戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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第443話 戦いの後

翼がシェム・ハを連れ去り、それを追ってミレニアムゴジラが姿を消した戦いの後、響は古びたアパートにおり、そこの一室の炬燵に入り寝ん転がっていた。

 

その表情は暗かった。

 

洸「よーし。できたぞ」

 

ラーメンの入った鍋を持って響の父『立花 洸』が現れて座ると炬燵に設置したテーブルに置いた。

 

洸「知ってるか?インスタントとはいえ最近のは侮れないんだぞ」

 

そう響に言う洸。

 

響「動いてないのにお腹って空くんだね…」

 

起き上がって響は言う。

 

洸「それは今、響が生きてるってことさ」

 

暗い表情の響に対して洸は笑顔で言う。

 

 

 

響「ごちそうさま」

 

洸「実際かなりうまかったな」

 

ラーメンを食べ終わり、2人は話す。

 

洸「しかし驚いたな。響が規則を破って謹慎とは」

 

響がここにいる理由を呟く洸。

 

先の戦いで使用が禁止されているアマルガムを使用してしまい、本来なら拘束されるところを弦十郎により謹慎処分となっていたのだ。

 

響「大切なものを全部失くして、奪われて、どうしていいのかわからなくなったら無性にどこかに逃げ出したくなって…気が付いたらここに足が向かってた」

 

大切な親友の未来を神の依り代にされ、自分を母親だと慕ってくれるリルを眷属神にされたことに響は苦しんでいた。

 

洸「そっか…ま、逃げ出すことに関しては筋金一本入ってるからな。俺は」

 

あの日のライブ後に起きた云われ無きバッシングから逃れるために、家族を見捨て、逃げたことを言う。

 

響「違うよ。お父さんだからだよ」

 

自虐する洸に響は言う。

 

洸「…よかったら一人で抱え込まず俺に話してみないか?」

 

苦しんでいる愛娘に洸は言うと響は頷いて、話すのだった。

 

 

 

クリス「先輩…」

 

一方、S.O.N.G.の待機室ではクリス、調、切歌、マリア、エルフナインはおり、暗いムードになっていた。

 

理由はあの戦いで翼が裏切り、シェム・ハを連れ去り、さらに仲間であるハズのゴジラことガウを深手を負わせた挙げ句に"災厄"と言い捨てたことを思い出していた。

 

現在、翼に貫かれたゴジラは時間差でガウに戻ったがゴジラの時に受けた傷口が大きすぎたためにまだ傷口があり、血が流れていたという。

 

S.O.N.G.本部の医師たちが全力で傷を手当てした。

 

訃堂によりほとんどのRhソイル式の全血清剤が奪わてしまい、失われていたが八紘の計らいで急遽アメリカから全血清剤を届けてもらい輸血していた。

 

調「一連の事件を操っていたのが風鳴機関だなんて…」

 

切歌「信じたくはないデスよ…」

 

パヴァリア光明結社残党を裏から支援し、ノイズ怪獣の提供やS.O.N.G.の動きを一時的に封じた組織―『風鳴機関』であり、風鳴宗家そのものが敵であったと知らされ、さらに翼が協力していたのではという容疑がかけられているのに驚き、動揺していたのだ。

 

クリス「それでもあたしは信じてる。不器用なあの人に裏切りなんて真似できるものか」

 

調「私だって疑ってない!」

 

切歌「翼さんは大切な仲間デス!」

 

"翼が裏切ったりしない"、そう信じる3人。

 

エルフナイン「おそらくはあの魔眼に…」

 

エルフナインもまた翼が裏切ったりしないと信じており、あんな行動に出たのはミラアルクの魔眼により操られていると推測する。

 

マリア(私だけ?)

 

通信端末のバイブを感じて見ると弦十郎からの呼び出してあったが他のメンバーには来ていないようだった。

 

内容は"至急発令室まで"と書かれていた。

 

 

 

発令室にマリアが来るとメインスクリーンに映る八紘と弦十郎と緒川がいた。

 

八紘《早速だが君に新たな任務の通達だ》

 

マリアが入ってくるなり、八紘は言う。

 

緒川「かねてより進めていた内偵と政治手段により風鳴宗家への強制捜査の準備が整いました。間もなく執行となります」

 

任務内容を緒川が話す。

 

どうやら内々に風鳴宗家がパヴァリア光明結社の残党を裏から支援していたことに気付いていたようだ。

 

マリア「風鳴宗家って…あなた達や翼の…」

 

