あれから丸一日が過ぎた頃、此所はIS学園――今の時間帯は昼であるがしかし、今はピリピリとした殺伐的な空気と、オロロロとしつつも何処か慌ただしい空気が流れていた。
後者は元より、前者は学園にいる生徒や職員達の大半を占めている。怒り――そう言った感情があり、後者は戸惑いと言った感情が見て取れる。
龍は共通しているが彼女達が怒りと戸惑いで別れているのは昨日に起きた襲撃事件――それは一機のISがセシリアを瞬殺したあの忌まわしくも十分にも満たない襲撃事件。
いくら突然的とは言え、彼女達から見れば怒りと戸惑いしか無いだろう。それ以前に学園は今、職員達は困惑していた。
「取り敢えず皆さんも判る様に、あのISは何者かは判りませんのと、IS委員会からもあれは知らないと言う報告しかりません」
此所は職員室――職員室には学園にいる全ての職員が一人の五十代後半の女性用スーツを着た女性に説明をされていた。が、彼女達は困惑していた。
先の襲撃事件は愚か、その後にIS委員会にこの事を報告した物の残念な結果しか無かったからだ。本来なら授業中であるが自習と言うよりも、生徒達には寮に待機する様に言ったのである。
「謎のISらしき物を纏った者はその後に逃げましたが見逃してしまった事も報告しましたが、織斑先生に山田先生――オルコットさんの容体は?」
「はい――オルコットさんは治療の最中ですが命に別状はありません」
「そうですか……それを聞いて安心しましたが今は、あのISは何者かは判らぬ以上、気を緩めてはいけません!」
女性の言葉に職員達は身を引き締める――教師として、生徒達に知識を与える者としての覚悟を示していた。そんな彼女達に女性達は頷く。
刹那、テレビが点き始めた。千冬や真耶、他の職員達はテレビが点いた事に驚く中、周りは近くの者達を見る。誰もテレビのリモコンを手にしてはいない――否、誰もそう言った行動をとってはいない。
周りは困惑や疑問を浮かべる中、テレビの画面が突然砂嵐へと変わった。彼女達は再び驚くが砂嵐は消え、画面には一人の男が映っていた。
三上であった――彼は高級そうなイスに腰掛けているが何処か高そうにも感じられる。そして彼はスーツ姿であるが黒で統一されており、葬式用ともいえる。
そんな三上が映っているテレビを観た千冬達は何も判らず只々観ていた。しかし、テレビが点いたのは此所だけではない――学園全体にある全てのテレビが点き始めたのである。
寮でテレビを観ていた者達は兎も角、テレビを点けていない者達は突然の事で驚いていたのかも知れない。が、此所だけであるが全世界にも同じような光景が起きていた。
最もテレビが突然点いた訳ではなく、テレビの画面が突然砂嵐へと変わり、逆にまたラジオにも影響を及ぼし、砂嵐の様な物が聴こえる様な現象が起きていた。
全世界の人々はテレビかラジオが壊れたと思っているだろうがテレビを観ていた者達はそう思えざるを得なかったのと同時に、画面が変わった事に驚いたであろう。
IS学園の者達が、全世界の者達が疑問と困惑する中、三上は不意に口を開いた。
「皆さんおはようございます、次にこんにちは、そしてこんばんわ』
三上の言葉に全世界で、テレビを観ていた者達やラジオを聴いていた者達は一斉に肩を震わせる。彼の言葉に重みを感じるのと同時に、畏縮する。
突然の事とは言え、不意を突かれたとは言え、彼の挨拶とも捉える言葉に何処か緊張さえも走る。冷や汗を流す事も許されず、口を割る事さえも許されない様にも感じた。
全世界は三上の言葉に生唾を呑む事さえも許されないのを感じた。が、三上は言葉を続ける。
『皆さん、私は三上と申します――自己紹介は置いといて、突然の事とは言え、此れは中継であるのと、全世界の皆様には多大なるご迷惑をした事をお詫びすると共に、皆様にある事を教えてあげましょう』
「ある事だと?」
職員室に設けられたテレビを観ていた職員達で、千冬が名乗る様に訊ねる。テレビの向こう側とは言え、彼女は訊ねてしまったのだろう。
『皆様もご存知の通り、昨日IS学園で謎の機体が襲撃して来たのをご存知ですか? ……いえ、既に承知しているのかもしれませんね? 実はあれは、私が開発した、ある機体です』
三上は不意に不敵に笑う。刹那、IS学園や全世界の人々は驚愕する。ある者達は作業を止め、ある者達は箸を止め、ある者達は何かをしていたのを止めた。
彼等は三上の言葉に驚愕だけでなく、真実を突きつけられた事に愕然としていた。あれは何の為に造ったのか? あれは何で、何の為にIS学園を襲撃したのかが判らないでいた。
判るとすれば、三上がそれを全て話せば判る事――彼等はそう思いつつも、三上の言葉に耳を傾ける。デタラメとも思えるが何故か傾けてしまう。
あれを造ったのが束だった場合、どうにかなるだろうがあれは違う――ISを一瞬で倒した様な機体を、ISを愛している束が造るとは考えられない。絶対防御はある物の、あれは無かったのだ。
