「皆さんもご存知の通り、まだまだですがILにより世界は変わりつつありますが……」
日本時間の午前十一時、学園の体育館。そこには数名を除き、この学園に在校している全生徒と全職員が集まっており、その奥にはスーツ姿であるが何処か物腰が柔らかそうな表情の壮年の男性が険しい表情で全校生徒に向けて話をしていた。
内容は言わずともILの存在――ISを凌駕し、全世界の男達の大半以上が革命を起こす形で暴動を起こした元凶であり、男達の大いなる希望。
女性達から見れば元凶だろうが今は皆、壮年の男性に耳を傾けるしか方法は無かった。しかし、生徒達は皆、不安を隠せないでいる。女尊男卑主義者の女子生徒達や職員から見ればだが、逆にそうでない者達は別の意味で、学園が襲撃されないのと、身内に何か遭ったらどうしょうかと怯えていた。
ISを凌駕する兵器、ILは学園に居る者達にも精神的なダメージを与えているが誰一人、壮年の男性の話を聞くしか無かった。幾ら自分達がISを扱えるとは言え、相手はILを扱える男性達――力だけでなく、数も相手が圧倒的に上であり、勝ち目が無いからだ。
「それ故に、今は学園には何も遭ってはいませんが貴女達生徒達は普通に勉学に励むと共に、普通に学校生活を送って下さい――」
壮年の男性の言葉に周りはざわつき始める。――普通に学校生活を送れ? ――どう見ても無理に等しく、ILがある限り、この学園が何時襲撃されても可笑しくなかった。
平穏な時等ない――否、この学園に平穏な時は既に壊れているのと、活気が無くなったに等しい――ふざけないで! ――。刹那、一人の女子生徒がそう叫び、周りは一斉に見やるがその生徒は壮年の男性に対し、怒っていた。
「巫山戯ないでよ!? そんな事を言っても普通に送れる筈無いじゃない!? ILがある限り、私達は何をされるかは判らないわよ!?」
「そうよ!? 世界は崩壊したのに普通に送れる筈無いじゃない!!」
そんな女子生徒に便乗する様に他の生徒達も怒りを露にする――彼女達は女尊男卑主義者であり、ILの存在を危惧しているが立場を悪くするだけでなく、何をされるのかを恐怖し、我を忘れていた。
しかし、既に他の生徒達も、否、大半以上は壮年の男性に怒りをぶつけていた。相手が目上であるにも関わらず、我を忘れてぶつけていた。
「お、落ち着いて下さい!!」
「落ち着きない貴女達!!」
職員達が生徒達を宥めようとしているが効果はなく、更に悪化する。職員の中には千冬と真耶がいるのと、生徒達の中には十春と箒もいるが彼等は怒りを露にする生徒達に対し困惑していた。
出来る事なら何とか止めたいが彼女達の怒りは凄まじく、止める事は出来ない――余程、自分達の身が危ういのと自分が可愛いだけとしか見て捉える事が出来る。
体育館内は今、色んな感情が飛び交っていた。怒り、哀しみ、惑い――そう言った感情が渦巻いていた。ILの存在が彼女達を変えているとしか言えなかった。
少し前までは平穏で謳歌しても可笑しくなかった――今から言えばもう、過去の話としか言えなかった。最早、学園の崩壊は直ぐそこまで迫ってきたとしか言えなかった。
「……静まりなさい!!!!!」
刹那、壮年の男性が叫ぶ。怒りが孕んでいる様にも思えるが哀しみをも孕んでいる様にも思える。それが効いたのか女子生徒達は黙り、それを見ていた女子生徒達も方を震わせる。
十春や箒も例外ではないが壮年の男性は怒り隠しきれないでいた。あの物腰の柔らかそうな表情とは一変、怒りの、般若の様な形相になっていた。
彼女達への失望と怒りを表しているが彼は怒りながら言葉を続ける。
「貴女達は何故そこまで怒るのですか!!? そんなにILが怖いのですか!!? 貴女達はこの学園の生徒達でしょ!!? この学園の生徒ならシャキッとも、凛々しくいなさい!!? それになんですか!!? 貴女達は何の為に学園へと来たのですか!!?」
