艦これ×鋼鉄の咆哮~力の重さ、強さの意味~   作:東部雲

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大変遅くなってしまいました。第5話の再構成が終わったので更新です。

それはそうと、世間では色々なニュースで持ちきりですね。海自の観艦式が開催したと思ったら台風19号で中止になったり(主に災害支援に専念するため)、遠い太平洋の海底で加賀と赤城が見付かったり(こっちはあまり認知度高くないかな?)。
天皇陛下の即位礼正殿の儀では、現地で雨が止んで日差しが虹を作り出したと言うんだから驚かされました。

因みに作者はといえば、最近ようやく嫁とケッコンしました!


【挿絵表示】


改二改装してからもそうですが、海域でのレベリングの最適解を見付けるまでが非常に困難でした。今ではそれも落ち着いて、叢雲旗艦の5-3で補給艦狩りして経験値荒稼ぎしてようやくです。

前書きが長くなってしまいましたが、本編です。では、どうぞ。


第5話 南西諸島邀撃戦①

 

 

 佐世保第2鎮守府の駆逐艦白露が横須賀第7鎮守府の艦娘二人に本土近海で発生した事態を報せた後、諏訪も無線で横須賀第7鎮守府の蕪木少佐から知らされていた。

 

 

「……日本近海の、南西諸島周辺に大規模な水上打撃部隊が?」

 

 蕪木との会談の後に渡された右耳のインカムに手を添えつつ、蕪木からの報せの内容を繰り返した。

 

 

本土側(向こう)も混乱していて断片的にしか情報が掴めなかったが、間違いないようだ』

 

 蕪木からの報せに溜め息を吐きそうになるのはなんとか堪える。

 

 あの後、諏訪達第一遊撃戦隊は追撃の敵水上打撃部隊を壊滅させてから輪形陣に組み直して、日本まで撤退支援部隊を護衛する作戦を続行しようとしたときにこの事態だ。

 

 次から次に起こる緊急事態は欧州安定化作戦『ゲイルヴィムル』の延長として参加した、南進する帝国の水上打撃部隊迎撃以来だ。

 

 

「それで、他に情報は?」

 

『佐世保第1鎮守府の艦隊が敵の前衛と接触したようだ。こちらは情報が錯綜してて後の詳細は不明だが、本土防衛は心配しなくて良いかもしれないな』

 

 蕪木の言葉に、諏訪は訝しそうに眉を潜めた。

 

 

「どういうことでしょう?」

 

『国防海軍最精鋭の艦隊、並びに舞鶴、横須賀から強力な艦娘を中核とする艦隊が出撃した。こちらは明確に伝わってきた情報だから信用できるだろう』

 

「戦力に不安はないのですか?」

 

『無論、安心できる』

 

 蕪木は断言して見せた。無線から伝わってくるのが電子音声でも、彼の確信を感じさせる明確な声音だった。

 

 

『これまで発動した作戦でも、海軍を勝利に導いてきた艦娘達だ。別動隊の邀撃なら勝利は確定したようなものだろう。貴艦らは引き続き護衛を頼む』

 

「……分かりました。本土の艦娘を信じましょう。通信を終了します」

 

 蕪木との通話を終える。次は三原達に情報を共有するため、ディスプレイを展開して先程までの会話した内容を纏め始めた。

 

 

 

          ◇◇◇

 

 諏訪達が本土の事態を確認している頃、視点を変えて日本列島より南西の海域、大東諸島から東の海上。

 

 

「……ッ!!」

 

 海上を一人の少女が駆け抜けていた。黒を基調とした白露型のセーラー服だが、所々が焼け落ちていた。背部の艤装からは煙が出て擦れるような異音を漏らしている。

 

 彼女は白露型駆逐艦二番艦時雨。日本国防海軍の艦娘で佐世保第1鎮守府に所属している駆逐艦娘だ。

 

 後方からは異形の集団、深海棲艦の戦艦を中核とした水上打撃部隊、その前衛だった。砲撃を繰り返しながら追い立てている。

 

(長良達は無事に逃げ延びたかな)

 

 後ろの敵艦隊から砲撃を受けながらも、遁走する時雨は意識をここにはいない僚艦に向けていた。

 

 本来なら、あのような敵艦隊を想定して母港から時雨達の部隊が出港したわけではなかった。

 

 元々は、海上輸送路の哨戒だったのだ。

 

