(追記)
UA14000、お気に入り数3桁ありがとうございます。
大丈夫ですか?褒めてもこんな作品しか出せませんよ?(震え声)
空を悠々と飛び回るワイバーン目掛けて指を鳴らす。
その動作一つでワイバーンの丸焼きが出来上がる。
何回目かの爆発音が響いた頃、ようやくワイバーン達が此方に標的を定めだした。
龍種とはいえ所詮は飛竜──。
詰まってる脳みそは容量的に胡桃サイズに違いない。
しかし、勘は凄く働くようで爆発予測地点で火花が散るのを感づかれたらしく当たらない。
これを好機とフェイントをかけるでもなく愚直に突っ込んでくるワイバーンには焔では少しばかり狙いが付けづらい。
「
よろしい、ならば
右手に特徴的な形をしたアイアンナックル――。
左手は
直線的な破壊力に物を言わせたスタイルだが、案外これが使いやすい。
「
目の前に浮かぶ瓦礫に拳を打ち付ける。
独特な錬成光が出ると同時、殴り付けられた瓦礫が円錐形となってワイバーン目掛けて飛んでいく。
魔力放出の恩恵もあってか当たったワイバーンを貫通して猛スピードで飛んでいく。
ワイバーン達は何が起こったかわからないようで勢いを無くしていたが、そんなことは関係ない。ちょうど此方は調子が出てきたところである。
「次は『銛型』!『鉄拳』!『突撃槍』!」
円錐形ではない、武器としての形状を保った鉄の塊が飛んでいく。
今の俺なら宝具も撃てるし、ヒヒイロカネくらいなら錬金できそうだ。
まぁ…。
「全滅させちまったらぶつける相手も居ないんだが」
出撃前に俺の『本気』が見たいとマスターにせがまれたのだが、少しやり過ぎたかもしれない。
周囲には柘榴のように弾けたワイバーンの死骸と血溜まりが広がっている。
それにしてもマスターには「キャスターをライダークラスに当てるとはなに考えてやがる」と小言を言ってしまったのだが、まったく問題はなかったな。
むしろすばしっこいアサシンよりもやり易かったなどと考えながらポケットに入っているタバコを吸う。
ライター要らずでとても楽だ。
「ほら、素材採ってさっさと帰ろう。工房が俺を待ってる」
ドクターの通信を聞き流しながら後方で待機していたマスターに声をかける。
返事が返ってこないことに少し疑問はあったが、無視して飛んできた血飛沫なんかを魔術で流す。
染みになった部分は錬成し直せばいいし、まったくもって錬金術様々である。
この時俺は考えてもいなかった。
まさかマスターがガチ戦闘モードの俺を見てビビって泣きそうになってるだなんて…。
結局それを知るのは就寝前、相談を受けたダ・ヴィンチから教えてもらった時なのだが、今の俺には分かるはずもなかった。
「で?彼の普段と違いすぎる姿にショックを受けた、と」
夜、彼――アルケミストとのワイバーン狩りの後、どうしても不安が拭えなかった私はダ・ヴィンチちゃんに相談した。
ざっくりと言ってしまえば、アルケミストが戦闘状態だと物凄く冷酷無慈悲な感じがして恐いのでどうしようか?という内容である。
当然それは他のサーヴァントにも言える話なのだが、アルケミストは現代の人間…どうも私は無意識にその事を強く考えていたらしい。
「彼も良識ある大人である前に魔術師だからね。ああいった合理性を突き詰めた思考を持っているのは不思議なことではないんだが…」
「そうだね。落ち着いてからでいいから一度彼と話をしてみるといい。きっとその不安を消してくれるだろうさ」
ドクターよりも同じキャスターであるダ・ヴィンチちゃんの方が明確な答えを持っているかと思って相談したのだが、やはりこういうのは心の持ち様らしい。
万能の天才が言うのだからそうなのだろう。うん、話したら少しだけ楽になった気がする。
寝れば心の整理も付くかもしれないし、今日は早めに寝てしまおう。
今日集めるはずの牙の必要数は足りているし…ね。
そう思って早めに眠りについた筈なのだが、現在私は妙な夢の中にいる。
見たことの無い場所、重たい頭、意思とは無関係に動く身体…これが夢だと理解するのに時間はあまりかからなかった。
ここは、どこかのビルの中…?
