戦姫絶唱シンフォギア PROJECT G   作:ダラケー

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デッカードたちの前に現れた黒い巨大生物。

その正体はマリアと同じ世界にいる最強生命体『2代目怪獣王 ミレニアムゴジラ』ことリルであった。

無事にマリアと合流したリル。

しかし、新たな戦いが待ち受けているとはまだ知らなかった。


第644話 海水浴場の地獄

東「怪獣王 ゴジラ?」

 

冴島「あぁ。正式名称は『2代目怪獣王 ミレニアムゴジラ』というそうだ。人間体での名前はリル」

 

総監室にて東はマリアたちと合流したミレニアムゴジラこと、リルのことを話していた。

 

東「2代目といいますともしや…」

 

冴島「そう、彼の父親がマリアくんのいた世界の地球最大勢力、怪獣軍団を造った初代怪獣王 ゴジラ。人間体での名前はガウというそうだ」

 

リルの父にして最初のゴジラであるガウのことも触れつつ、マリアたちの本来いた世界の地球にある最大勢力の『怪獣軍団』の名を出す。

 

冴島「リルくんは一部の人間を除いて人間嫌いの初代と違い、人間とは友好的な立場をとっている。理由としては幼いころから人間と長く接していたからだと思われる」

 

ガウはかつて旧日本軍と仲良くはなったが戦後に行われたアメリカの原爆実験の犠牲となり、人類へ裏切りと捉えて復讐に走ったことがある。

 

それが後に『第一次怪獣軍襲来事変』である。

 

東「バイオ生物とまた違った巨大生物…あの女がミレニアムゴジラを使い、犯罪を犯す危険性は無いのでしょうか?」

 

自分たちの世界に蔓延るバイオ技術により生み出される違法生物『バイオ生物』とは違う存在の怪獣たちに東は危惧する。

 

冴島「無論、君の心配も分かる。だが、マリアくんが止めずにあのまま防衛軍とぶつかっていれば、間違いなく防衛軍は壊滅していた。そんな力があるのなら、最初からその力を使っているハズだ。マリアくんに感謝するしかあるまい」

 

東「…………」

 

冴島の言葉を聞いて東はそれ以上は何も言わなかった。

 

 

 

マリア「はぁ~……」

 

その頃、マリアはデッカールームの一角にある椅子に座って思いっきりため息を吐いていた。

 

理由は先日の防衛軍のせいあに放った一言だった。

 

マリア『母親代理よ!!』

 

マリア(あぁもう!勢いとはいえ、なんであんなこと言ったのかしら!?母親代理って思いっきりたやマを全肯定してるじゃないのよ!!!!!)

 

リルとの衝突を回避させるためとはいえ、自分が今まで否定していた『ただの優しいマリアママ』を思いっきり肯定してしまうような発言にマリアは恥ずかしくなっていた。

 

リル「か、かうかう?かう」

 

訳&メモ:ど、どうしたの?マリア

 

マリアの様子が心配になってリルは聞いてきた。

 

マリア「大丈夫よ、リル。心配してくれてありがとう」

 

心配されてマリアはそう言う。

 

デッカード「凄いな。漢字もしっかり書けるなんて」

 

リルのメモを見てデッカードは言う。

 

マクレーン「見た目はボスより幼いのに大したものだ」

 

マリア「リルは見た目以上に歳を取ってるわよ?」

 

ドリルボーイ「え、そうなの?」

 

マリア「リルもそうだけど、この子の父親のガウも幼い見た目と違って私たち人間よりもずっと長生きしてるのよ」

 

パワージョー「長生きって言うとどれくらいなんだ?」

 

マリア「そうね…確かガウは1億3000万くらいはなかったかしら?」

 

シャドウ丸「長生きのレベルを超えてんぞ、それ!!」

 

1億3000万歳というロボットでも耐えられない程の長い時を生きてきたガウに驚く。

 

デューク「では、まさか彼も…」

 

そんなガウの子であるリルもまさか億越えに超々長寿ではと思い聞く。

 

マリア「安心して。まだリルは生まれてまだ10歳行くか行かないかくらいよ」

 

リル「かう!」

 

リルも超々長寿と思っているデッカードたちにマリアは言うとリルも肯定するように鳴く。

 

ガンマックス「そうかい。それにしてもアンタらのいた世界は常識の範疇を超えてるな」

 

マリア「まあ、ほとんどフィクションの中でしかお目にかかれない事件ばかり起きてるから、こことはかなり常識に差があると思うわ」

 

デッカード「確かに。前に君たちから聞いた話にあった地球怪獣、宇宙怪獣、錬金術、ノイズ、オートスコアラー…」

 

デューク「そして神と呼ばれた種族、アヌンナキ…どれも私たちの世界ではフィクションの中でしか目にできなものばかりだ」

 

マリアから聞いた話に出てきた今までの強敵たち、それら全てはデッカードたちの世界ではフィクションの中でしか見たことが無いものばかりだった。

 

マリア「それでも、私たちの世界には貴方たちのように心を持ったロボットはいないわ」

 

