Side A 暁の水平線へ 第1話
私は空を見上げた。
青く澄み渡る空は雲一つない快晴で、真夏の太陽は光を遮るものがないことをいいことにガンガンと灼熱とともに紫外線を容赦無く降らせてくる。
「ふぅ。今日も出撃日和♪天気もいいし♪波の音も気持ちいい♪風もほとんどなくて……♪気温は高くて…………、紫外線は多くて…………、汗は止まらないし………………もうイヤ。でも、頑張らなきゃ!!~……」
後半にいくにつれてだんだんとテンションが下がってきたのは、こんな暑い中なぜ自分は日陰のない港の先端に取り付けた桟橋に立っていなきゃいけないのかという思いからだろうな。
事実、今私は白い提督用の軍服(長袖)に身を包んで、提督帽を被って日光ガンガンの中時間にして丁度長針が1回りするであろう時間の間仁王立ちしていたので、身体中汗ダラダラ、メガネは汗で滑って頻繁にずり落ちるわで最悪の状態。
と言うか、どうして私が今こんなことをしているのかと言うと、時間は数時間前の作戦司令室に遡る。
………………
……
数刻前。
この日は、つい先日の「ボーキサイトつまみ食い事件」のお陰でボーキサイトが火の車となったため急遽ボーキサイトの回収が必要不可欠な事項となった。
そこで、丁度その日駆逐艦が4隻着任してくれていたので練度向上とボーキサイトの回収を兼ねて遠征に行かせてみようかと思ってメンバーを作戦司令室に集めたのだった。
「よし、集まったわね?」
集めたのは、
天龍型の2人、天龍と龍田。
そして、暁型の4人、暁、響、雷、電。
このメンツを見た天龍がため息をついて頭を掻いた。
「あ~……このメンツを集めたってことはあれだな?遠征のお
「大正解」
「なんて言うか、毎度のことだから流石に諦めてきたけどよ?たまには遠征任務じゃない出撃もしたいぜ」
「いやぁ、ごめんね。なんか他に適任がいなくてさ。どうしてもこうなっちゃうんだよね~。あはは……」
まぁ、でも遠征に関しては球磨や多摩よりかはこの2人の方が頼りになるのは本当だし。
「天龍ちゃんは頼りにされてるってことよ♪」
やっぱり鋭いな。
龍田は絶対に敵に回したくないわ……。
「そういう事よ」
「……まぁ、そういうことなら否定はしないがよ」
それに丸め込むのが簡単だからすごい楽…………なんて言えないけど。
「…………」
って言っても、龍田にはバレてそうね。
めっちゃニヤニヤしてるけど、目が笑ってない。
「とにかく、今月はうちの
「特別休暇」という単語に食いつく5人。
ホント!?だの、マジか!だの口々に喋り歓喜の声で司令室はいっぱいになった。
龍田だけはため息をついたけど。
と、そんなやりとりを交わしつつ6人を遠征へと送り出し、一息ついていると司令室にノックの音が響いた。
「提督いますか~?」
「あ、夕張。ごめん、確か執務室の方に来てって言ってたのすっかり忘れてた」
私はしまった……と思いながら司令室の椅子から立ち上がるとパタパタと扉を開け、そのまま司令室から出た。
「いや、報告だけなのでここでもいいですよ?」
夕張は開発に使用した資材の消費報告書を下敷きのクリップに挟んだ状態でピラピラ捲りながら言った。
「執務は執務、作戦は作戦でメリハリをつけたいのよ。ま、歩きながらでもいいわ?」
「でも、それだと執務室に着く前に報告終わるんですが?」
「その時はその時よ…………っと、そういやこの後出撃あったな~。旗艦は…………金剛さんに任せて、比叡と…………ブツブツ…………あ、艦隊指揮も球磨にまかせとこう」
顎に手を当てつつそんなことを歩きながらブツブツと漏らす。
「……」
「で?デイリーの開発の方は?どうだった?」
「……あ、そうでした。今日は……と言うか最近はボーキサイトが無いので全部最低量で4回ほど開発しましたが…………結果は全部失敗に終わりました」
「やっぱりね。でも、開発資材は減らないんだからいいじゃない」
私はこの後何しようかな~なんて考えながら執務室の前まできた時…………意を決したように夕張が口を開いて
「……そう言えば提督って…………艦隊の指揮とか出来るんですか?」
その一言に私の執務室を開けるために扉の取っ手にかけた手を止めた。
そのまま引き攣った笑顔のまま振り向く。
「……いまなんて?」
「あ、いや、提督って大体出撃する時指揮を球磨さんに一任してるじゃないですか?いつも何でかなーって思ってて」
あぁ、そう言えば夕張は私が球磨に指揮を一任し始めてから建造された艦だっけ?
