約束
「ねぇ、どうなるのかしら……!」
「判んない……でも、ILが生まれたけど、ILはそのISを遥かに凌駕するっていうけど……」
「それにILは各国の軍事基地に現れたって噂があるけど、それだけじゃなく、IS委員会も機能停止に陥っているみたいで、幾多の対応にも追われているって、国からの連絡が来たみたい」
「そんな……それじゃあ、IS学園はどうなっちゃうの?」
翌日、此所はIS学園。平日であるが今の時間帯は授業中にも関わらず、自習であった。しかし、それは全てのクラスであり、誰一人、勉強に励む者はいない訳ではないが大半以上は勉強どころではなく、ISを遥かに超える存在、ILに恐怖を抱いていた。
ILは男性にしか扱えず、兵器だけでなく、多方面での活用も出来る。兵器やスポーツようとしか出来ないISとは違い、非常に優れているとしか言えなかった。
今は暴動で収まり、IS学園自体には何故か危害は無かった。それだけなら未だしも生徒達は自分達の立場が危うい事に危惧し、近くにいる者達と何かを話していた。
何れもILの存在だろうが一年一組もまた、ILの事で持ち切りであるのと同時にIS学園の行く末を気にしていた。
「なあ、十春? お前はどう思うんだ?」
「判らない――でも危険だと言う事は避けられない」
そんな中、教室の教卓前にある席に着いていた、ただ一人のこの学園の男子生徒、十春とその幼馴染みでもある箒もまた、ILの存在について話をしている。
彼と彼女もまた、他の同級生と上級生達同様、同じ会話をしているが危惧をも感じていた。男性である十春から見れば同性達の行動と、ILの存在は危険視と共に気にもしており、箒はISを超えるILの存在に姉である束はどう動くのかを気にもしながらも気にしてはいなかった。
意見が食い違う様な事を二人は心の中で考えていたが今はILの事で話をしている。十春の姉であり担任の千冬や副担任でもある真耶は他クラスの教師達と共に、緊急職員会議の為に不在である為、今は自習と言う自由時間の為に問題は無かった。
「……なあ、十春? お前はどうするんだ?」
「何が?」
箒の言葉に十春は首を傾げる。が、箒は怪訝かつ哀しそうな瞳で十春に訪ねる。
彼女は不安を抱き感じていた――彼が、十春がISからILに乗り換えないのかと。十春は箒にとって幼馴染みである以前に、想い人である以前に男性である。
ILは男性にしか扱えないが十春も男性であるのと同時にILに乗れる。箒から見れば、否、全世界にいる女性達から見れば彼は裏切り者であり、男尊女卑主義者達からは、仲間として迎えられるだろう。
箒は十春に対して、このままIS操縦者のままでいて欲しい、という切なる願いと裏切らないかで不安を抱いていた。一方、箒を見た十春は箒が何を言いたいのかを理解したのか、不意に哀しそうに俯く。
――判らないよ、僕には……――。十春はそう呟きながら不意に自分の右手にある白いガントレットを見る。それは十春のIS、白式の待機状態の物。
しかし、十春は白式を見て、ある事をお思い出す。それはクラス代表を賭けたセシリアとの一騎打ち戦――本来なら自分が行くべき場所だったのに、戦うべき相手だったのに、全てが無駄になった。
一機の未確認IS――否、あれはILと言い替えれば良いだろう――あれが、あれが全てを台無しにすると言う意味で乱入してきて、セシリアを瞬殺した。
本来なら自分も加勢に行けば何とかなった――否、無理だろう。あれは、ILは素人当然の自分が何とか出来る相手ではない――十春はそう思うと、下唇を噛みながら身震いした。
自分は何も出来ないのか? ――と。そんな十春に箒は心配そうに見ていたがかける言葉が見つからなかった。周りは騒がしい中、十春は自分の無力さに噛み締めていた……。
「十春……私からお願いがあるんだ」
箒が不意に話しかけてきた。十春は箒の言葉の後に顔を上げる――箒は何故か哀しそうであった。否、彼女は切に願っていた――同時に十春にある約束をしょうとしていた。
「十春――約束してくれ」
「取り敢えず、生徒達には出来るだけ落ち着かせると共に、ILを纏う者達や、武力した男の人達がIS学園に襲撃してこない様に警備を強化すると共に、これからの事を考えましょう」
