IS―審判の時― 作:Vシネ面白かった丸
このままではいけない! と思い立ち書きました。台詞は新社長脳内ボイスで余裕過ぎて書くのめっちゃ楽しかったです。
※修正。私の研究成果→我が社の研究成果
格納庫、と呼ばれているそこは同時に発着場でもある。眼前のアリーナへと通じるゲートをレールを用いて射出され、戦場へと運ばれる。ここはそのための準備をする場である。
話をそらして自己紹介させてもらうと、私はどこかしらの世界の知識を持った人間である。前世の記憶、とはまた違う。何故なら知識にある年号と今の年号にそう違いはないからだ。
仏教において、前世とは個人が生まれる前に送った一生のことを言う。今の一生は現世といい、この一生の先が来世である。つまり私は現世の記憶を二つ持っていることになる。
幼い頃から持っていたから、それが何故私の中にあるのかは分からない。だが分からないならそれでも構わない、友人が出来ない以外に困ったことなんてないし、むしろ私の趣味と噛み合うことにより擬似的な才能として振るうことが出来るからだ。
で、ここで話を戻す。どうして私が戦場前にいるのかと言うと――――
「……仕方ない。檀、お前とオルコットの試合を先に回す。いいな?」
「問題ありません」
――――私が戦場へと向かう兵士の一人であるからだ。
どうしてこうなった。いや事の発端は何かなんて分かっている、つい数週間前のことだからだ。私は、この世界を構成する重要なファクターとなり得てしまった男子禁制であるISを、男の身でありながら起動してしまった。そこからはあれよあれよと連れ込まれ流されて進められ、気がつけばクラス代表なんて物の候補になってしまい、さらにはそれを決めるための戦いにまで巻き込まれてしまった。
どうして、この学園の人間はこうも脳筋なのだろうか。物事には様々な解決法が存在するが、その中でも力による解決は最も愚鈍であると考えている。
わかだまり、禍根、遺恨だけでなくストレスまで自分だけでなく他者にも残すからだ。まぁ、一番嫌がる理由と言うのは……。
「私が勝つに決まっていますからね」
全く、無駄のない行動に勤めてほしい物だ。
◆◆◆
その言葉は、あの時と全く同じ台詞だった。
あの時、俺とオルコットさんが啖呵を切りあったクラス代表を決める時間。同じく他薦を受けていた檀は、千冬姉についでだからと勝手に決められ、いいなと念を押された時、瞳一つ揺らさずに力強い眼差しを持って、確かに言った。
『問題ありません。私が勝つに決まっていますからね』
その発言にクラス全体が唖然とした後、オルコットさんがまた噴火した。さっき言った言葉をさらに酷くしたような、まさに侮辱のオンパレード。あまりの言いように俺だけで無くクラスメイトにまで火がつこうとしたその時に、静めたのは檀だった。
『セシリア・オルコット。才能だけでなく最大限の努力を持ってイギリス代表候補生までのしあがった本国で一時期時の人となった悲劇のISパイロット、その類い稀なる豊富で高めの適正率はまさに優秀の一言。一年全体で見ても間違いなく上位の実戦成績を持つ人物』
何処からかファイルを取りだし檀はそれをつらつらと読み上げる。その言葉にオルコットさんの態度は急変、自分の立場をよく分かっているようですわねと機嫌までよくなる始末。まさか媚を売るつもりなのか、ここまで生まれ故郷を馬鹿にされておきながら、と怒りの矛先があいつに向くのも束の間。
『――だが、どうやら過大評価が過ぎたらしい』
檀はまたも、クラスを静めた。その手に持った紙媒体のファイルを、半分に破り捨てたんだ。オルコットさんはまたも唖然、そうして少しすると顔を赤くするを通り越したのか目をつり上げ、殺気というのかもしれない鋭い物を放ちながら、口を開こうとしたとき、檀が先んじた。
