IS―審判の時― 作:Vシネ面白かった丸
おどろきほうすけだなー!
字数は少ないんですけどね
気がつけば、一夏の特訓に参加することになっていた。一夏は檀くんの辞退によりクラス代表になったため、その実力はまだまだ基準に達しているものではないらしい。本人も今の実力に満足していないようだし、特訓すればするほど効果が出るかもしれない。それを側で見れるということは、僕としても大変都合の良いことだ。
僕の目的は白式のデータの収集にある。特訓に参加できる位置というのは、最もデータ収集に都合の良いポジションだ。
檀くん、クロノスのデータも取れると尚良いということを言われたけれど、当の本人はあの一戦以来アリーナに来ることもなく、ISを使う授業にも参加せずに黙々と何かしらの作業に没頭している。一度話しかけては見たものの、煙に巻かれてしまった。彼のデータ収集は後々ということになるだろう。
さて時は過ぎて放課後となり、一夏の特訓の時間となった。彼の武装は情報にあった雪片弐型以外は存在していない、というよりも拡張領域が全てこの雪片弐型に持っていかれてしまっているらしい。そのため僕の武器の使用認証などをして色々と武器を試し撃ちさせていた頃に、彼が来たのだ。
既にISを身にまとい、悠然とした歩みでアリーナ中心へと向かってくる檀正宗が。
『……檀、なんでここにいるんだよ』
『私は変わった専用機持ちではあるがISパイロットの一人、そのパイロットが練習のためアリーナに立ち寄るのは何もおかしいことではないと思うのだがね』
珍しく嫌悪を表情に出し噛みつく一夏に、檀くんはいつも通り変わらず余裕を持って答えた。フェイスの向こうの表情で彼が笑っているように感じられたのは、きっと僕だけではないはずだ。
『また誰かに手を出そうとしてるんじゃないだろうな』
『私が今まで誰かを自発的に傷つけようとしたことはなかったはずだが……。どうやら君は礼儀だけでなく記憶力まで欠けているらしいな白式』
その言葉に血が昇ったのは一夏、ではなく彼を想っている凰さんのようだった。その肩に装備されている非固定浮遊部位の刺付き装甲を一部スライドさせて、砲門を向けると、獰猛な笑みを浮かべ口を開いた。
『自分のした行いも思い出せないなんて、そっちこそ脳ミソちゃんと機能してるの? そんなにカッチカチじゃあ脳ミソが泣いてるわよ』
『筆記テスト基準値ギリギリの君に言われると、いやはやなんとも堪えるものだ。私以上に使われていない大脳を思うと、思わず涙を流してしまうほどだ』
皮肉に皮肉をもってすっぱりと返す。皮肉の言い合いというのは頭に来た方が負けだと言うけれど、隣の彼女の笑みが更に深まったのを見て本当にそうなんだな、と思ったのを覚えている。短い付き合いではあるがその中で思った感想通り、彼女は口よりも先に手が出るタイプ人間であるらしい。
このまま見過ごすことは出来ない。
『まぁまぁ。檀くんは練習をしに来ただけだよ? それなら僕たちが関わる必要なんて何もないさ、檀くんだって理由もなく手を上げるようなことはしないだろうしね。そうだろう、檀くん』
『君の言う通りだラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ。理由もなしに、私は誰かに手を出すような真似はしない。今この場で宣誓したっていいが、如何かな?』
『……いい、そんなの必要ない』
吐き捨てるような一夏の言葉に、彼は特に何かを思うことはなかったのかそのままアリーナの端の方へ移動し、軽く一人で型を確かめるように動き始めた。
これは、チャンスだ。勘だけど、これ以降檀くんがアリーナを使って練習する場面に遭遇することはきっとないだろう。だから僕の役目を、データ収集を行うのならば、今が最大の機会だ。一人で動くよりも、相手と組手をした方が練習効率も良い。見てきた限り彼は効率の良い方を好む、檀くんはきっと僕の申し出を断らないだろう。
『……なぁシャルル、檀と話をするならきっと今だと思うぞ。前々から仲良くしたいとは言ってただろ? 俺のことは気にするなよ、箒だって鈴だっているからさ』
考えまで同じかどうかはわからないが、一夏も今が機会だと分かっているのだろう。こうやって背中を押してくれたのだから、僕は応えるべきではないではないだろうか?
最大の機会、最高のチャンス、最上の舞台。今を逃す手はない、だがそれでもダメだ。これに乗ってはいけない。
もし、どうする?
もし彼が僕のことを疑っていたら、もし彼が僕をスパイだと感じ取っていたら、そんな中この場で僕が彼に近づいたら、どうなる?