見たことの無い建物、いやもしかすると来たことがあるのかも知れない。そう思うほどに特徴の無いありふれたビル…名前は、
『
「また来たの、エド」
「あぁ。また壊したんでな、メンテナンスだ」
扉を開けると眼鏡をかけた美人さんが居た。
エド、とは誰の事だろうか?そういえば視線が普段より高いような気がする。
やもするとエドというのは私の事だろうか。
『あれ?橙子一人か』
ぼんやりと靄のかかった頭で考えていると、女性は眼鏡を取りながら椅子から立ち上がった。
…美人で在ることには変わり無いが、少しだけ受ける印象が違って見える。
「別にやらんでも大丈夫だろうに、嫌味な奴だ」
「こういうのはやったかどうかが大切なんだ。精神的な安心のために頼むよ、人形師様」
「とっとと私の作品に鞍替えしろと言っているのに…まぁいい。見せてみろ」
お互い砕けた話し方、気安い関係なのだろうと呑気にそんなことを考えていると、夢の中の私がおもむろに腕を突き出した。
これは…金属の義手?
「コクトー君は来てないのか?」
「黒桐はあの子の見舞い。この二年、欠かさず行ってるんだから、健気なもんさ」
「両儀のお嬢さんか」
聞いたことのある名前に反応しつつも、見覚えのある義手について考える。
この体の持ち主はエド…もといアルケミストなのだろうか。そう言えば彼もサーヴァントだった。
サーヴァントの過去を夢に見るというのはマスターになったあの日から何度か経験した。今に始まったことではない。
ともすればこれはアルケミストの過去なのだろうか。
鈍った頭で思考している間にも話は先に進んでしまう。
どうやら義手のメンテナンスは終わったようだ。
「特に問題は無いだろう。強いて言えば固定化の魔術が弱かったくらいか」
「毎度悪いな、助かるよ」
「そう思うなら私の作品に鞍替えしろ。特別に格安で作ってやる」
「悪いがお断りだ。これは俺の戒めだから」
ブツンッ
映像が切り替わる。
今度は先程とは違い何処かの喫茶店のようだ。
正面に座る誰かと話をしている。あれ?これ、孔明じゃない?
「聖杯戦争ねぇ…」
「なんだよ、お前も魔術師なら興味無いのかよ」
「自己顕示欲もないし、願いもこれと言ってはね。まぁ、過去の英雄に会えるってのは面白そうな話だと思うけどな」
手元のコーヒーを口に運びながらやる気無さげに返事をする。
その声は心なしか先程よりも聞きなれたものに近い。
やはりこれはアルケミストの過去のようだ。
『こいつ死にそうだなぁ…』
頭も大分冴えてきた。
これは依然聞いたことのある冬木で起こったという聖杯戦争の頃の話のようだ。
そして時々思考を遮るように頭に浮かんでくるのはアルケミストがその時に感じた事なのだろう。
「それで道は大丈夫なのか?」
「たぶん」
「お前なぁ…」
「何にせよ助かった。見知らぬ土地で迷子というのは心細かったんだ」
「道は地図に描いてあるから、分かんなかったら人に聞けよ?また迷子になっても知らないからな」
孔明先生、昔からいい人だったみたい。
何となく私の知る彼の姿と被って見えて少しおかしい。
そう思って笑っているとまた映像が切り替わる。
今度のこれは…テレビ画面?
「くっそ、イスカンダル強すぎるだろ!これが軍略スキル持ちの力か!!おのれぇ!」
「坊主もよくやるが詰めが甘いな、広い視野を持たねば為政者にはなれんぞ。ほれ、ここもがら空きだ」
「お前ら何やってんだよ…」
何処かで見たことのある光景…というかオフの時のアルケミストと孔明先生のそれそっくりの光景に少し面食らってしまう。
まぁ、いつも心の中で私がしているツッコミを若かりし日の孔明先生がやってくれているから違うと言えば違うのだが。
それにしても、これが征服王イスカンダル…孔明先生が召喚したって言う、彼の憧れの人か。
…なんか私にはゲームのロゴが入ったピチピチのTシャツ着てる気のいい人にしか見えないけど。
「あー、駄目だ。完敗、無理だー」
「おぉ坊主!このゲームは対戦もできるというのでな、二人でやっておったのだ。どうだ?おぬしも」
「するか!
