戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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米国・ロスアラモス研究所

アメリカ最大の聖遺物を研究するロスアラモス研究所ではある実験が開始されようとしていた。

リーダー格「崩れ落ちた骸に用はない。必要なのは先史文明期の遺産であるこの腕輪…」

腕輪を見ながらリーダー格の研究者が言う。

腕輪は聖遺物を起動させるに用いる装置に設置されていた。

研究者B「起動実験の準備完了しました!」

装置を起動させる準備を整えた研究者が言う。

研究者A「我が国の成り立ちは人が神秘に満ちた時代からの独立に端を発している。終わらせるぞ神代!叡智の輝きで人の未来を照らすのはアメリカの使命なのだ!」

そう言った瞬間、爆発が起き、資材や壁、天井、人を吹き飛ばし、辺りを火炎に包まれ、崩れた。


第423話 地獄で極楽

アナウンサー《テロリストに仕掛けられた爆弾により10万人収容可能なコンサート会場は崩壊。しかし、たまたま地底にいた怪獣軍団総大将・怪獣王 ゴジラにより約4万人の一般人が助けられました。怪獣王 ゴジラは爆発により皮膚に掠り傷を負うだけで済んでおり…》

 

響と未来とガウとリルが住んでいるリディアンの寮にあるテレビで昨日のことが流れていた。

 

シンフォギアやパヴァリア光明結社のことは関係者以外には話せないため、日本政府により情報操作が行われ、昨日の襲撃はテロリストによる爆破テロとして報道されていた。

 

響「うん。そうだよ。私は全然へいきへっちゃら!」

 

窓際で響が電話していた。

 

かつてあったツヴァイウイングのコンサートでのことを心配して家族(たぶん母親)が電話してきたのだ。

 

未来「おじさんとおばさん達結局まだ一緒に暮らしてないの?」

 

自身の膝の上でスヤスヤと眠っているリルの頭を撫でながらいまだ別居中らしい立花家の事情を聞く未来。

 

響「時々一緒、だいたい別々、って感じかな」

 

本当は一緒に暮らしたいのだがあの時のツヴァイウイングのコンサートでの事件がきっかけで家庭はボロボロにされてしまった。

 

だから、わだかまりがいまだに消えずギクシャクして別居しているのだ。

 

響「何年もほったらかしにしてきたわだかまりは簡単にはなくならないしお互いうまく伝えられない想いもあるみたいだし…」

 

父と母の心境を察して響は言う。

 

未来「うん…あるかもね。うまく伝えられない想いって。誰にでも」

 

リルの眠ってる顔を見ながら未来もあの時のコンサートのことを思い出していた。

 

 

 

ガウ「がうがうー!!」

 

響「へぶっ!?」

 

S.O.N.G.本部内にある医務室に響が入ると首筋にガーゼを貼り、右腕に血の入った点滴を射たれたガウが飛び付いてきた。

 

響「ガウくん!それにマリアさん!もういいんですか?」

 

ガウを見て、そのあと起き上がってベッドに座っているマリアを見て響は聞く。

 

ガウ「がう!」

 

マリア「えぇ、私とガウはピンシャン。それよりも…」

 

隣のベッドで眠っている翼に視線を移す。

 

響「翼さん…」

 

ガウを降ろして翼を見る。

 

緒川「脳波に乱れがあるものの身体機能に異常は見られません。ですが…」

 

クリス「悪夢を超える現実にまるで意識が目覚める事を拒んでるみたいだ」

 

眠り続けている翼を見て緒川とクリスは言う。

 

切歌「無理もないデス。だって…あんな…」

 

ガウ「がう……」

 

目の前で人が殺されたことを言う切歌とガウ。

 

調「…解体された結社残党の仕業、と言うには規模も被害も大きすぎないかな?ガウくんが苦戦するくらい強力なノイズ怪獣を複数持ってるみたいだし」

 

今までの残党はアルカ・ノイズを出すのが精一杯で今回のようにかつてのパヴァリア光明結社が使用したノイズ怪獣を使役していること事態が珍しかったからだ。

 

それもガウが倒せず、逆にダメージを残すほどの強力なノイズ怪獣ならば尚更である。

 

緒川「何者かの手引き…たとえば強力な支援組織の可能性も…あるいは…」

 

調の問いに緒川はそう言う。

 

 

 

ミラアルク「あざまーす」

 

とある埠頭にてミラアルクとエルザは黒服の人物2人からアタッシュケースを受け取っていた。

 

