IS―審判の時―   作:Vシネ面白かった丸

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無事お迎えできたので投稿です。
今回は全力で終わりへと着実に誘導していく感じにしました(展開が進むとは言ってない)
じゃあ俺、水着オルタに余力注ぐから……


ラウラ・ボーデヴィッヒの消失

 

 

 ラウラ・ボーデヴィッヒの行方がわからなくなった。

 三人の試合が終わった後、その知らせを聞いてすぐに動いた。あの様な負け方が、アイツにとってもっともダメージが大きい。

 一人になれば何かしら動くことはよく分かっていた、昔から何かを抱えるとそこではない何処かに足を運んで一人で考え込むような、そんな人間だ。分かっていたのに、私にはどうすることもできなかった。

 "ラウラ・ボーデヴィッヒの行方がわからなくなった"、その言葉の意味を真に理解できていなかったのだろう。

 

 どこにもいなかった、保健室はもちろんどの教室にもどのアリーナにも、そしてどこのピットにも。どこを探してもなにを使っても発見できず、ボーデヴィッヒはIS学園から忽然と姿を消していた。

 

 じゃあどこに行ったのか、IS学園から誰かが出たような形跡は無かったというのに。

 

 ――――いや、一つだけ心当たりがあった。なんの痕跡も残さず、一切の遠慮も予兆も見せずに人を振り回すような、そんな人物に。すぐに携帯を手に取り連絡を試みた。いつもは向こうからかかってきてうるさいぐらいだというのに、こんなときに限って中々出ない。

 

 数コールの後に繋がった音と共に、いつもの浮わついた声が耳に届く――――

 

『ちーちゃん、今忙しいんだけど』

 

 ――――だがそうはならなかった。いつものふわふわとした態度は鳴りを潜め、その声には怒りが滲んでいる。

 

 あの何に対しても余裕綽々と斜めに構えているこいつがこんな状態になっているのは、ISの論文を否定された時以来ではないだろうか。

 だが気にしてはいられない、時間がないな割いてもらう時間を少しでも増やせるように本題から入るべきだろう。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒがいない、覗いていたのなら分かるだろう。頼む、教えてくれ」

 

『いないよ、もう』

 

 その断定は速かった。

 

「……何?」

 

『ラウラ・ボーデヴィッヒなんて存在はもう何処にもいない(・・・・・・・)んだよ、ちーちゃん』

 

「何を言っている……? お前は何を知っているッ!?」

 

 何処にもいないなんて言われて、そう簡単に頷けるものか。自殺なんて出来る場所は限られている、するには凶器やら場所やらを用意する必要がある。だがその痕跡すらこの学園にはない、ラウラ・ボーディヴィッヒは何にも触れていないしそんなところに行っていない。

 なのに何故そう言いきれる、何故いないことを知っている。

 

『ちーちゃんさ、アイツのことどう思ってる?』

 

「話を逸らすな! 今はラウラのことだ!」

 

『逸らしてなんかないよ、重要な話さ。ちーちゃんは、檀正宗のことどう思ってるの?』

 

「檀、だと?」

 

 何故そこで檀の名が出る。確かに奴は対戦者としてラウラと戦い、アイツには実にそぐわない敗北を与えた張本人ではあるが、それだけだ。どうしてそこでただの生徒の名前が出てくる、檀と今回の事と何の関係がある。

 

「檀はただの生徒だ。今の事と何の関係も、」

 

 そこで、どこか飲み込めない何かに直面した。

 なんだ、この凝りは。一見して何もおかしいことはない、普通のことを私は喋っている。だというのに、これは、この違和感はなんだ? 私は何を感じている、何を疑っている?

 

『そこだよ』

 

「なんだと?」

 

『ちーちゃんは今、ごく自然にそれを行った。だから気づけるけど、掴みきれない』

 

「何の話だッ!?」

 

『――どうしてちーちゃんは、そんなに檀正宗を信用できるの?』

 

「どうして、って」

 

 私はそれに答えられなかった、檀正宗は一見してまともな生徒だ。授業態度も悪くない、社長なだけあって成績も良い、最初に壁こそあったが今はクラスメイトとも自然に付き合えている。教師から見て、そう悪い生徒に思えない。

 何故だ(・・・)

 確かに平時の態度に問題はなくとも、戦闘時でのそれは褒められた物ではない。リスペクトもなく、バトルとして付き合わず、まるで殺し合いをするかのように非道に動く。言動もまた一人の社会人として言葉遣いというものを叩き込まなくてはならないほどに酷い。

 だというのになんだ、このアイツに対する高い信頼感は。

 

『それね、束さんも持ってるんだよ』

 

「なんだと?」

 

『檀正宗という存在に対する高い信頼……好感度と言い換えてもいいかもね。私にも心の中にそれがある』

 

 好感度、私と束の中に何故か高い数値で設定されているそれ。その凝りが違和感を覚えさせているのか、確かにそれが心の中にあるというのであれば未だにある"檀正宗は犯人ではない"と信じる気持ちにもある程度噛み合うかもしれない。

 

