「オラァァァァッ!」
「ウアァァァ!!」
ロシアのモスクワの至る所には男達が各地で暴れていた。が、そんな彼等を死角となる物陰から窺う様に見ていた者が二人いた。何方も子供であるが一人は壱夏、もう一人は伍である。
二人は付近にいる暴徒達に見つからない様に物陰や隠れながら、身を潜めながら辺りを少しずつ移動しながら逃げ回っていた。本来なら家の中で隠れれば良いのだが何れ家の中にまで殴り込みと言う形で乗り込んでくる事も壱夏は察知と危惧すると共に出たからである。
今は、伍が放った五機の零戦で上空から街の様子を撮影する形で確認しながら逃げていた。その上空を確認する様にしているのは、零戦の管理者にして持ち主でもある伍である。
伍は街の至る所に放った五機の零戦で街の様子を伺う様に五つの映像を展開する形で映し出し、それを観ている。因みに今は遊戯は右腕以外は解除している。
「お兄ちゃん……何処も駄目みたい……」
彼、伍は五つもあるモニターを観て辛そうに答える。彼の言葉に壱夏は伍の元へと歩み寄ると、伍が観ている映像を観るが彼は眉間に皺を寄せる。
映像には、五つの映像には街の至る所が上空から映し出されている。なのに何処も、暴徒と化した男達が暴れ回っている。物を怖し、略奪を繰り返している。
家から見た光景なのに、何れも家から見た光景なのに、街から、映像から観たら何れも生々しく、痛々しい。壱夏は下唇を噛む。ILが造られ、それが全世界の軍事基地に送られ、そして今に至る。
否、彼等の我慢が限界に達し、今に至る形で爆発したのだろう。壱夏は何度もそう思いながら不意に彼、伍を見る。伍は映像を観続けていたが何処か哀しそうで何処か怯えている。
彼から見れば耐えられないのだろう――人の醜い部分を嫌と言う程見てしまっている。このままでは、彼が大人への印象を悪く重い、不信感を募らせて行く。
壱夏はそれを危惧すると共に、彼に優しく訊ねた。
「伍……映像を切れ――此処を離れるぞ」
壱夏の言葉に伍は無言で頷くと映像を切る形で右腕にあるボタンを押す。映像は切れると同時に彼は壱夏を見る。壱夏は伍を哀しそうに見ていたが伍は彼に抱き着く。
壱夏は彼の行動に戸惑ってはいないが抱き返す。彼なりの安心感を与えているつもりであるが無駄に等しいだろう。それでも彼は、壱夏は伍を安心させるべく、そう言った行動をしていた。
たとえ間違っていても、彼は何とかしょうとしていた。刹那、彼はある者達を思い出す。
「(それよりもどうする? ……安全な場所は何処だ?)」
壱夏は不意に辺りを見渡す。隠れそうな所は沢山あるが安全と言える様な場所ではない。学校の体育館と言う場所があるがそこは今、満員と言うよりも沢山の人で溢れ返っているだろう。
流石に暴徒達でも子供を襲う様な輩は少ないのと、そこを流石に責めるのは無いに等しい訳ではないが有り得ないだろう。壱夏は安全な場所が無いかを思い出しながら物思いに更ける中、伍が壱夏を見ながら「お兄ちゃん……」と呟く。
伍の言葉に壱夏は伍を見ると微笑む。
「大丈夫だ……お兄ちゃんがついてる……それに」
壱夏が何かを言いかけようとした刹那、空が騒がし事に気付き、上を見上げると、二機のIS――否、ILらしき物が何処かへと飛去って行った。
――何だ今のは? ――。壱夏はそう思っていたが伍も「今のは何?」と言いながら空を見上げていた。
「判らない――だが、胸騒ぎはする事だけは判断出来る……まあ、俺達には関係ないがな」
壱夏はそう言うと、彼から離れると、辺りを窺う様に周りを見渡す。辺りには人の気配はない――恐らく、別の場所へと移動したのだろうか? 壱夏はそう思いながら伍を見る。
伍は壱夏を見てキョトンとしているが壱夏は微笑むと、伍に近づき、位置を合わせる様に屈むと、彼の頭に手を置く。伍は驚く物の壱夏は空を見上げる。
空は青い――なのに、煙が邪魔しているし、幾多の怒号も聴こえる。世界は崩壊したのかと、壱夏は思った。刹那、伍が何かを思い出したかの様に壱夏に言う。
「そうだお兄ちゃん」
伍の言葉に壱夏は振り返ると、伍は言葉を続ける。
「さっきのアイエルを纏っている人達はどこに行ったのかを調べようよ」
