響「はあぁ~…」
待機ルームにて響はらしくない大きなため息を出していた。
あの後、ジーンと言い争いが終わらず数日経った今もジーンどころかシャウからも協力する了承すら得られていなかった。
?「その様子だとダメだったみたいだな」
聞きなれた声を聞いてその方向を見るとコップを2つ持ったクリスがいた。
クリス「ほらよ、暖かい飲み物」
持っていたコップの内1つを響の前に置いて隣に座る。
響「クリスちゃん…暖かいものどうも」
クリスにお礼を言って響はコップの取っ手を持った。
中身はココアで、ちょうどいい感じに温まっていた。
一口二口ココアを飲むと食道を伝って胃に到達する温かい感じが体を巡った。
クリス「お前にしてはかなり苦戦しているみたいだな」
響「うん。ジーンさんがかなり地球人を毛嫌いしてるみたい」
クリス「らしいな。だがアイツの言っていることはほとんど事実だから否定しずらいのもあるけどな」
ジーンが地球人を毛嫌いしている理由のほとんどが事実であるがために流石の響でも反論しずらい部分があっただろうと察する。
事実、ジーンの言っていることは本当のことで響も否定しずらいことがほとんどであった。
響「それでも私は手を取り合えるって信じてる」
右手を見つめながら響はキャロルやサンジェルマン、ヴァネッサ、ミラアルクなど敵でありながら数多くの人と手を取り、分かり合ってきた。
今度もそうできると信じている。
自分の胸の歌と信じる意思を貫くために…。
クリス「だったら頑張れよ…って言いたいがもう時間が無いぞ」
響「うん、分かってる」
クリスの言葉に響は頷いて言う。
実は本部の修理が終わっており今日中にもこのブルーエリアから出なくてはならなくなったのだ。
響「次こそはジーンさんとシャウさんを説得する…」
今度こそと意気込んでいた時、ポケットに入れていた端末の着信バイブを感じて取ると弦十郎から通信が来ていた。
響「はい、響です」
弦十郎『これから日本へ向けて出航する。すぐに司令室へ集まってくれ』
響「も、もうですか!?せめてもう少し時間を…」
弦十郎『これは命令だ。急いで来るんだ!!』
反論する響に弦十郎はそう喝を飛ばすと通信を切った。
弦十郎に言われて響とクリスは司令室へ赴いた。
2人が入るとそこにはいつものメンバー(翼、マリア、切歌、調、弦十郎、友里、藤尭、ガウ、エルザ)に加えて1人の少女がいた。
響「あなたは!?」
クリス「なんでお前がここに!?」
その少女を見てクリスと響は驚く。
響「シャウさん!!」
司令室にいた少女―ギャシー星人・シャウがいることに驚いていた。
シャウ「私もお前たちと一緒に地上へ行く」
響「それってもしかして協力…」
シャウ「いや。お前の言葉を聞いていると"サンドロスを本当に倒すことができるかもしれない"と思えてきた。しかしジーンが言っていたように地球人は自分たちさえ良ければいい利己的な生物だと私も少なからず考えている。それを見定め、場合によっては協力をするかしないかを決める。それだけだ」
シャウもシャウなりに悩んだ末に自らの目で地球人を見て協力するかどうかを決めることにしたようだ。
響「それはそれで残念だけど、ありがとうございます!私の言葉を信じてくれて!!」
嬉しそうに響はシャウの手を取って言う。
思っていたこととは少し違うけど、それでも地球人たちを信じてみようと一歩を踏み出してくれたシャウに感謝していた。
シャウ(本当に不思議だな、この地球人は……)
手を握られてシャウは正直にそう思っていたのだった。
シャウを出迎えてS.O.N.G.本部はブルーエリアを後にしてサイパン島海底に出ていったのだった。
しかしそれを見つめる1人の男がいた。
ジーン「利己的な生物どもめ……」
出航した本部を憎悪と険悪の目でジーンは見つめていたのだった。
スコーピス地球襲来まであと25日