空母「信濃」へ捧ぐ   作:高津信暁

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遅くなり申し訳ございません。
理由としては、私自身が大学生になり、新生活でバタバタしていたのと、難産だった前半以上に、この展開を思いつくまでにかなりの時間がかかったからです。
本当に申し訳ないです。


※3月6日追記
色々と説明不足だったので、後半加筆修正しました。
地の文多くてごめんなさい。設定的に艦娘と絡ませ辛いんですコイツ…。



7周目、11月20日後編

 …さて。今から俺はレッツ昼飯なわけだが。ここでひとつ言わせてほしいことがある。

 

 

 

 ―――いちいち()()()()()()()()()のが、もークソほどめんどくさい。

 

 

 

 ねぇこの気持ちわかって??わかってくれない??人間って思ったより思考メカニズムめんどくさいのよ??文字に起こすと衝動的にぶん投げたくなるぐらいにはね??

 分からん人は、自分が昼どういう動きをするか考えてみるといい。前世の俺みたいなヒキニートさんは、アニメのヒロインズや恋愛ゲーのランチ選択肢で想像してみてくれ。それでもわからなかったら、空想しようか。

 まず街に出る。腹が減る。昼飯を食べたいと思う。そこまで来て、次は何をする??

 

 食べたいものがあれば、スマホなりなんなりを使って、場所を調べるだろう。だが今回は完全に行き当たりばったり。まずは周りに何があるかを調べなきゃいけない。その中でひとつ、「お、良さそう」って思った店をセレクト。金と相談。許可されたらそこに行く。んで、メニューを決める。注文。ここまでが一連のルーティーン。

 これをすぐにやっちゃうから、人間ってすごいよね、ほんと。

 

 

 はい、ここでひとつ問題です。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

 

 

 

 

 普通のこたえ。

 

 艦娘「信濃」としての永遠ループゲーの7周目中。

 

 

 

 

 ベストアンサー。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 つまり、俺は「昼飯ごときに選択肢が多すぎるんだよクソジジイ」って言いたいの。

 もっと言葉に棘を持たせるなら、どの店を選んで、どのメニューを選んで、どこに座って食事をするか。()()()()()()()()()っていう、無限の可能性溢るるクソゲーは即刻廃止して幸せな提督生活に戻しやがれクソジジイ、ってこと。

 分かっていただけたかしら??

 

 

 既に6周、60日にわたって恐ろしいほどいじめ抜かれた俺の精神は、6周目の発狂を経て、なんだか強靭になってきたらしい。

 現に、こうしてふざける余裕が逆に出来てきた。確かに「勘弁してくれ…」って気持ちはあるし、提督生活即やりたい気持ちも大いにあるけど…なんていうのかな、「慣れた」とはちょっと違う、「()()()()()」って言うべきなのか。

 たとえるなら、親元から離れたくなかった大学生の一人暮らし。最初は死ぬほど嫌で、寂しくて、だけど10日もしたら慣れてて、気づけばむしろそちらが普通になっていますよ、っていう、それだけの話。

 

 ―――うん。要するに、狂ってきたんだろうな、俺。

 

 

 

 …ええいやめだやめだ。こんな胡散臭くてミソッカスな話誰も楽しくないだろ。

 長々と愚痴を垂れ流してしまったが、まぁ、昼飯はテキトーに済ませたってことで。あとはいろいろ、心境の変化があったんだなぁ、ってことが伝わればそれでいい。こっからは心内おふざけに定評がある信濃さんで行こうじゃん??黄泉川さん的な思考で行こうじゃん??