エルザ「確かに受け取ったであります。受領のサインは必要でありますか?」

 

黒服A「いや…上からの指示はここまでだ。俺達はすぐに戻らなければ…」

 

エルザの問いに黒服の1人が少し警戒しながら言う。

 

ミラアルク「別に生まれた時からの怪物ってわけじゃないんだぜ?取って食ったりなんてするもんか」

 

エルザ「こんな体でも私めらは人間…過度に怯える必要…がううう…!」

 

警戒している黒服の人物たちにミラアルクとエルザは言っているとエルザが急に威嚇しだした。

 

そしてコンテナの隙間を睨んだ。

 

不良A「モロバレ!」

 

不良B「逃げるべ~!」

 

コンテナには不良3人がおり、エルザに気付かれて急いで逃げ始めた。

 

黒服A「まずい!」

 

黒服B「見られた!早く連中を!」

 

目撃されて2人が言って振り向くとすでにミラアルクとエルザはおらず、逃げる不良たちをアルカ・ノイズを引き連れて追跡していた。

 

黒服A「行ったか…」

 

黒服B「どうせ奴等は消耗品。尻ぬぐいくらいには役に立ってもらおう」

 

そう言って黒服の人物2人はその場を離れていくのだった。

 

 

 

藤尭「湾岸埠頭付近にアルカ・ノイズの反応を検知!」

 

友里「防犯カメラからの映像にパヴァリア光明結社の残党も確認しています!」

 

アルカ・ノイズの反応とミラアルクとエルザの映った防犯カメラの映像によりS.O.N.G.の知る事態となった。

 

 

 

不良A「うわっ!?」

 

カスタムスクーターで逃げていたがアルカ・ノイズによりスクーターを破壊され投げ出される不良。

 

すでに仲間はアルカ・ノイズにより殺されてしまっている。

 

そんな不良にミラアルクとエルザが前に来た。

 

不良A「お前らが仲間を…」

 

エルザ「気合の入った運転技術でありました」

 

ミラアルク「だけど赤旗振らせてもらうぜ」

 

一応は誉めておきながら不良を殺害しようとする2人。

 

不良A「嫌だ~!神様!天使様!!」

 

不良が叫んだ時だった。

 

クリス「Killter Ichaival tron…」

 

歌が聞こえて、クリスと響、ガウが降下してきた。

 

クリス「バン!」

 

ギアを纏って着地したクリスはリボルバー型にしたアームドギアでアルカ・ノイズを撃ち抜く。

 

玉がなくなれば新たに弾倉を出して空となった弾倉と交換して撃ち抜く。

 

また空となった弾倉を交換しようとした時、左右から2体のアルカ・ノイズが攻めかかってきた。

 

反応が遅れるクリス。

 

その時、響の拳とガウの尻尾がアルカ・ノイズ2体をぶち抜いた。

 

不良A「天使だ!ここは地獄で極楽だ~!」

 

そう言っている不良の背後に武将型のアルカ・ノイズが斬りかかる。

 

響「そういうのいいから早く逃げて!因みに天使って言うなら私は未来とガウくんとリルくんだと思う!」

 

斬りかかったアルカ・ノイズを響がぶち抜いて言う。

 

ガウ「がうがうがう!?」

 

訳:戦闘中に何を言ってるの!?

 

歌唱中でツッコミが入れられないクリスの代わりにツッコミを入れるガウ。

 

ミラアルク「邪魔はさせないぜ!」

 

両腕で翼を纏わせて豪腕にしたミラアルクが響に攻めかかってきた。

 

響(正面きっての力比べ…こんな時…)

 

正面での力比べで響は互角であると悟り思う。

 

ミラアルク「わかるぜ。今イグナイトモジュールがあればって考えてるんだろ?」

 

響「!?」

 

ミラアルクの言葉に響は驚く。

 

ミラアルク「決戦機能を失って戦力ダウンしたって調べはついてるんだぜ!」

 

かつての決戦機能"イグナイトモジュール"は聖遺物"魔剣 ダイスレイフ"を用いてシンフォギアの能力を底上げする機能だった。

 

しかし、かつての戦いにおいてエクスドライブが使用できない状況下でアダムを撃破すべく、フォニックゲイン由来ではない賢者の石のエネルギーを用いた"S2CA・ヘキサコンバージョン"を発動させるためにダインスレイフをバイパスとして利用、焼却し、最終抜剣(ラストイグニッション)を敢行したため、システムの核であるダインスレイフを喪失したのである。