「あぁ、ならしょうがないか~。夕張はここに来てからそんなに日は経ってないものね~」
まぁ、最近アレだしちょうどいいか。
「いや、着任して3ヶ月は経つんですけど…………」
「そんなことはいいのよ。そっか、夕張はまだ私が指揮してる所見たことないのね~。よし、たまには私が指揮を執ろう♪そうしよう♪そうと決まれば球磨にこの事を…………」
「あ、そ、そんな、出来るんでしたらそれでいいですよ。無理に今見せてもらわなくても…………」
と、久々の指揮でテンションが上がりつつある私と、自分から言い出したことなのに何故かわたわたする夕張。
「別にいいのよ。でも…………そういや、先月指揮とったけど夕張は……、あぁ、そう言えば
「はい……」
「ま、私の指揮と球磨の指揮は全然違うわよ♪」
「そうなんですか?」
「多分球磨のより私が仕切った方が疲れるわw」
「…………」
「という訳で、急遽予定変更で夕張も出撃ね~♪さぁーて、張り切って行こう♪……フンフン♪……あ、球磨?今日のこのあとの出撃の話なんだけどさ……うんうん……でね?今回だけでいいから艦隊指揮代わってくれない?wえ?いやいや、そこまでやらないよww アレについてこられるのは球磨達と…………恐らく辛うじて金剛さんがついて来れるか来れないか位のものよ?w」
「え!?そんなに!?」
「じゃあ、そういう事だから出撃組に伝えておいて~、あ!あと多摩に今日は出撃休みって伝えておいて、元々空き枠の助っ人だったからその枠に夕張入れる。
「いやいや、何を勝手に決めてるんですか!?私だって準備が…………」
「じゃあ、よろしく~♪……っと。さて、善は急げって言うじゃない♪行くわよ♪」
「はぁ……」
とまぁ、こんな経緯で指揮を執ることになったわけだが。
出撃内容はと言うと、ボーキサイトがまるで足りないので現地から直接持ってこようぜ、と言うことで
敵艦もそこまで強い艦もいないので大丈夫でしょう…………強いて言うならボスの空母ヲ級が厄介かな。しかも
そんなことを考えながら桟橋の上で腕組みをする私。
それからすぐ、自分の後方から声がかかる。
「Hey!テートク!出撃艦隊旗艦金剛以下5名招集完了ネ!」
「あれ?今日は提督が指揮を執るんですか?いつもは球磨さんなのに」
「何?私じゃ不満?」
「そういう訳では無いですけど……」
……?
あぁ、確か今月配属されたばかりの金剛たちも私は初めてか。
「……私が余計なことをしなければな~」
「夕張~?何か言った?」
「いえ何も?」
集められた艦は6隻。
艦隊を率いる旗艦の役割の金剛、そしてその妹の比叡。
事の発端の夕張に、古参の北上、大井、そして木曾。
「ま、作戦自体はそこまでむつかしくないから大丈夫…………ぱく……
私は途中でのど飴を口に放り込んだ。
「…………あの、なぜのど飴を?」
「フッ、知らない方が幸せかもしれないぞ?」
「うわっ、のど飴とかやる気満々じゃないですか」
「頑張ろーねー、大井っち~」
と至極当たり前のような夕張の質問に木曾が答え、続けて大井、北上と喋る。
「まぁ、いい射撃訓練だと思えばあながち面白いもんだぜ?」
「私この前…………これのおかげで半日執務を押し付けられたことがあるんだけど?」
「…………(これ?)」
何となく楽しそうな木曾に引き攣って口元をピクピク震わせる大井。
「まぁ、多分実際に見た方が早いよ」
「そういう事。まぁ、初戦は3人とも見学してなさい♪北上と大井、木曾にお手本を見せてもらうから♪」
「やっぱり!あぁーあ、球磨姉さんの指揮がいいな~」
「つべこべ言わずに準備しなさい」
文句を並べる大井を無視して、私はいい機会だから金剛型全員集めとけばよかったなどと考えながら軽く一言二言喋ったあと、出撃させた。
……
………………
場面は戻りテンションが下がった私。
景気よくハイテンションで出撃させたはいいものの、時間が経つにつれてどんどんと暑くなる桟橋のせいで、気温の上昇に反比例するように下がったテンション。
「あぁ……暑いよ」
と、そろそろ目の前に広がる海が恋しくなってきた頃、無線に連絡が入った。
「''テートク!出撃艦隊、深海棲艦を発見!艦種は重巡eliteが2、軽巡eliteが2で駆逐艦が2みたいネ!''」
重巡、軽巡、駆逐。
まぁ、丁度いいか。
「こちら真昼。了解したわ。なら行くわよ♪北上!大井!木曾!いつも通り行くわよ!準備しなさい!ほかの3人は見学ね。あ、それと索敵機飛ばしたの誰?」
「"それはワタシが飛ばしマシタ"」
「OK。索敵機の視覚データもこっちの小型電探に転送してくれる?出来るだけリアルタイムで映像を送って」
「''了解しまシタ…………けど、何で見学なんですカ?''」
「''私も気になります''」
「''…………了解''」
「''いつも通りね……''」
「''ま、メンドいけどやりますか~''」
「」''こっちの準備はOKだ。いつでも行ける''」
「よし♪」
出撃している6人から 返事をもらい、うん、と頷いて空気を大きく吸い込むと、無線に向かって指示を飛ばした。
「魚雷なんか使う必要ないから撃たないようにしてね。特に北上と大井は興奮するとすぐ魚雷をばら撒くから気をつけて!」
「''ら、雷巡なのに魚雷を使わないのですカ!?''」
「節約よ!そもそも、この程度なら……いけるわよね?」
そう言って私はクスリと笑って見せた。
…………
場所は変わって海上。
「いや、雷巡なのに魚雷を使わないのはおかしいデス!」
「まぁ、提督はああいう人だからね。仕方ないよ」
「だな」
「''じゃあ行くわよ!''」
そして、金剛を含め
「''ふぅ…………木曾は単縦陣で組んでる戦闘の重巡の右腕に向かって左舷27℃の角度から砲撃!砲撃間隔は1秒、1.3秒、1秒!砲撃角度は0、-11、上に5!まずは陣形を崩しなさい!''」
いや、聞き間違いか?
