インフィニット・レギオン   作:NO!

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夜咄

「ふぅ……」

 

 あれから少し経った頃で数時間は経った頃、壱夏と伍が住んでるアパートの一室にあるリビング――リビングには電気が点いてるがテーブルには一人の青年が肘を突きながら座っていた。言わずとも壱夏であり、白のシャツに蒼いズボンを穿いている。

 表情は険しくはないが何かを思っており、瞳には何かを警戒していた。その理由は……刹那、一人の少女がリビングに足を踏み入れる――壱夏の寝間着を着た楯無であった。

 彼女は一夏が起きているにも関わらず、首を傾げる。

 

「未だ起きていたの壱夏君?」

 

 楯無は一夏が起きている事に疑問を抱く。この時間帯は深夜一時であり、未だ子供でもあるが精神は大人である二人が何故か未だ起きていた。

 外に出れば補導物であり、肌に悪い――が、二人が起きているのには理由があった。それを指摘したのは壱夏である。

 

「俺が起きていて悪いのか?」

「いいえ――本当は伍君と寝ていたと思ったから」

 

 楯無はそう言いながら壱夏の向かい側にあるイスに座る。テーブルにはイスが三つあった。本来は二つしか無かったが一つは折り畳み用のイスであるがそれは来客用に備えた物であり、今は来客用の為に使っていた。

 その来客者とは楯無であるが彼女はアパートにあるイスに座っている。来客用のイスには誰も座っていないが壱夏と楯無は向かい合う様に座っていた。

 会話は無い――あるのは沈黙が流れるだけであった。壱夏は視線を下の方を向けており、楯無は腕をテーブルの上に起きながら壱夏を見ている――少し表情が険しい。

 ――どうした? ――。壱夏は楯無の様子に疑問を抱く。彼女がこんな時間に起きてるのも珍しいと思っていた。そんな壱夏に楯無は口を開いた。

 

「貴方……伍君はどうしたの? 一緒に寝ていたんじゃないの?」

 

 楯無は意地悪そうかつ疑問をぶつける様に訊ねる。彼女の言葉に壱夏は視線をある方へと向ける――リビングを出入り出来る扉であるが彼は自分の部屋であり、壱夏のベッドで寝ている伍の方を見ているのかも知れない。

 伍は壱夏のベッドで寝ていたが彼は壱夏と寝たかったのだ。理由は壱夏の帰還を喜び、何より彼が傍にいる事を夢ではない事を願う様に壱夏と寝たいと言い出したのだ。

 壱夏は快く頷いた物の、彼はこの時間帯に起きたのは、ある理由で此所に座っていた。

 

「伍は気持ち良さそうに寝ている――が」

 

 壱夏は視線を楯無の方へと向ける。

 

「あんたが何者で、あんたは俺達の事を聞きたいみたいだからな?」

 

 壱夏の言葉に楯無は眉間に皺を寄せる。そしてある理由とは、この時間帯に起きていたのは楯無と話をする為であった。楯無と話をするのは伍が寝ている間と楯無に料理の最中で約束したのだ。勿論、伍には部屋で待機する様に言った為にその約束は知られていない。

 楯無から見れば好都合であるが一夏から見れば、彼女に全てを話す事は億劫であり、逆に感謝していた。

 

「最初に言っておく、伍を見ていてくれて感謝する」

「別に良いわよ? 伍君を任せたって言われても、とても良い子だったわ――弟が出来たみたいで嬉しかったわ」

 

 楯無は少し笑みを零す。楯無から見れば伍は弟の様な存在であるのと同時に出来た様にも感じていた。あんな子は中々いない――逆に良い子すぎるのは不思議なくらいだろう。

 玄関前で壱夏の帰りを待っていたのも、彼に絶大な信頼を寄せている事が伺える。そして、一番に気になっていたのは、あの事だろう。

 

「それよりも貴方に訊きたい事があるわ」

 

 楯無の言葉に壱夏は眉間に皺を寄せる。恐らく、あの事だろう。彼女から見れば不信感しか無いが壱夏も又、彼女の正体に気付いていた。

 少し前に、日本に居た時に楯無の正体を調べていた。が、楯無は口を開く。

 

「貴方達は何者なの? そして伍君の右腕にあった、あの機械も」

 

 楯無は壱夏に訊ねた。彼女がそれを気にしていたのも、壱夏が彼女と一対一の話をしたかったのも……否、壱夏が楯無が気にしていた事を知ったと言い替えれば良いのかも知れない。

 事の発端は遊戯を展開しろと言った事だろう。あれが全ての始まりであり、自分達が何者なのかを気にさせる決定的な始まりでもあるだろう。

 壱夏はそう思いながら目を閉じ、溜め息を吐くと微かに黙り始める。黙秘権を使うつもりではない――また、取り調べでもない為に無駄だろう。

 

「貴方達は何者なの? それに伍君から訊きたかったけど、伍君は未だ子供――保護者でもある貴方に訊くのが一番早かった」

 

 楯無は言葉を続けるが伍の事も関係していた。彼に訊きたかったが彼は子供である以前に、壱夏と再会する前の彼に訊くのは無理に等しい。

 何故なら彼女は特殊な家系の末代にして当主でもあるからだ。彼女が疑問を抱いたのはその所為でもあるが他の者達も疑問を抱くに違いない。

 ――……あれは――。刹那、壱夏は目を開くと彼女を見据える。楯無は表情を険しくしているが何処か気にしている。伍を気遣っていた事にはありがたいが自分には無いだろう。壱夏はそう思いながらも殆どを話し始めた。