っていうか今は聖杯戦争の最中だぞ!なんでゲームしてるんだよ!」
聖杯戦争というのは危険な魔術師同士の戦いだと聞いていたのだけれど、なんというかアットホームな雰囲気しか感じないな。
先生の反応を見るに二人がおかしいのだろうが。
「果報は寝て待て、とは言わないが今は闇雲に動いて敵に見つかる方がまずい…って感じですかね、イスカンダル王?」
「そうだ。まだサーヴァントが揃ったかどうかも分からぬ現状、先に手を出すのはちとまずい。
これが遠征の道中であるならば征服もできようが、これは聖杯戦争。功を急いでは勝てるものも勝てん」
意外と真面目な理由でした。
そうは言ってもやってることはゲームで時間を潰すという難とも言えないものなのだけど…。
ブツンッ
と、映像が切り替わる。
瞬間、視界を地面が埋め尽くす。
突然の事に辺りを見渡そうとしても身体が動かず、これが自分の体では無かったことを思い出した。
ならばと視覚以外を頼ってみると、周囲に漂う何かが焦げた匂いが鼻を突く。それに、血の匂いが混ざっている。
「……、………」
視界が少し開けた。同時、何かアルケミストが呟いたが、よく聞き取れない。
どうやら目を覚ましたらしい。
周囲を確認しようと手を付いて上体を起こすが、視線の高さは依然として低いままだ。
まるで赤ん坊の視界のような高さ――。
同じように疑問に思ったのか、はっとしたように目を向けると…右腕が無くなっていた。
リアルすぎるそれに血の気がひいた。
「クソッ!何が魔法使いだ!何が錬金術師だ!何にもできない役立たずじゃねぇか!」
その事にパニックを起こしそうになりながらもこれは夢であるのだと自分に言い聞かせる。
落ち着け、落ち着け…!
大きな声でアルケミストが叫んでいるが、周囲にそれを聞く人間は居ない。あるのは異臭を放つ
「この人達が何したよ、俺達が何したよ!!世界の不利益なんて無かったじゃねぇか!」
大声で叫ぶそれはまるで呪詛のように世界に向けられる。
脳がこの状況を理解するのを拒んでいるのか頭が痛い…。
落ち着いて『殺してやる!』落ち着け!『何で!』煩い!『何で!?』止めてよ!『何でだ!?』やだ!
『マスター』
不意に声が聞こえて意識が浮上する。落ち着いた男性の声…。
『これ以上は見ない方がいい。この先を見ると…
意識が覚醒する。
目を開けるとベッドの脇に神妙な顔つきでアルケミストが立っていた。
「アルケミスト…」
「すまないな。レディの部屋に勝手に入るなんて」
思わず声をかけると、自嘲気味に笑ったようにそう言うがその顔は笑っているとは言い難い。むしろ困ったような…。
「忘れなさいとは言わないが、あまり気にしないことだ。あれはもう終わったこと、過去でしかないから」
そっとアルケミストが此方に手を伸ばす。
額にその指が触れた途端、抗えない程の強い睡魔に襲われる。
「おやすみマスター。次はいい夢がみられる筈だ」
瞼が落ちる直前、そんな言葉を聞いたような気がした。
朝、何時もより早く目が覚めて私が最初にしたことは両儀さんを探すことだった。
朝の早い彼女はもしかすると今なら食堂に居るかもしれないと考えたからだ。
予想通り彼女はいた。ビンゴだ、と思いながらエミヤさんに食事をもらって彼女の前の席に座る。
挨拶を手短にすませて話し掛ける。当然聞くのは彼の事。
「あの、両儀さん」
「どうした?」
「アルケミストさんについて…何かご存知無いですか?」
「知ってるよ。元々知り合いだからな」
その台詞にやはり、という考えが脳裡を過る。
夢の中で聞いた『両儀』という名は彼女の事だったらしい。
「名前はよく知らないけど、橙子のやつはエドって呼んでたな。ふらっとやって来ては少し話をしてどっかに行く、そんな奴だ」
「他に、何か分かる事ってありますか?」
「後は…世界に一人の錬金術士だって聞いてる」
『もう、駄目じゃないか式』
そうやって話を聞いていると突然聞いたことの無い声が聞こえてきた。
その声の主を確認しようと私が動くよりも早く、両儀さんが恐ろしい早さで振り向いていた。
