あれから数日後、ここは、とある国にある小さなバー。バーと言っても広くもなく狭くもない。店内は貸し切り状態なのか、閑古鳥が鳴いている意味にも等しく、店内も薄暗い。
が、完全に薄暗い訳ではなく、照明があり、点いている物の店内に微かに光を灯している様にも思えた。
しかし、これも店側が決めた事であるが店内には哀愁漂うBGMが流れ、店の雰囲気を醸し出している役目をもし、営業中である事を意味していた。
「マスターもう一杯」
店の奥には、カウンターが設けられていた――カウンターと言っても向こう側には色んな種類があり、色んな形をしたワインボトルが並べられている棚があり、カウンターには水道があり、何個もあるガラスのコップが見受けられる。
カウンターには四十代の壮年の男性がおり、白のシャツに黒のベスト、黒のズボンを穿いているが何処か落ち着いている上、目の前にいる三十代の屈強な身体をしている男性に対して微笑みながら頷く。
男性は手には円形のアイスロックが入っているガラスのコップを彼に差し出すと、マスターはそれを受け取る。
「なあマスター?」
男性はガラスのコップに酒を注ぎながら「何でしょうか?」と聞き返す。
「済まねえな――突然とは言え、貸し切りにしちまって」
「別に良いんですよ肆狼さん――それに未だ一杯目ですが、今日はどのくらい呑むのですか?」
マスターは意地悪そうに、それにからかう様に訊くと彼、肆狼は苦笑いする。
彼はバーの常連かつ、マスターとは顔見知りであり、マスターからは自分が酒を呑む量まで把握されているのである。
彼は屈強な体格は元より、上には白のタンクトップに水色の皺苦茶な上着を羽織り、水色の長いジーパンを穿いている。
「おいおい、それじゃあ俺が何時も酒飲んでいるみたいじゃねえか?」
肆狼は苦笑いしながらマスターに言うと、マスターは微笑みながらアイスロックがあり、お酒が注がれているガラスのコップを彼の近くに置く。
酒はオレンジ色であったが未だぬるい――アイスロックが酒を冷たくする役目をしているが少し時間が掛かるだろう。
肆狼はそう思いながらガラスのコップを手に取る。
「まあいい、それにしても、未だこねぇのか?」
肆狼は店を出入り出来る扉の方を見る。扉の少し上には鐘があるが誰かが来店したり出て行く時に鳴るよう工夫されているものである。扉からは人の気配はない――そうだろう、少し離れており来るかどうかも判らない。
それに店を貸し切りにしたのも、誰かを待っているのと、話がある為にマスターに言ったのである。
「どうかしましたか肆狼さん? 誰かを待っているのですか?」
「まあ……待ってると言えば待ってる、かな?」
肆狼はそう言うと酒を呑む――口内に酒特有の香りと味が広がり、染み込んでいくのと、食道へと流れていった。肆狼は酒を軽く呑むと、再びマスターを見る。
「それよりもマスター、オレンジジュースとかは有るか?」
「ありますけど、それが何か?」
「まあ、カクテルとかで混ぜる意味であるだろうし、酒が飲めない人の為に用意しているから判るんだけど……」
刹那、扉の方から鐘の音が聴こえ、肆狼とマスターが扉の方を見ると、二人の子供が来店する意味で足を踏み入れる。一人は十代前半で、もう一人はリュックサックを背負った四、五歳くらいの子供であった。
「あっ、肆狼おじさん!」
その子供は伍であった。伍は肆狼がいる事が嬉しそうであるのと同時に肆狼の元へと駆け寄る。そして、もう一人は黒のコートを纏い、黒の鍔付き帽子を深々と被っているが壱夏であった。
「あれ、壱夏君に伍君ではないですか? 貸し切りにしたのは二人の為ですか?」
マスターは肆狼に訊く――マスターは二人の事を知っているが二人とは知り合いだった為、問題は無かった。
「こんにちはマスター! 今日も美味しい酒を作ってるの?」
「こんにちは伍君? 今日も美味しいジュースが有りますよ」
「本当!?」
伍はマスターの言葉に喜ぶ。その間に壱夏はカウンターの方まで歩くと、帽子を取る。
「ふぅ……お久しぶりです、マスター」
「お久しぶりです壱夏君? 今日はどのようなご用件で?」
「まあ、色々有りますが、肆狼さんもお久しぶりです」
「おいおい次いでみたいな挨拶だな?」
壱夏の言葉に肆狼は苦笑いするが一夏は肆狼が座っているイスから一つ離れたイスに座る――二人の間には一つの空いたイスがあるが壱夏は伍に言う。
「伍、座りなさい――お行儀悪いぞ?」
壱夏は呆れながら言うと、伍は「は〜〜い」と言った後、肆狼と壱夏の間にあるイスに座ろうとした。
