戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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第293話 閉ざされた心3

ノイズを撃破した響たちは少女の待つ宿泊所に帰って来ていた。

 

響「ただいまー!」

 

ガウ「がうがうー!」

 

帰って来て言う響とガウ。

 

クリス「やれやれ…手伝うって言ったそばから現れるとか、いくらなんでも空気読みすぎだろ」

 

翼「だが、この世界には装者がいないのだ。いられる間はできるだけ力にならなければな」

 

ノイズの登場にクリスは文句を言い、翼はなだめるように言う。

 

響「あれ…あの子は?」

 

ガウ「がう…?」

 

少女がいなかったことに気付いて辺りを見回した。

 

クリス「なんだ、いないのか?」

 

辺りを見回す響とガウにクリスは聞いてきた。

 

響「たたたた大変!どこか行っちゃったのかも!出かけないように言ったんだけど…」

 

翼「落ち着け。玄関の鍵は閉まっていた。部屋の中にいるんじゃないのか?」

 

クリス「窓から出られる身長でもないしな。ま、ガウみたいに巨大化できるなら話は別になるがそんな能力は無いだろうしな」

 

ガウ「がうがう、がうがうがうがう?」

 

訳:クリス、それってどういう意味?

 

少女がいないことに慌てる響にクリスと翼は落ち着かせるがガウはクリスに言われて少し不満に思う。

 

響「そっか…鍵をもってないなら玄関の鍵を閉めて出られないですもんね」

 

クリスと翼に言われて落ち着く響。

 

翼「そういうことだ」

 

響「なら、おーい。帰ってきたよー。かくれんぼしてないで出ておいで~?」

 

ガウ「がう~」

 

少女を探す響たち。

 

少女「……」

 

少女は部屋の隅っこに隠れていた。

 

そこへガウがひょっこりと現れた。

 

ガウ「がう!がうがうがう」

 

少女を見つけたガウは響たちを呼んだ。

 

響「見つけた?」

 

ガウの呼ぶ声を聞いて響たちはガウのところへ行く。

 

響「あ、いたいた」

 

少女「……」

 

響「ただいま。どうしたの、そんなところで」

 

少女「……」

 

響が優しく言うが少女は出てこなかった。

 

クリス「…………チッ!」

 

ガウ「がう?」

 

響「え、クリスちゃん?」

 

舌打ちしたクリスは響とガウを退かして少女の手を取った。

 

少女「……ッ!?」

 

クリス「んなとこいないで、こっちこいって」

 

そう言って少女を引っ張り出して響とガウのところにやった。

 

クリス「そいつと一緒にいてやれ」

 

響「え?クリス…ちゃん?」

 

クリスの言葉が分からず響は首を傾げる。

 

クリス「そいつ、自分がどこにいればいいのか分からないんだよ」

 

少女「………」

 

クリス「部屋のものに勝手に触っていいのかも、何が許されて、何が許されないのかも……だから、隅でじっとしてるだけなんだ……」

 

翼「雪音……?」

 

声が震えるクリスに翼は何かを感じていた。

 

クリス「……ッ。ちょっと出てくる」

 

そう言い残してクリスは部屋を出た。

 

響「クリスちゃん……」

 

ガウ「がう……」

 

少女「………」

 

翼「雪音の様子を見てくる。後は頼む」

 

響「あ、はい。お願いします」

 

翼もそう言い残してクリスの後を追いかけた。

 

響(そっか。クリスちゃんも昔、似たような……)

 

クリスの幼い時に受けた境遇を思い出して少女と重ねていることを察する響。

 

 

 

クリス「……」

 

部屋を出たクリスは町を歩いていた。

 

翼「雪音ー!」

 

そんなクリスを翼が追い付いてきた。

 

クリス「なんだ、先輩か」

 

翼「……大丈夫か?」

 

クリスに聞く翼。

 

翼も幼い時のクリスがどんな目に遭い、過ごしてきたかを知っているから心配になって聞いたのだ。

 

クリス「……ああ。ただ、少しだけ昔のことを思い出しただけだ……」

 

翼「似ているのか、昔の己自身と……」

 

クリス「ああ、ロクな記憶じゃないけど」

 

翼「そうか……」

 