 

 

 7周目の11月20日。時刻は17時30分。冬至にガンガン近づいてるからなのか、もう十分に夜と呼べるレベルの暗さだ。夕焼けの残滓なぞ、稜線にオレンジ色が残っているぐらい。夕焼けの残り香、あるいは空の焼け残りのような、強烈なオレンジ色が。…ボキャ貧かよ俺。どっちも焼いちゃってんじゃねえか。こんがり肉出来ちゃうよ??そこからドスファンゴ狩りに行っちゃうよ??なんならドスファンゴの肉も焼いて無限ループするまである。

 

 

 …眠い!!全力で眠い。やー、昼飯を食べた後、結局午後もずっとここ(弓道場)にこもってしまったからね。もう昼夜の感覚しかない。つまり普通の人には平常運転、俺ら(ニート)にとっては異常運転。まあしょうがないよね。我らヒキニートは昼夜の感覚を犠牲にしてきた人々でありますし??なんなら睡眠時間をガンガン削って目のクマとお友達になってきた人々ですし??深夜8時とか3徹とかザラにあるよねわかるわかる。

 

 …うん。久しぶりにキッチリ運動するとやっぱりつらいね。身体的には運動できる「艦娘」の体のはずなんだけど、精神的には結構しんどいッス。

 なんせ、やってることは弓道というガチスポーツだ。前世ナメクジレベルで運動してなかった俺にとって、そもそも「運動」という行為自体が、あまり好ましいもんじゃない。いや別に運動能力なくても、ゲームは出来るしコメントは打てるじゃん。鍛えるのは指の筋肉だけで十分。あ、脚でゲームをするどこぞの兄妹は異次元なので無視。

 あと、これは最近気づいたことなんだが…俺、ループ入ってから、「練習しなきゃ最終日生き残れないだろう」というのもあるし、一応運動してるはずなんですよ。毎ループごとに、かなりの時間。だけど―――どういうわけか、毎回同じだけ疲れるんだ、何故か。分かりやすく別の言葉を使うなら、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいでなぁ。

 

 

 

 

 ジジイのミスその⑦。

 このループゲー、()()()()()()()()が、()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 うーんこのクソゲー(諦め)。もうミス数えるのが楽しくなってきたわ。あーあ。

 

 

 軽く息をつく。ああ、足は重いし腕も痛い。肩なんて、まるで筋肉の悲鳴を封じ込めるみたいに凝り固まっている。加えて、少し立ち止まるだけでクラリと来てしまう程度には、精神が参っている。今の俺を突き動かすのは、全身を解きほぐしたい!!という欲望だけ。あーもう早く帰って寝たい。宿舎へ至る道のりを、一歩一歩、地面を踏んづけるように歩く。脚が上にあがらない。ただただ前へ、とにかく部屋にたどり着いて、ふかふかのベッドに思い切り倒れ込みたい。ねむーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――というささやかながら切実な願いは、基本聞き届けられないのが世の常というもの。

 

 

 …あのクソジジイ、さては俺の呪詛ちゃんと聞いてるな??俺が疲れ切った時に限って俺に試練を与えに来るその鬼畜性&呪詛に対抗して俺をボコボコにしようとする畜生根性、さっさと治さないと嫁に逃げられるぜ??

 追い込まれてるときほどハプニングイベントが来やすいのは主人公のサガだよね(白目)

 

 

 

 「…君が、信濃(しなの)か??」

 

 

 

 宿舎正門から3号館へ伸びる、長い通路の真ん中付近だろうか。

 この鎮守府では万人が避けて通る信濃(おれ)の元。そこに歩み寄るのは一つの影。

 

 

 「―――ああ。そういうことになってはいるが…どちら様かな??」

 

 

 その小さな影は、距離を測るように、ゆっくりとこちらに近づいてきた。冬至が見えてくる11月、それも午後6時近くとなれば、最早日は落ちている。だが、そんな暗闇の中でも、夜目が効くにつれて、近づく気配が強くなるにつれて、輪郭だけだった影の正体が、俺にもはっきりと見えてくるようになる。

 

 だいたい彼我の距離は3メートルぐらいだろうか。腰あたりまであるロングヘア―を揺らし、その影は立ち止まった。

 

 

 

