IS―審判の時―   作:Vシネ面白かった丸

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鈴ちゃんはキャンセルだ(セカン党)
戦闘もキャンセルだ。主にセシリアのその後やゲンムコーポレーションの説明をしているだけの回です。


ラファール・リバイヴ・カスタムⅡ 前半

 そもそも私はこのIS学園に何を求めているのか。確かに流れであれよあれよと連れ込まれたにせよ、私は通学を拒否できるそれなりの理由と肩書きを持っている。つまり、行きたくないと思えばいつでもそれを使って在学だけしている形に持ち込めたのだ。

 

 だが私がそれをしないのは、この学園の面白いところに気がついたからだ。真っ二つだ、この学園は二つにしか分けることができない。それは消費者であるか、貢献者であるか。

 

 消費者というものは会社経営で無くてはならないものである。そもそも会社は何かしらの物を消費者に売り付けて存在しているのだ、買うものがいなければ成り立たない。この学園の二つのうち一つは皆消費者として扱うことが出来る、我が社の大事な顧客として。

 

 貢献者とは、即ち我が社に利益を与えてくれるものである。商品はもちろんだが、会社経営は一人で成り立つものではない。我がゲンムコーポレーションもまた私一人で動いているのではなく、私もあくまで社長として出来ることはしているがどれも一流とは言いがたいだろう。

 ならば、その道の一流を雇用すればいい。そしてその一流を囲むようにその道の筋の者たちも雇用し、塊として会社を形成する。即ち貢献者とは我がゲンムコーポレーションの社員一人一人のことも言うのだ。

 

 だがゲンムコーポレーションはまだ上を目指している、上へ更に上へと。その為には更なる人材が必要だ。一つ一つ、積み上げることで着実に押し上げてくれるような人材が。

 商品価値とは、商品になるものと貢献者になるもの、二つのことを意味しているのだ。

 

「そういう意味では、君の商品価値は最高峰かもしれないな」

 

 夜の帳も落ちた頃、学園寮の一室でそう囁く。

 

「少し前に来た甲龍は商品価値があるにはあったが、今すぐ我が社の益になるようなものではなかった。彼女のストーリーはありふれているし生々しい、商品としては絶版ものだ。だがあれは、ヒーローの側にあってそれの価値を高める、謂わばヒロインの役割、貢献者なのだよ。行き着く先が良いにしろ悪いにしろ」

 

 二組のクラス代表、と言っていたか。あぁ、結構だとも。我がクラス代表の白式と存分に高め合うといい。そうして商品価値が規定まで高まった頃には……いや、憶測で物を話すのは社長として良くないことだ。まだ互いに潰れ合うかもしれない、そうなった場合は両者共々絶版ではあるが。

 

「当然だが、シュヴァルツェア・レーゲンにも商品価値はある。だがあれは貢献者にはなり得ない、あそこまで喜劇向きな人材もそういない。商品としては我が社がプロデュースすれば莫大な売り上げになるだろう」

 

 だがそう、ここまではおまけのようなものだ。

 

「ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ。先程も言ったが君は素晴らしい商品価値を持っている。ストーリーはありふれたようなものでなく劇的で、その空気を読む能力は他の存在の一線を越えている。実に我が社好みの人物だ」

 

「……関係ないよ、僕は明日にはもうこの学園にいないんだから」

 

 女である自らの体を抱きしめながら、絶望したように彼女はそう言った。

 素晴らしい、彼女は何もせずとも自分を底へ底へと叩き込んでくれる。存在してはいけないのだと、存在してはいけなかったのだと。自分が思う限りどこまで深くなるそこへと身を庇うことなく投げ出している。

 だが世の中には捨てる神あれば拾う神もある

 

「そう自棄になることもないだろう、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ。確かに君はシャルル・デュノアとして生きる道は絶たれてしまった、もうデュノア社には帰れない。ああ、母親の元には帰れるかもしれないな」

 

 かき抱く腕に爪が更に深く食いつく、唇は噛まれ食いちぎるのではと思うほど力を強く込めている。

 

「だが私ならば、ゲンムコーポレーションならば、君を救うことが出来る」

 

 その一言で、全ての力が抜けるわけではなかったが傷がついてしまうような事態は避けれたようだった。彼女は戸惑いがちにこちらを見るが、すぐに俯いてしまう。

 

「……価値が無くなれば、僕をああするんでしょ? セシリア・オルコットさんのように」

 

 セシリア・オルコット?

 

 ふむ。

 

 さて、誰だったか。私はそんな人物といつ関わりを持ったんだ?

 会社でも学校でも多くの人物と顔を合わせているから、流石に一人一人の名前までは覚えていない。先日我が社に入社した社員だったか、はたまた三組の生徒だったか。心当たりが思ったほどないな、絶版にした何かであれば可能性はあるのだが、捨てたゴミの名前まで覚えてはいない。

 だが彼女の口ぶりから、クロノスの恐ろしさは知っているようだ。恐らくだが、絶版にしたうちの一人なのだろう。あとで過去の資料を確認するとしよう。

 

「先程も言ったが、君の商品価値は素晴らしいものだ。そしてそれが損ねられることは、一生あり得ない。何故なら私は――君を右腕として雇いたいからだ」

 

 

◆◆◆

 

 

 最初に彼を見たとき、僕は恐れを抱くと同時に寂しさを覚えた。

 転入してきて最初の授業が始まった頃、皆それぞれのグループで固まって談笑をしていた。授業が始まるまでまだ余裕はあるだろうし、それも当然だなと思ってた。でもふと見渡すと、誰も近づいていない場所があることに気がついた。