クリス「アタシはあんな風に話せなかったわけじゃないけどな。多分、アイツもアタシと同じ目に……」

 

翼「………」

 

クリス「あの頃のアタシは近くの大人の顔色ばかり窺って、どうしたら怒られないかってばかり考えてた。部屋の隅に縮こまって、ただ息を殺して誰の邪魔にもならないようにって……」

 

人質の時の生活を思い出してクリスは手に力が入る。

 

翼「…そうか。あの少女…助けてやりたいな」

 

クリス「ああ、そうだな……」

 

翼「では、立花とガウの所へ戻ろう」

 

部屋に戻ろうと翼が言い出した時だ。

 

クリス「なあ、先輩の方はどうなんだ?」

 

翼「私…?」

 

クリス「親父さんのことだよ。並行世界とは言え、気にならないのか?こっちの先輩が今どうしているのか、とか」

 

翼「……あまり話したくないようだ」

 

クリス「それでいいのか?」

 

翼「私たちの世界とは事情が違うんだ。聞かれたくないこともあるだろう」

 

クリス「まあ、先輩がそれでいいなら……」

 

翼(日本のはシンフォギア装者はいないと言っていた。それはつまり…そういうことなのだろう)

 

シンフォギア装者がいない…つまりこの世界の自分がもういないかもしれないと思うが無いことを祈る翼だった。

 

 

 

響「静かになっちゃったね」

 

少女「……」

 

響「テレビでもみよっか?」

 

少女「…(ふるふる)」

 

響「それじゃお菓子食べる?これ美味しいよ?」

 

少女「…(ふるふる)」

 

響「なら他に何か欲しいものとかある?」

 

少女「…(ふるふる)」

 

翼とクリスがいなくなって響は少女に色々と進めるが少女は全て嫌がった。

 

因みにガウは日課の日向ぼっこに入って眠っている。

 

本人は少女と遊びたがっていたが日向ぼっこを1日でもサボれば大変なことになるので響にするように言われてしまったのだ。

 

響「……そっか。何かやりたいこととか、欲しい物とか思いついたらその時は教えてね」

 

少女「……」

 

響がそう言うと少女は抱き着いた。

 

響「じゃあ、しばらくこうしてよっか」

 

少女「……(こくり)」

 

抱き着いた少女にそう言うと少女は頷いた。

 

響(融合症例の…被検体…それってつまりこの子に無理矢理、聖遺物を埋め込んだってことだよね……あんな辛い想い……。こんな小さな子にさせるわけにはいかないよ)

 

幼い子供に聖遺物なる危ない物が埋め込まれしまっている。

 

同じ融合症例を持っていた響はあんな苦しみを味合わせたくないと真剣な顔になっていた。

 

少女「………?」

 

響「ああ、なんでもないよ。ちょっと考えごとをね。アハハハ……」

 

響(いけない。私が怖い顔してたらこの子が余計怖がっちゃうよね)

 

不思議そうに見ていた少女に響はそう言って誤魔化した。

 

すると通信機からアラートが鳴った。

 

響「二課からの通信?」

 

通信機を出して出る。

 

響「はい、こちら立花 響です」

 

八紘『近郊にオートマシンが出現したようだ。…対応をお願いできないだろうか』

 

響「はい!もちろんです!!」

 

八紘『助かる。そちらへヘリを向かわせている。合流でき次第、それに乗ってくれ』

 

響「分かりました!」

 

八紘からオートマシンが現れたことを聞く。

 

翼「立花、連絡は入ってるな?」

 

そこへ翼たちが帰宅してきた。

 

響「はい、今さっき!!」

 

クリス「ならさっさと行くぞ!ガウ、起きろ!!」

 

ガウ「くあぁ~…がう?」

 

クリスの声に叩き起こされガウはのそりと起き上がった。

 

翼「オートマシンが出た!迎撃に行くぞ!!」

 

ガウ「がうがう!!」

 

オートマシンが出たと聞いてガウは直ぐに目を覚ましてヤル気満々になる。

 

少女「………ッ!」

 

響と離れたくないのか少女はギュッと掴んだ。

 

響「あ……大丈夫。ここにいれば全然怖くないから。安心して。ね?」

 

抱き着いたままの少女に響は言う。

 

少女「……(ふるふる)」

 

