戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

406 / 1218
第295話 コミュニケーション1

弦十郎「融合症例…まさか響くん以外にもそんなことがあるとはな」

 

帰還した響たちから並行世界の事情を聞いた弦十郎たちは驚きを隠せなかった。

 

マリア「珍しく塞ぎ込んでるから何かと思ったけど…なるほどね」

 

切歌「それで、その子はどうしたんデスか?」

 

響「向こうの二課で詳しく検査しながら、今は私たちと一緒に過ごしてるんだ。こっちに来てる間はガウくんが見てくれてる」

 

クリス「ガウがいるから不安は無いが、検査か……嫌なことされなきゃいいけどな…」

 

もしものためにガウを置いてきたが、心配であった。

 

翼「並行世界とはいえ、お父様のやることだ。そんなことはないだろう。それに何かあればガウが黙っているわけがない」

 

クリス「そうだな。ならまあ、いいんだけどさ……」

 

仮に少女が酷い目に遭うことがあればガウが黙っていない、それを聞いてクリスは安心はするがまだ心配で仕方なかった。

 

響「でも…あの子のこと、どうしたらいいんだろう…」

 

翼「どう、とは?」

 

響「融合症例のことです。私の時は未来の神獣鏡のおかげで助かりました」

 

翼「ああ、そうだな」

 

響がガングニールとの融合症例に侵された時は未来の神獣鏡のお陰で一命をとりとめることが出来た。

 

響「あの時の私と同じように助けてあげたりできないのかなって……」

 

エルフナイン「以前の響さんの時とは大きく事情が異なるので難しいかもしれません」

 

自分が助けられたように、少女も同じやり方で救えないかと言う響にエルフナインが言ってきた。

 

クリス「事情が異なる?同じ融合症例だろ?」

 

エルフナイン「同じであっても経緯や要因が異なるので一概に対処法も同じとはならないかと思います」

 

そう、例え同じ病でも発祥する原因は違えば対処の仕方も変わるのだ。

 

響「そう、なんだ……」

 

エルフナインに言われて響は落ち込む。

 

クリス「だけど試す価値はあるんじゃないのか?あいつにとって身体に聖遺物が埋まってていいことなんてないだろ」

 

エルフナイン「もし聖遺物自体が既に身体機能を維持する必須要素の一部になってしまっていたら…」

 

マリア「下手に取り除けば命にかかわるかもしれない、そういうことね」

 

響「それじゃ、治してあげることはできなのかな……」

 

クリス「くそ…」

 

少女を助けられないかもしれないと言われてるのと同義

 

ユウコ「エルフナインさん」

 

エルフナイン「あ、すみません!あくまで可能性の1つです」

 

助手のユウコに言われてエルフナインは慌てて付け足した。

 

ユウコ「ですので今は浸食の進行速度に注意しながら治療方法を捜すしかないかと思います」

 

響「………」

 

ユウコの言葉に響はさらに落ち込んでしまう。

 

弦十郎「そう落ち込むな、響くん」

 

落ち込む響に弦十郎が肩を叩いてきた。

 

響「師匠……」

 

弦十郎「今、その少女にとって1番の理解者はおそらく響くんとガウだ。少女を救いたいと思うのならば、そんな顔をせず、必ず治ると信じて笑って少女に接してあげるのが大切だろう。ガウもそうしているハズだ」

 

響「治ると信じて…」

 

翼「確かに立花がそんな顔をしていたら余計あの子を不安にさせてしまうし、ガウも心配してしまうぞ」

 

響「……分かりました。私、絶対に信じてるって信じてます!だから今はあの子を笑顔になってもらうために私に出来ることをしようと思います!」

 

暗い顔する響は響らしくない…いつか言われた言葉を思い出して響は少女が治ると言うことを信じる。

 

弦十郎「それでこそ。響くんだ。それじゃ、お前たち。また近い内に向こうの世界に渡ってもらうことになからな。それまで各自、英気を養っておいてくれ」

 