 「…まぁ、深くは問わないさ。ここでは()()()()()、と言うのが正解かな」

 「―――そう、だな。初めまして、か」

 「君が名乗らないのなら、私から先に名乗らせてもらおう。私は陽炎型駆逐艦12番艦、磯風。()()()()()()()()()()()()()()()艦娘だ。…よろしく頼む」

 

 

 

 

 …お、おう…いきなりすげぇことぶっちゃけるよなぁ、この子…。

 

 

 やってきた影の正体は、時報ヨルダン、バーミヤンへ行こう、約束された勝利の魚雷(エ〇スカリバー)、嫁の飯が不味い2号でおなじみ磯風ちゃんである。ほんと見た目JCのくせにめちゃめちゃ美しいよね。戦闘バカな子ってかわいいと思わん??俺こういう子と朝チュンしたいわ。えっ、料理??…陽炎型ってかわいいよね。

 ちなみにどう見ても改二仕様。嘘だろクソ野郎(提督)。お前そこまで頑張ったんかい。

 

 

 「磯風、か。その名を持つならば、私の元にやってくるのも頷ける」

 「――――――」

 

 

 ―――とまぁ色々茶化してはみたが、この子な、敵に回すと「かわいい」と「怖い」を某世界水準超えの軽巡と同程度に両立する子だからなぁ…流石に最初はこの子の威圧感に超ビビったもんだけど、7周経った今からすれば微笑ましいことこの上ない。反抗期の娘を育てるのって、こんな感覚なんかね…童貞俺、何故か母性に目覚めるの巻。母性なのかよ。

 

 怖いとこ挙げるなら、まずいきなり「()()()()()()()()()()」とか言っちゃうとこね。この子どう考えても()()()()()()()()じゃん。昨日来た大和武蔵姉妹(お姉様方)と似たような感じじゃんか。しかもパートナーって…()()()()()、って言ってるに等しいよね。―――俺殺されるのん??「お前は信濃にはふさわしくない!!エクス…カ〇バァァァアァァァァァァ!!!!」で消される未来しか見えないんだーがー。俺Zeroキャスターかよ。

 逆にかわいいところと言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()であるのに、直接俺んとこにやって来ちゃうとこ。そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しちゃうとこ。いやほんとこの子ぶっちゃけすぎ。オープンなんだか無頓着なんだか…こう、悪い大人にハイエースされそうな…生真面目が一周回ってド天然になってるみたいな、変な純真持ってるよね。かわいい。

 

 

 …あともうひとつ。これはまぁ真面目な話。

 信濃(おれ)の史実に絡めるとするなら。

 

 この子は信濃(しなの)の呆気ない轟沈を()()()()()()()()()である。

 ―――そりゃ「信濃」っていう名前に思い入れもあるよねぇ…。

 

 

 現に、彼女は口調こそ丁寧だが、目は全く笑っていない。何というか、値踏みするような目線、冷ややかな目線ってーの?

 まぁ、慣れてきたとはいえ、まだだいぶ怖い。俺の深淵、言葉の後ろを探ろうとする感じ。俺の価値を見極めようとする感じ。…ヒヤッヒヤするよね、この子清霜ちゃんよりよっぽど戦艦向いてるわ。そうなるとやっぱりカリバっちゃうのか俺…。

 

 

 「では()()()()、自己紹介をさせてもらおう。私は信濃。…いや、正確には、信濃という名を貰った艦娘だ。磯風、よろしく頼むよ」

 

 

 俺のありきたりな返答に、彼女はスッと目を細める。

 

 

 「―――そうか。…ふむ。君がそう言うなら、そういうことにしておこう」

 

 

 だから!!!言葉回しがいちいち怖いんだって!!!なんでそんなに攻撃的なの!!??オルタっちゃってるの!!??いやごめんね、俺が生まれてきたからだよね!!??俺が悪かったからそんなハイライトが消えた瞳で睨まないで!!!ガラスのハートにとっちゃそういう目線一番こわいのよ…。