その頃、職員室では全クラスと、クラスを受け持ってはいないがある教科の担当でもある女性教師達が全員職員室に集まっていた。その中には千冬と真耶もいるが全員、壮麗の女性――学園長の話に耳を傾けていた。
しかし、真剣に耳を傾ける者も居れば、逆に不安を隠せない者達も少なからずいた。彼女等はISを超える兵器、ILの存在に恐怖し、中には立場が脅かされる恐怖さえも感じている者達もいた。
否、今は学園長の話に耳を傾ける以外、何も出来なかった。学園長も学園長で話をしながらも何処か不安が拭いきれないでいた。学園の行く末と生徒達を心配しているからであった。
「出来る事はやれるだけやりましょう――それに判らないのですが何故か学園には被害はありませんでした」
学園長の言葉に手を挙げる者が現れる、千冬だ。
「学園長、訊きたい事があります」
「何でしょうか織斑先生?」
「IS委員会からは何か連絡は有りましたか?」
「いいえ……ありませんでしたが……それが何か?」
学園長の言葉に千冬は「いえ」と答えた後、「私からの質問は以上です」と答えた。
「兎に角、今は生徒達に不安を与えない様……」
刹那、一本の電話が鳴る。これには周りも電話の音に反応し、学園長も電話機を見やるが取り次いだのは、真耶である。
真耶は受話器を耳に当てる。
「はい、此方IS学園――――あのぉ?」
「どうした山田先生?」
千冬が真耶の様子に疑問を浮かべるが真耶は「それが、返事が無いんです」と答えた。真耶の言葉に周りは少し疑問を浮かべる。無言電話か? 誰もがそう思ったが不意に声がした。
――IS学園か? ――その言葉に真耶は「えっ?」と惚けてしまう。が、真耶は「えっ!?」と驚く。
「どうした山田先生? 誰からだ?」
千冬が少し警戒しながら真耶に訊くと、真耶は震えながらもう片方の手で受話器を指差しながら何かを言った。
――み、三上って人から、です! ――。刹那、千冬や学園長、周りにいた教師達は瞠目した。三上から? それは室内にいる者達が驚愕し、そして疑問を浮かべた。
前者は兎も角、後者は三上本人かどうかも怪しい――悪戯ではないのかと思うのと、本人からの電話等疑いとしかないからである。しかし、千冬は彼女等を他所に真耶に三上かどうかと訊ねる。
「それは本人からか? それに何故、この学園の番号を知ってる?」
「あっ……どうして学園の番号を? ――えっ、学園のホームページで見たから? ――えっ、学園長と代わってですか!?」
真耶の言葉に千冬を含めた職員達が驚き
、学園長は瞠目した。が、三上と言う人物は何故学園長と話をしたいのだろうか? それに学園長と話をして何か得する事でもあるのだろうか?
それ以前に電話の主が三上なのかどうかも判断出来ない――職員達は皆、困惑する中、学園長が真耶に言う。
「山田先生――私が代わりましょう」
学園長がそう言いながら真耶に歩み寄る。学園長の言葉に真耶は驚くが受話器を少し離れる様に耳から離す。
「が、学園長!? 良いのですか!? 相手がテレビに出ていた人かどうかも判りませんよ!?」
「そ、そうですよ!? それに向こうは何をして来るかは判りません!」
千冬も少し慌てる。彼女達は学園長の言動に困惑する。そうだろう――幾ら学園長とは言え、相手がILを造った者であろう三上だ。
相手が何を要求してくるかは判らないのと、何をしてくるのかも判らないのだ。彼女達だけじゃない――一部の教師達も学園長の言動に戸惑う中、学園長は優しく微笑む。
「大丈夫です――私はIS学園の――いえ、学園長に過ぎません。ですが今は学園長であるのと同時に、この学園にいる貴女方や生徒達を守る義務があります」
学園長の言葉に真耶は「学園長……」と言いながら困惑する。が、学園長は言葉を続ける。
「私は約束します――私は学園長であるのと同時にこの学園を守る義務があります――それだけは覚えて下さい――如何なる時でもね」
「学園長……っ、お願いします」
真耶は学園長の言葉に何も言えず、受話器を差し出す。千冬が真耶に何かを言いたかったが学園長は真耶に差し出された受話器を受け取ると、険しい表情で受話器の向こう側にいる三上と言う人物と何かを話し始めた。
そんな学園長を周りは心配そうに見つめていたが誰一人、止める者はいなかった――否、出来なかった、と言い換えれば良いだろう。
次回、陰事。玖牧、ラウラへの約束とその願い。