戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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XD・勇者警察篇
第635話 始まりの予感


2020年も残すところあと1カ月を過ぎた昨今。

 

響たちは日本国離県島(旧朝鮮半島)の山の中に来ていた。

 

弦十郎「今度の作戦はこの山の中に隠れているテロ組織を一網打尽にすることだ」

 

海上自衛隊離県島駐屯地基地に停泊している本部の発令室にて弦十郎は今回の作戦内容を響たちシンフォギア装者とリルに伝えていた。

 

マリア「テロ組織の摘発?」

 

翼「失礼ですが司令。それは警察機構の管轄では?」

 

テロ組織の摘発任務に首を傾げて翼が聞いてきた。

 

S.O.N.G.は国連直轄のタスクフォースであるがその内容は人類がおおよそ対処しきれないノイズや宇宙怪獣・宇宙人などの超超常現象や怪獣が関わってしまっている怪異事件に限定されている。

 

テロ組織の摘発は基本的には警察か各国軍、最悪は国連軍が動いているのだ。

 

弦十郎「本来はな。だがコイツが関わっているとなると話しは別だ」

 

翼の疑問を聞いて弦十郎がそう言うとメインスクリーンに藤尭がある写真を映し出した。

 

眼鏡をかけた東洋人の男性で、年齢は顔からして50代くらいであった。

 

クリス「誰だ?」

 

弦十郎「コイツは元パヴァリア光明結社の残党錬金術師の1人『キム・ジェイン』だ」

 

調「残党錬金術師!?」

 

切歌「まだ残ってたデスか!?」

 

映し出した写真の男―パヴァリア光明結社残党錬金術師の1人『キム・ジェイン』を見て言う。

 

弦十郎「残党になる前はエルザくん曰く、腰巾着の幹部候補で、錬金術によるロボット制作を担当だったそうだ」

 

ジェインについて弦十郎はエルザから聞いていたことを話す。

 

エルザも元々はパヴァリア光明結社の残党錬金術師であったがその身は結社により不完全な怪物にされた経緯がある。

 

今は神であるシェム・ハにより完全な怪物へと変えられてしまったが同時にガウの妻(または怪獣軍団の皇太后)であり、1児の母でもある。

 

響「ロボットってもしかして…」

 

弦十郎「あぁ…エルザくんの保護者であるヴァネッサ氏を機械の体へと変えたのにも関わっている」

 

リル「かうかう…」

 

訳:やっぱり…

 

ジェインがエルザの保護者(家族)の1人であったヴァネッサをファウストローブの事故後に機械の体へと改造したことに関わっていると聞いて全員の手に力が入る。

 

弦十郎「他の幹部階級の腰巾着であったがアルカ・ノイズ、ノイズ怪獣、デーボモンスターノイズのいずれかを所持している可能性が高い。今回、我々がこのテロ組織の摘発任務を受けたのはこの男がテロ組織と手を組んでいるとのことだ。我々の目的は自衛隊と協力してテロ組織を摘発し、このキム・ジェインの身柄を確保することだ!」

 

今回のテロ組織の摘発の真の目的を話す。

 

普段なら警察の仕事であるのだが自衛隊が動くのにはアルカ・ノイズなどの異端文明を使用していることが起因しており、これらを警察が相手にするには荷が重すぎるとのことである。

 

弦十郎「すでに怪獣軍団旧韓国方面軍がテロ組織アジト周辺を包囲している。リルはこのブリーフィング後に軍団に合流、指揮してくれ。我々は上空から陸上自衛隊空挺部隊と共にアジトに奇襲を仕掛ける、敵が異端兵器を使用してくる可能性が高いため最前線に我々が出ることになる。気を抜くなよ!作戦開始はいまから1時間後の19:45だ!」

 

『了解!!』

 

リル「かう!」

 

作戦の開始時間を聞いて響たちとリルは返事をする。

 

 

 

ブリーフィングが終わって響は未来と電話で話をしていた。

 

未来『そっか、また海外に行くんだね』

 

響「うん。ごめんね、未来。せっかくエルザちゃんのお見舞いに行こうって話をしてたのに」

 