壮年の男性は女子生徒達に怒りを露にする――何故なら、この壮年の男性は学園の理事長でもあった。普段はしがない用務員であるがそれは学園が綺麗な場所であり続けて欲しいのと、そして理事長としての役目を重く受け止めている。
それ故、学園にいる生徒達に怒っているのは彼女達がILに怯えているのと、立場が危うい事に怒りを隠しきれていない事に怒りを覚えていた。
しかし、彼が怒っているのにはもう一つ、理由があった。
「大体貴女達は何ですか!? ISがあるから偉いとか強いとか思っているのですか!!? いいえそれは違います!! それにこの学園を設立したのは貴女達のような者達を作る為に設立したのではありません!! 私は貴女達を一人前のIS操縦者や研究者にする為に作ったのですよ!!」
彼は生徒達にISのあり方を教えるのと同時にある事を教える。ISは強大すぎるがあまり、人を変えてしまう――ILも例外ではないがISはそれ以前に沢山の人を、女性達や他の人達の人生を変えてしまった。
それに学園を作ったのはISと言う物を扱える優秀な人材を育てるのと同時に、彼女達にISが如何に強大で危険なのかを知る為であるの同時に、力に溺れてはいけない事も教えたかった。
ISを造ったのは天災と言われている女性であるがそれはコアであり、量産機を造ったのは男性達である事も教えたかった。なのに今の彼女達はそれを、ISが如何に強大で力があり、魅せられたら力に溺れ、人としてではなくなる。
彼はそれを危惧すると共にある事を言い放つ。
「いいですか皆さん!! この学園は皆さんを育てる為にあるのです!!? それに今は何ですか!!? 今の貴女方を親御さんや卒業した卒業生達は見たらどう思いますか!!? 心配と幻滅しますよ!!?」
彼の言葉に生徒達は瞠目し、一部は肩を震わせた。何故なら彼女達は自分達を心配するがあまり、他人である身内や卒業生達の事は気にもしなかった。
前者は兎も角、後者の卒業生達には姉がいて、姉は自分達の為に働いている。それを彼女達は気付いていなかった。同時に彼は自分自身が決めたある約束があった。
「私は自分で決めた約束の様な物があるのです――それは貴女方を一人前にする事――それが理事長である轡木十蔵が決めた約束です――この学園にいる限り、貴女方が学園にいる限り、私はこの学園を守ると決めているのです――それは貴女方を大事に持つ親御さんや、中には妹がいる卒業生の姉達の為にもね……」
刹那、彼は、十蔵は辛そうに瞑目すると方を震わせる――彼の経営者としての役目であるのと同時に
彼なりの責任を感じていた。これでは親御さんや卒業生の姉達に合わせる顔が無い。
十蔵はそう思うと自分の無力さを思い知るが誰一人、心配しない者は居なかった。彼は自分だけでなく、他の、身内の事も考えていた。しかし、そんな彼は辛そうに目を開けるとある事も生徒達に言う。
「皆さんに報告があります――実はもう一つ、私はこれからある人物との約束をしてしまったのです――」
十蔵の言葉に生徒達は少しざわつく。誰かと約束? ――それは生徒達から見れば何かは判らないだろう。が、教師達は皆気付いているが肩を震わせ、表情を強張らせ、中には哀しそうでありながらも少し困惑している者達も居た。
あれは彼女達にとっては驚愕と困惑しか無かった。が、あれはまさしくきつくも十蔵一人では危険であった。が、十蔵はそれを知りながらも職員達を何とか説得した。
中には今だ納得しない者も居たが何とか居らせると、何とか了承させた。しかし、未だ納得していない者もいるだろうが十蔵は決意する様に頷くと、ある事を言う。
「私はこれから、三上さんの直属の部下である者と食事の約束があるからです」
刹那、彼の言葉に女子生徒達は驚きを隠せない。三上――それはILを造った者であるが彼女達から見れば脅威の対象であるだろう。
が、彼が何故十蔵との食事を望んでいるのかは誰にも判らなかった――。そして、十蔵の言葉に誰一人言い返せる事はなかった。何故なら、三上は十蔵に何をするのかを想像するだけでも怖かったからであった……。
次回、驚愕