伍の言葉に壱夏は驚くが彼は壱夏の許可もなしに右腕の遊戯を起動する形で映像を映し出す。
――おい、あつ……――。壱夏は伍の行動に戸惑いつつも止す様に言おうとしながら近づいた。その間に伍は右腕にある遊戯を操作しながら全ての零戦をILが向かった方向へと向かうよう命令する形で操作していた。
「おい伍――そんな事をしている時間は無い……それに俺達は何時までも此所に居たら、男の人達に見つかるだろ?」
壱夏は指摘するも伍は右腕にある遊戯を操作しながら口を開いた。
「ごめんお兄ちゃん、気になる事があったら調べる様にしているんだ」
伍はそう言いながら操作の手を休めない。が、伍の言葉に壱夏は瞠目した。何故ならそれは、壱夏が教えた事を伍はそれをしていた。判らない事は調べる――それは壱夏が伍に教えた事と、彼がいざという時、自分がいない間にどうするのかを考えてもらう為に教えた事の一つでもあった。
自分は何れ、御の前からいなくなる時が来る――その為には自分が判る事を全て彼に教え、頭に叩き込まそうとしたのだ。伍の言葉に壱夏は眉間に皺を寄せる――口元は笑っているが彼は不意に身を翻すと、肩越しで彼を見る――彼は、伍は操作しながら五つの画面を映し出さすと、ある事を言いだす。
「全ての偵察機に告ぐ――ILらしき物を見つけ次第逐一に連絡――そして見つけ次第、見つからぬ様に追尾して」
伍は全ての零戦に命令する。的確と言うよりも、彼はシミュレーション感覚で命令している。壱夏から見れば彼はゲーム感覚で命令している様にも思えるが、別の意味でも伍の的確とも言える命令に思わず頬が緩む。
彼は彼なりで成長している――子供らしく無邪気な彼が今では、否、今はこの状況から、危機的状況な場所から脱出出来る場所を捜す意味で行動している。
が、今は調べ事をしている為、一時中断と言う形で命令をしている。彼の行動は間違っているだろうが壱夏はそれを咎める様な事をしなかった。
彼の成長に喜びを隠せないのと同時に、自分は彼を守るべく、辺りを見渡す。そこには誰もいなかった――が、奥から誰かが此方へと来る事に気付き、彼は「伍」と言いながら彼の元へと駆け寄り、彼と共に物陰に隠れる。
伍は壱夏の行動に驚きはしつつも、彼の行動を静かに受け止めた。二人が隠れている間、奥から一人の少女が此方へと駆け寄って来ると、一旦立ち止まり辺りを見渡す。
「此所も大丈夫ね……それにしても、政府も酷いわね……幾ら私がISのロシア代表でも、街の暴動を止めてと言われても自殺行為に等しいわよ……」
少女はそう言いながら頭を抱える。一部が外側に跳ねている水色の長い髪に紅い瞳、白のシャツに水色のベスト、蒼いズボンを穿いているが白いスニーカーを履いている。
しかし、少女はロシア代表である。少女は元々日本人であるがある理由でロシア代表であり、そしてIS学園の生徒でもある。
彼女が此所にいるのはロシア政府にある理由で呼ばれたのと、ロシア政府により無理矢理無理難題を突きつけられてしまったのだ。少女から見れば嫌な難題でもある。が、少女は不意に人の気配を感じ、振り返りながら「誰!?」と叫ぶ。
――!? ――。少女の言葉に壱夏と伍は肩を震わせるが、一向に出て行こうとはしなかった。出て行けば、何をされるかは判ったもんではない――壱夏はそう思いながら伍を背中に隠しながら姿を見せた。
「お前は……!?」
壱夏は少女を見て瞠目した――が、伍も少女を見て瞠目し、少女も二人を見て瞠目した。何故なら壱夏と伍は、その少女とは公園近くで逢った事があるからであった。
あれは伍の不注意とは言え、今は偶然にも再会したのである。そして三人の間には沈黙が流れるが、それを打ち破ったのは伍であった。
――あの時のお姉ちゃんだ! ――。伍は嬉しそうに少女をお姉ちゃんと呼ぶ――が、少女は二人を見て未だ驚いていたが壱夏は少女を見て「フン」と軽く言いながら少し怒りながらそっぽを向いた。
しかし、三人は再び出逢えた。が、それも暴徒と化した男達により崩壊してしまった街と言う、最悪な形で再会してしまったのは言うまでもなかった……。
次回、革命