しかし少女は首を横に振って嫌がる。

 

響「すぐにちゃんと戻ってくるから」

 

少女「…………(こくり)」

 

響に言われて少女は頷くと離れた。

 

響「……ありがとう」

 

少し少女を1人にするのに戸惑いがある響だがそう言う。

 

ガウ「がうがう。がうー」

 

そんな響を察したのかガウは何かを出して少女に渡してきた。

 

少女「……?」

 

ガウから受け取った少女は首を傾げる。

 

渡されたのは黄色い石で、中には小さな牙か爪が入っていた。

 

翼「それは…ゴジラザウルスの琥珀……」

 

クリス「それってお前の大事な物じゃないのかよ?」

 

ガウが少女に渡したのは響たちの世界にて発見されたゴジラザウルスの体の一部の入った琥珀で、いくつかガウとリルにお守り代わりに貰っていたのだ。

 

ガウ「がうがうがう」

 

少女にお守りとして持っていてほしいと言うようにガウは鳴く。

 

少女「………(こくり)」

 

ガウの言葉が分かったのか少女は頷いた。

 

響「それじゃ、ちょっと行ってくるね」

 

頷いた少女を見て響は言う。

 

クリス「急げッ!外に迎えのヘリが来てるぞ!!」

 

響「はい!」

 

迎えのヘリに4人は向かい乗り込んで現場に向かうのだった。

 

 

 

現場に着いた響たちはギアを纏い町で暴れていたオートマシンと対峙していたが苦戦していた。

 

翼「はあーーーーーー!!」

 

刀型のアームドギアでオートマシンを斬り付けるが無傷であった。

 

翼「どういうことだ、刃が通らない?」

 

刃が通らないことに翼は驚く。

 

別方向からクリスが銃撃するがオートマシンの装甲に弾かれた。

 

クリス「弾もほとんど装甲で弾かれる。前より堅くなってないか?」

 

響「やっぱり…この前より強い!」

 

ガウ「がう!」

 

前より強くなっているオートマシンに警戒する。

 

翼「しかし、幸いにして動きは単調だ。小手先の技が聞かぬというなら!」

 

クリス「ああ、でっかいの1発お見舞いするだけだ!!」

 

そう言って翼の『蒼ノ一閃』と同時にクリスが『BILLION MAIDEN』を繰り出した。

 

蒼ノ一閃とBILLION MAIDENを喰らいオートマシンの装甲は耐えられずバラバラになって破壊された。

 

クリス「はっ。どんなもんだ」

 

翼「なんとか片付いたようだな」

 

クリス「だけど、まさかこの後も更に強くなるんじゃないだろうな?」

 

翼「可能性としてはあり得るな。何者かが適宜(てきぎ)強化しているのか。自律的に強化されているのか……なんにしても難敵だな」

 

響「それじゃ、どうやって戦えば」

 

翼「私たちの手に負えなくなる前に、敵の正体を突き止めるしかないだろうな」

 

響「敵の正体……」

 

翼「二課で聞いた話だとかなり前から出現しているようだ。容易にはいかないだろが……ともあれ本部に撤収しよう」

 

クリス「あのチビも待ってるだろ。早く引き上げるぞ」

 

ガウ「がう」

 

響「うん。そうだね」

 

少女の元へ帰ろうとしたその時だ、響たちの足元が銃撃され火花が散った。

 

クリス「な、何だ!?」

 

銃撃した方を見ると4人の人物たちが歩いてきていた。

 

?「やっと会えたな、シンフォギア」

 

響たちから少し離れた場所で止まるとリーダー各の男性が言う。

 

翼「何者だ!?」

 

?「俺たちはガスドリンカーズ。宇宙の犯罪集団だ」

 

リーダー各の男性がそう言うと4人は人間の姿から人型の機械の体になった。

 

ヴォルガー「俺の名はアルゴル星人のヴォルガー」

 

ブランデル「同じくアルゴル星人のブランデル」

 

ジーン「同じくアルゴル星人のジーン」

 

ウインスキー「同じくアルゴル星人のウインスキー」

 

リーダー各で胸のタトゥーレリーフはスカルの『アルゴル星人 ヴォルガー』。

 

大柄で胸のタトゥーレリーフはトカゲの『アルゴル星人 ブランデル』。

 