未来に任務のことを話して謝罪する響。

 

ガウとの娘であるエウルを産んだばかりのエルザのお見舞いをする約束をしていたのだが任務で行けなくなったということなのだ。

 

未来『ううん。こっちは大丈夫だよ。任務ならしょうがないし。気を付けてね、響』

 

響「うん、分かってるよ未来。いってきます」

 

未来『いってらっしゃい』

 

話し終えて電話を切る響は両腕を上にあげて伸びをしながら言った。

 

響「よーし、頑張りますかぁ!!」

 

 

 

19:45。

 

冬の時期に入って19時の時間帯はすでに真っ暗の夜となっていた。

 

そんな夜空を一機の巨大な飛行機が飛んでいた。

 

陸上自衛隊所属の航空機『C-4』である。

 

C-4内部には上下にそれぞれ固定されて積まれている人型ロボット―陸上自衛隊空挺部所属、篠原重工製純国産軍用レイバー『ヘルダイバー』があり、そこから少し上段になっている空間に響たちは空挺団の自衛隊と共にいた。

 

機長『まもなく降下ポイントに到着する。各員、降下準備!』

 

C-4を操縦する機長のアナウンスが聞こえて全員が準備を始める。

 

降下ポイントが近づいてきたのかレイバーのある後部のハッチが開き、同時に響たちのいる中間部のハッチも開いた。

 

「総員、降下ぁ!!」

 

ハッチ付近にいた自衛隊員の号令と共にハッチから空挺団員たちが一斉に飛び降りる。

 

同時に落下傘が開き夜の空に舞う。

 

響たちも空挺団と共に飛び降りてコンバーターユニットを出した。

 

響「Balwisyall Nescell gungnir tron…」

 

クリス「Killter Ichaival tron…」

 

翼「Imyuteus amenohabakiri tron…」

 

マリア「Seilien coffin airget-lamh tron…」

 

切歌「Zeios igalima raizen tron…」

 

調「Various shul shagana tron…」

 

ギアの起動詠唱をそれぞれ歌い、ギアを纏い地面に着地した。

 

マリア「全員いるわね?」

 

着地してマリアは全員がいることを小声で確認する。

 

響「はい!いま…」

 

クリス「大声出すな、バカ!!!」

 

気合の入った声で言いかけた響の頭にクリスが空手チョップを叩き込んで黙らせる。

 

響「痛いよ、クリスちゃん…」

 

頭を抑えながら響は言う。

 

クリス「お前が大声出すからだろ!!」

 

響「クリスちゃんもけっこう大声…」

 

クリス「お前のせいだろうがー!!!」

 

怒ったクリスは響の頬を思いっきり引っ張る。

 

マリア「2人とも、奇襲作戦なんだから静かにしなさい」

 

漫才をする2人にマリアが注意する。

 

響「すみません…」

 

クリス「悪い…」

 

マリアに言われて素直に謝る2人。

 

まるでお母さんに怒られる子供のように。

 

翼「とにかく、敵の本拠地へ急ぐぞ。私たちが先行せねば空挺団が動けないからな」

 

そう翼が言うと響たちは移動を始めた。

 

それに続くように空挺団も続く。

 

 

 

数十分後、先行していた響たちの前にコンクリートの壁が見えてきた。

 

調「あれがテロ組織のアジト」

 

切歌「ここからどうするんデス?」

 

コンクリートの壁を前に止まって聞く。

 

翼「ここからは怪獣軍団の出番だ」

 

マリア「こっちから合図を送ってリルが率いた怪獣軍団が正面から攻撃、敵を引き付けている内に私たちがこの壁を壊して侵入、残党錬金術師のキム・ジェインの身柄を抑えるわ」

 

ここからのことをマリアは教える。

 

クリス「ここまでは順調…」

 

隊員A「な、なんだこいつ!?」

 

クリス「ん?」

 

順調と言った矢先、後ろから来ていたはずの空挺団の隊員の不穏な声が聞こえてきた。

 

?「グルルルル…グオォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

隊員A「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

獣の声のようなのがしたかと思いきや隊員の悲鳴が周囲に響く。

 

クリス「何だ!?」

 

