戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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第609話 閉ざした心

ギャシー星人たちと出会って地球へ来た理由を知った響たちは本部である潜水艦に帰還していた。

 

本部は現在、ギャシー星人たちの手伝いの元急ピッチで修理が行われていた。

 

あと2~3日もすれば修理は完了する。

 

だが、休息スペースに集まっていた響たちは重い空気になっていた。

 

理由はこのブルーエリアにいるギャシー星人たちのリーダーであるジーンの言葉であった。

 

"地球人は利己的だ。自分たちの身が安全なら他のモノを犠牲にしても構わない生物だ!"

 

確かにジーンの言う通り、地球人は自分たちさえ無事ならば環境など二の次に考えてしまう。

 

米国やロシアなどが未だに保有している核兵器や反応兵器は絶大な破壊力を誇っている反面、被害に遭った場所には生命の鼓動など感じられない。

 

あったとしてもそれは異形の姿と化した怪獣となってしまう。

 

また核や反応兵器に積まれた汚染物質は爆発してその先、何百年も残り続け自然やそこに住んでいた生命を脅かし続けてしまう。

 

ガウもかつてはただの恐竜であった。

 

だが核実験の影響で最強の肉体を持った怪獣となってしまった。

 

それだけの被害が出ることが分かっていながらどの国も核も反応兵器も廃棄しようとはしない

 

むしろそれらを"人類の英知の生み出した炎"と称している。

 

それをジーンからすれば利己的な生物と見て取れるのも無理はない。

 

クリス「くそ…あの野郎に言われたい放題だったぜ」

 

ジーンに言い負かされたことをクリスは悔しがっていた。

 

翼「全てが事実なのだから仕方あるまい」

 

マリア「そうね。間違っているとは分かっていてもなかかな抜け出せないのが人間よね」

 

悔しがっているクリスに翼とマリアはそう言う。

 

切歌「でもあれじゃあアタシたち地球人がみんな利己的な生物みたいな言い方に聞こえるデス!!」

 

ジーンの言葉に切歌は怒った感じで言う。

 

調「確かにそうだけど、ほとんどの地球人は利己的と見られても仕方ない気がする」

 

切歌とは真逆のことを調は言う。

 

響「それでも私はジーンさんとも分かり合いたい…」

 

どんなに言われようと響はジーンとも分かり合えると信じて拳を握り、開いていた。

 

ガウ「がうがうーがうーがう」

 

訳:あの状態じゃしばらくは無理だよ

 

エルザ「っと、言っているであります」

 

信じている響に水を刺すようにエルザの翻訳でガウは言う。

 

響「そうだけど…」

 

エルザ「ガウの言う通りであります。ジーンは故郷から追われている間に多くの仲間を目の前で失ったのであります。その事がジーンの心を閉ざしてしまっているのでありますよ」

 

反論しようとした響にエルザがトドメとばかりに言う。

 

『…………』

 

エルザの言葉を聞いて全員の脳内にシャウが見せてくれたギャシー星から逃走する際の映像が思い起こされた。

 

スコーピスたちは非武装の円盤ですら容赦なく破壊し、命を奪っていっていた。

 

仲間を何もできずに殺されていく様を目の当たりにすればジーンじゃなくても心を閉ざしてしまっていただろう。

 

そう考えていた時だ、全員の通信機に着信音が響いた。

 

響「はい、こちら響です!」

 

弦十郎『全員、そこにいるな!』

 

気持ちを切り替えて出ると慌てた様子の弦十郎が出た。

 

翼「はい、全員いますが何か?」

 

弦十郎『緊急事態だ!先ほど中井防衛大臣より緊急電でギャシー星人を狙っていると思われるスコーピスの大群を冥王星で検知した!至急ブリッジに集合だ!』

 

『!?』

 

弦十郎の言葉に全員に緊張が走ったのだった。

 

 

 

 

 

 

その頃、赤く醜い星―元々は地球のように青と緑の豊かな星であった『ギャシー星』の赤い砂漠となった地に黒雲があった。

 

この黒雲こそスコーピスたちの主にしてギャシー星を含めて数多くの命ある星を滅ぼしてきた巨悪、サンドロスである。

 

サンドロス「ご報告いたします」

 

サンドロスは黒雲の状態で言うと大気に巨大なスクリーンが映り、1人の軍服を着た人物が映った。

 

?『ナンダ、サンドロス』

 

サンドロス「ヴィズ丞相、先ほど反乱分子の居場所を掴みました」

 

自身より格上なのか丁寧とした言葉でサンドロスはヴィズと呼ばれる人物に報告する。

 

ヴィズ『ホウ。シテ、反乱分子ハドコニイタ?』

 

サンドロス「地球でございます」

 

ヴィズ『地球ダト!?』

 

サンドロスから"地球"と聞いてヴィズは驚く。

 

サンドロス「つきましては殿下に地球攻撃の許可を…」

 

ヴィズ『ナラン!アノ星ハ殿下自ラ攻メラレルコトニナッテイル!貴様モソレヲ知ッテイルダロウ!!!!』

 

怒った口調でヴィズはサンドロスに言う。

 

サンドロス「しかし…」

 

ヴィズ『ナランモノハナラン!コレハ殿下直々ノ命令ダ!!』

 

ヴィズがそう釘を指すように言った瞬間だった。

 

?『構わん』

 

ヴィズの後ろから1人の少年が現れて言った。

 

ヴィズ『で、殿下』

 

殿下と呼ばれる少年を見てヴィズはお辞儀をする。

 

?『サンドロス。貴様の地球攻撃、許可してやろう』

 

サンドロス「おぉ!有りがたき幸せ!!」

 

?『ただし、敗北は死を意味すると思え』

 

サンドロス「ははぁっ!!!」

 

殿下に許可をもらいサンドロスが言うと映像は途切れた。

 

サンドロス(ふん、若造が…。踏ん反り返っていられるのも今の内だ。地球を手にした後はお前を殺してやるぞ)

 

通信が切れてサンドロスは自身の本心を口にはせず、心の中で呟いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スコーピス地球襲来まであと29日。


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