IS―審判の時―   作:Vシネ面白かった丸

5 / 10
絵書きデビューやらアナムネシスやらに熱を入れていたらいつの間にか六日も過ぎていた。許しは乞わぬ。
前回の後書き通り、今回は番外編です。主にクラスメイトとの友人関係の描写になります。

なんだか感想がかなり物騒なことになってましたが、この作品の社長はオリ主です。純度100%の善意で人を助けることぐらいします、だって人間だもの
(棒)

毎度誤字報告ありがとうございます。非常に助かっております。


消費者、相川清香の場合

 IS学園には、主に目立った男子が二人がいる。

 一人は最初に見つかった、所謂ファーストと呼ばれる織斑一夏くん。頭はあんまり良くないみたいだけど、十人中三人の女子を一目惚れさせるほどの甘いマスク、誰にでも分け隔てなく接し誰かのためなら真っ先に身を投げ出せる性格なども相まって、彼は学園中の人気者だ。一部邪見にする人たちはいるけど、この学園でそんなものを表に出していては生きられないことを悟ってすぐにマスクを被ることだろう。

 もう一人は全国適正試験で見つかった、所謂セカンドと呼ばれる檀正宗くん。こちらは織斑くんと違って、印象は最悪だと言える。頭もルックスもいいけれど、性格や人当たりは最悪。平然と人を見下すし、オタクみたいに部屋の隅の方でパソコンを動かしてるし、暗いし、無視するし、オルコットさんを学園から排除したりもした。

 正直、最初の頃はかなり嫌ってた。むしろ上記のことがあるというのに好きになれる人物などいるのだろうか。いや、何人かいた気がする。かなりメルヘン入ってて半ば宗教になってたけど。ともかく私、相川清香は檀正宗が嫌いである。そう、ちょっと前までは。

 

 それはトーナメントより、少し前の話だ。

 私の趣味は多種多様である、体を動かすことが好きなので主にスポーツ方面に傾いてはいるのだけど、私も年相応の女子高生らしい趣味も持ち合わせている。因みにマイブームは、ゲームだ。

 ゲームは女性らしくないって? ふふん、その考えはこっちでは古いんだなぁこれが。

 今やゲームの立場は昔とは比べ物にならないほど上昇しているのだ。とある番組では男女混合老若男女合わせたアンケートで、「あなたは毎日ゲームをしていますか」という質問に対してYesと答えたのは100人中90人という結果が出た、と残している。これはつまり街で適当に十人捕まえればその内九人は毎日ゲームをしていることになるということなのだ。

 それほどまでにゲームという存在は、現代社会においてなくてはならないものになっている。その原因の一端が、大手ゲーム会社、ゲームの王様と呼ばれるゲンム・コーポレーションだ。ドラクエショックなんて目じゃないぐらいの社会現象を引き起こしたこともあるこの会社は今や全国に展開、全世界人口の七割がゲームをプレイしているのでは? なんて話題をお茶の間に流れてしまう程に、ゲンム・コーポレーションは売れに売れている。

 因みに、私のイチオシゲームは"ギリギリチャンバラ"だ。スポーツマンに対して強く意識して作られたこのゲームは、一瞬の判断と見切りが物を言う真剣チャンバラゲームである。このゲームは他のゲームとは違い、VR型のゲーム、つまりプレイヤーはまるで目の前にいるかのように感じられる敵キャラと本格的なチャンバラごっこを楽しめるのだ。

 ゲームなんて話題についていく程度にしかやっていなかったのだけど、これには大ハマりした。PvPのゲームでもあったから、様々な人とオンラインで戦ったし、たまたま出会った人とチャンバラしたりもした。

 ゲームエリア内であれば既に戦場、似たようなもので"バンバンシューティング"というゲームもあるらしいけど、銃の腕がからっきしの私には向いていない代物だった。

 

 そう、その日はギリギリチャンバラの新ステージの配信日だった。告知によると、新敵であるカイデンが実装され難易度も一つ上の物が増えると聞いている。とにかく私は授業を終えたその足ですぐに先生が娯楽のために作った"ゲームアリーナ"に向かうと、驚いたことに先客がいた。我らが一組の担任教師、織斑千冬先生である。

 

「……やはり腕は鈍ったな。ん……相川か?」

 

「あっ、はい。あの、どうしてここに先生が?」

 

「ここは娯楽のためのゲームアリーナだ。となれば、目的は一つしかないだろう」

 

 そう言って、先生はギリギリチャンバラのゲームカセットを見せた。

 この時、私は大層驚いた。あの堅物の先生が、ゲームをプレイするような人間とは到底思えなかったからである。いや、先生だって人間だ。ストレス発散のためにタバコも酒もセックスもするだろう。大人の色気、というものを織斑先生は私の知るなかで一番放っている。

 

