その日、北九州空港に弦十郎は緒川とエルフナインと共に来ていた。
理由は友人たちの見送りの為だ。
ジーン「彼女たちは来ていないのだな」
周囲を見てジーンは言う。
弦十郎「えぇ。すみません、最後の最後に」
ジーンに言われて弦十郎は謝罪する。
シャウ「構わない。むしろこちらが謝罪したいくらいだ。私たちと共に戦ってくれた者の墓参りにすら参加できないのだから」
謝罪されてシャウはそう言う。
エルフナイン「ですが、皆さんには一刻も早く母星を再生するという目的がありますから仕方ないのでは…」
エルフナインがそういうにはサンドロス撃破後、ジーンたちの隠れ家であるブルーエリアにある生命を生み出す装置に生命の光が生まれたのである。
これを機にジーンたちはサンドロスたちにより荒廃した母星であるギャシー星へ帰ることにしたのだ。
この生命の光を元に元の美しい母星を取り戻すと言う事なのだ。
ジーン「あぁ…そうだ。だから彼女たちに伝えてくれ。俺たちの荒みきっていた心はお前たちに救われた。お前たちの何かを信じるその心こそがサンドロスを倒すことが出来た勝因だと思うと。それと今までの非礼を詫びる、いつか俺たちの母星が蘇った時、その時は招待すると」
緒川「分かりました。必ず伝えます」
ジーンの言葉をしっかりと聞いて頷いて言うとジーンとシャウは仲間たちが乗っている円盤に向かって行き、乗り込んだ。
ジーンとシャウの2人が乗り込んだを確認したように円盤はハッチを閉めて浮上、宇宙へ向かって飛び去って行った。
その頃、響たちはある場所にいた。
南国特有の日差しと青空、そしてエメラルドのような美しい色をした海がある海域にポツンと一つの島があった。
太古の昔からその命を紡いできた者たちが暮らしていた島ー『ラゴス島』に車椅子に乗ったエルザが生まれたばかりの女の子の赤ちゃん『エウル』を抱えてある墓の前に来ていた。
出産でまだ体力が回復していないのにも関わらず、どうしてもここに来たいと言って聞かないために特別にこの地に来たのである。
エルザの少し後ろには護衛役の響たちとS.O.N.G.所属の医者が待機していた。
戦いの後、すぐにガウの捜索が自衛隊・S.O.N.G.諜報部、怪獣軍団により行われたが発見されることは無く、捜索は打ち切られ『MIA』(Missing In Actionの略で「作戦行動中行方不明」、「戦闘中行方不明」の意)の扱いとなり、故郷のラゴス島に建てられた仲間たちの石碑の隣にガウの墓は建てられていた。
エルザの前にある墓はそのガウの墓である。
エルザ「ガウ…」
これから幸せな時間が訪れると信じていたのに、最愛の人が戦死してしまったという悲報を聞いて最初は受け入れられなかった。
エルザ「ガウ…私たちの娘であります。貴方にも…この子の顔を…見せたかった…うっ、うぅ…うわあぁーーーーーーーーーーーーーー!!!」
墓に向かってエルザは自分とガウの子であるエウルが無事に生まれたことを報告し、その直後に涙を流した。
涙はエルザの頬を伝い、エウルの頬に落ちる。
響「エルザちゃん…」
涙を流すエルザの姿に響はどうにか出来ないかと考えていると肩にトンと何かを置かれた感じがして見るとクリスが響の肩に手を置いていた。
クリス「気持ちは分かるが今は何も言ってやるな」
響「………」
クリスに言われて響は何も言えなかった。
エルザは夕方まで泣き続けた。
幸せにすると誓ったはずの最愛のパートナーが地球を守るために戦死した。
地球を守るためとはいえ、生きて帰ってきてほしかった。
それが叶わない願いであったことへの悲しみがエルザを泣かせる。
そんなエルザの姿を響たちはただただ、見守る事しか出来なかった。
サンドロスが倒されたことで地球に侵入した残りのスコーピスたちは地球人類と怪獣軍団の各国連合軍の前に敗北。
地球に侵入したスコーピスは全て倒されたと国連により発表された。
しかし地球側は1匹のスコーピスが人知れず宇宙へ脱出したことに気付いていなかった。
そのスコーピスは主を失っていながら遥か彼方の銀河系外にあるマゼラン大星雲へ向かっていた。
