インフィニット・レギオン   作:NO!

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 今回はお試しを消します。第壱話の方は、もう少ししたら完全に訂正します。


連絡

 三年後。春の季節がやってくるのにもうすぐである三月中旬の夜七時――ここは、とある某国にある四階建てアパートの一室。

 その室内には鉄アレイや縄跳び等のトレーニング用具が揃えられており、体力を作り、筋肉を付ける意味でも揃えられていた。

 室内には誰もいない訳ではない――独りいた。三十代前半の日系男性――精悍な顔立ちに角刈りの髪――鋭く吊り上がった黒い瞳をしている。

 屈強な体格で胸板は厚く、人を片手で締め殺せるくらいな大きな腕――白のタンクトップに青のトレーニングトランクス。

 彼はその部屋でトレーニングをしていた――彼は今、紐で吊られているサンドバッグを打っていた。

 ドン! バンッ! と、室内にサンドバッグの打つ音が木霊する。男は無言で殴り続けていたが男の身体からは汗が辺りに飛び散る。

 汗は男の身体から分泌され、更にはタンクトップを湿らせ、彼の胸板や割れた腹筋が目に入る。

 しかし、男はサンドバッグを打ち続けていた――打撃力を上げる為ではない、彼は無我夢中で打ち続けていた。

 彼は集中しているのと、彼は誰かが声を掛けない限り、サンドバッグを打ち続けるだろう。

 身体が悲鳴を上げようが腕が使い物に鳴らない手前まで打ち続けるだろう。

 彼の瞳には怒りと、彼の集中力が見て取れる。刹那、その部屋を出入り出来る扉から開く音が聴こえた。

 彼はサンドバックを打とうとした手を止め、扉の方を見る――刹那、彼は目を見開くと同時に直ぐに微笑んだ。

 

肆浪(しろう)おじさ――ん!」

 

 扉を開けたのは四、五歳位の少年――幼い顔立ちに柔らかい黒髪に丸っこい目が特徴的な可愛らしい少年。

 少年らしく、赤い服に黄色い上着、青の半ズボンを穿いているが背中には青いリュックサックを背負っている、何処にでもいる健全な少年。

 彼は笑顔であるが少年自身の無邪気さを強調し、少年は彼を、肆浪と元気よく言いながら彼の下へと駆け寄る。

 肆浪はサンドバッグを打つのを完全に止める形で離れると同時に、少年は肆浪の前で止まると、彼を見上げる。

 少年はとびっきりの笑顔を肆浪に向ける――あどけない様にも思えるが少年自身が彼に好意と尊敬を抱いている事を意味している。

 肆浪は少年を見て心が浄化される様にも思えた――怒りが何処かへと消えて逝く――彼の笑顔が自分を変えてくれたのかも知れないと思いつつ、肆浪は少年の頭を撫でる。

 

「えへへ、肆浪おじさんの手、汗で濡れているけど何処か温かい〜」

 

 少年は気持ちいいのか嬉しそうに笑う。肆浪の手が大きい事――彼の掌が汗で濡れていても何処か温かい。

 自分の頭を鷲掴み出来るだろうが肆浪は少年を殺す動機も無く、殺す理由も無い。

 肆浪は笑っていたがふと、ある事を思い出し、少年に訊く。

 

「そういえば(あつむ)? お前はどうして此所に来たんだ? 壱夏と一緒に暮らしていたんじゃないのか?」

「あっそうだった! 肆浪おじさんに逢いに此所に来たんだよ!」

「此所に来た? お前一人でか?」

 

 肆浪の言葉に伍は「ううん」と言いながら首を左右に振る。すると、再び扉が開き、伍と肆浪は扉の方を見やる。

 扉を開けたのは十代前半の青年――爽やかな顔立ちに黒い髪に黒い瞳。中肉中背で黒い服に黒いズボン――更には黒いブレザーコートを羽織っている。

 青年は二人を不機嫌そうに見ていた――否、伍を見て呆れていた。

 

「駄目だろ伍、勝手に先に行っちゃ?」

 

 青年は伍に軽く注意すると、二人の元へと歩き始める。

 

「ごめんなさい〜〜」

 

 伍は頭を下げる。その間に壱夏は二人の前に止まる。青年は伍を見て溜め息を吐くが不意に呆れながら肆浪を見る。

 

「お久しぶりです肆浪さん、相変わらず鍛錬を怠らないみたいですね?」

「ああ,久しぶりだな壱夏、どうした? 伍と一緒に暮らして何か問題でも遭ったのか? それとも伍が皿を割ったか? おねしょでもしたのか?」

 

 肆浪の言葉に伍は怒る。

 

「酷いよ肆浪おじさん! 僕悪い事してないもん! それにおねしょはしてないもん!」

 

 伍は頬を膨らませる――可愛いとしか言えないが肆浪は笑い飛ばす。

 

「ははっ、冗談だ冗談――それよりもお前等はどうして来たんだ? お前等、彼方で過ごしていたんじゃないのか?」

「あっそうだ!? それよりも肆浪おじさ……」

「伍……」

 