 

響「だからって負けるわけには…!」

 

イグナイトモジュール無しでも負けるわけにはいかないと響は気合いを入れる。

 

そんな響にミラアルクは翼にしたのと同じステンドグラスの能力を発動させる。

 

響「たぁっ!」

 

だが響には効かないのかすぐさま蹴りを入れてきた。

 

当たる前にミラアルクは空へ引く。

 

響「何!?今のは…」

 

ミラアルクの能力により違和感を感じた響は顔を振りながら言う。

 

ミラアルク「さすがに虚を突かないと目くらまし程度か!」

 

残念そうにミラアルクは言う。

 

エルザ「ゴジラ…よくもあの時、私の初めてを…屈辱を晴らすであります!!」

 

降りてきたガウを見てエルザは怒りながら『テール・アタッチメント』を装着、拳を放った。

 

ガウ「がうがう~!?」

 

訳:何の話~!?

 

片やガウは何でエルザが怒っているのか分からずに攻撃を回避する。

 

エルザ「とぼけるなであります!あの米国空母での戦闘で…どさくさに紛れて乙女の純情を奪ったでないですか!!」

 

ガウ「がうがう…?」

 

訳:あの時…?

 

ポクポク…チーン!

 

ガウ「がうがうがう―!!!!」

 

訳:あの時かー!!!!

 

エルザに言われてガウは思い出した。

 

それは米国最新鋭空母『トーマス・ホイットモア』でのことだ。

 

エルザの放ったノイズ怪獣、ノイズギャビッシュを撃破して調たちを探して艦内に入ったガウだが突如床が崩落して落ちてしまった。

 

落ちた先にエルザがおり、乗っかる形になったのだがその際、ガウとエルザの唇同士が重なっていたのだ。

 

まあ、要するに不慮の事故で2人がキスしてしまっていたのだ。

 

ガウは帰艦後の響の事情聴取(拷問)で絶対に言わないようにしていたのですっかり忘れてしまっていたのだ。

 

エルザ「思い出しでありますか!!」

 

ガウが思い出したのを感じてエルザは再びアタッチメントで殴り掛かる。

 

ガウ「がうがうがう!?」

 

訳:アレは不慮の事故でしょ!?

 

回避しながら言うガウ。

 

エルザ「事故であろうと奪ったのは事実であります!!」

 

ガウ「がうがうがうがうー!?」

 

訳:事故ならノーカウントでよくない!?

 

エルザ「よくないであります!!」

 

ガウ「がうぅ!がうがうぅ!!」

 

訳:えぇ!そんなぁ!!

 

攻撃しながらのエルザと回避しながらのガウは言い争っていた。

 

ガウ「がう!がう、がうがうがうがう……」

 

訳:はっ!ちょっ、あんまりこんな話してると……

 

言い争っているガウはあることに気付いた。

 

そして後ろの方で"ズドゴーン"っと物凄い音と"ぎゃあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!"っと2人分の声が聞こえた。

 

ガウ「…………がひ!?」

 

振り向くとそこにいたのは……。

 

響「コフー…コフー…」

 

滅茶苦茶目付きが悪くなり、後ろから黒いオーラ全開で、白い息が出ている響がいた。

 

その足元には倒れているのはクリスとミラアラクだった。

 

響「今の会話…どういう意味…かな?」

 

一歩一歩近づきながら響は鋭い眼光がガウに突き刺さした。

 

ガウ「がうぅぅ!?」

 

響の眼光にガウはしりもちをついてしまう。

 

もちろん、エルザも。

 

響「で、今の会話、本当のことなのかな?」

 

ガウの前に立って腰を抜かしているガウを見下ろす。

 

ガウ「が、がうがう…がうがうぅ……」

 

訳:あ、あのね響…これはそのぉ……

 

"何ていえば無事で済むか"ではなく"どうやったら死なない程度のパンチを喰らわずに済むのか"である。

 

その時だった、響たちのいる交戦場所に突如、空き缶のようなのが落ちたかと思うと煙を吹き出して辺りを覆い尽くした。

 

ミラアルク(チャンスだぜ!)

