戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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第475話 帰る場所

ヴァネッサ「やった?」

 

至近距離で放ったレーザーに飲まれた響たちを見て言うヴァネッサ。

 

?「グルルルルル…」

 

ヴァネッサ「!?」

 

獣の唸り声が聞こえたかと思いきや爆煙を突き破って巨大な瓦礫が飛んできて驚きながらもヴァネッサは迎撃した。

 

ガウ「ガルルルルル!!」

 

爆煙が収まるとガウが威嚇しながら睨んでいた。

 

その周辺には砕かれた瓦礫に、抉られた床があった。

 

どうやらヴァネッサの一撃をガウは遺跡の床を砕いて盾代わりにすることで響たちを守ったようだ。

 

響「ガウくん!」

 

クリス「助かった!ってか、どうや……て」

 

ガウが助けにきたのに疑問に思っているとすぐ後ろの壁が破壊されて、ガウくらいの幅の穴が空いていた。

 

穴の奥からは翼たちの声が微かに聞こえていた。

 

クリス「………」

 

壁の穴を見て黙るクリスだった。

 

そんな中でヴァネッサはレーザーを発射する。

 

ガウは自力で避けて、響はクリスを抱えて回避する。

 

響「クリスちゃん!一緒に!」

 

クリス「あたしに接近戦をか!?」

 

響の提案に驚きながらクリスは“アマルガム”を起動、普段は遠中距離型のギアであるイチイバルの攻撃力をフルで上げる。

 

ヴァネッサ「これ以上は……」

 

接近戦に持ち込まれる前に迎撃しようとするヴァネッサだが両翼を突然背後から撃ち抜かれた。

 

後ろを振り向くとイチイバルの“アマルガム”に共鳴し、己の力としてアーチェリー型の武器を構えているガウがいた。

 

アーチェリー型の武器を使い、光刃型の矢を飛ばしてヴァネッサの攻撃を妨害したのだ。

 

ガウの不意打ちにより攻撃を妨害されたヴァネッサに響の拳とクリスのドロップキックが決まる。

 

3人はそのまま壁を貫き、翼たちのいる管制室に突入した。

 

管制室に突入してクリスは“アマルガム”時の弓型のアームドギアを生成する。

 

ヴァネッサ「生きる!足掻く!」

 

ヴァネッサの自身の想いをぶつけるように胸部にエネルギーを溜めて極太のレーザーを発射した。

 

同時にクリスも同時に一射放った。

 

レーザーと矢がぶつかり合うが、矢がレーザーを四散させていく。

 

マリア「リフレクターを先端に!」

 

矢の先端にリフレクターを展開させ、1点防御によりレーザーを四散させているのにマリアは言う。

 

矢はレーザーを完全に四散させたがヴァネッサに当たり、勢いままに屋根を破壊した。

 

屋根が破壊されたことで無重力で真空の宇宙に吸い寄せられる。

 

全員は飲まれないように踏ん張るが1人だけ、踏ん張れない者がいた。

 

ヴァネッサだ。

 

ヴァネッサは空中に居たためにそのまま宇宙に吸い寄せられていた。

 

ヴァネッサ「それでも…私達は…怪物なんかに…なりたくなかった!」

 

遂に自身の本音を叫ぶヴァネッサ。

 

ガウ「がう!」

 

リル「かう!」

 

このままヴァネッサが宇宙に吸い寄せられ、放り出されかけた時、ガウが“アマルガム”と共鳴して作り出した武器から1本の矢を放った。

 

その矢は後ろに糸がくくりつけてあったのかヴァネッサに絡まると床に刺さり、ガウは自身を重りとして糸を抑え、リルもそれに加わった。

 

ヴァネッサ「!?」

 

下手をすれば自分たちまで宇宙に放り出されてしまうのにも限らず、助けようとするガウとリルに驚く。

 

クリス「くらいやがれー!」

 

そんな中で、クリスはニ射目を発射した。

 

ガウとリルを救うために自分に止めを刺そうとしていると考えたヴァネッサは覚悟を決め、目を瞑ったがクリスが放った矢はヴァネッサには当たらずリフレクターを展開して穴を塞いだ。

 

穴が塞がれてガウとリルはヴァネッサをゆっくりと床に降ろした。

 

ヴァネッサ「どうして…助けたの…」

 

今までのことを考えれば殺されてもおかしくない自身を助けたガウ、リル、クリスにヴァネッサに問いた。

 

クリス「助けたわけじゃねぇ…ただ…本当に今よりここより先に進むもうと願うのなら、なおのこと帰る場所ってのが大切なんだって伝えたかった。あたしは考え過ぎるから…きっとまた迷ったりするかもしれない。だけど!帰る場所があるから立ち直って先に進んでいける。それはあんただって…」

 

ガウとリルの代わりにクリスがそう言って答えた。

 

クリスもまた、爆破テロで両親を失って帰る場所が一時は無くなった、だが帰る場所を新たに作ってくれた響たちのお陰で立ち直れたと話す。

 

それはガウとリルも一緒だった。

 

ガウは核実験により家族を失い、リルもシェム・ハにより家族を失いかけたが、それでも自分たちに帰る場所を作ってくれる響たちに感謝していたからだ。

 

ミラアルク「ヴァネッサ!」

 

エルザ「もう…やめるであります…心まで怪物にしないためにも…」

 

ミラアルク「うちも…弱さを言い訳に自分の心を殺すのはたくさんだぜ…」

 

クリスの話を聞いてミラアルクとエルザが駆け寄ってきた。

 

彼女たちは心に限界が来ていたのだ。

 

結社により怪物に改造され、訃堂により利用され、シェム・ハにより完全な怪物にされながらも自分たちの弱さから目をそらすために、絶望や後悔をしないために心を殺してきた。

 

だがそれに限界が来ていたのだ。

 

ヴァネッサ「帰る場所…私の家族…」

 

駆け寄ってきたミラアルクとエルザを抱き締めてヴァネッサは涙を流すのだった。


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