交錯する世界   作:奇稲田姫

9 / 28
今回はちょっと短い……かな

艦これサイドがやっぱりメインルートなので、ちょっとしばらくはこっちの更新を重視するかもしれないです←


Side A 暁の水平線へ 第6話

「すぅ…………すぅ…………」

 

「…………」

 

鎮守府における本館から少し離れたところに建てられた監視塔。

役割は主に第一次警戒網をくぐり抜けて鎮守府の近海に侵入した深海棲艦をいち早く発見し、それを鎮守府全体に知らせること。そのため、監視塔は海岸に最も近い場所に建てられており、出来る限り視野を広く持つため高さも「塔」と呼ばれるほどには持ち合わせていた。

その最上階の1室。

監視塔メインルームの椅子の上で彼女は丸くなって眠っていた。

 

口調からして猫っぽい…………(いや、そもそも艦名も猫っぽい)……彼女はその行動すらも猫に似ているところがある。

 

「……椅子の上で丸くなって寝るとか……器用すぎマスヨ」

 

でも確かに、この部屋は地上から高い場所に位置していることもあって地上()に比べて風の通りは良いらしい。

夏真っ盛りだというのに、ここはクーラー無しでも意外と涼しかった。

 

ワタシは近くにあった椅子に腰掛けると窓の外に目をやった。

 

広大な、それでいて青く光を反射して輝いて見える海。そして、普段自分達が駆け抜けている海。それが前にこれを遮るものがなく視界一面に広がっていた。

 

どこを見渡しても同じ青。

その上を普段迷うこと無く駆け抜けているのだと思うと…………改めて凄いと感じる。

 

そんなことを考えつつ、目的も忘れ物思いに耽っていると、不意にメインルームの扉が開かれて女性が2人入室してくる。

 

「ん?あぁ、金剛さんか、どうしたんだ?こんなところに来て」

 

「なにか気になることでもありましたか?」

 

入ってきたのは薄めの紫の髪を左右に大きく跳ねさせ、日本酒の一升瓶を片手に持った女性と黒い長髪の「清楚」という言葉をそのまま具現化したような女性だった。

 

「oh、あなたは隼鷹と飛鷹デスカ。そう言えば2人も監視課だったネ」

 

「監視課って言ってもあたしらのやってる事は殆ど索敵と変わんないんだけどな」

 

「私達の索敵機から受信される情報と、ここのメインコンピュータによる情報、そして多摩さんの情報を絡めた上での監視課ですし」

 

「ナルホド」

 

二人の話を聞く限り、多摩(彼女)はこの課においてなくてはならない存在だということが分かる。

 

提督からも、多摩はこの鎮守府の球磨に次ぐ実力の持ち主だとは聞いている。球磨と違って砲撃や雷撃は特別強いわけではなく、主に直感や機転、視野の広さや士気の上げ方と言ったサポート系の能力に優れているのだとか。

だだ…………。

 

「…………アレを見る限りとてもそうには見えませんガ……」

 

「?どうした?」

 

「何でもないネ」

 

そう軽くはぐらかしながら、もう1度彼女を見る。

しかし、そんな彼女だがワタシにとっては正直あの日の印象が強すぎて頭から離れないでいた。

 

あの日…………ワタシが初めてあの地下室を見た日。

 

 

 

 

 

………………

2日前。

………………

 

 

「コレは…………一体どういうことなのデスカ!!!?説明してクダサイ!!!」

 

ワタシがあの部屋で見たものは中央の診察台の上で深海棲艦のコアをその体に取り込んでいる最中だった提督の姿とそれを見守る4人の艦娘の姿。

 

「金剛さん……」

 

「えっ!?こ、金剛さんが……どうして!?」

 

「…………」

 

「この際そんなことはいいデス。この状況を説明スルネ!!」

 

以前の鎮守府であることを聞いていた私はこの状況を見た瞬間その「あること」が頭によぎっていた。

 

「これではまるで…………」

 

「人体実験……かにゃ?」

 

ワタシの言葉に被せるように多摩が口を開く。

 

「そうデース」

 

「なるほどにゃ~。確かに……そうかもにゃ~」

 

何となく気が抜けるようなのんびりとした口調で多摩が続ける。

 

「ワタシはこの鎮守府が秘密裏にこんなことをやってるなんて思っていませんでしたヨ!!」

 

その時はワタシも我を忘れて声を出したのを覚えている。

 

「……」

 

「……っ」

 

「……」

 

私の一言に北上は俯き、大井は下唇を噛む。

球磨は特に気にすることもなく壁に背中を預けながら目を伏せていた。

 