 日本は島嶼国家だ。国土の狭い日本列島で補えない資源を他国から輸入しなければ、国土に見合わない人口を抱える日本は干上がってしまう。

 事実、今から27年前に勃発した深海大戦1年目で孤立した日本は経済が崩壊寸前まで追い込まれたのだ。海上封鎖から半年後に現れた第一世代艦娘の救援がもう少し遅かったら、今のような爪痕を残しながらも戦災から立ち直った日本は無かっただろう。

 

 時雨とて艦娘として二度目の艦歴を得て長い。国防海軍の黎明期から在籍してるため、かれこれ20年以上になる。

 

 

「う……ッ!?」

 

 砲撃が足元すれすれに着水した。大量の水飛沫がカーテンを築き、衝撃で揺らぐ海面に視界が激しく揺れる。同時の飛散する砲弾の破片が体と艤装両方に損傷を増やし、片足が水面下に沈み始めた。

 

 

「浸水が……!? 注水をっ」

 

 浮力を維持しようと対処するが、追い討ちを掛けるように上空から敵機が機銃掃射してきた。

 

 それが致命傷となったのだろう、何発かは背部と脚の艤装に当たって損傷を増やした。そして力尽きたように足元が沈下していく。

 

(僕、沈むのかな)

 

 自分の命運も風前の灯となっても時雨は、その心中は穏やかだった。

 

 左足から沈んでいく体が半身を埋めた直後、降り注ぐ砲弾が着弾したのを最後に意識を刈り取られた。

 

 

 

          ◇◇◇

 

 海上から立ち上る黒煙が縮んでいく。その発生源である時雨は浮力を完全に失い、沈み逝こうとしていた。

 

 だがそれを、遠方から高速で接近してきた存在がそのままにはしておかなかった。

 

 

「時雨ッ!」

 

 猛烈なスピードで跳んできた体を海面に着水させ、その瞬間に大量の水飛沫を巻き上げながら叫んだ。

 

 直後、海面下に沈んでいこうとする駆逐艦娘の姿をその目で捉えた。

 

 

「沈むなッ、時雨!!」

 

 海面に手を突っ込み、轟沈寸前だった少女の体を引っ張りあげる。

 

 

「そんな……!」

 

 時雨を抱え込んだのは巫女装束の女性だった。不格好な程に巨大な主砲を背負った彼女は、絶望した表情を浮かべた。

 

 時雨は足を半ばから失っていたのだ。内側の断面が露出していて、彼女の窮状を表すように、海面は絵の具を垂らしたように染まり出血も多量だ。

 

 

「堪えなさいよッ!」

 

 左脇に重傷の駆逐艦娘を抱え、鎮守府まで撤退するべく駆け出した。来たときのような高速移動は重傷の時雨には負担が大きすぎるため、機関一杯で曳航する。

 

 だが彼女は本来、低速の戦艦だった。駆逐艦娘を曳航しながらでは更に速力は落ちる。

 当然、敵も逃がすつもりはないらしく、逃げ道を塞ぐように砲撃で妨害してくる。

 

 

「だからなんだって言うのよッ!」

 

 向かう先に落ちた砲弾が巻き上げた水飛沫の柱すら構わず、自分から飛び込んでいく。

 

 

「此方佐世保第1所属の山城! 時雨を回収したわ、増援はまだなの!?」

 

 巫女装束の女性──超弩級戦艦扶桑型二番艦山城が所属する鎮守府に無線で呼び掛ける。

 

 

『此方、臨時秘書艦の綾波です。付近の海域に到着したと、出動した艦隊から連絡が入りました。もうしばらく凌いでください』

 

「信じるわよ、その情報!」

 

 無線を切り、今の状況に集中する。

 先の高速移動もそうだが、山城は特殊な艦娘だった。ある時期を境に、とある艦娘の指導で特定の技術を取得して己の武器とした。

 

 時雨を守るべく遁走していると、山城は新たな敵影を視界に捉えた。

 

 

「前方に敵影! 回り込まれたわね……!」

 

 針路上に立ちはだかったのは深海の駆逐艦、イロハ級のロ級駆逐艦が複数だった。今の山城は速力が低下した状態にあるため、先回りされたのだろう。

 

 

「邪魔だぁ……」

 

 時雨を抱え込んだ左腕とは逆の右腕に力を込め、拳を強く握り締めた。同時にロ級達が砲撃してくる。

 

 

「どけぇーー!!」

 

 烈帛の気合いを込めて叫び、腕を横に薙いだ。

 

 轟ッ!