"風鳴宗家への強制調査"と聞いてマリアは言う。

 

風鳴宗家は誰もが知っている、翼や弦十郎、八紘の一族だからである。

 

弦十郎「そうだ。だが、状況は差し迫り、最早一刻の猶予もない」

 

八紘《風鳴 訃堂自らが推し進めた護国災害派遣法違反により日本政府からの逮捕依頼だ》

 

風鳴兄弟は冷静に事を言う。

 

八紘《状況によっては…殺害の許可も下りている》

 

マリア「殺害って…それは翼に対しても?」

 

マリアの問いに無言となる面々。

 

どうやら訃堂だけでなく、翼にも殺害許可が下されているようだ。

 

八紘《現在、この国は風鳴宗家により最大級の危機的状況に陥っている》

 

敢えて翼にも殺害許可が下されていることには触れず、八紘は言う。

 

マリア「怪獣…軍団ね」

 

八紘《そうだ。怪獣王 ゴジラがシンフォギア装者により2度も殺されかけ、さらに王子であるリトルゴジラが拉致された挙げ句に改造されたとして怪獣軍団三大将軍の1体、暴龍 アンギラスが直属の怪獣たちに召集をかけている。日本政府の有無を言わせる暇すら与えず、報復攻撃をしようとしているらしい》

 

ガウが2度にわたり、翼に殺されかけこととリルが拉致された挙げ句に改造され、神を守護せし存在"眷属神 ミレニアムゴジラ"にされたことを口実に日本へ攻めかかろうと怪獣軍団が準備を進めていると言う。

 

マリア「それで、なんで私だけに?」

 

切歌や調たちにすら連絡せず、自分だけに連絡したのかと聞く。

 

緒川「服務規程違反によって謹慎中の響さん並びに未成年スタッフに任せるわけにはいかないと判断しました。そこでマリアさんに…」

 

マリア「任務とはいえ承服できないわ。刃の下に心を置くってそういうこと?違うわよね!」

 

理由を言う緒川に"忍"の意味を問い、言い返した。

 

マリア「どんな理由があろうと家族が家族を殺すなんて間違ってる!私は翼を引きずってでも連れて帰るために同行させてもらうわ!」

 

家族が家族を殺すことを許さず、翼を無理矢理にでも生かして連れ帰るとマリアは言う。

 

その時だ。

 

ガウ「がう!」

 

訳:ちょっと待って!

 

声の方を振り向くとガウが入ってきた。

 

まだ傷が痛むのか、包帯が巻かれている胸を押さえながら、近寄ってきた。

 

ガウ「がうがう、がうがうー!」

 

訳&メモ:その任務、僕も一緒にいく!

 

紙にそう書いて自分もマリアたちに着いて行きたいと伝える。

 

弦十郎「バカを言うな!お前はただえさえダメージが大きかったんだぞ!そんな体で連れていけるわけないだろ!」

 

着いていくというガウに弦十郎は怒鳴る。

 

ガウ「がうがうーがうー、がうがうー!がうー、がうがうー!!」

 

訳&メモ:アイツのところに未来がいるなら、リルもそこに来る!だから、僕も行く!!

 

弦十郎「だが…」

 

八紘《よせ、弦》

 

引き下がらないガウに言おうとした弦十郎を八紘が止めた。

 

八紘《怪獣王よ。君は、自身を傷つけて挙げ句に我が子すら殺さんとする者をどうするつもりだ?》

 

風鳴宗家に強制捜査の任務に参加する、それは翼と一戦を交えるということ。

 

翼は自身と神の眷属となって敵となったリルにすらその刃を向けている。

 

そんな翼をどうするのかと問いた。

 

ガウ「がうー、がうーがうがうー。がうーがうがう。がうーがうがうがう。がうがうがう。がうーがう!」

 

訳&メモ:それは、マリアと一緒だよ。僕も家族が家族を殺すなんて反対だよ。僕もリルを無理矢理にでも連れ帰るんだから。そして翼も連れ帰る。仲間だからね!

 

いくら傷つけられようとガウの中では翼は大切な仲間。

 

リルと共に絶対に連れ帰ると言う。

 

八紘《分かった。弦、彼の意思はどうやら固いようだ》

 

ガウの固い意思を感じた八紘は言う。

 

弦十郎「そうみたいだな。だが、無茶はすんじゃないぞ」

 

ガウ「がう!」

 

八紘と弦十郎に言われてガウは頷いたのだった。


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