正体
――な、何と……!? ――。壱夏のお願いとも言える言葉に十蔵は言葉を詰まらせかけていた。と言うよりも、彼の願いは、否、三上が壱夏を通して命令した事にも気付いた。
が、それ以上に彼が食事を共にする理由が判らなかった。そんな彼に壱夏は軽く瞑目しながら口を開いた。
「突然とはいえ申し訳有りません――ですが、その理由を述べましょう」
壱夏は目を開くと、理由を述べた。三上は自分の部下をIS学園の者として迎え入れて欲しい理由は一つ、IS学園を危険の魔の手から排除する為でもあった。
理由としてはIS学園はISの最後の希望であり、要でもある。逆にまた、ILを纏う男達や武力した男達が迫ってくる危険があり、女子生徒達や職員達に危害が及ぶ。
三上はそれを危惧すると共に自分の部下をIS学園に置く事で危険から守ろうとしていた。しかし、それは十蔵に不信感と疑問を抱かせる。
「で、ですが判りません!? 何故、貴方方の上司でもあり、ILを創った本人でもある三上さんは私達のIS学園を守るのですか!? それは貴方方の得にはならないでしょう!?」
十蔵は壱夏に訊ねる。最も、三上から見れば得にはならなかった。彼等がIS学園を守る事は、彼女達を守る行為であり、裏切り行為にも等しい。そんな事をすれば、全世界は混乱を招き、更なる混沌が起きる。
誰も特にはならず、ISを凌駕するILを創った三上がISを守るのは可笑しい。十蔵はそれを指摘すると、壱夏はそれも答えた。
「恐らく三上さんは危惧しているのでしょう……いえ、ISを完全に排除する事は望ましくないからでしょう」
「望ましくない、ですか?」
十蔵の言葉に壱夏は深く頷く。
「ええ、ISは女性達の希望――逆にそれを取るとなると、女性達は嘆き悲しみ、被害に遭う人が後を絶たなくなる――逆にまた、IS操縦者が殺される危険もある」
壱夏はそう言うと、瞑目しながら深い溜め息を吐き、その後に目を開けると眉間に皺を寄せながら目を伏せる。
「逆にまた、三上さんは有る事を望んでいます」
「望んで、いる?」
「ええ――彼は……いえ、彼は女尊男卑主義者の女性達の足掻く姿を滑稽にしているのです」
――なっ!? ――。壱夏の言葉に十蔵は戦慄した。が、壱夏は言葉を続ける。三上は女性達を肴にしていた。ILを創ったのもそう言う理由ではないが理由の一つとしてもあるが彼は言葉を続ける。
「無論、私は三上さんの考えている理由は判りませんが三上さんはILを創ったのは、そう言う理由かもしれません」
「な、何を馬鹿な事を!? それではIS学園とは関係ありません!!」
十蔵は怒りや戸惑いを隠せず立ち上がるが言葉も続ける。
「それではIS学園は何の為に守るのですか!? それに女尊男卑主義者達と言っても、中には女尊男卑主義者主義者ではない者達も」
「それでは女尊男卑主義者達によって冤罪を掛けられた男達の事も考えたのか!!?」
――なっ!? ――。壱夏の言葉に十蔵は驚いた。が、壱夏は般若の形相をしていた。無実の男達を思うが故の事であった。何故なら壱夏は、女尊男卑主義者の女達によって、無実の罪を突きつけられ、家庭崩壊し、社会的抹殺された男達がいた。
彼等には家族や遣り甲斐の有る仕事が有った。にも関わらず、腐った女性達により地位や家族を奪われた――挙げ句の果てには罪を擦り付けられ、家族が白い目で見られ、中には離婚した者達もいる。
コアは兎も角、構造や性能、デザイン等を手掛け、造ったのは男達である。それを知らない者達は気にもせず、喃々と暮らしている。壱夏はそれを許さなかった――それ以上に、男達の思いを踏みにじったような考えをした訳ではないが、それを忘れていた十蔵に壱夏は怒りを覚え、我を忘れていた。
「貴方を呼んだのは単に貴方を問う訳ではない!! 貴方を呼んだのは食事を誘うだけであり、学園を――っ!?」
刹那、壱夏はある人物の事を思い出し、何故か瞠目すると直ぐに眉間に皺を寄せながら下唇を噛み、辛そうに俯くと、顔を覆う。
その人物とは――伍であった。伍は壱夏が大事に思っているのと、彼を思い出したのは伍が三上に何をされるのかは判らなかったからである。
さっきの会話も本来の会話とは離れており、命令に背く行為に等しかった。伍が三上に殺される――壱夏はそう思うと、身体を震わせていた。