指示って……こういう事なのか?
細すぎる。
そんなの出来るわけ……。
「了解だ!」
「え!?」
指示を受けるや否や木曾は何のためらいもなく快諾し、一瞬にして主機の舵を左へ取るとすぐさま主砲を構え、トリガーを3回引いた。主砲から撃ち出された弾丸は3発とも寸分狂わず先頭にいるリ級の右腕に吸い込まれて行った。着弾の反動で振られる腕も全て計算されたかのごとくピンポイントで被弾させた。撃沈まではいかないものの陣形は完全に崩壊した。
この砲撃によって敵の方もこちらの存在に気づいたようだが…………崩壊した陣形は持ち直せない。
「''反撃のスキは与えないわよ!北上!大井!左右に展開しながら軽巡と駆逐を挟んで!''」
「うぃ」
「了解」
そして、なんと言っても指示から行動までの時間ロスが無い。
「''今先頭の重巡は木曾の砲撃で混乱してる!今なら行けるわ。駆逐には零射で行けるでしょ!軽巡には背中の艤装に側面から3発!本体には腕、体、頭の順番で撃ち込みなさい!駆逐と軽巡は沈めるわ!!!''」
「……」
「……」
両翼に展開した2人は小さくコンタクトを交わすと、同時に距離を詰める。
敵艦隊も崩壊した陣形で反撃の砲撃を行うが、崩壊に動揺した深海棲艦は命中精度は皆無だった。いや、2人の肉薄速度の方が早すぎたと言うべきか。
「これで……」
「駆逐艦は終わりですね」
そして、一瞬にして2隻の駆逐艦を中心に北上と大井が交差し、逆サイドへ抜けていく。
その直後、駆逐艦から爆炎が舞い上がり、轟沈して行った。
2人は確認をすることなく主砲を後方に構えて振り向かずにトリガーを6回引いた。
そんな2人から放たれた弾丸、これも寸分狂うことなくしかも指示のとおりの順番でピンポイントに射撃して見せた。
これで駆逐艦2隻と軽巡2隻が一瞬にしていなくなった。
後は木曾の砲撃で大破した旗艦の重巡とほぼ無傷状態の重巡の2隻のみとなった。
「''これで止めと行きましょうか。まぁ、最後は木曾に任せるわ。あ、無傷の方をお願いね?''」
「……はぁ、まぁいいか」
木曾はため息を一つつくと一瞬で無傷の方の重巡の目の前まで行くとそのまま零射…………と思いきや。
「はぁっ!!」
「え……?」
「あ……」
「…………」
同時に呟いた3人、金剛、比叡、夕張の腑抜けた声が届く。
「ふぅ、提督。注文通りにしてやったぞ?」
木曾は沈めた重巡の近くで膝をついていた大破状態のリ級を威圧を込めた目で見下ろしながら木曾が無線に言った。
リ級はじっと唇をかんだまま右手の主砲を木曾へと向けるが、最初の砲撃によって既に艤装としての機能は無く、ダラリと力を抜くしかない。
「''よしよし、OKOK。上出来よ木曾♪じゃあ…………''」
「……それ以上言うとまた球磨姉がキレるぞ?」
「''大丈夫大丈夫♪バレなきゃ大丈夫♪って事で…………フフフ……''」
無線から何やら怪しげな笑い声が聞こえたかと思うと、提督は突拍子もないことを言い出すのだった。
「''フフフ…………それじゃあ、そのリ級ちゃんを連れてきなさい!鹵獲よ鹵獲♪''」
んー、なんというか戦闘描写は難しいね……。
精進しないと……。