演習場から数十km離れた場所に自衛隊の駐屯地とレイバーの整備ドッグがあった。
その整備ドッグ内部には演習を終えたヘルダイバーや他部隊のヘルダイバーが直立して並んでいた。
演習を終えたヘルダイバーに付いたペイントを整備員たちがモップや雑巾で拭き取り、足元ではパイロットたちが腕立て伏せをしていた。
そんなヘルダイバーが並ぶドッグの一角に一際は巨大なロボット、スペルグフが立っていた。
足元にはルリア星人・スーノとファンタス星人、タイニーたちがいた。
スペルグフの胸部のハッチが開き、中からパイロットスーツを着たユウコがコックピットから降りてきた。
ユウコ「ぷはっ!」
地上に降りたってヘルメットを取るユウコは頭を左右に振る。
タイニー「どうだった、スペルグフの乗り心地は?」
ヘルメットを脱いだユウコにタイニーがそう聞いてきた。
ユウコ「最高とまでは言いませんが、前世で扱っていた機体より扱いやすいです」
タイニーに聞かれてユウコは正直な気持ちでそう言った。
理由としてはかつて前世の世界でユウコ自身が乗っていたのは2030年代に、はくちょう座V1357恒星系第3惑星 ビルサルディアの異星人『ビルサルド』の技術提供を受けて富士教導団で開発され、『オペレーション・エターナルライト』にも投入された『38式機動戦闘服ジャガー日本式』の技術を受け継いだ採掘機能を有した惑星開拓用汎用機であるパワードスーツ。
それを自身が死ぬきっかけになった、意思を持つ自律思考金属体『ナノメタル』を用いて戦闘用に再設計した高機動人型有人兵器『ヴァルチャー』である。
ヴァルチャーは長い四肢と猛禽類に似た頭部を備えた姿で、背面のロケットエンジンを装備した飛翔用ウイングによって空中を高速で飛行することが可能。
さらに骨格や装甲、エンジンの内部機構まで操縦者の特性に合わせてカスタマイズ可能というもの。
加えて防御力、攻撃力、機動性ともに圧倒的に向上しており、当時ユウコ達が機動用で用いていたホバーバイクの300機分に相当する火力を有していた。
しかし、その高機動・高性能な性能上、搭乗者の身体に激しい負担を強いるため、真に性能を引き出せるのは身体の頑強なビルサルドや限られた人類に限られていた。
それに比べればこのSBF-08-W(スペルグフW型)は同じ異星人文明の技術力で開発されていながらも、ヴァルチャー以上の高機動・高火力・高性能ながら操縦のしやすさとパイロットへの負担は断然に良い方であったからだ。
タイニー「それはよかった。それにしても、前世で地球外技術で造られた機動兵器を操縦したことあるって聞いた時は半信半疑だったよ」
ユウコの感想を聞いてタイニーは嬉しそうに言う。
このスペルグフW型は帝国軍からリュグローたちが逃れる際に偶々逃げ込んだ人工惑星が廃棄された帝国軍の基地であり、破損した状態で発見されたモノを修理した機体である。
しかし扱えるものがリュグローたちにはおらず、長年お荷物状態であったがユウコがかつて異星人文明の技術で開発された機体を操縦したことがあるとのことでパイロットとして抜擢されたのが経緯である。
タイニー「でも今はその言葉を信じれるかな。アレだけこの機体を動かせるんだからね」
そうタイニーは言う。
理由としては化学が発達したバルタン星出身であるタイニーからすれば前世などという非科学的なことは到底信じられなかったが、先程の演習を見て信じられるようになっていた。
?「ユウコさーん!」
呼ばれて振り向くと響たちが向かってきていた。
ユウコ「みなさん!」
向かって来る響たちに囲まれながらユウコは全員を見る。
響「凄かったですよ!自衛隊のレイバー6機も相手にして勝っちゃうなんて!」
開口一番に響が言う。
切歌「もう、映画のワンシーンみたいで興奮ものデス!」
調「うん、すっごくカッコよかったです!」
響に続くように切歌と調もユウコの駆るスペルグフW型の演習を思い出しながら言う。
ユウコ「そんな…私よりこの機体の性能が良かったんですよ」
マリア「謙遜しないで。精鋭揃いの空挺団所属のレイバー6機を相手にして全機撃破したんだから」
翼「そうだぞ。これは誇っていいことだ」
クリス「いくら性能がいい機体でも、乗る奴がしっかりしてないと意味ないからな」
謙遜するユウコにマリアたちは言う。
ユウコ「そ、そうですかね?」
マリアたちに言われて少し恥ずかしいのか頬を赤めらせていた。
不破「本当に凄いわね貴女」
今度は不破が近寄って来ながらユウコに言う。
ユウコ「不破二尉…!」
前世の癖で
不破「敬礼なんてしなくていいわ。ねえ、それより貴女、自衛隊に入らない?」
ユウコ「え?」
不破「本音を言うと自衛隊はいつも人手不足でね、貴女のような凄腕のパイロットをぜひスカウトしたいのよ」
ユウコ「いえ、あの私は……」
突然の勧誘に圧されてユウコは戸惑ってしまう。
響「ち、ちょっと待ったぁ!」
そこへ響たちが割って入ってきた。
響「不破さん!ユウコさんは私たちの仲間なんですから引き抜かないでください!」
切歌「その通りデス!」
不破「あらあら、人気者ね。まあいいわ、来るときはいつでも言ってね、歓迎するわ」
必死になって反論する響たちを見て不破はそう言って背を向けていまだに腕立て伏せをしている部下たちの方へ向かって行く。
響「だから、ユウコさんは…!」
不破に向かってまだ反論しようとした響だが、その時全員の通信端末に着信が鳴り響いた。
響「はい、こちら響!」
弦十郎『全員、至急司令部に集まってくれ!緊急事態だ!』
通信端末を出して起動させると弦十郎が召集命令を出した。
翼「緊急事態?まさか、帝国軍が動き出したのですか?」
弦十郎『"動き出した"そう言っていいかもしれん』
翼の言葉を聞いて意味深に弦十郎は言う。
マリア「どういうこと?」
意味深な発言にマリアは聞いた。
弦十郎『帝国軍がさきほど冥王星基地から超巨大質量弾を地球に向けて発射してきたのを確認したッ!!!』
『!?』
弦十郎の言葉に聞いていた全員が驚き、目を見開き、口を大きく開けてしまうのだった。