「あ、ジャガー。どこ行くんだ?」
「ん、タスマニアデビルか」
じゃんぐるちほー、或いはジャングルの川。黄色い毛並みのフレンズに、黒いフレンズが話掛けていた。
「ちょっと図書館に行こうと思ってな」
「図書館~? そりゃまた何で」
「……さっき、全然分からん事があって。このままじゃ駄目だと思ったんだ。幸いサーバルとかばんが橋を架けてくれたから川渡しもしなくていいからな」
「ふーん。ま、気を付けろよ」
「勿論」
そしてジャガーは旅立った。
さばくちほーを越え、色々通った。様々なフレンズとの出会いと別れ。
初めての出来事に見たことの無い景色。ジャガーはこの旅を楽しんでいた。
―――そしてジャパリバスに乗ったかばんたちに遅れること一週間、ようやく図書館に着いた。
「おや、お前は……ジャガーですね」
「頭の点々、その特徴的な模様。ジャガーですね」
「おお! 流石は博士たち! そう、私がジャガーだ!」
この、白い羽毛のフレンズと茶色の羽毛のフレンズが図書館に住む『博士』ことアフリカオオコノハズクと『助手』ことワシミミズクである。
「ジャガーはじゃんぐるちほーで暮らしている筈ですが、何しに来たのですか?」
「色々知りたいんだ」
「そうですか。何を知りたいんですk「全部だ!」
ジャガーが食いぎみに答える。博士、ちょっと細くなる。
「ぜ、全部ですk「ああ!」
博士が改めて確認するが、それは博士を更に細くする結果となった。
「……博士が使えないので、私ことミミちゃん助手が聞きます」
助手、有能。
「全部を知りたいと言いましたが、何を知りたいのですか?」
「全部は全部だ!」
「いえ、ですから何について全部を知りたいのか……」
「全部だ!」
「…………まったく。話の通じない奴なのです。博士、どうしますか」
ジャガーの頑固さは助手も
ちなみに、博士はなんとか元の姿に戻っていた。
「まだまだですね、助手。肝心な事を聞いていないのです」
「肝心な事?」
助手が首を傾げる。それを見て博士はやれやれと首を振る。
「ジャガー、何故そう思ったです?」
「え?」
「何か思うところがあったから色々な事を知りたいと思ったのでしょう? さあ、洗いざらい吐くのです。ただし本当に吐くのはNGなのですよ」
博士がとても博士らしい。助手よりも子供っぽい声をしているのに助手より大人っぽい質問をする。
「ああ、それはカクカクシカジカ」
真心に満ち溢れたジャガーの返答。そこには誰かを思う気持ちを感じられた。
「そういう理由なら、特別に図書館の本を読ませてやるのです」
「博士、その前に文字を教えてあげるのです」
そうして、ある意味ジャガーにとって一番の苦痛の日々が始まった。
「…………ふむふむ」
博士たちの(厳しい)教えによって本を読むことが出来るようになったジャガー。
こうなるまで実に長い時間がかかった。結局、巨大セルリアンに食べられたりしたかばんに教わって読めるようになった。
「……………………ほう」
その本を読み進めていく。ちなみに今、博士たちはヒグマの作った料理を食べている。
「そうだったのか。いや、だがこれは……しかし……」
ジャガーの眼が光る。知らぬ内に野性解放をしている。
「そうかそうか……ふふふ……」
ジャガーはのっそり立ち上がると吼えた。
「私はジャガー……肉を喰らう者! 手始めにあのくそ生意気なガキどもを喰う!」
その瞬間後ろからミミちゃん助手の強烈なキックがジャガーの後頭部を襲う!
一撃でジャガーは昏倒した。
「全く。よりによってこれを読んでいたとは」
「良くやったのです、助手。それは一番奥の戸棚に封印するのです」
「分かってますよ、博士」
次に目覚めたジャガーは本の内容をすっかり忘れていた。
奥深くにしまわれた本の名は『これだけで分かる動物!~ネコ科の動物~』
こうして、今日もジャパリパークの平和は守られているのである。
果たして、聖人を怒らせた博士たちはどんな我が儘を―――
「中々不愉快な事を言ってくれますね」
博士。字の地の文に突っ込むのは駄目です。