先の会話で分かった、彼は非常に賢い。同時に理性的で、何に対する準備も出来ているようだった。
あの時、凰さんに砲門を向けられていた時、彼はいつでも動けるように戦いの準備を終えていた。彼は獲物を囲みいつでも終わりの手を出せるように、そうまるで蛇のように鋭く早く確実に、その時が来れば凰さんを襲っただろう。
今だってそうだ、僕はもう既に罠の一歩手前まで来てしまっている。あと少しでも進んでしまえば、きっと僕は終わりを迎えてしまうだろう。
『大丈夫、同じクラスメイトなんだからいつだって話す機会はあるよ。今は、友達の約束ちゃんと果たさないとね』
まだその時ではない。罠を目の前に、僕は後ずさり避けて道を進むことにした。そうだ、焦ることなんて何もないんだ。道は罠を貼られた一本道だけじゃない、視界を広く持てば道は無数に広がっていると言うことがわかる。
その内いくつかの道は既に閉ざされてしまっているが、それでも通れる道はまだ残っている。なら、後はそれらから最善を選んで進むだけでいい。
さて変わらず練習を続ける僕たちに、また新しい乱入者が入ってきた。
ドイツの専用機、"シュヴァルツェア・レーゲン"を身にまとったラウラ・ボーデヴィッヒさんだ。彼女は何やら一夏に対して浅からぬ恨みを抱いているようだった。何故かはわからない、ただ頻繁に織斑先生のことを引き合いに出すだけで、何かを語ろうとはしない。とにかく一夏と戦い勝利したいだけのようだ。
それに対して一夏はもちろん否定した、一般人は理由もなく手を上げるような真似はしない。
『そうか、では戦わざるを得ないようにしてやろう』
その一言の後に彼女の肩の砲門が火を噴いた。狙いは一夏ではないのを見て威嚇射撃かと思って気を抜いたが、それがダメだった。
弾道には、練習を応援していたただの女子生徒が立っていたんだ。
『――ッ!』
僕の出力では、恐らく間に合わない。だが一夏ならば、一夏の瞬間加速ならば間違いなく間に合う。一夏の顔が怒りに歪むのが見えた。
すぐに射出体勢に入り、エネルギーの充填を始める。
女子生徒がこちらへ射撃されたことに気づき、顔をくしゃりと歪めた。
一秒もかからぬ内に充填が終わるであろう、そんな時に、彼が動いた。
結果的に、弾道は逸らされた。弾はアリーナのシールドに当たり弾かれ、地面へと転がる。
一夏はまだ、射出されてはいなかった。膝をついた彼女の命を救ったのは、檀正宗だった。
『……なんの真似だ、檀正宗』
予想外の邪魔立てに、彼女の目が鋭くつり上がる。
『――何の真似、か』
彼はいつもと変わらぬように、悠々と語り始めた。
『それはこちらの台詞だよ、シュヴァルツェア・レーゲン。何故彼女を絶版にするような真似をした』
『あの程度、織斑一夏でも止められていた、確実にだ。私は万に一つでもそいつを殺すような、手の抜き方を間違えるようなことはしない。
貴様こそどういうつもりだ、何故邪魔をする。これは私と織斑一夏の問題だ、貴様には何の関係もない。その行為にはなんの意味もない』
自分から周りを巻き込んでおいて、そんな台詞が通ると思っているのだろうか。いや、恐らく本当に思っているんだろうなぁ、ドイツ人は頭の中までホットみたいだ。どうやら彼もそう思っていたらしく大袈裟に呆れた表現をしていた。
『前半についてはもはやどうしようも、救いようもないようだ。さて君はこの行為に意味があるのかどうか、と気になっているようだ。あるとも、それも君よりも随分とまともな理由がね』
彼は一歩一歩と歩き始めると、言葉を続けた。
『彼女は我が社の大事な顧客だ。ファンの一人でも減ることがあれば、売り上げに大きな支障が出る。それが止められると言うのならば、止めるのが会社の義務と言うものだ』
『何を言っている、お前は一体なんだと言うのだ』
ボーデヴィッヒさんは彼が何者か、まるで聞かされていないようだった。恐らく、自分から説明の機会を蹴ったんだろうなぁと思う。彼女の標的は最初から織斑一夏、ただ一人だったみたいだ。
『私が何者か、どうやら君は何も聞かされていないようだね。所でシュヴァルツェア・レーゲン、君はゲンム・コーポレーションという企業を知っているかな?』
『……まさか、貴様』
『ようやく気づくとは、分かってはいたが君は驚くほど貢献者としての商品価値がないようだ。そうだ、ゲンム・コーポレーションを作ったのは私、この檀正宗こそが社長だ』
ゲンム・コーポレーション、一般人であれば誰もが知っているゲーム会社、IS関係者であれば知らぬものはいない大手IS企業。二つの顔をあわせ持つそれを巧みに運営している社長が、目の前の彼であると知ったときの彼女の顔は、それはもう鳩に豆鉄砲を食らわせたものよりも驚いた表情をしていた。
『我が社の顧客に手を出すということは、ゲンム・コーポレーションに牙を向けたことに他ならない。当人同士の問題であるならまだしも、全く無関係な我が社のファンを傷つけようとした罪は、あまりにも重い』
一歩、また一歩と距離を縮め、ついに二人の距離は互いの間合いに入った。
『審判の時だ、シュヴァルツェア・レーゲン』
彼の手がドライバーに伸びようとした、その時だった。
《そこの生徒、何をしている! 名前と所属を言え!》
アリーナ上部にある放送室からの忠告に彼は手を止め、
『……時間か。今回のことはまたの機会にするとしよう』
そう言って構えを解き、彼女に背を向け歩き出す。ボーデヴィッヒさんもまたこれ以上この場にいる気はないのか、彼とは逆方向へその場を去った。
一触即発の空気から解き放たれて、思わずほっとため息をついて、驚いた。
僕の肩に、檀くんの手が置かれていたからだ。
『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ。君には前々から興味を持っていたのだが、今回のことで俄然興味が湧いた、後で私の部屋に来てくれ。一度茶も交えて話し合いたい』
それだけ言うと彼は離れていき、腰の抜けていた同級生に手を伸ばし、抱きつかれ泣かれていた。いや、あれは安堵から来たもので、泣かした訳ではなさそうだ。
そんな彼女に紳士的に接する姿を見て、僕は一人言葉の意味を掴みかねていた。
「どうして彼女を(私の許可なく)絶版するような真似をした」
そこそこ思っていたんですけど、なんでダンまちベースにエグゼイドを混ぜた二次創作がないんだろう。レベルが重要なのはどっちも変わらないんですし、良い感じに合うと思うんですけどネ。レベル99? ムテキ? 知らんなぁ