超AI搭載して心を持ったデッカードたちのようなロボットは確かにマリアたちの世界でも存在しない。

 

マクレーン「確か、そちらの世界には人が乗って操縦するロボットしかないと…」

 

マリア「えぇ。自我を持ったロボットだけで言えば色々あるけど、科学で作られた心を持ったロボットとなると全く無いわ」

 

ドリルボーイ「空中戦艦とかあるのに、変なの」

 

マリア「そこまでまだ科学が追い付いていないのよ。それ以前に科学じゃ証明できない絡みの事件ばかり起きているから」

 

科学では証明できない事件、錬金術や神話の神々の名を冠した強敵たちとの激戦が多く、科学が超AIのような物を開発できていないという。

 

話がはずんでいる時、警報音が響いてきた。

 

アナウンス『海水浴場にてバイオ生物と思われる巨大生物が出現!くりかえす、海水浴場にてバイオ生物と思われる巨大生物が出現!』

 

デッカード「事件か!?」

 

アナウンスを聞いて立ち上がるデッカード。

 

パワージョー「くそ、ボスは今日学校だぞ!!」

 

勇太は警察官とはいえ、小学生である。

 

今日は学校で授業を受けている時間帯だった。

 

勇太がいなければ、デッカードたちは合体出来ないのである。

 

ダンプソン「合体無しで。自分たちだけで対処するしかないでありますな!」

 

マリア「私とリルも行くわ!またノイズ怪獣だったらいけないから!」

 

リル「かうかう!」

 

デッカード「よろしく頼む。よし、行くぞ!!」

 

『おう!!』

 

デッカードの号令でブレイブポリスは出動する。

 

 

 

海水浴場では戦場の様な状況であった。

 

男性客「うわあああああああああっ!!!!」

 

女性客「きゃあああああああああっ!!!!」

 

海面にいた男女の客2人が体を触手のような物に絡まれて海中に引きずり込まれていた。

 

引きずり込まれて少しすると海面にさっきの男女の物と思われる血の付着した水着が上がってきた。

 

その下を20Mはあろう体躯を持った巨大なオオサンショウウオ型の怪物が泳ぎ、次の獲物に狙いを定める。

 

海水浴に来ていた客たちは我先にと岸へあがろうとしていたが、岸は人でごった返していてなかなか上がれず、まだ海にいる客たちは怪物の起こす波に飲まれて沖へ戻されてしまっていた。

 

そんな人々をあざ笑う1人の人物がいた。

 

キム・ジェインだ。

 

ジェイン「フフフ、早く来るがいい、ブレイブポリス。早くせねば多くの不完全な者たちがデルラゴの餌となっていくぞ」

 

海水浴客たちを襲っている『デルラゴ』と呼ばれる怪物を見ながらジェインは言う。

 

するとサイレンの音を鳴らしながら、パトカー、救急車、クレーン車、ショベルカー、ダンプカー、ドリルジェット機、ジェット機、白バイが近づいてきていた。

 

ジェイン「来たか、ブレイブポリス!」

 

待ってましたと言わんばかりにジェインは言うと手から小さなメモリーチップを出した。

 

ジェイン「デッカードの超AIをコピーして来い!」

 

そう言うとジェインはメモリーチップに錬金術を掛けて浮遊能力を付与するとコバエの様にメモリーチップは動きだして、高速でその場を去っていった。

 

 

 

現場に到着したデッカードたち。

 

パトカー形態のデッカードからマリアとリルが降りるとデッカードは人型へ変形し、それに続くようにマクレーンたちもビークルモードから人型へ変形する。

 

デッカード「あれか!」

 

激しく波を起こしながら移動しているデルラゴを見つけて叫ぶ。

 

マクレーン「なんて速さだ。まるでモータボートだ」

 

パワージョー「んな生き物いてたまるかよ!」

 

移動する怪物を見てそう言いながら全員が銃を取り出す。

 

デッカード「よし、人々に当たらないように奴に一斉射だ!」

 

デッカードの指示で他のメンバーは頷く。

 

デッカード「一斉射…」

 

女性「ま、待ってください!」

 

デッカード「!?」

 

一斉射撃を開始しようとした矢先、1人の女性が止めに入った。

 

女性「あの怪物の近くに子供と夫が流されてるんです!」

 

デッカード「なに!?」

 

女性の言葉を聞いてデッカードは驚いてセンサーを起動させると確かにデルラゴの後ろに大人と子供の反応があった。

 

ダンプソン「このままではあの親子にも弾が当たってしまうであります!」

 

ドリルボーイ「ど、どうするの!?」

 

デッカード「シャドウ丸、空中から親子を助け出せないか!?」

 

シャドウ丸「出来ない事もないが、奴に気づかれでもすれば即時にアウトだぞ。速度はおそらく向こうの方が上だ」

 

デッカード「くっ、ではどうすれば…」

 

どうするべきかと考えるデッカード。

 

リル「がうぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

ミレニアムゴジラ「ゴガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

考えているとリルが雄たけびを上げてミレニアムゴジラへと変身した。

 

