艦これ×鋼鉄の咆哮~力の重さ、強さの意味~   作:東部雲

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去年のリクエストで秋刀魚祭りを書いてましたが季節のうちには間に合わず、今年の秋刀魚祭りに合わせて投稿することにいたしました。

PLUXⅨ様、時期に間に合わず申し訳ありません。代わりにこの話を投稿します。大晦日の仕事帰りから書き上げた話ですが、ご希望に添えない内容で有ればごめんなさい。では、どうぞ。


番外編 お正月の横須賀鎮守府

 12月31日。

 

 その日の深夜、横須賀第7鎮守府の提督蕪木 翔中佐以下、所属する全艦娘は食堂であることを今か、今かと待ち続けていた。

 

 通常、鎮守府の食堂は提督か所属する艦娘で管理されており、奥の厨房では料理が得意分野である鳳翔を筆頭に何人か待機している。その中には諏訪や十勝もいた。

 

 室内の時計は午後の11時59分(ヒトヒトゴーキュウ)を指しており、それは今年の終わりが近付いていることを意味していた。

 

 

「カウント十秒前。……9、……8。……7、……6。……5、……4。……3、……2。……1」

 

 ゼロ。

 

 蕪木の秒読みが終わるのと、時計の秒針が時針と分針を動かして12時を指すのは同時だった。

 

 

「新年明けましておめでとう! 今年も宜しく頼むぞ!」

 

 新年の挨拶を蕪木から切り出し、全員思い思いに応えていく。諏訪もそれに応える。

 

 

「明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いしますね!」

 

 前世では一年数ヶ月と言う短い時間ながら激動の一生を過ごした頃とは違い、艦娘になってから初めて誰かと共有する年越しを皆で祝った。

 

 

 

          ◇◇◇

 

 年が越したのなら次にやることは決まっていた。

 

 そう、初詣である。

 

 今回は基地外から出るわけではなく内部に設置された、艦内神社ならぬ基地内神社だ。年が開けてから非番の軍人から暇な艦娘まで、神社として控えめな境内に大勢が集まる場所だ。

 

 

「む、来たか。早かったな、蕪木中佐」

 

「いえ、そちら程ではありませんよ。三笠大将」

 

 境内には三笠や第1鎮守府の主だった艦娘が集まっていた。今は駆逐艦が先に御詣りしているようで、軽巡以上の艦娘は順番待ちしていた。

 

 

「遅れましたが、新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします」

 

「こちらこそだ、中佐」

 

 蕪木が挨拶してそれに応える三笠は表情こそ変えないままだが、心なしか普段閉じているような薄目が緩んだように感じられた。

 

 

「いやー寒い寒い! 境内って基地内に置くなら屋内でもいいのに」

 

「そう言うな、大人げない。艦内神社ではないのだから、我慢だ。あと鳥居は潜る前に会釈だ」

 

 弱音を吐く伊勢を嗜め、日向は続けざまに伊勢を注意していく。

 

 

「まあ良いじゃないですか、日向姉さん。ほら、あそこで甘酒って言うの売ってます。行きましょ? 伊勢姉さん、日向姉さん」

 

 諏訪は日向に倣い鳥居の前で会釈して潜り、自分にとって初めて見る屋台に姉二人を誘う。

 

 

「お姉様が行くなら私も」

 

「じゃあボクも!」

 

「私も諏訪さんがそうするなら」

 

「その前に手水(しゅすい)を済ませよう。ほら、彼処まで行くぞ」

 

 もはや日向は伊勢も含めた姉妹の引率者その者である。

 諏訪達は初詣と言う習慣は聞き慣れておらず、前世で日本と交流のあったウィルキア育ちとはいえ、記憶はほぼ全て戦いで埋められていた。だからこそこう言った日本の行事は全てが新鮮そのものだった。

 

 そんなこんなしてる間に横須賀第1鎮守府も全員が御詣りを済ませ、後から来た第7鎮守府は初めてと言うことで諏訪達に最初を譲った。

 

 

「参道は神様の通る道だから真ん中を避けてね。次にお賽銭箱、財布の小銭を投げ入れて、どれでもいいよ。そしたらゆっくりと御辞儀を2回。拍手を2回してお祈り。それからもう一回御辞儀して下がるよー」

 

 本殿での作法は伊勢も教えたいらしく、張り切って順当に教えていく。諏訪達もそれに倣った。

 

 

(今年は皆で笑顔に過ごせますように。例え自分達が戦争中でも、笑えるときには笑って過ごせますように)

 

 諏訪は内心でそう願い、祈った。諏訪にとってはいつかの演習を経験した時から、誰かの笑顔を損ないたくないと思うようになっている。

 それが艦娘として生まれ変わった、護衛艦諏訪としての戦う理由かも知れなかった。

 

 

「おーーい! 諏訪、十勝、三原、影縫!」

 

 離れたところから呼ぶ声が聞こえ振り向くと、鳥居の向こうから手を振る薩摩がいた。傍らには雷型の雷と朧いる。

 

 

「薩摩大先輩! 特務としての仕事は良いんですか!?」

 

「大丈夫、全部浅間に任せてきた!」

 

 どうやら仕事をサボって抜け出してきたようだ。とは言え雷と朧を連れているので文句は言い難いが、今頃浅間が統合司令部で地団駄を踏んでいるかもしれない。

 

 

「新年明けましておめでとう! 初詣済ませたら一度戻るけど、またそっちにお邪魔するわね!」

 

「こちらこそおめでとうございます。それとあまりサボらない方が」

 

「いいの、怒られるのは私だから!」

 

 何でもない風に言い切る。その様子を見ていた一人が近付いていった。

 

 

「薩摩、お前はまた浅間に仕事を押し付けてきたのか」

 

「げ、三笠」

 

 同じく御詣りした三笠だった。閉じたような薄目の瞼をひきつらせ、青筋を立てていた。

 

 

「流石にお灸を据えねばならんな」

 

「えーと、三笠? 何で軍刀に手を掛けてるの? それは深海棲艦相手か護身用に使うもので、平時に振り回していいものじゃ」

 

「江崎総長から使用していいと許可は取っている」

 

「提督、貴方もかぁ!」

 

 ぎゃーぎゃーと騒ぎ始めた最古参の艦娘二人。始まりの艦娘二人は常に雲上の存在とされているが、この様子は普段重鎮として活動する面しか知らない者には珍しい光景だった。

 

 

「あの二人はほっといてみんな、先に戻っていいぞ。当分終わらないし、俺は雷型の二人に付き添うから」

 

「なら私も付き合ってあげるわ」

 

 蕪木が勧めて、昨日から秘書艦を勤める叢雲が名乗り出た。

 

 

「そーだね、じゃあお言葉に甘えて! さ、行こう諏訪!」

 

「え、あ、はい伊勢姉さん。失礼します、司令」

 

 伊勢に背中を押された諏訪は蕪木にそう言って、境内を後にした。

 

 勿論敷地から退出する際は鳥居を潜るとき会釈して言った。新年の挨拶から御詣りまで色んな事を知った、一日の始まりだった。

 

 

 




新年の挨拶と初詣って、こんな感じで良いですよね? 僕には自信がないですが(^_^;)

あと、新しく小説を2本連載スタートしました。うち一つは今作と同じ艦これ原作になります。

では、次回に。

オリキャラでタイタニック(WW1)を出したいけど出したいけどどうしよう?

  • 良いんじゃない?
  • ふっざけるな!
  • 追加でブリタニック(姉妹船)もオナシャス
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