絶対防御を無効にする機体を束が造らないのは考えられない――と言うよりも、束はどんな性格をしているのかさえも判断出来ないからだ。
もう一つ、チャンネルを変えようにも何れも同じ番組であり、電源を落とすのと、彼が中継を終える以外、中継は消える事は無かった。
全世界の人々がテレビやラジオに釘付けになる中、三上は笑うのを止めると、不意に黙る――少しばかり沈黙するが彼は不意に口を開いた。
『あれはインフィニット・レギオン――通称、ILです――無限の軍団とも言い換えればよろしいでしょう』
「インフィニット」
「レギオン……!?」
三上の言葉に、部屋に設けられているテレビが突然点き、そしてそれを観ていた十春と箒は三上の言葉を言い返す様に口を開く。否、彼等だけではない――全世界の極一部――いや、大半はその言葉を言い返す様に言っているのかもしれない。
それでも彼等は知りたいのだろう――心理を突かれたと言い換えれば良いだろう。そして、三上はそれを説明する。まるで解らない事を教える様な物でもあるかの様に……。
『インフィニットレギオン――無限の軍団、あれは私が数年の歳月をかけて造った物であり、ISを凌駕する』
三上の言葉に全世界の者達は再び驚愕する。ISを凌駕する――それは全世界に革命を来す様な出来事と、それを凌駕する物は何処にも無い。全世界を巻き込んだ一大スキャンダルとも言えるだろう。
『驚いているのも無理はありませんね? ――まあ、それは表社会は愚か、裏社会にも知れ渡ってはいない――それ以前に私は学園を襲撃したのは、ILを全世界に広める為、全世界に知って欲しい為です――無論、ILを纏っているのは、私の直属の部下である者です――まあ、ILは兵器としてではなく、スポーツ用や災害用、潜水用や建築用と言った生活面での日常用と言った、兵器用には出来ない奴もあります――そして、此れだけは覚えておいて下さい』
三上は不敵な笑いを浮かべながら黙ると、再び口を開く。
『ILは――男性にしか扱えません』
「なっ!?」
「何だって!?」
IS学園に居る者達は声を上げ、全世界にいる女尊男卑主義者及び非女尊男卑主義者達は驚きを隠せない。逆にまた、男性達は驚きを隠せないでいた。
ISを凌駕するだけでなく、男性にしか扱えない――それは男性達から見れば希望、女性から見れば絶望としか言えないだろう。それだけでなく、革命が起きる。
全世界の少数の、勘がいいごく稀にいる者達はそう直感した。逆に残りの大半は突然の事で驚いたままであった。誰もが驚く中、三上は言葉を続ける。
『ILは私が全ての技術を結集して造った物であるが、それは男性にしか使えない様にしたのは、男性諸君に希望を与える為です――まあ、驚いているでしょうけど、女性達にはいい薬でしょう』
三上は不意に手の平を見せる。何故そのような行動をとったのかは判らないが彼は不意に歪んだ笑みを浮かべる。
『皆さん――後少しで中継は終わりです――ですが此れだけは覚えておいて下さい――私は既にILを世に送り出しています』
三上の言葉に千冬は「なっ!?」と驚愕した。彼女だけではない――周りにいる職員達も驚きを隠せない。否、学園にいる者達は驚いているだろう。
しかし、彼が何時、ILを世に送り出したのかは判らない――既に送っているとは言え、何処に送ったのだろうか? もしも送ったのならこちらに連絡が来る筈、学園にいる者達、世界中にいるも達の誰もがそう思った。
刹那、電話が鳴る。それを取り次いだのは真耶であった。
「もしも、此方はIS学園――ええっ!?」
真耶は驚気の声を上げると、千冬や周りは一斉に真耶を見やる。真耶は驚きつつも少し畏怖しているのか震えていた。
「や、山田先生、どうした?」
千冬は真耶に訊ねると、真耶は震えつつも答えようとした。刹那、今度は別の電話が鳴った。近くにいた教師が取り次ごうしたが今度は別の電話が鳴る――それも二、三台も――否、そこにある電話全てが鳴っていた。
「な、何が起こってる!?」
千冬は突然電話が一斉に鳴り響いた事に驚きを隠せない。それだけでなく、職員達が取り次いで対応している物のの電話は一向に止む気配はなく、職員室は電話の音で鳴り響き渡る。
そんな職員室を他所に、何処かにいるであろう三上が映っているテレビは突如、砂嵐へと変わった。が、直前に三上が歪んだ笑みを浮かべているのを数人、否、数十万人が目撃したのか、全世界の者達がその瞬間を見たかどうかは、見た者や見逃した者達にしか判らないだろう……。
次回、暴動
ここでお知らせです。このはなしはたいてい原作からは成れている様にも感じる方々が居られるかもしれませんが一部原作通りに進める予定です。
因みにオリキャラ達(伍と十春除く)にはヒロインはいません。いたとしても悲恋になる事を考えてしまいますので。
そしてもう一つ、この話でも救い様の無い人は少なからずいます(例えばレイP……です)