変身したミレニアムゴジラはそのままデルラゴがいる海に入っていく。

 

デューク「いったい何を?」

 

マリア「リルは親子を助けに行ったのよ」

 

ガンマックス「無茶だ!相手は水生生物なんだろ!?いくら怪獣王でも水中じゃ…」

 

マリア「大丈夫よ。怪獣王の名はだてじゃないんだから」

 

無茶だというガンマックスにマリアはそう言い返した。

 

 

 

子供「うわーん、ママー!怖いよー!!」

 

海面で父親に抱きかかえられている子供が泣きじゃくっていた。

 

父親「大丈夫だぞ、ブレイブポリスが来てくれた!」

 

子供を抱えて何とか溺れない様にしつつ、元気づける父親。

 

今日は家族と水入らずでの旅行で、海水浴もその一つだった。

 

しかし、デルラゴの襲来で楽しい思い出は一転して地獄へと変わってしまった。

 

デルラゴ「アラダジャアァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

父親「!?」

 

鳴き声を聞いて見るとデルラゴが口を開けて接近してた。

 

どうやら子供の泣き声を聞いて向かってきていたのだ。

 

ここまでかと思った時だった。

 

?「ゴガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

 

デルラゴの下から別の声が聞こえたかと思いきや炎の様な背鰭が突きあがってきてデルラゴを空へ舞い上げた。

 

父親「い、今のは…!?」

 

デルラゴが空へ舞い上がったのを見て唖然としていると突然自分たちのいる場所が盛り上がった。

 

50Mくらいまで上昇して止まったのを感じて辺りを見回すと、自分たちが巨大な手の上にいることに気が付いた。

 

ミレニアムゴジラ「グルルルルルル………」

 

喉を鳴らす音を聞いて見上げるとミレニアムゴジラが様子をうかがっていた。

 

咄嗟に子供を守ろうとする父親だが、ミレニアムゴジラは2人の無事を確認すると岸まで歩いていき、膝をついて姿勢を低くするとゆっくりと2人を地面に下した。

 

父親「た、助けてくれた?」

 

巨大な怪物であるミレニアムゴジラに助けられて父親はまたも唖然としていた。

 

ミレニアムゴジラ「ゴガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

親子を下したミレニアムゴジラは立ち上がって振り向くと威嚇の方向を上げると丁度、舞い上がっていたデルラゴが海面に叩きつけられて水柱が上がっていた。

 

デルラゴ「アラダジャアァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

海面に叩きつけられながらもダメージを感じさせずにデルラゴは雄たけびを上げると口に蠢めいている触手のようなものを伸ばしてミレニアムゴジラの四肢に絡みつかせた。

 

デルラゴ「アラダジャアァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

ミレニアムゴジラを引っ張って転倒させようとした。

 

しかし、引っ張れなかった。

 

ミレニアムゴジラ「グルルルルル………」

 

ミレニアムゴジラは踏ん張りもせず、ただそこに立っていた。

 

いくらデルラゴが巨大怪物と言われようとたった20M前後の体躯だけ、対するミレニアムゴジラは身長55M、体重2万5000tを誇る。

 

身長だけで2倍はあるミレニアムゴジラがデルラゴに引っ張られただけで転倒などするわけがなかった。

 

ミレニアムゴジラ「ゴガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

 

自身を引っ張れないデルラゴの触手を掴むと一鳴きしながら釣りでもするが如く引っ張り上げると、再びデルラゴの体が上空へ舞い上がる。

 

ミレニアムゴジラ「ゴガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

上空へ舞い上がったデルラゴにミレニアムゴジラは最強の武器である放射火炎を発射、デルラゴを頭から木端微塵に粉砕した。

 

デルラゴ「アラダジャアァァァァァ…………」

 

木端微塵に粉砕されるデルラゴの断末魔が周囲に響き渡った。

 

デッカード「す、すごい…」

 

デューク「あれが怪獣王の実力……」

 

自分たちだとほぼ確実に苦戦していただろう相手を圧倒したミレニアムゴジラにデッカードたちは唖然としていた。

 

ミレニアムゴジラ「グルルルルルル………」

 

デルラゴを倒して、ミレニアムゴジラは自身の四肢に残されているデルラゴの触手を見ると全て外して岸に叩きつけると放射火炎で焼き払った。

 

生きている鼓動は感じないがどことなく、この触手は危険なものと本能で悟り焼き払ったのだ。

 

 

 

ところ変わって、別の場所で闘いを見ていたジェインはデルラゴを倒されたことに少し動揺していた。

 

ジェイン「デルラゴを…ふん、まあいい。囮としては役立った。こちらの真の目的は達成された」

 

そう言ってジェインの手には錬金術で浮遊能力を付与された小さなメモリーチップが戻ってきていた。

 

ジェイン「これで完成する。私の錬金術により生み出される最強無敵国士無双の完全なるロボットが!ふははははっ!!!!!!!」

 

戻ってきたメモリーチップを見てジェインは高笑いして言うのだった。


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