 

 

 

「貴方達が……三上の……部下……!?」

 

 楯無は壱夏達の正体と、伍の右腕にあった機械を知り愕然とした。壱夏は楯無に自分達は三上の部下であり、ロシアに居たのは彼に其処を拠点にしろと言われた事、自分は日本に行った事や十蔵と食事した事、伍の右腕にあった遊戯は三上に与えられ、自分も『愛憎』と言うILを与えられた事も話した。

 しかし、それらは全て一部でしかないが壱夏はその殆どを全て話した。楯無は愕然としている中、壱夏は言葉を続ける――途中、腕を組みながらであった。

 

「三上さんは伍にILを与えたのは、彼に同世代の子供達にもILが使える事を意味させたかったからだ――勿論、俺に伍を見る様に言ったのも、俺に寂しい思いをさせたくないからだった――まあ、拓陸もいたからな」

「っ……そ、それじゃあ……三上って人は何故、貴方達を部下に? それに部下は何人居るのよ?」

 

 楯無の言葉に壱夏は首を左右に振る――応えられない、と言う行動であったが壱夏は言葉を続ける。

 

「それは言えない――俺達を部下にした事や何人居るかまではな……仲間を売る行為だからな」

「そ、そう……っ」

 

 楯無は生唾を吞む。異常だ……彼の言葉には何処か棘があり、何処か寂しくも怒りが含んでいる。知りたい――楯無はそう思うのと同時に知る事が危険と感じた。

 彼が何者であるかまでは知らない――逆に又、殆どの事を知る事が出来た。伍が遊戯を持ってる理由は子供でもILを扱える事への証明、壱夏と伍は三上の部下である事や、部下が他にもいる事。

 楯無は幾つもの疑問が解決したかの様に思えたが戦慄をも感じた。しかし、壱夏は楯無を見た後、不意に口を開いた。

 

「それよりも貴様は誰だ?」

「えっ? ――如何言う事?」

「惚けるな……貴様は何者だ? ――第十七代更識家当主、更識楯無」

 

 ――っ!? ――。壱夏の言葉に楯無は戦慄した。が、正体が彼にばれた事にも驚きを隠せないでいた。が、壱夏は目の前に居る少女が更識楯無である事に驚きはしなかったが、調べて正解だと思った。

 日本に居る間、彼女もIS学園の生徒である事を自己紹介で知り、同時に伍に何かしないかを心配し、調べたのである。

 そしたら、彼女の経歴は愚か、更識家の事までをも知ってしまう。

 

「更識家――長い歴史の中で裏家業を生業とする暗部の一族――その当主がまさか、アンタだったとはな?」

「…………」

「別に俺はアンタをどうする事もしない、ましてや身体を目的とも考えていない」

「……そう、調べたのね」

 

 壱夏の言葉に楯無は悟られた事に諦めた。が、楯無は凛とした表情で壹夏を見ながら胸に手を当てる。

 

「そう……貴方が言う様に私は更識楯無――暗部の一族の末裔、更識家代十七代当主よ」

「……成る程な……では」

「安心して――伍君には私の正体は伏せているし、伍君を問い質そうとしてはいないわ」

「……と、言うと?」

「貴方と話をしている時点で、いえ、貴方に聞いてる時点で全て知った」

 

 楯無は瞑目した。が、正論であった。何故なら楯無は壱夏から全ての話を教え、知った。もしもこれが伍から聞いた事になるとそのような話はしないのと、壱夏が夜中まで起きないし、自分も夜中まで起きない。

 そうなれば、今の話を全て知る事は出来なかった。否、約束されなければ知る事は出来なかっただろう――同時に、伍から聞いた事を察されれば、彼が怒る事にも気付いていたのと、壱夏がいない間に元気が無い伍を気遣う意味でも約束を受けなかったからだ。

 楯無はその事を話すと、壱夏は静かに耳を傾けていた。

 

「そうか……感謝する」

 

 壱夏はそう言うと、静かに立ち上がる。彼の表情は険しいものの何故かそれ以上は追求しなかった。

 

「どうしたの? 追求しないの? 私の家系を知ったのに、伍君にも追求しようと思ったのに?」

 

 楯無はうっすらとからかう様な笑いを浮かべる。彼を煽っている様にも思えるが、壱夏は無言で彼女の横を通り過ぎる。――壱夏君? ――。壱夏の様子に楯無は疑問を抱き声を掛ける。

 壱夏は直ぐに立ち止まるが振り返らず、声も出さなかった。

 

「…………」

「壱夏君?」

 

 壱夏の様子に楯無は疑問を抱くが彼女も立ち上がり、彼に近づく。刹那、壱夏は身を翻すと、楯無に近づいた。

 ――っ!!? ――。楯無は突然の行動に驚きを隠せない。彼に何かをされたのだ。暴力を振るわれた訳ではなく、刃物を突きつけられた訳でもない。

 なのに全身の動きが言う事を聞かず、思考が一瞬だけ止まり、驚きを隠せないかの様に愕然としていた。とても温かくも何処か不意を突かれてしまっていた。

 楯無は何かをされていなかった訳ではない――楯無はされたのだ――壱夏にキスをされたのだった。

 




 次回、三人
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