 そこに彼が、一人で立っていた。

 檀正宗。一組クラス代表決定戦でイギリス代表候補生を文字通り一瞬で倒し、そして彼女からISすらも奪った男。そして、僕が監視しデータを盗む対象の一人でもある。

 

 何故彼が孤立しているのか、おおよその検討はついていた。彼は強すぎたのだ、そして情けも容赦も持ち合わせてはいなかった。恐れられているのだ、所属クラスだけでなく、学年全体でも。二組の子も、彼には近づこうとしなかった。

 恐らく皆、彼のことをよく思っていないのだろう。だけどそれを表に出して喧嘩を売ることもできない、そうした場合どうなるかは、セシリア・オルコットが自らの身を持って示してくれたのだから。

 

 情報によると彼女はIS学園を除名後候補生から外され、さらに本国からは多額の賠償金を支払わされたと聞く。彼女は今、守ってきた財産すら失い、一日をなんとか食いつないで生きているらしい。

 だが彼女は謂わば被害者なのだ、規定通りの勝負であればああなることはなかった。だから、咎められるべきは彼であるし、除名されるべきも彼であるはずだ。

 

 しかし彼はそのどちらも負ってはいない。それは彼が、いやゲンムコーポレーションが日本製のIS部品のシェアを全て掌握しているからだ。どんな町工場でも、どんな大企業であろうとも、全て買収に成功している。今やゲンムコーポレーションは、日本一のIS企業だ。

 元を辿れば、彼女のブルー・ティアーズの80%はゲンムコーポレーション製の部品で出来ている。フレームやシステムはイギリスに本店を置く企業のものであるけど、組み立てるべき部品がなければISは成り立たない。

 もちろん部品なんて日本製である必要はない、中国なりインドなりドイツなり、どこでなりとも買えばいい。むしろ自国で生産すればいい。しかしそんなものはおもちゃだと言わんばかりに、日本の技術力の高さをゲンムコーポレーションが雄弁に語っている。

 

 そもそもゲンムコーポレーションはゲーム会社だ。そのゲームの評価の高さは他のゲーム会社を全て過去のものにするほどに高い。全世界で遊ばれていない時間はないとまで言われる原点にして頂点のゲーム、"マイティアクションX"がそれを物語っている。

 シンプルながら完成されつくされているそのあまりの面白さは、販売されればどの国でもゲーム名で社会現象になるぐらいだ。しかも未だにDLCを更新しているし、遊び方を増やすModも、どれもこれも無料で全て公布している。払った値段以上の満足と楽しさを与える、それがゲンムコーポレーションの理念らしい。

 かく言う僕も熱狂的なマイティアクションXのファンの一人だ。二人プレイが実装された時は、お母さんと一緒に夢中になって遊んだなぁ。

 

 閑話休題。

 つまりゲンムコーポレーションは、世界の企業とは隔絶された技術力とセンスを誇っているということだ。部品を使われたISはスペック以上の動きをし、故障はなく、メンテナンスも五分ほど弄ればすぐに終わる。例えそのISで事故が起こったとしても、原因はパイロットにあると誰もが即答する。

 それほどまでにゲンムコーポレーション製というのは信頼されているのだ。ゲンムコーポレーションも信頼に応えるように定価より安く部品やパーツを提供しているし、まさにIS世界を牛耳る存在として頂点に君臨していると言っても過言ではない。

 

 そんなのを相手に、敵に回したらどうなるのか。IS部品の輸入だけでなくゲームの輸入までストップされ、ゲンムコーポレーションのゲームなんて誰も手放そうとしないからネットでは転売屋が定価の倍以上の値段で売り、足元を見てさらに値段を吊り上げることだろう。

 ゲンムコーポレーションのゲームは麻薬だ、配給がストップされたとなれば市民、いやイギリスに住む9割の人間がストライキを起こす。

 ISもろくな物を作ることが出来なくなるため国力も下がる、イギリスは混迷期に入り、最終的にはイギリスという国が無くなることになるかもしれない。ゲンムコーポレーションとは、それほどの力を持っている。だからセシリア・オルコットを切り捨てるのは、当然の帰結だったのだろう。

 

 しばらくすると、授業が始まった。専用機を持っていない学生にとって初めてISについての操縦技能の教えを乞うことが出来る場であることもあって、授業はそれなりの盛り上がりを見せた。

 順番にクラスメイトに操縦を教えていると、ふと彼が誰もいない場所で何かしらの作業をしていることに気がついた。授業中でそういうことをしているのに、先生は誰一人彼に対して怒るような様子は見せない。

 

『……あぁ、あれ気持ち悪いよね。どの授業でもあんな感じだよ、一人で隅っこの方で黙ってキーボードカタカタしてさ。何しに来てるんだろうね。ぶっちゃけ邪魔だしいらないから帰ればいいのに……』

 

『ちょっと、聞こえるよ』

 

 質問してみると、彼女たちはそういう風に答えてくれた。

 ISを動かしてしまったからこの場にいるのに、一夏と違って誰にも必要とされない彼。

 まるでどこかの誰かを見ているようで、胸が苦しくなった。




多数の感想、評価、UAありがとうございました。たった一日で赤評価になることが出来たのも月島さん、いえ暖かい皆様のおかげです。ありがとうございました。

誤字脱字のほどあれば報告よろしくお願いします。

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