならない理由を、聞かせてくれませんか〜?ご主人様♪」
「うっ……(その声のトーンは壁越しでも怖いからやめてくれ!)」
俺は真っ青になりながらどうにかこの場を乗り切る打開策に思考を巡らせる。
正面突破…………いやいや、そもそも相手は巡戦、勝てる見込みは無い。
ビスマルクを起こす…………は、除外だな。
諦める選択肢は俺にはない、だとすれば。
「逃げる一択!」
そう結論づけた俺はダッシュで窓まで行き、大きく窓を開けるとサッシに足をかけた。一応此処は二階建ての本館の二階にある部屋なのだが、この下は丁度コンクリートではなく、土の地面なのでダメージはさほどないと踏んだ。
行ける!
そして、
「逃げるが勝ちだ!」
と訳の分からんことを口にしながら窓から外へ飛び出した。
「覚悟はできましたか?ご主人様~♪……(カチャリ)……ん?おや?あぁ、窓から外に。ここは2階でありますのに頑丈なのですね。あらあら、ビスマルクさんも……全く、夫婦揃ってお寝坊さんですか。」
そう溜息をつきながらメイド服の女性はソファの上でスヤスヤと寝息を立てるビスマルクを揺する。
「ほら、ビスマルクさん!もう朝…………と言うかお昼ですよ!執務のお時間です。」
「ん…………ん?レパルス?どうしてここに?」
「どうしてもこうしてもないですよ全く。執務のお時間になってもなかなか来ないので来てみれば。」
そう言って黒白のメイド服に身を包んだ青と金のオッドアイの女性、レナウン級2番艦のレパルスは腰に手を当てながら小さく肩を落とす。
一方のビスマルクはと言うとアルコールのせいと若干寝起きで回転まで時間がかかる頭でぼんやりとしている。
「執務…………執務!?」
やがて状況が飲み込めたビスマルクはソファから飛び起きるのだった。
「し、しまった!おれとした事が!おい!アドミラ…………ん?アイツはどこいったんだ?」
「ご主人様なら…………あちらから外に。」
「窓?」
ビスマルクはレパルスが指さす方を見ながら状況を察したのか「またか」と呟いた。
「まぁでも、あの方は頑丈ですので。」
「そういう問題でもないんだがなぁ。」
「執務に遅れなければ何も言いませんのに。」
「あぁ、すまない。以後気をつける。」
そう言いながらビスマルクは軽く頭を掻いた。
「そういや追わなくていいのか?」
「えぇ。窓から逃げることは想定済みでしたので♪」
と、満面の笑みを向けるレパルス。
「……程々にしてくれよ?」
「それは、わたくしではなくレナウンの方に言ってくださいな。それではわたくし達は執務室の方に向かいましょうか。やむを得ず暁さんに執務をサポートしてもらっていますので。あとで甘味でも奢ってあげてくださいね。」
「あ、あぁ。(すまない朔夜。)」
と心の中で謝りながらビスマルクはレパルスと共に部屋をあとにしたのだった。
…………
「うおぉぉぉ!!!高ぇ!!」
俺は物理法則に従って加速落下しながら声を上げた。
くそ!
またしても俺とした事が寝坊だなんて。
と言うか、なんだよレパルスのオーラ。
なんであんなに怖いんだよ!
まぁ、いいさ
「たまには執務を誰かに任せるのも悪くないな♪はっはっは♪」
と、高らかに笑いながら着地。
ジン、とした痛みはあるが骨に異常は無いようだ。
「まぁ、どうせ戻ったら
「ほほう?白昼堂々サボり宣言ですか?」
「あぁ、そうとも!どうせ結果が同じなら遊んでやるぜ!レナウンに捕まらなければ良いだけの話だしな。はっはっは。」
「あら、そうなのですか?わたくしに捕まらなければいいと?」
「そうそうわたくしに…………は?」
いや、今のは聞き間違いか?
不意に後ろから声をかけられて、俺も何も考えずに答えてしまったけど…………。
そもそも、俺は……
冷や汗が背中を流れ落ちる。
ジャキン。
…………何やら後ろから金属のこすれる音が聞こえるんだが、気のせいだろうか。
具体的に言うなら、レナウンの持つ艤装に弾丸が装填された時の金属音が聞こえたんだけど?
「なるほど。鬼ごっこという訳ですね?わたくしがご主人様を
そう言うと、目の前の黒白のメイド服に身を包んだオッドアイの女性は目を細めながらクスクスと笑う。
ちなみに、1番艦のレナウンの方は金が左目で青が右目のオッドアイで2番艦のレパルスはその逆だったりする。
「…………ちょ、レナウンさん?何でそんなに満面の笑みを浮かべていらっしゃるので?…………どうして、鬼ごっこなのに銃口をこっちに向けるのかな~?…………ついでに、さっきリロードしてたよね?」
「あらあら、大丈夫ですわ。この弾丸は夕張さん特製の麻痺弾なので死にはしませんわよ?ただ、着弾時死ぬほど痛いかも知れませんが♪」
「変わんねぇじゃねぇか!!」
俺は取り敢えずツッコミを入れ、無理やり体を投げ出すようにしてその場から飛び退いた。
と同時に先程まで俺がいた場所に麻痺弾が着弾した。
こ、こいつマジで撃ったぞ!?
いくら普通じゃねえからって撃つか!?普通?
俺はため息をつくと尻餅をついたまま両手を上に挙げた。
「降参」
「おや?今日はやけに潔いですね?」
「昨日ビール飲んだからさ…………うぷっ!?」
「?どうしました?いきなり口元なんか押さえて。
やばい…………まだ若干アルコールが残っていた挙句窓際までのダッシュと落下による衝撃、それからさっきの緊急回避によって…………色々と限界に達してしまったようだ。
「…☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..…」
「…………はぁ。執務室の前に医務室ですわね」
俺がリバースするのと同時にレナウンはふいっと視線をそらしつつため息をついた。
「すまねぇ。助かるz……☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..」
その日、俺は医務室真昼間っから医務室でお世話になったあと、執務室でレナウン達から説教を貰ったのだった。
医務室出したけど、医療班誰にしようかな~?
夕張は技術班だし…………。
エムデンとかソルトレイクシティー、ペンサコーラとかが無難かな~?
ソルトとペンサはなんかそれっぽい帽子乗っけてるしw
ケーニヒスベルク級はなんか医療班と言うよりフライトアテンダントっぽいよねww