 

ミラアルク「え、エルザァ!ヴァネッサが戻るまでは無茶は禁物!アジトで落ち合うぜ!」

 

エルザ「ガ、ガンス!ここはひとまず撤退であります!」

 

煙を見て起き上がったミラアルクに言われてエルザは言う。

 

響「逃がすかぁ!クリスちゃん!」

 

ブチキレている響はクリスを呼ぶ。

 

クリス「お、おう…」

 

起きるクリスはフラフラながらも歌唱を再開、響に向かって走る。

 

走ったクリスは響の手に足をかける。

 

響は自身の手を足場にしたクリスを空高く投げ飛ばした。

 

クリス「全部乗せを!くらいやがれー!!」

 

上空に出たクリスは巨大なライフル型にして放つ技『RED HOT BLAZE』を発射した。

 

エルザ「!!」

 

クリスの技はエルザに向かっていく、辺りを吹き飛ばしていく。

 

爆破が収まるとそこにはエルザはおらず、代わりに半壊したアタッシュケースと赤い何かが入った袋があった。

 

クリス「逃げたか…ってか、あの煙幕はいったい……」

 

ケースだけを見てクリスは言う。

 

後ろでは響とガウが全力の追いかけっこしあっていた。

 

 

 

アザルド「ったく、世話が焼けるぜ。ノーブルレッドさんたちよ」

 

ビルの屋上にて体がキューブのようなので構成された怪人―『アザルド』が煙幕を出す弾を持って呟いた。

 

アザルド「俺だ」

 

役目を終えたアザルドは通信機を出して誰かと連絡をとる。

 

アザルド「連中は無事に逃げおおせたぜ。了解した、オーナー・フドウ」

 

そう言ってアザルドはテレポート用のジェムを出して割るとどこかへテレポートしたのだった。

 

 

 

藤尭「回収したアタッシュケースの解析完了」

 

事件後、回収されたアタッシュケースの中身のことが判明した。

 

調「まさかの…ケチャップ?」

 

切歌「この季節にバーベキューパーティーとは敵もさるものひっかくものデス!」

 

中身の赤い何かをケチャップと思い話す。

 

弦十郎「あれは全血清剤。成分輸血が主流となった昨今あまりお目にかからなくなってる代物だ」

 

ケチャップと思っている調と切歌に弦十郎は中身の正体を教える。

 

エルフナイン「それ以上に気になるのがその種類です。Rhソイル式。140万人に一人とされる稀血と判明しています。因みにガウくんもRhソイル式です」

 

響「そうなんだ」

 

マリア「って言うかまさか…敵は輸血を必要としてるとでもいうの?」

 

中身が全血清剤…それも希少な血であることにマリアは言う。

 

緒川「被害者からの聞き取り終わりました。埠頭にて彼女達と黒ずくめの男二人を目撃し麻薬の取引現場だと思ったようです」

 

弦十郎「つまりパヴァリア光明結社の残党を支援している者がいるということか」

 

藤尭「考えられるのはこれまで幾度となく干渉してきた米国政府…」

 

友里「先だっての反応兵器の発射以来冷え切った両国の関係を改善と怪獣軍団との和解の糸口にするために勧められてきた月遺跡の共同調査計画…疑い始めたらそれすらも隠れ蓑に思えてきてしまうわね…」

 

生き残った不良から話を聞いた緒川からの報告で米国に容疑を向ける面々。

 

その時だった、本部に警報音が鳴り響いた。

 

藤尭「米国のロスアラモス研究所がパヴァリア光明結社の残党とおぼしき敵生体とノイズ怪獣に襲撃されたとの報せです!」

 

弦十郎「なんだと!?」

 

さっきまで日本にいたハズの残党が米国の研究所を襲撃したという報せに驚くのだった。




―おまけ―

ミラアルク「ところで、なんでエルザはゴジラと普通に会話が成り立ってるんだ?」

エルザ「え?普通に言葉として理解しているだけであります」

ミラアルク「いやいや、うちからしたらエルザの言葉しか理解できなかったぜ。ゴジラは"がうがう"しか言ってなかったぜ」

エルザ「それはないであります。私めはちゃんと聞いたのであります!」

ミラアルク「そうなのか?」

エルザ「そうであります!」

ミラアルク(それってエルザが動物だからって言ったら怒るぜ、絶対…)



―おまけ2―

エルザ「奪われたであります…私めの唇…初めてを……」

とある場所のベッドの上にてエルザはトーマス・ホイットモアでのアクシデントを思い出していた。

エルザ「ですが…何でありますか…この胸から感じる暖かな感じは……」

胸に手を当てながらエルザは呟き、顔を赤めらせていたのだった。

予定より早いですが、XV篇(IFルート)で幸せになって欲しい人は?

  • エルザ
  • ミラアルク
  • ヴァネッサ
  • 3人とも

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