 瞬間的に勢い良く薙いだ右腕から空気抵抗が袖を叩く音を鳴らし、前方から飛来した砲弾を直撃コースだったものだけ殴り飛ばした。

 

 殴り飛ばした砲弾のうち一発は複数いるロ級の一隻に跳ね返り、命中して撃沈した。跳ね返った際の速度が速く、与えたダメージは駆逐艦が耐えうる火力を超えていたからだ。

 

 

『此方は舞鶴第1鎮守府所属、第二水雷戦隊旗艦神通です。交戦中の艦娘は応答願います』

 

 敵駆逐艦の砲撃を凌いでいると無線で呼び掛けられた。恐らく増援だろう。

 

 

「此方、佐世保第1の山城! 負傷した駆逐艦娘1名を曳航中、悪いけど援護頼むわ!」

 

『要請に応じます。そのまま進んでください。貴女の鎮守府から迎えの部隊が来ています』

 

「了解、ここは任せるわ!」

 

 舞鶴第一鎮守府の二水戦旗艦で神通と言えば、日本国防海軍に所属する艦娘では最強の一人だ。彼女の率いる三個駆逐隊からなる指揮下の駆逐艦娘も精強で、長時間粘ることも可能なはずだ。

 

 

「山城!」

 

「姉様、それに皆も!」

 

 前方から3隻で編成された艦隊が近付いてきた。

 

 山城と同じ巨大な砲塔を背負った艦娘、扶桑が先頭に立っていた。

 西村艦隊だ。後ろから最上、満潮が随伴している。

 

 

「──っ、時雨!」

 

 山城に抱えられたまま動く気配のない時雨を見て満潮が駆け寄ってきた。

 

 

「山城、時雨は!」

 

「足をやられてる。重症よ。今すぐ入居させないと不味いわ」

 

 山城は後方を振り返る。

 視線の先では敵艦隊の前に躍り出た水雷戦隊が突撃を仕掛けているところだった。国内最精鋭の部隊だ、そう艦隊には遅れをとらないだろう。

 

 

「最上、満潮。貴女達は時雨を曳航して。先に鎮守府に向かいなさい。出来るわね?」

 

「……ええ」

 

 満潮は真剣な表情で頷いた。一刻を争う状況なのは時雨と同様に経験が豊富な満潮としても良く解っていた。最上もそれが解ったのか頷く。

 

 

「行きなさい! 時雨を頼んだわよッ」

 

「「 了解! 」」

 

 時雨を託された二人が最大戦速で駆け出していった。本来なら低速な山城が更に速力を落としながら一人で運ぶより、高速艦の二人が運んだ方が確実に違いなかった。

 

 

「姉様」

 

「分かっているわ……山城。ここで食い止めましょう」

 

 皆まで言わなくても扶桑には察することができた。

 

 

「目標はあくまで、時雨を曳航する最上と満潮の撤退支援っ。それまで二水戦を持ちうる砲火力で援護します!」

 

 扶桑型の二人が巨大な砲塔を前方の敵艦隊に向けて指向する。

 

 

「主砲、良く狙ってッ! てぇーーッ!」

 

 山城の号令と共に、扶桑型の35.6cm45口径連装4基8門、計8基16門の主砲から雷鳴のような砲声を轟かせた。

 

 

 ────西村艦隊第2小隊(最上・満潮)、大破した時雨を曳航しながら撤退開始。

 西村艦隊第1小隊(山城・扶桑)、第2小隊の撤退支援のため、敵水上打撃部隊第1前衛艦隊と交戦────




以前投稿した回とは全く異なる内容でしたね。

実際、諏訪達第一遊撃戦隊は来ないし、それに伴って当初予定していた設定とか展開は大幅に転向したので。山城さんが薩摩さんみたいな感じになったのは物語の都合上、こうなりました。

では、次回予告です!

         ~次回予告~

佐世保第1鎮守府の時雨が轟沈寸前まで追い詰められ、山城達西村艦隊第1小隊がが敵前衛艦隊と交戦した。
一方、大東諸島より北西の海域では一隻の軽空母を中核とする艦隊が、敵主力機動部隊を捕捉していた。


「艦載機の皆ー、お仕事お仕事!」

次回、第6話 南西諸島邀撃戦②

オリキャラでタイタニック(WW1)を出したいけど出したいけどどうしよう?

  • 良いんじゃない?
  • ふっざけるな!
  • 追加でブリタニック(姉妹船)もオナシャス

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