「おいおい、ほらほら」
肆狼は伍を両側から挟む形で抱えると、イスに座らせる。
「ありがとう肆狼さん!」
伍は肆狼に感謝すると、肆狼は伍の頭を撫でる。
「どう致しまして――まあ、壱夏が育てたからお行儀良いのか?」
肆狼は伍の頭を撫でながら壱夏に言うと、壱夏は「フン」とそっぽを向く。
「それよりもお前等遅かったな? どうかしたのか?」
「……強いて言うなら、この店に、バーに子供二人で入るのはどうかしてますよ……それに遅くなったのは単に道に迷っただけです」
「おいおい、それが理由か? まあ無理もねぇか、この店は町中で見つけるのは難しいからな」
肆狼はそう言いながら手に持ってるガラスのコップに注がれている酒を呑み干すと、マスターに渡す。
「おかわりマスター、それに二人にオレンジジュースを」
「かしこまりました――」
マスターはそう言いながらガラスのコップを受け取る。その間に肆狼は再び壱夏を見る。伍はリュックサックを脱着し、中から漫画を取り出し、大人しく読んでいた。
「そう言えば壱夏、他の奴らの連絡は取れたのか?」
「……はい、拓陸は兎も角として、玖牧さんには何とか連絡は取れました」
「玖牧が? どうして連絡取れなかったんだ? それにアイツは几帳面に時間を守る奴で連絡も折り返す奴なのにな?」
「何でも、施設から子供が一人抜け出して、それを捜す意味でも連絡出来なかったそうです――捜している最中だったらしく」
「そうか……そう言えばアイツ牧師だったな……それよりも」
肆狼は表情を険しくする――嫌な事が有るのと、不快な気分に襲われる意味でも、壱夏に有る事を訊ねようとした。
「奴は、あのクソ野郎は、参の野郎にも連絡したのか?」
刹那、壱夏は眉間に皺を寄せると右手を拳にして震わせ、伍は一瞬だけ肩を震わすと怯え始める。二人は参と言う言葉を聞いてある人物を思い出す。
しかし、壱夏は伍の様子に気付くと、彼の頭に手を置き、撫でる。
「伍……大丈夫か?」
壱夏は心配そうに伍に訊ねると、伍は震えながら壱夏を見ると口を開く。
「壱夏お兄ちゃん……僕、あの人嫌い」
伍は哀しそうに俯く――彼なりの、子供なりの正直な気持ちであり、吐き出す形で呟く。
彼だけではない――壱夏や肆狼も――玖牧も拓陸も彼を、参を危険視している。
出来る事なら排除したいが彼の力は自分達に必要な存在でもあり、あの方が命令しない限り、どうこうする事も出来ない。
伍は震える中、壱夏は心配そうに頭を撫で続けていた。
「そうか……俺も好きにはなれない……あの人はイカれている」
壱夏は伍の言葉に納得する。そんな二人に肆狼は下唇を噛む。すると、マスターが肆狼の所に酒が注がれているガラスのコップ、壱夏と伍にはオレンジジュースが注がれているコップを置く。
「取り敢えず呑め伍、嫌な事は忘れろ――それにお前には重い話だから向こうの席に……」
壱夏は伍に気遣う様に優しく論ずると、鐘の音が聴こえた――誰かが来店した事を意味していた。壱夏、肆狼、マスターが扉の方を見ると、二人の人物が店に足を踏み入れる。
一人は男性だが黒のジャケットを着て、黒のズボンを穿いている。彼は玖牧であった――しかし、彼は牧師でありながらも牧師らしかぬ服を着ている。無理も無い――彼は休みを取って、壱夏に逢いに来たのだ。
もう一人は、壱夏とは同い年だが落ち着いた雰囲気を醸し出しており、整った顔立ちに少し長めの黒髪に鋭い目つきに眼鏡を掛けている。
紺色のシャツに黒のベスト、茶色のジーパンと言ったラフな恰好をしている。
「あっ、玖牧さんに拓陸お兄ちゃん!」
伍が笑顔を浮かべる――さっきまでの暗い顔が嘘の様にも思えるが彼はイスから降りると、玖牧と拓陸目掛けて駆け寄ると、玖牧に抱き着く。
「お久しぶりです伍君、元気にやっていましたか?」
玖牧は伍に対して笑顔で言うと、伍も笑顔で「エヘヘ」と答えた。
「久しぶりだな牧師さんよ!? 相変わらず笑顔を絶やさないな?」
「お久しぶりです肆狼さんに壱夏君、相変わらずの様で――後、拓陸君とはさっき逢いましたから」
「そうですか……久しぶりだな、拓陸」
壱夏は拓陸に言うと、拓陸は無言で手を振る。
しかし、一応だがこれで全てが揃った。
参を除き、壱、肆、伍、陸、玖が哀愁漂うバーに集結した。
次回、始動。
そして関係ないでしょうか、こんばんわNO!です。
さて、今回出て来た壱、参(名前だけ)、肆、伍、陸、玖が出て来ましたがこれで全員であるのと、これは1、3、4、5、6、9の旧字でもあり、忌み数である事をも意味しています。