翼「了解しました」

 

響「はい、師匠!」

 

弦十郎に言われてそれぞれが発令室を出ていく。

 

 

 

未来とリルの待っているリディアンの寮に帰って来た響は晩御飯のあと、未来に向こうの世界でのことを話していた。

 

響「っていうわけでさ。その子、何を聞いてもじっと(うつむ)いたままで…私、何をしてあげたらいいのか分からなくて」

 

膝の上でぐっすり眠っているリルの頭を撫でながら向こうの世界の少女のことを話して相談する。

 

未来「そうなんだ……」

 

響「せめて、あの子が何を考えているのかが分かると良いんだけどね……。はあ…ホント、どうすればいいんだろう………」

 

未来「それなら、筆談とかしたらどうかな?」

 

響「筆談って…あの文字でお話するやつ?」

 

未来「うん、そう。声が出せなくても文字ならいけるかもしれないよ。ガウくんやリルくんだってジェスチャーとかして自分の意志を伝えて来るみたいに」

 

ガウやリルは言葉が喋れないのでジェスチャーなどでコミュニケーションをとることがあるのを未来は言う。

 

響「なるほど。そっかー…あ、でもあの子。外国の子みたいだけど日本語書けるかな?まだ小さいし。なんかずっと施設に閉じ込められてたみたいなんだよね。そもそも文字が書けないかも…?」

 

少女は外人であるかもしれないのを思い出して響は自信をなくす。

 

未来「もう、響ってば。普段は大胆なのに変なところで臆病なんだから」

 

頬を含まらせて未来は言う。

 

響「未来?」

 

未来「もし文字が書けなかったとしても。それを教えることでコミュニケーションをとることがで来るんじゃないの?」

 

響「そう、かな?」

 

未来「ダメで元々でしょ?始める前から手を差し伸べるを諦めるなんて響らしくない」

 

響「うん…そうだね。やってみるよ」

 

未来「それでこそ響だよ」

 

未来に言われて響は自信を取り戻した。

 

響「ありがとうね、未来。いやー、やっぱり未来は頼りになるなー」

 

未来「フフ…響の役に立てるなら私も嬉しいな。でも…そうか。あの時の響と同じ症状なんだね」

 

話を聞いて少女の症状が響と同じだと聞いて未来は改めて言う。

 

響「うん…」

 

未来「それは…心配だね」

 

響「そうなんだよね。それに今も寂しがってないかな。あの子、私とガウくん以外の他の人にあまり懐いてないから」

 

現在、少女は響とガウには懐いているが他の人にはあまり近付いたりしないのだ。

 

未来「フフ…なんだかそれを聞いてると響とガウくん、お姉さんとお兄さんっていうか初めて娘ができたお母さんとお父さんみたい」

 

響「え?本当に?」

 

未来「うん。特に今のは初めてお父さんと2人っきりにして離れてオロオロしてる子離れできないお母さんって感じかな」

 

響「え、なにその例え。凄い具体的」

 

未来「とにかく。心配するのはいいけど、ここで心配しすぎても意味ないよ?弦十郎さんにもちゃんと休むように言われたんでしょ?」

 

響「あ、うん」

 

未来「また向こうに行くまでの間に、身体も心もちゃんと休めておかないとダメなんだからね?」

 

響「そうだね……ありがと、未来」

 

アドバンスを貰って響は笑顔でそう言うのだった。

 

 

 

少女のいる並行世界にあるガスドリンカーズが根城にしている施設。

 

その施設にある巨大なドッグのような場所の一角が歪んでいた。

 

円上に波打つ歪みはやがて収まっていき、代わりに巨大な影が現れた。

 

上半身は人型で、下半身がキャタピラの車体になっているロボットであった。

 

ヴォルガー「待っていたぞ、キラータンク」

 

ロボット―『キラータンク』を見上げながらヴォルガーは笑っていた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。