戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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第300話 ヤントラ・サルヴァスパ2

響「ふう。今日は疲れちゃったねー」

 

事件の報告のために二課へ来た響たち。

 

シャロン「………」

 

響「また今度、お買い物行こうね」

 

シャロン「……(こくん)」

 

響の言葉にシャロンは頷くが表情は暗かった。

 

響「……もしかして、ガウくんが心配?」

 

シャロン「……(こく)」

 

そう、先の戦いでオートマシンから響とシャロンを庇ったガウは激しく叩き付けられたために精密検査を受けているのだ。

 

響「大丈夫だよ。ガウくんは怪獣王って言われてるからあれくらいの怪我で死んだりしないよ。それにシャロンちゃんがそんなに暗かったらガウくんも心配しちゃうよ。だから暗くならないで」

 

シャロン「……(こくり)」

 

響に言われてシャロンは頷いた。

 

シャロン「………ッ!」

 

しばらくしてシャロンは発令室前でシャロンは止まった。

 

響「どうしたの?」

 

シャロン「(ふるふる)」

 

響が先に行こうと促すがシャロンは首を横に振って嫌がる。

 

翼「先に行くのを嫌がっているのか?」

 

クリス「どうしたんだ、急に」

 

響「震えてる……怖いの?」

 

シャロンが震えているのを見て心配そうにする。

 

翼「……仕方ない。私と雪音だけで報告に行くとしよう」

 

クリス「ガウと合流して先に部屋に戻ってろ。チビのこと頼んだぞ」

 

響「うん……」

 

シャロン「…………」

 

翼とクリスに言われて響はシャロンを連れてその場を離れる。

 

 

 

翼「失礼します」

 

八紘「ああ、今日もご苦労だった」

 

オズワルド「ほう……これはこれは」

 

響とシャロンが離れたのを見送って翼とクリスが発令室に入ると八紘の他にもオズワルドがいた。

 

翼「こちらの方は?」

 

八紘「彼はF.I.S.の米国特殊研究機関、NEXTの所長のオズワルド氏だ」

 

オズワルド「オズワルドです。以後、お見知りおきを、お嬢さんがた」

 

丁寧にオズワルドは自己紹介する。

 

翼「風鳴 翼です」

 

オズワルド「ほう?確か君は八紘のお嬢さんじゃないか。確かこんな小さい頃の写真を見せてもらったことがあるよ」

 

翼「……そうですか」

 

翼(それはこの世界の私のなのだろうが……説明すると面倒だな)

 

言われた翼は自身がこの世界の翼ではないと説明したかったが相手はF.I.S.、面倒を避けるために話さなかった。

 

オズワルド「なるほど、彼女らがの本政府の機密ということか。全く、隠し事が上手いな、相変わらず」

 

翼(どうやらガウのことは知らないようだな)

 

シンフォギアのことは知っていてもガウのことを知らないようで八紘が話していないことを察する。

 

八紘「そんなことはないさ」

 

オズワルド「いやいや、自分の娘を鍛え上げていたとは。やはり君とは昔から感性が似ているな」

 

八紘「それよりも、そろそろ要件を聞きたいんだが」

 

話しているオズワルドに八紘は本題を聞く。

 

オズワルド「ああ、そうそう。忘れていたよ。人を捜しているんだが知らないか。これくらいの少女だ。私の娘なんだが……」

 

翼(娘だと?)

 

翼「それなら……」

 

クリス「知らねーな、他をあたれよ、おっさん」

 

翼(雪音?)

 

オズワルドが捜している娘がシャロンかもしれないと話しかけた翼をクリスが言って妨げた。

 

オズワルド「品のないお嬢さんだ。もっと言葉遣いを気を付けた方が良い」

 

クリス「あんたには関係ねーだろ」

 

言葉遣いを言われてクリスは素っ気なく言う。

 

オズワルド「ふむ。もっともだ。八紘、君は知らないかね?」

 

八紘「自身の娘が行方不明ということなら駆け込む先は警察だろう。どうして私に聞くんだ?」

 

オズワルド「……確かにそうだな。いや、忘れてくれ」

 

八紘「わざわざ訪ねて来ておいて、用件はそれだけかね?」

 

オズワルド「まあ鏡の所は、かな。近くまで寄らせてもらうかもしれないがね」

 

八紘「アポイントは早めに取ってもらいたいものだな。こう見えて、こちらもそれねりに多忙でね」

 

オズワルド「覚えておくとしよう」

 

そう言ってオズワルドは発令室を出ていくのだった。

 

 

 

クリス「戻ったぞ」

 

翼「あの子は大丈夫か?」

 

八紘に報告を終えた翼とクリスは響たちの待っている部屋に帰って来た。

 

響「う、うん。さっきよりは大分落ち着いたけど」

 

聞かれた響はシャロンを見る。

 

ガウ「がうがう……」

 

シャロン「………」

 

ガウが心配そうに怯えているシャロンと抱き着いていた。

 