 つまり私は、洗脳の類いでも受けたと言うのか? 何時受けたなどと考えるのは無駄だ、檀は時を止めることが出来る。つまり何時だって事に及ぶことは可能だ、そしてそれは証拠が出ないことを意味する。

 しかし他の教師は檀にいい感情を持ち合わせてはいなかった、ということは私の発言力が目当てか、はたまた別の理由か。

 

 そう、こちらが受けた理由など幾らでも説明がつく。だが、束はどうして好感度が高いんだ? アイツはそうそう気にくわない相手の前に出るような人間ではないと思っていたのだが。

 

『誓って言うけど、束さんは檀正宗と会ったことすらないよ(・・・・・・・・・・)。向こうが忍び込んだことも、束さんが忍び込んだこともない』

 

「つまり、洗脳は電波のようなもので送られているのか?」

 

『洗脳じゃないだろうね、洗脳なら『アリス』がシャットダウンするはずだよ。オンラインでなら確実にね』

 

「どういうことなんだ……?」

 

『分からないからそれを調べてるんだよ、だから忙しいの』

 

 そう言って勢いのまま電話を切ろうとするので慌てて止めようとするが、束は本当に時間を割く余裕がないのだろう。最後に一言だけ残して通話を切った。

 

『ラウラ・ボーデヴィッヒは何処にもいないよ、いるのはもう皮だけさ』

 

 三日がたった今でも、あれ以降束が通話に出ることも、かけてくることもなかった。

 ラウラ・ボーディヴィッヒはまだ見つかっていない、ドイツは報告されても然程気にもしない様子で生返事のような返答を返してくるばかりで捜索の姿勢を見せようともしない。

 シュヴァルツェ・ハーゼの隊員も、今この時ばかりは涙を見せて悔しがっていた。僅かながら交遊もあった生徒たちも不安げな表情を見せている。これ以上そんな姿をただ黙って見ている訳にはいかない、少ないばかりの伝だが何を使ってでも見つけなくてはならない。

 

 そう思っていた矢先のことだった、ラウラ・ボーデヴィッヒがゲンム・コーポレーションの社員として帰ってきたのは。

 

 

◆◆◆

 

 よく考えれば、すぐに分かったことだった。

 

 セシリア・オルコットからの手紙を、織斑一夏が受け取った。正確な時間は不明だが、動く気力すら与えられない現在の彼女の状況から見て、手紙を出せるタイミングは一度しかない。

 護送車の中だ、あれだけのスペースがあれば手紙を書くことも、それを第三者が見ることも、その人物に手紙を託すことも出来る。

 

 だがそれをするためには、第三者が我が警備部隊を突破する必要がある。だが警備部隊は全くの無傷、であれば残る可能性は賄賂か、グルかだ。だが賄賂に靡くような安月給を、このゲンム・コーポレーションは払っていない。

 なら残った可能性など一つしかない。

 

「あの警備部隊の管轄はCSOの物だった……だがCSOの許可なく通ることが出来る人物が一人いる。それが君だ、CIO」

 

「流石のご慧眼、そしてご明察。感服致しました」

 

 CIOはそのスカートをつまみ丁寧なお辞儀をするだけで、焦る様子も言い訳をするようなこともしない。私はこれまで多くの人間を見てきた、自分の目には経験と実績による自信がある。

 だがその目を持ってしても彼女の内心を探ることも、何を抱えているのかも見抜くことができない。

 

 恐ろしい女だ、だがだからこそCIOに抜擢した。間違いではなかった、しかし正解ではなかったようだ。

 

「我が社では徹底させていることがある、どんな新入社員でも派遣社員であろうと、必ず守らせるようにしていることだ。CIO、答えてみたまえ」

 

「はい。報告、連絡、相談。所謂、ほうれんそうというものですね」

 

「その通りだ。よく分かっているようだ、だが――」

 

 白く細い首を掴む。緑の手甲が鈍く輝いた。

 

「骨身に染みてはいなかったようだな?」

 

 左手に装着されたガシャコンバグヴァイザーⅡ、その武装であるチェーンソーが唸る。

 

 会社において独断行動とは最も忌むべきものであり、即ちそれを許すことは群体全ての死を意味することとなる。

 ネットワークが発達しているこんな世の中だ、何が倒産に繋がるか分かったものではない。あの世界第三位の会社ですら派遣社員の独断、それによるネットワークへの個人情報の漏洩が倒産に繋がった。

 

 恐ろしいのはミスではない、ミスは取り返すことが出来る。本当に恐ろしいのは失敗を失敗と知らず、そう思わない行動をする人間だ。そしてそれは、私の目の前にいる。

 

 ふむ、だが。目の前にいる彼女の目の、なんと慈愛に満ちていることか。

 

「……汗をかかないな」

 

 変身を解除し、彼女から離れる。

 

「いいだろう、君に一つチャンスをやろう」

 

 指をパチリと鳴らし合図を送るとドアが開けられ、その先からは黒の白衣を纏ったCKOが笑顔で入室した。

 その手に色鮮やかなメカとガシャットを携えて。

 

「はろはろー☆」

 

「CKO、彼女にそれを取り付けたまえ」

 

