戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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第466話 親子の絆

それぞれがそれぞれの月遺跡の場所で戦っている頃、ガウは雌雄を決する戦いを繰り広げていた。

 

ガウ「がうはっ!!」

 

壁に吹き飛ばされたガウが叩きつけられ、血を少しだけ吐いていた。

 

ガウ「がう…がう…がう」

 

片ひざを着きながらガウは相手を見る。

 

リル「グルルルルル……」

 

ガウの相手ーリルはガウを睨んでいた。

 

転移して月遺跡に着いた時にリルとおり、先に気が付いたガウは駆け寄り呼び掛けたが目が覚めたリルは今だにガウを敵と認知し、シェム・ハの眷属神として襲い掛かってきたのだ。

 

※ここからガウとリルが日本語で話しますが周りには鳴き声でしか聞こえません。

 

リル「ゴジラ…我が主の為、ここでその命を貰う!!」

 

一気にガウとの距離を積めてリルは突っ込んできた。

 

ガウ「くっ!!」

 

突っ込んでくるリルの攻撃をガウは避けようとはせず(・・・・・・・・)、敢えて両腕をクロスさせて防御体勢をとり、受け止めた。

 

リルの拳と蹴り、尻尾を受け止め続け、反撃しようとしないガウ。

 

その体にどんどん傷が増えていく。

 

リル「どうして…どうして反撃しない!何もせずに死ぬ気なのか、お前は!!」

 

反撃してこないガウにリルは苛立ち、攻撃をしながら聞く。

 

ガウ「しないじゃない…」

 

リルの両手を掴んで動きを止めるガウ。

 

ガウ「したくないんだ(・・・・・・・)!あの時、頭に血が昇ってたけど、お前は…お前は僕の…」

 

リル「!?」

 

話すガウの言葉を聞いていたリルは自身の腕に感じる一瞬だけ暖かく、すぐに冷たくなった感触を感じて見ると水が1滴あり、それがポタポタと次々に落ちていた。

 

それは何かとリルはガウの顔を見た、自身の腕に落ちてくる水ーそれはガウが流している涙だった。

 

ガウ「血は繋がってないけど…お前は僕の…僕の…大事な…大事な息子なんだ!!」

 

泣きながらガウはリルに言う。

 

探査ロケット発射施設ではエルザを傷つけられ、ブチキレてしまったガウだが時間が経ち冷静になったガウは自分が危うく(血は繋がってないが)息子を殺そうとしていことへの後悔があったのだ。

 

それが涙となり流れているのだ。

 

リル「あ…う…」

 

涙を流すガウを見てリルは動揺して数歩後退した。

 

ガウ「思い出せ、リル!お前は眷属なんかじゃない!僕の大切な家族だ!」

 

リル「う、うるさい!うるさい!僕はシェム・ハ様の眷属神だ!!」

 

動揺はしているものの、シェム・ハによる洗脳がかなり根深いのかガウの言葉を振り払うようにリルは言うと殴りかかる。

 

迫りくるリルの拳をガウは避けようとはしなかった。

 

放たれたリルの拳はガウの目の前で止まった。

 

リル「なんで…なんでなの…」

 

膝から崩れ落ちるリル。

 

リル「お前は敵なのに…なのに、なんで…なんでこんなに胸が痛いの?なんで…」

 

涙を流し、胸を抑えながらリルは言う。

 

そんなリルにガウは近寄ると同じ視線になるように姿勢を低くした。

 

ガウ「それは本当の気持ちが動いているんだよ」

 

リル「本当の…気持ち?」

 

ガウの言葉にリルは首を傾げる。

 

ガウ「そう、本当の気持ち…リルの気持ちが戦いたくないって叫んでるんだよ」

 

リルの頭を撫でながらガウは言う。

 

リル「ゴジラ………!?」

 

ガウに言われてリルの心が動きかけた、その時だった。

 

一瞬だけ下を向いたリルだったが雰囲気が変わるとすぐにガウの首を両手で掴み締め始めた。

 

ガウ「あがっ…!?り、リル…!?」

 

突然の事で対応しきれなかったガウは首を締められ、苦しむ。

 

リル?「遺憾である。コヤツは最早、貴様の子供ではない」

 

ガウの首を絞めながら雰囲気が変わってしまったリルは言う。

 

ガウ「お、お前…は…シェム…ハ!?」

 

雰囲気が変わったリルを見てガウはリルの精神にいるシェム・ハに気付いた。

 

シェム・ハ(リル)「いかにも。コヤツを眷属神にした時、ホンの少しだけ我の意識をしのばせておいたのだ。貴様らの言葉でまた元に戻られては堪らないからな」

 

どうやらシェム・ハはリルがガウや響たちの言葉で自身がかけた洗脳が弱まると分かっていたようで保険として自身の意識をリルの意識にしのばせていたのだ。

 

そしてリルがガウの言葉に動揺して、代わりに自身がリルの体を操っているのだ。

 

ガウ「き、貴様ぁ…あがっ…うっ…」

 

リルの意識に潜んでいたシェム・ハに怒りを込み上げていたガウだが、首をさらに締められて苦しむ。

 

シェム・ハ(リル)「我が子の手で逝くがいい!怪獣王!!」

 

とどめを刺そうとさらに力を入れるシェム・ハ。

 

ガウ「あぐっ…がっ…」

 

酸欠で徐々に失われ行く意識を何とか保とうとするが、長くは持ちそうになかった。

 

もはやこれまでかと思った時だった、ガウの首を締めるリルの手に何かが絡まった。

 

シェム・ハ(リル)「なに!?」

 

腕に絡まったモノを見て驚く。

 

腕に絡まったモノーそれはリルの尻尾だった。

 

シェム・ハ「な、なぜ尻尾が!?体は確かに我が…!?」

 

?『……るな…』

 

驚いているシェム・ハの中に新たな声が聞こえてきた。

 

シェム・ハ(リル)「ま、まさか!?」

 

聞こえてきた声にシェム・ハはさらに驚く。

 

リル『これ以上、僕のパパを虐めるなぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!』

 

シェム・ハが聞いた声ーリルの意識が目を覚まし、シェム・ハを自身の精神にてゴジラの繰り出す体内放射のような光を浴びせた。

 

シェム・ハ「親の声で意識が蘇ったのか!?ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!?」

 

リルの光を喰らい、シェム・ハは悲鳴を上げながら消滅した。

 

リル「!、パパ!!」

 

シェム・ハを消滅させ、自身の体を取り戻したリルはすぐにガウを解放した。

 

ガウ「げほっ!げほっ!」

 

咳き込んで空気を吸うガウ。

 

リル「パパ!パパ!」

 

ガウ(父親)を心配するリル。

 

ガウ「り、リル…お前、元に戻ったのか?」

 

リル「うん。パパが僕を呼んでくれたから、悪いやつを追い出せた」

 

ガウに聞かれてリルは言う。

 

ガウ「そうか…よかった…よかったぁ~」

 

リル(心の支え)が元に戻ってガウは抱きついた。

 

リル「僕もまたパパに会えて嬉しい!」

 

抱きつかれたリルもそう言ってガウに抱きついたのだった。


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