「黒桐!?」
「残念、黒桐君人形でした。驚いたかい両儀君?」
するとそこには渦中の人物、アルケミストが立っていた。
…いたずらに成功した子どもの様な顔をして。
「あぁ、黒桐君っていうのは両儀君の旦那さんの事。声が俵殿とそっくりでね。少し協力してもらったんだ」
『おかえり、式。調子良さそうだね』
つい半目になって彼を見てしまうが、それをどう解釈したのかぬいぐるみ片手に調子よさげに話し始めた。
ぬいぐるみから聞こえてくる声は確かに俵の声に似ている。
というか両儀さん、既婚者だったのか…。
「ボイスパターンは五種類あってね。気に入らないなら中のスピーカーを抜けば普通のぬいぐるみとして置いておけるわけだよ。実際鮮花くんにも好評で…」
深夜の通販番組のようにペラペラと手にもったぬいぐるみについて語り出す。
たぶんだが、今日のアルケミストは徹夜明けなのだろう。何度かこんな姿を見たことがある。
私にはそのコクトーさんがどんな声をしているのか分からないが、両儀さんの反応を見るにかなり良くできているのだろう。
…アルケミストには両儀さんの恐ろしい顔は見えていないようだが。
「『直死』…!」
震えていた両儀さんが突然動いたと思ったら、彼の手の中にあったぬいぐるみが空中で分解していた。
よく分からないが17分割されているのだろうなー、と考えてながらそっと手を合わせる。南無。
「こ、コクトーくーん!!」
「変なもの作ってる暇があったら働け!」
哀れフランスの詩人のような名前の着いたぬいぐるみは陽の目を見て僅か一日足らずでその生涯を終えてしまった。
一気に不機嫌になった両儀さんは手に持ったナイフを腰帯に仕舞いながら去っていってしまう。
アルケミストは悲しげに残骸を広い集めて空いた私の前の席に腰かけた。
一連の流れを目の当たりにしてしまい、何となく声をかけるのも憚られたので朝食を食べ進める事にした。
「真名、教えておこうかと思ってね」
唐突に、本当に唐突にそんなことを言い出すので噎せそうになるのを必死で抑えて、食べていたものを水で流す。
ギロリと彼を睨むが、飄々とした表情で流されてしまった。
何なんだ一体。
「一応、俺は君を信頼しているんだ。あの夢だってサーヴァントとして君をマスターと認識しているが故の物だから…」
だからいい機会だと思ったんだ。
そう言ってこちらを見る彼の表情は真剣で、ついこちらもその雰囲気に呑まれてしまいそうになる。
そう言えばその夢の事で両儀さんに話しかけたんだった、と数分前までの自分の行動を思い出す。
それにしても雰囲気やシチュエーションというのをもう少し考えてもいいんじゃないだろうか…。
「改めまして、キャスターのクラスで現界…と言うか召喚された『
世にも珍しい魔法使いの一人だが別に気にすることはない。上手に扱ってくれよ?マスター」
そう言って伸びてきた彼の手を握り返す。
なんとも締まらない感じだが、私達の間はそれでいいのかもしれない。
懲りずにぬいぐるみの残骸を再錬成して修復する彼を見てそんなことを考えてしまった。
なお、数分後に彼の口から出た魔法使いという単語に気がついてまた騒がしくしてしまうのだが、それについては割愛させていただく。
取り敢えず、その頃には昨日の夢も不安も気にならなくなっていた、とだけ。
また、本当はあの夢はマスターを泣かせたショックで気が抜けたせいで記憶保護の魔術が緩くなったから見えてしまったのだ、とは言い出せなかったエドなのであった。
ちゃんちゃん。
おまけ
「それで、夢に出てきたあの女性がエドのいい人?」
「…ノーコメントだ」
ノーコメントです(*´・ω・`)b
伽藍の洞の話を書きたいけれど、「それ原作タイトル詐欺やん!」ってなったのでちょっとだけ。
無理矢理でしたかね?
真名問題は解決されましたので、次書くならエド主催のイベントですかねぇ。
ちびっこ達をキャスター組で煽てまくって不思議の国のアリスとか…時系列的に難しいですね。