『しーっ。……これ以上は時間の無駄だ。織斑先生、授業の再開を』
鋭い物を向けられながらさらりと受け流し、なんでもないかのように授業の再開まで促す。千冬姉はため息をつくと、言われるまでもないとその場を纏め上げ授業を続けた。
クラスの皆はその姿に檀の評価をうなぎ登りにしたらしいけど、俺は全くそんなことは出来なかった。むしろ俺の中で檀に対して芽生えた感情は、恐れだった。
具体的にどこが、と言われると自分でも掴み損ねているから言葉に出来ないのだけど、これだけはハッキリと言える。
檀 正宗は、必ず何かを起こす。
◆◆◆
土を踏みしめる音が緊張に包まれ、静まり返ったアリーナによく響く。一歩、また一歩と彼女に近づく度に殺気が鋭く研ぎ澄まされて突き刺さるのを感じる。困ったものだ、今から行うのは試合であって死合ではないのだが。そんなもの突き刺したところでなんの意味も価値もない。
ブルー・ティアーズ、君の行為も行く道も全て無駄ばかりだ。
「ここはISのためのアリーナですわよ。ISも身につけず土足で上がり込んでくるなんて、分を弁えた方が宜しいのでは?」
「許可はある。それに、私の物は君のと違ってスマートでね、ゲートを使わずともアリーナに上がれるのだよ。体重100kg越えの君には分からないかも知れないがね。ブルー・ティアーズ」
「……どうやら、最後の許しのチャンスも棒に振るつもりのようですわね」
「そう言う君は記憶力が乏しいようだね。私は言ったはずだ。『私が勝つに決まっている』、とね」
「ッ!」
瞬間、光が迸る。耳のすぐ側を光線が走り、背後の地面に轟音と傷跡を残す。
なるほど、これがスターライトmkⅢの威力か。現代兵器が太刀打出来ないと言うのも頷ける。こんなものが相手では、戦車と言えど十秒も持たずに撃破されることだろう。何千発ものミサイルをIS一つで凌ぎきったという話も、眉唾物ではないらしい。
「ISを装着なさい、私が貴方を撃ち殺さない内に」
「ではお言葉に甘えさせてもらうとしよう」
まだ長袖である制服を一枚脱ぎ、物を取り出してから地面に放り捨てる。そのままメタリックブルーに塗装されたそれをバックルに重ねるように当てはめると、重苦しく渋い音声で装着音が鳴り響く。
そうしてポケットから、我が社の研究成果を取りだし、取り付けられたスイッチを押した。
《KAMEN RIDER CHRONICLE》
「今こそ審判の時」
研究成果、ガシャットを勿体ぶらず手放す。ガシャットは重力に従いあわや地面へ真っ逆さまと思いきや、その場で落下を止め浮遊し、まるで意思を持つかのように私の回りをくるりと回り始める。
それを確認した後にバグルドライバーⅡのAボタンをクリックすると、軽快な音楽がアリーナ全体へと流れ始める。別に何かを馬鹿にしているわけでもこけにしているわけでもない、これは待機音声だ。審判の時を始めるための、Aメロなのだ。
ガシャットの挿入音が重苦しい音声として流れる
「――変身」
解放のスイッチを押した。
《BUGL UP!》
それは、自身を昇華させる言葉。
《天を掴めライダー、刻めクロニクル。今こそ時は、極まれり!》
激しい迸りと共に、私の全てが変わったことに今や自分だけでなくアリーナにいる全員が気づいたことだろう。黒を基調とした緑のフルボディ、はためく黒であり赤でもあるマント。そして今の自身を象徴する、浮かび上がった時計と数字のマーク達。
「
「そのような武骨な名称は止してもらおうか。これの名……いや、今の私は"クロノス"。"仮面ライダー クロノス"と、そう呼んでもらおうか」
「ふざけた事を……檀正宗ッ!」
勢いのまま叫ぶと、彼女はブルー・ティアーズに装備された現行で数少ない武装である、ビット"ブルー・ティアーズ"を自身の側に侍らせた。
