しばらく歩くと「××駅」とかかれた看板が目につく駅に到着した。今日は日曜日のせいかあまり人は多くなく、まばらだった。私はそこの自動券売機で「○○行き190」と書かれた切符を買い天使と共に9時40分○○行きの汽車に乗り込んだ。汽車の中は携帯で何かをしている学生や小説を読んでいる女の人や自分のひざの上のかばんにうつぶせて寝ているサラリーマンなどが乗っていた。私と天使は窓際の席に座ることにした。朝はどちらかといえば窓際の席に座ることが多い。とても落ち着くし、あまり目立たないのが好きだからだ。そして朝窓から眺める景色はとても気持ち良かった。なんのへんてつもない景色だけど、私はこの景色が好きだった。窓際の席には先客がおり、私と天使はその人の真正面に座った。
私の真正面に座っている人は学生ぐらいの歳でオーディオでなにやら音楽を聴きながら携帯をつついていた。私にはあまり気づいていないようだった。私も汽車が高知に着くまでの間暇なのでバッグの中から小説を取り出しそれを読むことにした。どこまで読んでたっけ...。そんなことを考えながらしおりをはさんでいたところを開くと横から天使が顔をのぞきこんで、
「何を読んでいるの?」
と聞いてきた。私は
「ミステリー小説だよ。」
と答えると天使は
「それっておもしろいの?」
と眉をひそめながら聞いた。天使が住んでいる世界にはこんな本は置いているのだろうか。私は口元をゆるませ
「おもしろいよ。」
と答えた。
「え~?なんか文字は小さいし難しそうだし僕なら絶対読めないね。」
「そう?すごくおもしろいのに。天使はこういうの読んだことある?」
「ないね。僕の世界ではあまり書物を読むっていうことはしないんだ。あ、でもたまに人間の世界から勝手に拾ってくるやつがいて、退屈しのぎにどんなんだろうって読むやつもいるよ。まぁ僕は読まない派だけどね~。」
とくるりと一回転しながら陽気に話した。きっと私達人間と同じように読みたい人と読まない人で分かれているのだろう。私は読みかけの小説に目を戻した。するとこちらをジロジロみる視線に気がつき顔を上げると中年のサラリーマンや若い女子学生二人が小声でこちらをみつめながらヒソヒソとなにやら話していた。そういえば昨日天使が自分は幽霊のような存在であり、自分をみれるものはごくわずかな存在だ。と話しているのを思い出した。どうやらあのサラリーマンや若い学生達には私が一体誰と話しているのか不思議だったのだろう。私はしまった。と思い恥ずかしい気持ちになり、顔を隠すように本の続きを目にとおした。
私が今読んでいる小説の題名は「びっくり館の殺人」というもので綾辻行人という作家の館シリーズ第8段の作品だ。内容は主人公の僕が小さい頃に友達の住んでいるびっくり館に遊びにいくのだがそこで謎の殺人事件が起きる。その殺害の仕方やびっくり館の仕組みがまた面白くて、最後まで誰が犯人かが目が離せない、本格のミステリー小説だ。私はいままでこの人の作品を読んだことはなかったけど、これはこれでとても面白かった。この小説を読み終わったら、この人の作品を買いにまた古本屋へ買いに行こう。そう思いまた本に目を戻した。横に座っていた天使はなにもせずに座っているいるのにあきたのか、私のひざの上に移動し体を横たえてスヤスヤと眠り始めた。寝顔はさながら生まれたばかりの赤ん坊が眠っているようでかわいかった。
(なんか、癒されるな。)
フフ、と少しだけそう思い、私は汽車が目的地の場所に到着するまで天使を起こさないように気を付けながら読書に没頭した。