「ア、アライさ~ん?」
「なんなのだフェネック」
そこに二匹のフレンズが居た。
フェネックと呼ばれたフレンズは大きな耳を持つフレンズ。毛色はクリーム色でピンクの服を着ている。
そしてアライさんと呼ばれたフレンズは銀色の毛色。青い服を着ている。
「えっとぉ~。歩きにくいんだけど」
「フェネックなら大丈夫なのだ」
「いやぁ、流石にちょっとこれは……」
実際、アライさんはフェネックの後ろからしがみついている。
実に歩きにくそうで、フェネックの言うことにも頷ける。
しかしアライさんは気にしない
「そ、そう……じゃあ、仕方無い、のだ。離れるのだ」
が、フェネックが嫌ならばと渋々離れる。
「じゃあ、その、手……手を繋ぐのだ!」
「ん~なんで?」
「フェネックとはぐれないようになのだ!」
「……もしかしてさっきのも?」
「そうなのだ! アライさんは偉いのだ! 天才なのだ!」
えっへんと胸を張るアライさん。
それを見たフェネックは何となく、イタズラを思い付く。
「そっか~、アライさんは天才だもんね~」
「そうなのだ! フェネックも良く分かっているのだ!」
「……だったらアライさん、一人でも大丈夫だよね?」
「そうなの……え?」
「うんうん。アライさんは偉いし天才だし速いし強いしきっと一人でも大丈夫だよね~」
実はそうでもないけど、まあイタズラだから少し大袈裟にしてみるかな―――とアライさんを持ち上げまくるフェネック。
「えっと、そこまで褒められると、いくらアライさんでも照れるのだ……」
「うん、それじゃ~、バイバ~イ」
「えっ」
繋いでいた手を離し走り出すフェネック。急な事で頭が理解していないアライさんの視界から、あっという間に居なくなる。
「フェ、フェネッ……ク……? う、嘘……なのだ? 冗談ならすぐに戻ってくるのだ! アライさん、今なら怒らないで! あげるのだー!」
アライさんが声をあげるも、フェネックが戻って来ることは無かった。
「フェネックー! 本当に良いのだ!? もう戻ってきても許してあげないのだー!? い、今なら! 戻ってきても! ゆ、許し、て……あげる……の……」
フェネックはもう居ない。アライさんは、一人になった。
アライさんがその事を理解するのに時間はかからない。
「……そう、そうなのだ。かくれんぼなのだ? 狩りごっこなのだ!? よーし、フェネック! すぐに見つけてやるのだぁ!」
アライさんの良いところは、前向きでポジティブなところ。頭を切り替え、フェネックを探す事に。
「ここなのだ!」
木の後ろ。
「居ないのだ……ここなのだ!」
岩の影。
「また違う……フェ、フェネックは隠れるのが上手いのだ」
草の影。
「フェネック……何処に行ったのだ……」
走り回り探したが、とうとう見付けられない。
アライさんは疲れてしまい、木に寄りかかってうずくまる。
「……約束……忘れたのだ……? 一緒に行ってくれるって……ずっと一緒に居るって……言ったのに……」
ホロリと涙。思い出すのは今までの冒険。
「…………。フェネック……もしかして……アライさんのこと、嫌いに……? そっ……か……アライさんは、フェネックの事を考えてなかった…のだ……」
思い返せば、フェネックは始めからずっと冒険に乗り気で無かった。気がする。
「それに……何時だって迷惑を掛けてたのだ。さっきも、あの時も、あの時だって……」
考えれば考える程、フェネックが自分を嫌う理由が出てくる。
いつの間にかアライさんは泣いていた。
「ふえぇぇぇえん……! フェネックゥ……! ごめんなのだ、ごめんなのだぁ……! アライさんが悪かったのだぁ……!」
「……」
「フェネックゥ……! 戻って、戻ってきてよぉ……! ふえぇぇぇえん……!」