「まぁ、そういうことだ。相川もこれか?」

 

「はいっ。私、ギリギリチャンバラにはそこそこ自信があるんです」

 

「ふっ、そうか。……ふむ」

 

 どうしてか、先生は私の頭の天辺から爪先までじっくりと眺め始めた。どこかおかしいところでもあったのだろうか。

 

「踏ん張れよ。良く見れば勝機は必ずやってくるだろうからな」

 

「はぁ……?」

 

 それだけ言うと、先生はさっさとアリーナから出ていってしまった。なんだったのだろうか、踏ん張れ、だの良く見ろ、だの言っていたけど。いや、そんなことよりもゲームだ。告知された日からこの時をずっと待っていたんだ。

 カセットを専用のホルダーに差してゲームを起動させると、ゲームエリアが瞬く間に広がり、ギリギリチャンバラの世界を形作っていく。そうして現実と仮想は溶け込み、もはや私の目では区別をつけることなど出来はしない。

 

「さぁ……いざ勝負!」

 

 私は専用の刀型のコントローラーを、ゲームスタートの字に突きつけた。

 

 

◆◆◆

 

 

「また負けたぁーっ!」

 

 アリーナの床に倒れ込む。

 これでもう十連敗だ、いずれもカイデンの手によって一太刀目でやられてしまっている。負ける度にもう一度、もう一度と何かを掴もうとするも当のカイデンの刀はまさに変幻自在、何パターン用意されてるかもわからないその流水のごとく乱れのない太刀筋。私はそれに呑まれ、まんまと翻弄されているというわけだ。

 

「うーん、もうお手上げだー」

 

 太刀筋を見切れぬのであれば、振るいきるその前に切り捨てる。なんてことも試してみたのだが、如何せん向こうの振りの方が早くスペックで負けてしまっているということが露呈しただけに終わった。

 ならば先手をとる、と動けば向こうにギリギリチャンバラされる始末。CPU特有の超反応相手に勝てるわけがないよー。

 

「手こずっているようね!」

 

「あなたは、岸里さん! 何か打開策を思い付いたんだね!」

 

 流石フルアーマーの名は伊達じゃない、有能!

 

「手を貸してあげるわ、と言いたいところだけで私もクリア出来ていないの!」

 

「無能!!」

 

「だから代わりの打開策を見つけてきたわ!」

 

 そう言って彼女は引きずってきたであろう何かを押すことで、それを無理矢理前に出した。

 

「――無理矢理引きずられてきたから何があったかと思いきや、ゲームでクリア出来ないだけの理由でここまでされるとは、全く予想外だ」

 

「無能!!!」

 

「断定が早すぎるわ!」

 

 妥当だよ! どうしてよりにもよって、こんなオタクを連れてきたのさ! どっからどう見てもモヤシ系だよ、パソコンカタカタして画面向こうの美少女にへらへらしてるのがお似合いレベルのオタクだよそれ!

 しかし、連れてきてしまったものは仕方ない。

 

「あー、檀くん。これ絶対君には向いてないからさ、早く帰って仕事の続きしてなよ。無理矢理引っ張ってきて、悪いんだけどさ」

 

 丁重にお帰りいただこう。いつも通りの檀くんならば、証拠さえ貰えればいる意味もないだろうから大人しく帰ってくれるだろう。

 

「……君に、一つ言っておこう。私は確かに日中ずっと端末機器を弄っているが、かといって運動が不向きなわけではない。そのゲームなら私は君より高スコアを叩き出すことが出来る」

 

「……へぇ?」

 

 今のはちょっとカチンと来たよ。君みたいな社会不適合者の塊が私よりも運動ができて、しかもゲームで高得点を叩き出せるって? 笑いが溢れそうになったよ。

 あの試合だってどんな手段を使ったか知らないけど、どうせオルコットさんのISに予め何かしらのプログラムでも仕込んでたんだろう。そうでもないとISがあんな不自然な挙動をするわけがない。

 つまるところ何が言いたいのかと言うと、

 

「……嘘」

 

 私が檀くんより劣ってるはずがない、そう思っていたということだ。

 勝負は一瞬の出来事だった。その刹那の交差はまさにゲーム名に相応しいプレイであり、これ以上に合理的な剣筋を私は知らなかった。悔しいが、見惚れてしまった。その一太刀に、その構えに、その振るいに、その姿に。檀正宗という存在を初めてフィルターをかけずに見た感想は、全くと言っていいほどに美しさとはかけ離れた存在だ、というものだった。

 ただ実直に結果だけを追い求め、すがり、無駄を削れるだけ削り取った無機質とも取れる合理的な剣筋。それは紛れもなく、努力が行き着いた一つの果ての形。

 

「ふむ、久しぶりではこんなもの、といったところか」

 

 檀くんはコントローラーを呆然自失の私に返すと、そのままゲームアリーナを去ろうと足を進ませた。しまった、このまま行かせてはいけない。

 

「あ、あのっ!」

 

 気づけば声をかけていた。彼はそのまま振り返りこそしなかったが、帰る足は止めてくれた。

 

「檀くん……」

 

 これほどまでに、気持ちが上り詰めたのは初めてだった、と思う。なんとなく、胸が締め付けられるような気もする。目線はちょっぴり落ち着かないし、手だってなんだか落ち着いていない。

 

「私と」

 

 不思議だったけど、考えればすぐにわかることだった。嗚呼、そうかこれが――――

 

 

 

 

 

 

「マイティアクションXの最終スコアで勝負だッ!」

 

 これが純粋な怒りかッ!

