やはり私たちの関係はまちがっている。   作:お茶

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第二ゲーム

私はメイド服姿の上級生たちに質問することにした。

 

「これは誰の発案ですか?」

「私だよ~」

 

真帆さんが元気よく手を上げた。

 

「今日、りんりんから新しいコーチが来るって聞いたから、何かしらのお出迎えは必要だと思ったわけよ」

 

真帆さんのいうりんりんとは私の愛称である。

 

「それでそのメイド服ですか」

「うん。思春期の男子はメイドが好きだって前にパパから聞いたから」

 

真帆さんのお父さん、あなたは娘に何を教えているんですか………

 

「今すぐ着替えてください」

「え~。今日はこれでいいよ」

 

兄は目の前の光景を見て固まってる………当然といえば、当然だけど。

 

「お兄ちゃん………なんかごめん」

「いや、謝る必要はない………当然の出来事でつい呆けてしまった」

「ほんとごめん………」

 

私は固まっている兄に声をかけ、謝罪の言葉をかけた。

 

「なるほど………凛はお兄さんの前ではそういう風になるのね」

「お~。いつもはクールな凛が今日は変。お兄ちゃんのせい?」

「り、りんちゃん………ごめんね」

 

なんで私が馬鹿にされているんだろう………あと、愛莉さんは悪くないと思います。

 

「全員、いますぐ着替えてきてください」

「だからこれでいいって」

 

そういう態度をとるというなら、こちらにも考えはある。

 

「そうですか。なら今日の練習はもう終わりということで」

「え?」

 

私はくるりと背を向けると、兄の手を引き、歩き出す。

 

「お、おい………凛、いいのか?」

「いいよ。だってあんな恰好で練習なんてできないでしょ。それに私たちはおふざけでバスケをしている時間はないはずだから」

 

私たちには本当に時間がない。与えられた時間で個々のレベルアップを図り、試合までに何とかチームの形を作る。そのはずなのに………危機感を持っているのは私だけのようだ。

 

「ど、どうしよう、りんりんが怒ってる………これはまずい。かなりまずい………」

「謝った方がいいよ………」

「着替えてきましょう。そうすれば凛の機嫌もきっとよくなるはずよ」

「う、うん。皆、いそごう!」

「お~急いでお着替え~」

 

私が兄を連れて帰ろうとしたことで部員たちは本気でやばいと思ったのか、更衣室の方に走っていった。

 

「はぁ………やっと真面目になった」

「あいつらはいつもああなのか?」

「ううん……いつもはちゃんとしてるから」

「つまり、今日だけ特別ってことか?」

「多分ね。むしろ、今日だけだと思いたい」

 

むしろ、今日だけで勘弁してほしい。それから、少し経った後に、体操服に着替えてきた先輩たちが戻ってきたので、私たちは兄を囲むように輪を作る。

 

「今日からコーチをする比企谷 八幡だ。よろしく」

「私は湊智花です」

「おー、ひなは袴田ひなたです。宜しくお願いします♪おにいちゃん」

「…香椎愛莉です…よろしくお願いします」

「永塚紗季です。よろしくお願いします」

「私は三沢真帆!よろしくね。ハッチー」

「ハッチーって俺のことか?」

「うん」

 

兄と部員が挨拶すると、次は私の番だといわんばかりに全員の視線がこちらに集まった。

 

「比企谷凛です。学年は小5で私は選手ではなくマネージャーとして在籍してます。兄がコーチをしていることで、もしかしたら、声をかけづらいかもしれませんが、私としたら今までと同じように、接してもらえるとありがたいです」

 

「もちろんだよ。りんりんは私たちの仲間だもん!」

「お~、何か困りごとがあったら、凛に相談するね」

「ありがとうございます、ひなたさんは困りごとがあったら、私に言う前にかげちゃんに相談してくださいね。」

「お~そのほうほうもあった」

 

それぞれの自己紹介が終わったあと、早速練習が始まった。今日は試合形式の練習を取り入れた。

 

「皆の動きを見てほしいから、今日はこういうかんじにしたんだけどどうかな?」

「いつもお前が練習メニューを組んでるのか?」

「一応、相談しながら練習メニューを組んでるかな。私も一応経験者だけど、こういうことに関しては、わからないことの方が多いから」

「そっか」

 

私は体力づくりの一環で小さいころにバスケをしていた。今は軽い運動しかしていないが、バスケをしていたころの経験はすごく役に立っている。

 

「ひとつ聞いてもいいか?」

「何?」

「あの背の高いやつ。何でゴール前に立っていないんだ?」

 

兄の見ている方向には愛莉さんがいた。愛莉さんはボールを怖がっており、おろおろしながら、皆の動きを見ている。

 

「愛莉さんは身長がコンプレックスなんだって」

「は?」

「背か高いことで自分がデカい女。デカいやつだから、周りに迷惑だと思われているって感じちゃうみたい。だから愛莉さんの前では身長の話はなるべく避けた方がいいかも」

 

私からしたら、少しわけてほしい。私は身長が低いから………

 

「もしも口に出したときはどうすればいい?」

「そのときは誕生日のことをいってあげればいいとおもうよ。早生まれだから大丈夫だとか………落ちつかせるような言葉を掛ければ、たいていはなんとかなるから」

 

しかし、愛莉さんの場合は身長というよりも何か別の意味がありそうな気がしてならない。

 

その後も練習は続き、湊さんがフリースローをしていると、私達の視線はその様子に釘付けになった。

 

「綺麗だよね」

「ああ。あれは何度でも見たい」

「私もそう思う。湊さんのシュートはきれいだし、私もあんなシュートをうってみたかった………」

「凛………」

 

私は不整脈が原因で医者から治るまでの間は激しい運動は禁止といわれた。だから大好きなものであったバスケもやめてしまった。

 

「後悔はしてないよ。私の体はもう激しい運動には耐えられない。体をよくするためには、バスケをやめるしかなかった。大好きなバスケをあきらめるしかなかった。でも………なんだろうね。皆を見てるとね、自分があきらめちゃったことがすごく残念に思うんだ」

 

皆の練習の光景を見ていると、時々思うことがある。なんで私だけバスケができないのだろう………病気がなければ、私も思いっきりバスケができるのに………そう思うことが多い。

 

「ごめん………なんか暗いね、私。これからって時なのに」

「お前がチームの為にいろいろとやっているのはバスケをあきらめたくない気持ちからなのか?」

「結局、私はバスケが大好きなんだよ。選手として、プレーできなくても、マネジャーとしてなら、選手と同じ気持ちでいられる。自己満足に思われるかもしれないけど、私はまだ完全に諦めたくないんだよ………それにここは私の居場所でもあるからさ」

 

私は気持ちを切り替えるように頭をふった。これ以上悲しい気持ちを抱えたくなかったから。

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