翼「まだ顔色が悪いな……」

 

怯えているシャロンを見て翼は言う。

 

クリス「やっぱりな」

 

クリスは怯えているシャロンを見て何かを確信した。

 

響「やっぱりって?」

 

クリス「なあ先輩、これでもあのおっさんにこいつを渡すのか?」

 

響の問いをスルーしてクリスはオズワルドのことを翼に言う。

 

翼「まさか…この子が父親に恐怖を感じていた、とは……」

 

シャロンが怯えている理由が父親であるオズワルドだと察して翼は驚愕する。

 

クリス「そんなの、こいつに会った時からわかってたろ。父親かなんかしらないが。こいつの身体を実験道具にしたF.I.S.の人間だぞ」

 

翼「先ほどのあの者が元凶…か。確かに娘が行方不明だというのに他人事のようだった……」

 

響「あの者って……それに父親って、どういうことですか?」

 

話が付いていけない響は2人に聞く。

 

翼「ああ、さきほど二課に来客があったんだ。F.I.S.のNEXTという組織の所長がな。名前は確か、オズワルドと言ったか。どうやらこの子の父親で、彼女を捜していると」

 

シャロン「………!!」

 

ガウ「がうがう?」

 

オズワルドの名前を聞いてシャロンは更に怯えだした。

 

クリス「見ろ。名前を聞いただけでこの怯えようだ」

 

翼「ああ、つまりはこの子の様子はその者が原因だということだな。だが、まさか我が子を実験台になど…信じたくはなかったが……」

 

響「シャロンちゃんの…お父さんが……?」

 

オズワルドがシャロンに聖遺物を埋め込んだ張本人だと聞かされ響の拳を強く握った。

 

響「酷い…そんなの、許さない!!」

 

ガウ「がうがう!!」

 

いくら何でも娘にこんな仕打ちをするなんてっと響とガウは言う。

 

シャロン「ッ!?」

 

2人の怒鳴り声にシャロンは驚く。

 

響「あ。ごめんね、大丈夫だから」

 

響(またシャロンちゃんを怖がらせて…)

 

響「大丈夫……私たちは、シャロンちゃんの味方だよ。だからそんな怖がらないで、ね?」

 

シャロン「………」

 

響に言われてシャロンはガウと響に抱きついて恐怖心を紛らわそうとする。

 

 

 

八紘「……ふむ」

 

翼とクリスから報告を聞いた八紘は1人、発令室で考えていた。

 

八紘(シャロンという少女の聖遺物が発動し、立花くんのギアが変化した…『ヤントラ・サルヴァスパ』はあらゆる機械装置を操作できるという聖遺物。シンフォギアを一種の機械と認識したために起きた変化と言ったとこか…その力が、彼の暴威なるオートマシンとガスドリンカーズの巨大兵器、怪重機すら凌駕するとはな。そのこと自体は、我々にとって暗闇の中に射した一筋の光明であると言えよう。しかし、まさか使用することは出来ないと思っていた『ヤントラ・サルヴァスパ』を、このような形で……それに…オズワルドの言っていた鍵とはなんなのか。そして、オートマシンとガスドリンカーズは何故にあの少女を狙ったのか……まさか!?)

 

八紘「いや、まだそうと決まったわけではない…オズワルド…お前は一体何を識り、何を隠しているというのだ?頼むから、友人として、私を幻滅させないでくれ」

 

オズワルドが何をしようとしているのかと八紘は勘づきかけるが友人として無いだろうと無理矢理納得させる。

 

 

 

オズワルド「フフ……」

 

日本にあるF.I.S.の研究所にオズワルドはあるデータを見て笑っていた。

 

そんなオズワルドにある人物が歩いてきた―ヴォルガーだ。

 

ヴォルガー「上機嫌だな。オズワルド」

 

オズワルドにヴォルガーは言う。

 

オズワルド「これが笑っていられるか。これを見ろ」

 

親しげにオズワルドはヴォルガーにデータを見せた。

 

ヴォルガー「ほう、こいつは…」

 

データを見てヴォルガーは呟く。

 

オズワルド「予想外の反応を見せたものだ」

 

ヴォクシー「シャロンの脱走でこれまでかと思ったが、とんんだ奇貨だな」

 

オズワルド「ああ、まさにセレンディピティだ。装者、怪獣。それに、あのシンフォギア…これは想定以上の収穫を得ることができるやもしれん」

 

ヴォルガー「そいつはいい。ならもっと鍵になるように熟成させないとな」

 

オズワルド「ああ。仮初に揺籠に包まれつつ、な……フフ…」

 

ヴォルガー「ククク…」

 

ヴォルガー(ふん。そのままいい気でいろ。もうすぐ部下どもに取りに行かせたあれが来る。その時までせいぜい楽しみな。ククク……)

 

切り札を隠しているヴォルガーは内心、見下しながらオズワルドを見ていたのだった。


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