女性で胸のタトゥーレリーフはサソリの『アルゴル星人 ジーン』。

 

スリムな体型で胸のタトゥーレリーフはピラニア『アルゴル星人 ウインスキー』の4人組、『宇宙犯罪組織 ガスドリンカーズ』は名乗る。

 

響「アルゴル星人ってことは宇宙人!?」

 

ガウ「ガルルルルル!!」

 

ガスドリンカーズに構える響たち。

 

ヴォルガー「俺たちはある小娘を捜していてな。悪いが知ってるなら寄越せ。そうすれば命だけは助けてやる」

 

ヴォルガーの言う小娘はあの少女だと察する響たち。

 

翼「何のことか分からないな!!」

 

ヴォルガー「なら、こっちで勝手に捜すだけだ」

 

そうヴォルガーは言うとガスドリンカーズのメンバーはそれぞれの武器を出した。

 

ブランデル「喰らえ!!」

 

最初の開幕1発はブランデルの大型のバズーカ砲『リザードバズーカ』の一閃から始まった。

 

リザードバズーカを回避して響たちはガスドリンカーズに向かって行く。

 

ウインスキー「ひゃっはー!!」

 

翼「くっ!!」

 

ウインスキーは大振りの刃物『ピラニアナイフ』で翼を斬りかかるがアームドギアで防がれる。

 

ジーン「はああああああああっ!!」

 

ジーンは伸縮自在の鞭『スコーピオンビュート』でガウを打とうとする。

 

ガウ「がう!!」

 

ガウは尻尾でスコーピオンビュートを絡ませて綱引きになる。

 

ブランデル「ふんっ!!」

 

ブランデルはリザードバズーカで砲撃を加える。

 

クリス「んなの当たるか!」

 

砲撃を回避しながらクリスはクロスボウ型のアームドギアで攻撃する。

 

ヴォルガー「ダブルサタンマグナム!!」

 

ヴォルガーは二丁の拳銃『ダブルサタンマグナム』を出して響を銃撃する。

 

響「うおぉぉぉぉおおおおおおおおっ!!」

 

対する響はブーストしてダブルサタンマグナムの銃撃を回避しながらヴォルガーに向かって行く。

 

響の拳がヴォルガーの腹部を捉えかけた時だ。

 

響の拳をヴォルガーはダブルサタンマグナムの片方で受け止めた。

 

響「!?」

 

ヴォルガー「あまいんだよ。そらっ!!」

 

響「あぐっ!?」

 

響の拳を受け止めたヴォルガーはもう片方のダブルサタンマグナムの柄の部分で響の首を殴ると下から蹴りを叩き込み、最後に回し蹴りを叩き込んで吹き飛ばした。

 

響「かはっ…い、今のは…格闘…技…!?」

 

弦十郎に鍛えてもらっている響はヴォルガーが繰り出したのが格闘技だと直ぐに気付いた。

 

ヴォルガー「その通り。今のはジャアクンドー、俺の得意技だ」

 

二丁拳丁を用いる悪の格闘技『ジャアクンドー』を説明しながらヴォルガーはダブルサタンマグナムの銃口を響に向ける。

 

ヴォルガー「あばよ」

 

ヴォルガーがダブルサタンマグナムの引き金に指をかけた。

 

ガウ「がう!?がうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

ゴジラ「ゴガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

響の危険を察知してガウは絡ませていたジーンのスコーピオンビュートを噛むと力任せに千切り、雄叫びを上げてゴジラになった。

 

ヴォルガー「なんだと!?」

 

ゴジラの姿にヴォルガーは驚いてダブルサタンマグナムを響から離す。

 

ゴジラ「ゴガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

ヴォルガーに向かって放射火炎を放つ。

 

ヴォルガー「チッ!!」

 

放射火炎を後ろへ飛んで回避する。

 

ヴォルガー「コイツは面白くなってきたな。今回はそいつに免じて引き上げてやる。あばよ」

 

着地したヴォルガーは言うとダブルサタンマグナムを下に向けて発砲、爆煙を起こして姿を消していった。

 

残りのジーン、ウインスキーはブランデルと合流するとリザードバズーカの砲撃でビルを破壊してその爆煙と埃で姿を眩ましたのだった。


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