――伍……伍……! ――。壱夏は心の中で伍の無事を願う。そんな彼に十蔵は心配そうに声を掛ける。
「ど、どうしました? 何処か悪いのですか?」
十蔵の言葉に壱夏は我に返ると、瞠目し、手を退かすと、顔を上げた。十蔵は自分を心配そうに見ていたが、壱夏は「何でもありません……!」と言った後、大きく深呼吸すると彼を見据える。
「すみません……取り乱してしまいました」
「い、いえ――此方も申し訳ありませんでした」
二人は互いの相手に謝るが壱夏は本題に入る――。
「それよりもさっきの話ですが、学園に迎え入れたい者がおります」
「と、言うと……まさか貴方ですか?」
十蔵の言葉に壱夏は首を左右に振る――自分ではない事を教えていた。否、彼が学園に入る事は無いに等しいが今は十蔵に対し、凛々しい表情でその人物の名を言った。
――拓陸、六条拓陸です――。壱夏の言葉に十蔵は瞠目した。拓陸――それはさっき、自分を此所へと来るまで自分を案内し、そしてそれまでの間に自分の手を引いてくれた青年。
それが拓陸――否、拓陸が学園に入る事に驚きを隠せなかったが逆にまた、三上側としては彼が適任であった。
三上は最初、否、自分達の中の誰かをIS学園に潜入させる事を考えていた。部下と言っても壱夏、参流、肆狼、伍、拓陸、玖牧の六人だけであり、その中で誰が適任なのかを考えて――否、既に拓陸しかいないと決めていた。
壱夏の場合、身内がIS学園に居る為、三上の正体や彼に何度も干渉してくる。
参流の場合、彼は女子供関係なく殺すのと、学園はその宝庫としても相応しく、惨劇を起こす危険がある。
肆狼の場合は用務員としても可笑しくはなかったがセクハラとか弱みを握られる危険がある為、除外。
伍の場合は彼は子供である以前に女尊男卑主義者達に誘拐され、三上の居場所を無理矢理吐かされられるのと、壱夏の逆鱗に触れる危険があった。
玖牧の場合、彼は力を誰よりも恐れ、力を、ISを偉大なる力として考えている女尊男卑主義者達がいる学園に入れるのは苦痛でしかないだろう。
そこで一番の適任で、白羽の矢が立ったのは彼、拓陸しかいなかった。彼は普段は一人で行動するが、この世の醜さを誰よりも知り、尚且つ、誰よりも経歴が凄い。
経歴は……それは何れ彼の口から語られるだろうが壱夏は更なる事を語り始める。
「実は数日前、貴方はご存知でしょうが、襲撃事件を覚えになっていますか?」
「襲撃事件……あっ!?」
十蔵は驚くが壱夏は頷く。襲撃事件――それは十春とセシリアがクラス代表を賭けての決闘であったが謎の乱入者により、セシリアは瞬殺され、謎の乱入者が逃げた事件。
しかし、それが問題であった。あの乱入者は、あれは未確認であるのとではないのと、それが何かまでは判らなかった――その後、三上がILの存在を教えたと共にあの機体と言ったが何者かまでは教えなかった。
その後、暴動が起きるのと同時にIS委員会との関係で多忙を極め、更には三上との約束をされたが機体の持ち主までは聞けなかった。否、それが誰なのかを直接確かめたかった、と言い替えれば良いだろう。
「あの襲撃事件で現れた未確認――いえ、あの操縦者は私達が良く知ってる者達です」
「知ってる者達――まさか、貴方方の誰かですか?」
壱夏は手の平を見せる形で静止する――部下と言っても何人かまでは教えない――そう伝えていた。十蔵は一旦言葉を止める物の、壱夏は先を話す。
「そうです――無論、仲間の数までは教えられませんが敢えて言います――その者は、貴方をさっきまで案内してくれた者です」
「案内……ま、まさか彼か!?」
壱夏は頷くと「そうです、拓陸、彼です」と答えると十蔵は愕然とした。拓陸――それはさっき自分を案内してくれた者であるが彼があの未確認である事までは気付けなかった。
彼が学園に無か居られて欲しい人物であると同時に、未確認のIS――いや、今はILを乗っていた者の正体がが彼、拓陸である事に愕然としていたのだ。
十蔵は驚いているのを他所に壱夏は無言で見ていたが不意に目を逸らす。何も言うつもりは無かった。同時に、彼が落ち着くまで待つ事を選ぶのと同時に、食事が来るまでの間に時間を喰った事と、三上の命令を半分行い、半分背いた事に怒りと戸惑いを隠せなかった。
そして室内は、其々色んな意味で重苦しい空気が流れ続けていた。
次回、会議