 

「……なんだって?」

 

「だから! 勝負! マイティアクションXの最終スコアで!」

 

「どうして私がそんなことをしなくてはならないのかね。いやそもそも、私は何故君に怒りを向けられなければならないのか」

 

 何故、だって? そんなの決まってる!

 

「――あんたが私のセーブデータでカイデンを倒すからでしょうがぁッ!」

 

 私は何事も自分で成し遂げることを良しとする人間だ。アドバイスやら手伝いやらは素直に受けとるが、最終的に事を成すのは自分でなければならない。自分がしたいことであれば尚更だ。そして成し遂げた後の達成感は堪らなく心地いい。それを、彼はムッツリとした顔で横からかっさらっていったのだ。許せるだろうか、いいや許せるわけがない!

 

「……? 何も言わずにコントローラーを渡したのは君だろう、私はてっきりそのままプレイをしていいものと考えていたのだが」

 

「それぐらい察するのがゲーマーってもんでしょ!」

 

「私はゲーマーでも、ましてやクリエイターでもないのだが……」

 

「いいから勝負する!」

 

 そうして勝負して、これもまた驚いた。

 なんとマイティアクションXをクリア出来なかったのだ。いや、確かに難しいギミックのあるステージは多少あれど、難易度だけで言えば小学生でも全機使えば5ステージぐらいならいける。しかし檀くんは、2ステージで全機を使い果たしたのだ。しかも結構アホっぽい死に方で。

 彼は絶望的なほどにアクションゲームが苦手だったのだ。

 それを知った時は驚きまくって、ゲームオーバーした時の彼があんまりにも喋らないものだから、その場で腹を抱えて笑った。それはもう大いに笑った。

 

「……もう帰っていいかな。私は君と違って忙しいんだ」

 

「ご、ごめんっ、ごめんってば! 流石に笑いすぎたのは悪かったと思ってるよ!」

 

「そう思うのなら早く帰らせて欲しいのだが……」

 

「待って待って。もう少し遊んでよ、まだやってほしいゲームいっぱいあるし」

 

 ゲキトツロボッツとか、シャカリキスポーツとか、あとジェットコンバットもやってほしい。

 

「……君は私と遊ぶのではなく、私で遊びたいだけだろう」

 

「ハテサテ、どうかなー」

 

 ――まぁ、そういうこともあって、今や檀くんは私や私の仲良しグループとは良好な関係を築けてると言えるだろう。本人もなんだかんだ面倒見がいいし、無理難題でなければ手も貸してくれる。

 彼がゲンム・コーポレーションの社長と知った時は驚いたけれど、私たちにとってはむしろ都合がよかった。何故なら、堂々と裏技について尋ねることが出来るからだ。まぁ、何一つとして教えてはくれなかったけど……。

 例え彼が社長であったとしても、私たちの関係は恐らく変わることはないだろう。だってこんなにも親近感があって、ゲーム勝負で私たちに負けてばっかりの情けない、その分なんだか愛らしいただの同級生の一人なんだから。




・千冬さんの言葉の意味
 カイデンは攻撃するまでのスペックは高いものの、攻撃した後のスペックは低いという設定の敵だった。ので、振らせてからカウンターをするのが攻略上ベスト。剣筋に惑わされてはいけない。

・私はゲーマーでも、クリエイターでもないのだが
 言葉通り。社長はCEOなので、開発者は他にいる。

・社長が女の子と仲がいいんですが
「――そういう訳で、次のゲームはこれで決まりっ」
「……ときめきクライシス?」
「そう、女の子と仲良くなって恋人になってあんなことやこんなことをするゲームだよ! 全年齢だよ!」
「ふむ、恋愛シミュレーションゲームというものか。確かに今まで我が社にはなかったゲームだ」
「そういうわけだから、女の子たちと交遊なんかして具体的なデータ収集をよろしくね☆」
「社内で取ればいいだろう。我が社には優秀な女性も多いはずだが」
「チッチッチッ、このゲームの設定は高校生。つまり、出来る限り年相応の生のデータでなくてはならないのだー!」
「あぁ、そういえば君たちの年齢は――」



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