しかし、彼女だけは…………。

 

ほかの3人が沈黙する中、彼女だけは違う反応を見せたのだ。

 

「まぁ、一理あるにゃ~。でも…………」

 

「でも?」

 

「これを知って、金剛さんはいったいどうするつもりなのかにゃ~」

 

口調は変わらずのんびりとしていたが、雰囲気はそうでは無かった。

 

「この鎮守府が深海棲艦のコアの移植…………もとい、人体実験してる事を公にでもするかにゃ~?」

 

「……それは」

 

ワタシはその時、多摩の一言でたじろいだ。

その瞬間。

 

彼女が一気に口角を釣り上げた。

 

「ハハハ!出来ないよねェ!出来るわけないよね!!だって……フフ」

 

「……っ!?」

 

「…………」

 

多摩はその目に狂気を混ぜながら、ゆっくりと私の前まで歩いてきた。

 

ワタシより僅かに低い位置からのんびりとしていた彼女からは想像も出来ないようなドスの効いたトーンで言葉を発したのだ。

 

「だって…………あんたもこの鎮守府の艦娘だもんねェ!!フフフ」

 

「っ!?」

 

「確かに今この部屋で行われているのは紛れもなく「人体実験」♪だから、何か?このことを知っているのは私たちと提督…………あと、あんたしかいないんだ。表沙汰になってない以上誰にも迷惑は掛けてない。それを公になんかしたら………………どうなるか分かるでしょ?」

 

「……関係者は営倉入り、デスカ」

 

「そうそう。関係者は営倉入り、もしくは解体処分は免れない。このことを知らない艦は他の鎮守府に移転になるだろうね!でも…………あんたはもう犯罪者側(こっちサイド)何だからさ!アハハ!」

 

「多摩姉……」

 

北上が小さく姉の名前を口にする。

しかし、姉は気にせずに言葉を並べ続けていく。

 

「それでも公にしたいならすればいいんじゃない?フフフ」

 

薄く影を落としてニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら話す多摩。

その表情にたじろぎつつ金剛も反論を返す。

 

「…………どうして、こんなコトを」

 

「こんなコト……?そんなの決まってるじゃない?」

 

それから一泊おいたあと、多摩が笑いながら言い切った。

 

 

 

 

「いい試験体だったからだよ!!アハハ!」

 

 

 

 

 

その言葉を最後にワタシはクルリと踵を返した。

心の中に霧が立ち込めたように暗くなったのを覚えている。

 

そもそも、聞いていた話では第一艦隊を脱退して、監視課に配属されてからはほぼ毎日監視室で寝ている艦だと聞かされていただけに、その豹変ぶりに正直恐怖を感じるほど圧倒されてしまっていた。

 

そんな事があって今に至るのだが、昨日提督から聞いた話では、あの部屋で行っていたのは確かに似てはいるが、人体実験ではないとの事。

でも、ある意味「実験」とも言っていた。

 

そもそも、艦娘が正式に誕生してから今まで、建造するのに深海のコアを使用しているので、響きとしては冷めた目で見られるだろうが法として裁かれることは本当に非人道的な目的以外であれば皆無らしい。

 

…………確かに考えてみれば深海コアを体に宿して、艤装を扱えるように言わば「改造」されたのが艦娘だ。それをいちいち裁いてたら……キリがないと言うかプロジェクト自体の意味が消えると言うか。

 

それに、これは行わなければ提督の命に関わるとも昨日言っていたか……。

つまり、治療の一貫なんだとか。

 

 

 

 

 

 

因みに昨日この話をした時、提督には大爆笑された……。

 

 

 

 

 

 

 

「あんなの気づけるわけ無いデスヨ……」

 

ワタシはムスッとした表情を作りながらため息をつく。

 

「ん?」

 

「何でもないネ」

 

「ん~。まぁ、何でもないならいいけどさ~?と言うか、アタシ達以外の奴がここに来るってことはたいてい……。なぁ?飛鷹?」

 

「そうですね。おそらく多摩さん絡みでしょう?あんまり多摩さんに言われたこと間に受けてると体が持ちませんよ?」

 

ドンピシャで言い当てられて更に肩を落とす。

 

「それ、もう少し早く聞きたかったデスヨ……」

 

「ははは。まぁ、流石に移動したてじゃあこの鎮守府での上手いあしらい方なんか分からないよな~」

 

「私達もこの鎮守府内では比較的新しい部類なのですが、着任したての時は苦労しました……」

 

「なるほどネ~」

 