響「何かあったの!?」

 

翼「マリアたちはここにいて突入を準備してくれ!私たちが様子を見に行く!行くぞ、立花、雪音!!」

 

響・クリス「「はい!/おう!」」

 

マリアたちに突入を任せて響、翼、クリスの3人は空挺団のいる方へ走っていく。

 

それからすぐに自動小銃の発砲音が響き渡ってきた。

 

 

 

隊員B「うわあぁッ!!!!!!」

 

自動小銃で迫る者に攻撃する。

 

しかしその者は何十、何百の銃弾を受けてもその歩みを止めることはなかった。

 

その者は乾いたような薄紫色の皮膚、鋭い牙を持ち常に涎を垂らす口、古い電球のように揺らいで赤く輝く眼球といった醜悪な外観を持っているのが特徴をしていた。

 

すでにその者の周囲には血塗れの同僚たちの成れの果てが転がっていた。

 

?「グオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

自動小銃弾丸をものともせずにその者は腕を伸ばして攻撃していた空挺団員を掴むと自身の方へ引き寄せた。

 

?「グオォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

隊員B「ぎゃあぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

 

自身の方へ引き寄せた空挺団員の首にその者は人とは明らかに違う形状の歯が並んでいる口で噛みついた。

 

響「うおりやあぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

?「!?」

 

そこへ背後から響が気合と共にドリルナックルをその者へ放った。

 

放たれたドリルナックルがその者の顔面を粉砕した。

 

クリス「おまけだぁ!!!!!!」

 

続けて正面からクリスがガトリングガン型にしたアームドギアを掃射、その者の体中を穴だらけにする。

 

その隙に翼が噛まれていた団員をその者から引き離した。

 

響「翼さん、その人は?」

 

合流した響が脈を診ている翼に聞くと翼は首を横に振って団員がすでに死亡したことを伝える。

 

響「そんな…」

 

団員が死亡したと聞いて間に合わなかったことを悔やむ。

 

クリス「おい、悔やんでる場合じゃねーぞ!!!!」

 

「「!?」」

 

クリスに言われて前を見るとさっきの者がボコボコと傷口を膨らませると元通りに再生、さらに響が粉砕した頭部も何事もなかったように再生していた。

 

?「ヒッヒッヒッヒッ…ヴゥゥゥ……」

 

息切れのような奇妙な声を発しながらゆっくりとした歩みで接近する。

 

翼「再生しただと…」

 

響「それでもどこか弱点が…」

 

臨戦する響たち。

 

その時、その者の後ろ―テロ組織のアジトが光、周囲を昼間のように輝かせた。

 

翼「なんだ!?」

 

クリス「今度はいった何が起きてんだ!?」

 

光の眩さに目を逸らす響たち。

 

しばらくして光が収まって目を開けるとさっきまで対峙していた者の姿が消えていた。

 

クリス「奴はどこに?」

 

翼「気を付けろ、どこから来るか分からんからな」

 

互いに背中合わせにして背後からの攻撃を防ぎつつ、さっきの者に警戒する。

 

するとギアに搭載されている通信機から弦十郎の声がした。

 

弦十郎『状況はどうなっている!?』

 

翼「叔父様…それが空挺団の一隊が謎の敵に襲撃されて全滅、こちらも応戦しまたが攻撃が効かず…」

 

弦十郎に聞かれてさっきまでのことを報告する翼。

 

弦十郎『謎の敵だと?いや、それよりもテロ組織のアジトへ急行してくれ!!』

 

響「何かあったんですか?」

 

弦十郎『確保対象の野郎がヤケを起こして自爆装置を発動させた!突入したマリアくん、切歌くん、調くん、リルの反応が消えた!安否を急いで確認してくれ!!』

 

『!?』

 

弦十郎のこの言葉に響たち3人に衝撃が走った。

 

クリス「おい、それってどういうことだよ!?」

 

翼「聞くより確認だ!」

 

響「急ぎましょう!!」

 

4人の安否を確認するために急いでテロ組織のアジトへ向かう3人。

 

そんな3人の姿を木の上から見つめる1人の人物がいたことに誰も気付きはしなかった。


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