 伍が何かを言い終える前に壱夏が遮る形で黙らす。伍は壱夏を見るが彼は伍を怒りと哀しみが入り交じった様に見ていた。

 これは大人の話、子供のお前が割って入る様な物じゃない――そう言い聞かせる様に見ていた。

 これには伍も気付いたのか少し寂しそうに頷くと、壱夏は彼の頭を撫でる。壱夏の、彼なりの気遣い――いくら他人とは言え、弟の様に可愛がり、厳しくしている。

 今の他人とは繋がる気はなく、接触する気もない自分が唯一心を許せる存在。だからこそ、彼には、子供には重い話はしたくないのであった。

 伍は壱夏を見て少し心配そうに見ていたが壱夏は訊ねる。

 

「伍、あっちで、家から持って来た漫画でも読んでなさい――直ぐに終わるから」

「……うん! 大人しくしているね!」

 

 伍は笑顔でそう言うと、近くにあるスタンダードベンチの方へと向かい、ベンチに腰掛けると、リュックサックを脱着し、中から一冊の漫画を取り出す。

 男の子らしく、ヒーロー物の漫画であった。伍は漫画を読み始める。そんな伍を壱夏は無言で、肆浪は微笑ましそうに見ていたが肆狼は壱夏に訊ねる。

 

「それよりもどうしたんだ? 何か遭ったのか?」

 

 肆狼は本題とも言える事を気にしていた。いくら彼でも二人が突然尋ねて来た事には疑問が浮かぶしかない――普通なら失礼であるが急用なら致し方ない。

 肆狼はそう思いながら彼に尋ねると、壱夏は表情を険しくする。重大な事を言う事を意味していた。肆狼は壱夏の様子に只ならぬ危険を察知したが彼は、壱夏は口を開く。

 

「……いえ、そうではありません――あの方が皆を招集するように俺に連絡して来たのです」

 

 刹那、肆狼は瞠目し、直ぐに眉間に皺を寄せる。とうとう来た――それは警告の鐘を鳴らし、崩壊への道を歩み始めるような物でもあった。

 肆狼は何かを決意する様に頷くと両手を腰に当てる。

 

「そうか……いよいよか――しかし何故お前なんだ? それに他の奴らにも連絡したのか?」

「俺の方なら安心したと思ったからみたいです――日本にいる拓陸(たくむ)には連絡する事は出来ましたが――他は連絡付きませんでした」

「そうか……まあいい、済まないな。それに俺に連絡してくれれば良いだろう? 何故、わざわざ足を運んででも来たんだ?」

「……伍の為ですよ」

 

 壱夏は不意に伍の方を見ると、肆狼も伍を見る。伍はスタンダードベンチに座りながら楽しそうに漫画を読んでいる。

 壱夏は険しい表情で、肆浪は哀しそうに見ていた。伍は漫画を読んでるが何処にでもいる男の子にしか見えない。

 しかし彼は只の、彼はそこら辺の少年ではない――彼もまた、自分達と同じ立場にいる者だった。

 話を逸らすがこの世界には最強最悪の兵器、ISが存在していた――女性にしか扱えず、それが原因で女尊男卑と言う風潮が広まっている。

 何処でも見かけるが女性達は威張り散らしていた――全てとは限らないが決して少なくはない。二人はそれに気付きながらもISよりも遥かに凌駕する兵器を自分達は持っている。

 インフィニット・レギオン――通称、IL。その兵器はISを遥かに凌駕し、男性にしか扱えない――最悪の場合、女尊男卑を無くす事が出来るのと同時に男尊女卑と言う風潮さえも出来る。

 二人はそれに危惧していたが更に危惧している事があった。自分達はILを持っており、専用機持ちでもあった。

 が、自分達だけではない――他にもいるが近い内、あの方が全世界に発表と言う名目で警告するだろう。

 全世界は如何いった反応をするのか彼等の行動次第だろう。最悪な結果にしか見えないが二人は伍を見続けていた。

 彼は漫画を読み続けているが彼もまた、特別な少年だった。

 それは彼も、自分達と同じ専用機持ちであるからだった。未だ五歳子が専用機持ちである事は可笑しいだろう。

 しかし必然だった。彼は自分達と同じ立場に居ながらも無邪気な子供――出来る事なら取り上げたいが少年の心に傷を負わせたくない。

 彼には無限の力が秘められているからであった。

 

 そして、伍少年の持ってるIL――そして専用機の名は『遊戯』。

 

 遊戯は子供を意味する事が多く、少年である伍には相応しく、まだまだだが彼は遊戯を最大限に扱えている。

 彼が壱夏と一緒に住んでいるのは、彼の元で修行しているからでもあった。

 

「うん? どうしたの壱夏お兄ちゃん達? 僕の顔に何か付いてるの?」

 

 伍は二人が見ている事に気付き、不思議そうに首を傾げながら訊ねる。その仕草は子供らしいとは言え、肆浪は我に返り哀しそうに笑う。

 出来る事なら彼にはILを使って欲しくない――肆狼はそう思い、壱夏は不意に目を逸らしていた。

 

二人の様子に伍はキョトンとしていたが「変なの」といいながら再び漫画を読み始めた。




 次回、救助
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