「そういう事さ。要は習うより慣れろって事で」

 

そう言って隼鷹は日本酒を一升瓶のまま豪快にラッパ飲みをかましながら笑う。

 

日本酒をラッパ飲み……なかなかしないデスヨ。

 

「さて、私達はそろそろ行きましょうか。多摩さ~ん。今週の索敵機からの監視データの報告書、デスクの方に置いておきますね?」

 

そんな飛鷹に椅子の上からヒラヒラと手を振る多摩。

いつの間に起きていたのか……。

 

「……起きていたのですカ」

 

「いや、多分寝てますよ?いつもこんな感じです」

 

「逆に起きてたら次の日雹が降るんだぜ?」

 

「え?先月降ったのは雹じゃなくてあれは霙よ?ほら、どちらかと言うと氷より雪に近かったじゃない?」

 

「雹も霙も大して変わらないさ。んな事より飲みに行こう」

 

「あなたまだ飲む気で……」

 

「良いんだよ。ほらほら」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

……なにか意味深なことを言い残して2人が部屋から出ていった。

 

えーと?

報告書の提出の時はいつも多摩は寝ている……。

それが起きてたら……雹……いや、霙が降る。

 

いやいやいやいや、ソレ例え話デスヨネ!?

 

「oh......」

 

ため息が出た。

 

 

 

そんな時

 

 

 

 

「……金剛さんは帰らないのかにゃ?」

 

 

 

 

「あ…………って、え?」

 

不意に()()()()()()の人物に話しかけられた。

いきなりの出来事だったため、返答が曖昧になってしまう。

 

「だから、金剛さんは帰らないのかって聞いてるんだにゃ」

 

「いやいや、そもそも何でワタシがいるって知ってるんデスカ?ワタシが来た時熟睡してたデース」

 

「そう見えたのなら金剛さんもまだまだ経験が足りないにゃ~。物事の「本質」が全く見えてないにゃ~。それじゃあ、球磨の後継としては少~し力不足だにゃ~」

 

多摩は椅子の上から微動だにすること無く言う。

 

「事の「本質」ネェ……」

 

「ま、それに関してはさっきの飛鷹と隼鷹も同じだけどにゃ~」

 

「あの2人もまだまだってコトデスカ~?」

 

「そうにゃ~。確かにあの日は()()()()起きてたタイミングで2人が()()()()監視室に来て、次の日に()()()()気温が下がって()()()()降った雨が霙に見えたってだけなのににゃ~。全ては「偶然」が上手いこと重なったんだにゃ~」

 

「偶然」

 

「偶然にゃ」

 

「そんな「偶然」が重なるなんてコト……ホントにあるんデスカ?」

 

「事実あったんだにゃ」

 

「……そうデシタ」

 

「多摩は「偶然」とか「奇跡」とかそう言った類いのことが大っ嫌いなんだにゃ~」

 

思いがけない多摩の一言に一瞬だけ反応が遅れた。

 

「え……え?でも、提督から聞いた話によるとそういった事に秀でていると……」

 

そう返すと多摩は椅子の上でモゾモゾと動いて、ゆっくり起き上がるとこちらを見た。

そして、小さく舌打ちをかます。

 

「へぇ、提督がそんなことを言ってたんだ。あのお喋りめ……」

 

「多摩サン、口調」

 

「ん?にゃ…………これも提督に?」

 

「(コクリ)」

 

「まぁ、いいにゃ~。で?金剛さんは帰らないのかにゃ?」

 

いつもの口調に戻した多摩が面倒くさそうに聞いてくる。

 

「当たり前デース。多摩サンに用があって来たんですカラ」

 

「多摩に?」

 

そう言って訝しげに眉を寄せる多摩。

 

そうデス。あなたに、デース。

 

ワタシは僅かに目を細めて見せた。

 

 

 

 

 




第6話 後書き

艦これサイド6話です♪
今回は多摩回です←
おそらく、前編後編仕様になるかと……
書いてて思ったのが、何かこれ…………提督の秘密暴露祭りのはずが、提督による球磨型の秘密の暴露祭りになってるような…………って感じです←(笑)

…………細かい事はキニシナイ方向で←(笑)

でも、姫も艦これの色んな小説とか二次創作とか見てますが、球磨多摩がメインの話って少なくないですか?(泣)

姫は悲しいです……

だからかな…………多摩さんこんなにグレてしまって……シクシク

理由はあるんですけどね~(笑)

球磨多摩の秘密はもう少し先の話なので伏せときますw

以上
第6話あとがきでした♪
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。