「合点承知の助♪ 報酬の分もきっちり働く私は良妻の鑑~っと」

 

 CKOはすぐに行動を始め、元々一手間で済むことであるが瞬く間にCIOに持ってきたそれを取り付けた。ここまで特に抵抗をする様子も見せなかったCIOがここで何故か苦言を漏らす。

 

「良妻であれば無償で動くものだと存じ上げますが」

 

「うるせぇな黙ってろよ、社訓も守れない愚図が」

 

「失礼いたしました、ビジネス"ライク"様」

 

 ……社員同士仲良くしろ等と、私は言うつもりはないが微々たる仲間意識ぐらいは持つ方が効率的だと思うのだが。腕を信用するぐらいでないと仕事に支障が出てしまうものだ。

 CIOがしたことは信頼関係を潰せるような物であったからそう態度に出るのは仕方がないとはいえ、何か別のことで争っているような気も。……いや止そう、女性のことで口を突っ込む気にはなれない。痛い目を見たばかりであるから尚更だった。

 

「それの商品名は『ゲーマドライバー』。試作品だが、得られるパワーはクロノスの六分の一……つまり第二世代IS一機に相当する。もちろん装着条件に性別はない」

 

「改修したり開発したのは私やCTOだけど、原案はまーくんのそれだから安心してもいいよ

 ――――死なないかは別だけどね」

 

 その一言で部屋に張り付くような緊張感が生まれた。部屋に満たされた緊張を、CIOは今一身に受けているはずだ。しかしそのお手本通りの姿勢に乱れは一切生まれていない。

 そうだCIO、そうでなくては君をその立場に就任させた意味がない。その胆の太さこそが、君がCIOたる所以なのだから。

 

「今からそのゲーマドライバーに、そのガシャットを挿入してもらう。君が選ばれた暁には、私は君を自慢の一兵として扱い、今回のことは不問とする。だがそうでなければ……その命を持って代価とする」

 

「……」

 

「だが安心したまえ。既にチケットは渡してある……それを君が正しく受け取れているのか。それが君に与えられたチャンスだ」

 

 選ばれなければ死ぬ、そんな状況にも関わらずやはりCIOは汗をかかない。それどころか恭しく頭を下げ始め、余裕を含ませ口調で喋った。

 

「承りました。では、一言よろしいでしょうか?」

 

「言ってみたまえ」

 

 遺言か、それとも謝罪か。

 

 その二つであれば、私は彼女の遺体をそこらのゴミ捨て場にでも放っていたことだろう。

 

 だが、彼女は私の期待を裏切らなかった。

 

「自慢の一兵の誕生です、ご主人様」

 

 挿入音が鳴り響く。

 

 数瞬後、私は震えた。それは笑いのものでも、怒りのものでも、悲しみのものでもない。

 ――歓喜のそれだ。

 

「素晴らしい」

 

 目の前に立っていたのは己の血反吐で身を汚した敗者ではなく、鈍く輝く装甲を身に纏った一人のライダー、私の自慢の一兵の姿だった。

 

《――I'M A KAMENRIDER》

 

「今回のことは不問とする。これからもゲンム・コーポレーションのために尽力してくれたまえ、CIO。いや、

 ――――チェルシー・ブランケット。仮面ライダー、風魔」

 

 一人のメイドは、恐ろしき力を持った。しかしその力をここで振るうことをせず、ただその場で頭を垂れて身を捧ぐ。

 

「Yes、My Lord」

 

 その言葉を皮切りに、彼女はその姿を消した。今回のこともあって、色々と報告するべき場所へと向かったのだろう。最後まで見逃していたCKOは不満げに口を尖らして、こう聞いてきた。

 

「聞き出さなくってよかったの?」

 

「必要ない。凡そ察しはつく……無駄飯食らいが増えるわけでもない、好きにさせておくといい」

 

 社長がいいならそれでいいけど、と漏らしながらもやはりまだ不満げのようだった。確かにあれは会社のためにはなるが私のためにはならない、彼女からすれば排除するのがやはり一番手っ取り早く楽なのだろう。しかし社長の代わりなどいくらでもいる。

 

「ご苦労だったなCKO、報酬は後程送るとしよう」

 

「あっ、その報酬、ここで使うね。というわけでたまには名前で呼んでほしいなぁって!」

 

「……君は報酬が目的で我が社にいるのだろう、それでいいのか?」

 

 そう苦言を呈したところで、CKOの喜色一面の表情は鳴りを潜めない。まるでプレゼントを楽しみに待っている子供のようなその顔に、それ以上強く言うことも出来なかった。社長としてこれでいいのだろうか、いや社員が望んでいるのだからそれが一番なのかもしれない。

 

「これからも我が社のため、そして私のためにその力を存分に振るってくれ。"リーゲ"」

 

「にっひひ~。頑張るよ、まーくんっ☆」

 

 頭部に装着された機械的なそれを揺らして、フローレンはピースサインを突き出した。




僕もこんな殺伐とした話じゃなくて女の子とわちゃわちゃしてるような話書きたいんですよ!!(五体投地)
ラウラがどうなったか知りたいって人は今までの話を見返すとわかると思います。
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