「……」
フワッと。横から抱き締められた。
「ごめ~んね~、アラ~イさ~ん」
「ふぇ……フェネック……?」
「そうだよ」
「フェネック……なのだ?」
「うん、アライさんがだ~い好きなフェネックだよ~?」
「本当に……? ほんとのほんとに、フェネックなのだ……?」
「も~アラ~イさ~ん。わたしがセルリアンに見えるの~?」
「フェネック!」
フェネックに抱き着き、抱き締めるアライさん。それに対して、頭を撫でてあげるフェネック。
「ごめんね、アライさん。ちょっとイタズラしちゃった」
「酷いよぉ……一緒に居てくれるって、言ったのに……!」
「ごめ~んごめ~ん」
アライさんが泣き止んだ。
「フェネック」
「ん~? 何かな~?」
「始めにした約束、覚えてるのだ?」
「勿論だよ~」
アライさんとフェネックがした約束。
『フェネック! 付き合って欲しいのだ!』
『…………え?』
『アライさんはこれから泥棒探しの旅に出るのだ! だけどジャパリパークは広いのだ。だから……フェネックと、一緒に行きたいのだ!』
『まあ、アライさんがそ~言うなら……一緒に行ってあげるよ~』
『分かったのだ! ずっと一緒に行くのだ! これは約束なのだ!?』
『はいよ~』
それは、『ずっと一緒に旅をする』というもの。
「いや~着いてきて正解だったよ~。アライさんだけじゃ、すぐにセルリアンに食べられちゃうし―――」
「フェネック。今から言う質問に、正直に答えるのだ」
「……?」
いつになく真剣な顔のアライさん。能天気なフェネックも、流石に真面目に質問を待つ。
「…………」
「……」
が、アライさんは黙ったまま話さない。
待つか待たないか。フェネックは、どうすれば良いかを考える。存外すぐに答えは見付かる。
「アライさん」
「な、なんなのだ?」
「安心してよ~。私は何を聞かれても怒ったりしないからさ~」
そして笑ってあげる。アライさんは、
「……フェネックはズルいのだ」
「ん?」
小さい声で呟く。
「何でもないのだ。じゃあ……質問なのだ。フェネックは、アライさんの事嫌いなのだ?」
「嫌いじゃないよ~」
即答である。チーターもビックリの速さである。
「そう、なのだ……」
「アライさんは~?」
今度はフェネックが聞いてくる。
その質問の答えは、アライさんにとって一つしかない。
「大好きなのだ、フェネック」
「……そっか~。私もだよ~」
「違うのだ!」
アライさんが怒鳴る。急に怒り始めたアライさんに、珍しく驚きの表情を見せるフェネック。
「きっとアライさんの『好き』とフェネックの『好き』は違うのだ! アライさんは、アライさんは! フェネックの事を思うと、胸がドキドキするのだ! フェネックが居ないと怖いのだ! フェネックは、フェネックは……」
「アラ~イさ~ん?」
「そう! 綺麗なのだ! 可愛いのだ! アライさんには無い、可愛さがあるのだ!」
「アラ~イさ~ん」
「それに優しいし頼りになるしたまにイジワルだけど、アライさんが間違っても笑って許してくれるし―――」
「アライさん」
怒ったようなフェネックの声。アライさんは驚いて喋る口を閉じる。
フェネックは怒ると怖い―――。
「大丈夫だから。アライさんの『好き』と私の『好き』はおんなじだよ。私もおんなじ」
「フェネック……」
「だから。ね? ずっと一緒に居よ?」
ソッと手を出してくるフェネック。
アライさんは一瞬戸惑い―――その手を握る。
「ずっとアライさんと付き合うよ~」
「…………うん」
アライさんは、満面の笑顔を見せる。
「こちらこそ、よろしくなのだ!」
おまけ
「じゃあ、相思相愛ってことで…………『交尾ごっこ』、するね」
「フェ、フェネック?」
やっぱりガチックはフェネ。