大マゼラン星雲のとある宙域に来たスコーピスの目の前には自身よりも巨大な船体をした宇宙艦艇がひしめいていた。
その艦艇群の前には地球によく似た姿をした1つの星があり、宇宙空間からでもその星の大地が黒く焦げて燃やされている事が分かった。
スコーピスは艦艇群の中で中央にあるひときわ巨大な船体をした軍艦に近づいた。
スコーピスの接近に気づいたその軍艦は船体の艦底部を開き受け入れ態勢をとった。
受け入れ態勢をとった軍艦にスコーピスは戸惑うことなく入った。
スコーピスが入ると艦底部の入り口は閉じた。
スコーピスの入った軍艦の艦橋と思われる場所に艦を操る部屋があった。
そこには何人もの宇宙人たちが機器を扱っていた。
オペレーター「ヴァロルド将軍、地上部隊より入電!ビーメラ星制圧完了とのことです!」
白地に蒼い模様があり、左目に眼帯をした鳥人間のような宇宙人ー『ヴァロルド』将軍に言う。
ヴァロルド「虫ドモメ…ヨウヤク大人シクナッタカ」
オペレーターの報告を聞いてヴァロルドは言う。
鳥人間「シカシ、コレデ大マゼラン星雲カラ小マゼラン星雲ノ全テヲ貴方様ノ支配下トナリマシタ、閣下」
振り向いて艦橋に用意されている椅子に座っているガウによく似た容姿に、片目を髪で隠している少年に言った。
?「支配下に置いたとて、大マゼランも小マゼランもつまらん星ばかりだったがな」
ヴァロルドに言われてその人物はつまらなそうな口調で言う。
すると後ろの自動ドアが開いて、1人の軍服のような服を着た人物が入ってきた。
?「ヴィズか。何用だ?」
軍服の人物―前にサンドロスが通信した時に最初に出た『ヴィズ』と呼ばれる人物に少年は聞く。
ヴィズ「閣下。先程サンドロス配下ノ、スコーピスガ帰還シマシタ」
少年にサンドロス配下のスコーピスが帰還したことをヴィズは報告する。
?「ほう、帰ってきたか。それで結果は?」
ヴィズ「ソレガ…ソノ…」
少年に結果を聞かれてヴィズは言葉に詰まる。
?「…そうか、サンドロスは敗北したか。ふっ、当然の結果だな」
言葉に詰まったヴィズを見て少年はそう言うと席から立ち上がった。
ヴィズ「カ、閣下、ソレハ最初カラ、サンドロスガ敗北スル事ヲ見越シテイタトイウ事デスカ?」
?「まあな。サンドロス程度の奴に陥とされる星ならば最初から執着など持たん。あの星には最強の生命体がいるのだから」
ヴィズ「最強ノ生命体?」
?「貴様が知る必要は無い。ヴァロルド!」
ヴァロルド「はっ!」
?「資材を確保し地上部隊を回収した後、全軍を招集せよ!」
ヴァロルド「ぜ、全軍でありますか!?」
?「そうだ、全軍だ!集結が完了次第、進軍する!!」
ヴァロルド「はっ!!」
少年の指示を聞いてヴァロルドは準備をするために一旦艦橋から出て行った。
ヴィズ「閣下、イッタイ何処へ進軍ヲ?」
進軍準備の指示を聞いてヴィズは聞く。
?「決まっている。銀河系第三惑星・地球だ!!!」
ヴィズに目標を聞かれて少年はその目標を『銀河系第三惑星・地球』であると示した。
スペース(待っていろ、兄者、父上。このスペースが必ずや2人を全ての宇宙の頂点に据えて差し上げましょうぞ)
鋭い眼光を地球がある銀下系の方向に向けながら少年―『スペース』はそう想いを馳せるのだった。
サンドロス率いる軍団との戦いは終わった。
この戦いで地球は多大な犠牲を払ってしまったが勝利することが出来た。
異星人とでも信じあうことはできるという事実を得ることが出来たのは地球側にとってより良いものになっただろう。
しかし一部の者たちにとってこの戦いで心に大きな爪痕を残すことになったのもまた事実である。
だがその者たちにはまだ安息の時は訪れはしない。
すでに新たな戦いと出会いが彼女たちに待ち受けていた。
?「ブレイブ・アーップ!!!ジェイデッカー!!!!」
?「了解!!!」
次回!
任務中に並行世界に来てしまったマリア、切歌、調、リルの4人。
そこで彼女たちを待っていたのは……。
―ブレイブアップ!ジェイデッカー!!―
?「ホールドアーップ!ブレイブポリスだ!」
勇者警察、登場!!