また一つ、無駄を増やした。もう既に試合開始のブザーは鳴っているというのに、早々に撃ち抜きに行かず余裕まで見せている。宙に浮かんでいるからと言って、その程度のことで慢心してしまうとは、つくづく自分の目が鈍くなったのかと思ってしまう。
「さぁ、私、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる――――」
「しーっ」
決めようとしているところ悪いが、これ以上無駄を増やされては困るのだよ。時間まで無駄にされてしまってはたまらない。
それに、
「審判の時は、厳粛でなくてはならない」
「……あなたという人間は、どこまで人をこけにすれば――――!」
《PAUSE》
AとBボタンを押すだけ。
それだけで、世界は嘘のように静止する。
風も、音も、ブルー・ティアーズでさえも。
範囲内における私以外の全ては呼吸すら忘れたかと思えるほど静まり返る。
そうだ、こうでなくてはならない。
彼女には悪いが、私が行おうとしているのは試合ではなく、
「ブルー・ティアーズ、君の人生は実にドラマ的だ。
両親を失い、幼い君は勤勉の後残った財産を外敵から守り、信用できるのは同じく残されたメイドの一人だけ。素質はあっただろうがそれを腐らせることなく、努力で磨き続け、国を代表する候補生にまで成り上がった。
まさにどん底からの逆転劇だ、君のような存在をゲームに――――商品にできれば、どれ程の売り上げが出ただろうか。私には想像もつかないよ」
だが、それはもう叶わない。それら輝く全てを、彼女の持つ下らない固定観念が、女尊男卑が錆び付かせてしまった。こうなっては再び磨いたところで錆びつく前より売り上げの延び代は半分ほどに落ちてしまっているのは明確だ。
「ブルー・ティアーズ、いやセシリア・オルコット。君にはもはや商品価値はない」
この身は既にIS以上のスペックを持っている、その程度の高さなど軽く跳躍する程度で届いてしまう程に。慢心は己を殺すとは、よく言ったものだ。
跳躍し彼女まで約半分、Bボタンをクリックする。所謂、キメ技というものの体勢に入る。この程度で今までの無駄を取り返せる訳ではないが、手間は少ない方がいい。ただの一撃で、仕留めてやろう。
そうしてすぐに彼女の目の前まで到達し、再度Bボタンを押す。
《CRITICAL CREWS-AID》
「たっぷりと味わうといい」
もはや聞こえてはいないだろう彼女にそう囁き、その場で力付くに反時計に回転、振り上げた蹴りを、彼女の眉間に叩き込む。
響かない鈍い音の後、彼女はあまりの威力に姿勢を崩したが、やはり再び動かなくなる。
当然だ、私がしているのはただのフリーズではなく、文字通り
そこそこ跳躍したとは言え、飛べるのだから何事もなく着地出来るのは当たり前だった。
《終焉の一撃!》
「ブルー・ティアーズは絶版だ」
《RESTART》
AとBボタンを再び押す。
たったそれだけの行動で、世界は呼吸を思い出す。
次いで聞こえたのは鈍い音の続きと、壁を砕いた轟音。
我ながら見事な蹴りの入れ方だった。あそこまで綺麗に入れられてはいくらISと言えど一発で再起不能になっているだろう。
アリーナに設置されたモニターを見上げれば、予想通りにシールドエネルギーは0になっており、彼女の敗北を雄弁に示していた。
「GAMEOVERだ」
《…………しょ、勝者、檀正宗》
ブルー・ティアーズのデータを得られなかったのは惜しいが、使い手があれでは分かっている以上のデータは望めないだろう。セシリア・オルコット、君は本当に惜しい人材だったよ。
ガシャットをドライバーから引き抜き、私へと姿を戻した後、そのまま悠々とアリーナから立ち去った。
一方的とは言え、勝利の余韻は変わらず良いものだと、実感するために。
新社長の「しーっ」が好きすぎて二回もさせてしまった。でも後悔はしていない。