 

 

 

 

 

 ―――ここで衝撃の事実をひとつ。

 ()()()()()()()()1()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 …うん。たぶん、言いたいことが山積みになっているんじゃないかなぁとは思っておりますがね、ええ…実際俺も疑問点いっぱいありますしね??ええ。

 まぁ、こういうことですよ。実は俺、1周目から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んですよね。一応癒し成分は提供されてるんですよ。まったく癒しになってないし、なんなら一番気が抜けないんですけど。あのクソジジイ、ぜってー休憩イベントって言葉知らねぇだろ。

 この子と出会うのは通算7回目か。前世ヒキニートだった俺からすれば、結構な頻度で会っている娘なのである。10日に1回の割合で会う女の子とか、フツーいねーよ。あ、いたってやつは正直に名乗り出ろ。俺が責任もってこのゲームを体験させてやる。

 

 そしてもっと追加情報。前にも述べたが、磯風と出会うのはこれで7回目である。

 繰り返そう、7()()()だ。要はこの子、5周目(バッドエンドルート)()()()()()()()()なのである。当然他とは違って汚物を見るような眼だったんですけどね。…6周目発狂した理由、分かるでしょ??

 

 なんてことはない。つまりはこの磯風という艦娘、俺のループゲーの中で()()()()()()()()()()()()()()のようだ。可能性を挙げるとするなら、「攻略必須ヒロイン」か「固定イベント発生NPC」ってところ。前者であって欲しいと心から願う限りなのだが、御覧の通り、この子の俺に対する好感度は、どう高く見積もっても()()。限りなく後者に近い。是非もないよネ!!ついでににべもない。

 

 

 「…助かる。ここでは『信濃』と名乗っておくのが、私としても一番都合がいい」

 「成程、ならば私も極力それに従うようにはしよう」

 

 

 ―――うん。ダメだ。仮に正ヒロインだとしても、俺には攻略できる気がしねぇ。

 7周、毎回言葉を変えているというのにそう思うんだから相当。反応は相変わらずゴミ…というよりは、()()に向けるそれと同じ。好感度なんてなかったんや。

 

 

 「…それで、今日はどういった所用で私の元に?信濃(わたし)を殺しにでも来たか?」

 「ははは、まさか。その名前を冠する(騙る)者を殺しては、私がかつての信濃(しなの)に怒られてしまう」

 「―――その…なんだ、今思ったのだが、君は余程…信濃(わたし)が許せないのだな。今は君のその敵意だけで、深海棲艦も逃げてしまうような錯覚すら覚える」

 「何とでも言え。私は()()()()()()()()()()()。大和や武蔵が君に対し、どのような想いを抱いていたか…それは君も知るところであろう?」

 「それを見られていたのか…ならば是非もなし、か」

 

 

 まるで戦場で交わすかのような、物騒極まりない会話を少し。俺は終始ビビりっぱなし。敵意むき出しの子って怖いし危ういしで…かわいいなんて思う余裕なんて、どっかにすっ飛んでいったんだよなぁ。いやぁ、艦娘って恐ろしいなぁ。

 え??なんで「殺す」とか物騒な言葉を使ったのかって??…ほら、アレだよ、アレ。ハッタリかまそうとしたの。余裕ぶろうとしたの!!悪いか!!…見事に失敗したけど。

 

 そんな俺の内心など知らず、会話中もずっと俺を睨みつけていた彼女。ふと、興味をなくしたように目線を外し、突如踵を返した。そのまま背を向け、夕闇の空に独白するかのように言葉を紡ぐ。

 

 

 「まぁ、いい。今、私は君をどうするつもりもない。ただ()()()()()()()()()からな」

 「―――そうか」

 「ああ、勘違いするなよ?()()、君に何もしないと言っただけだ。今後もし、私や提督、そして私の周囲の艦娘に少なからず危害を与えた場合―――」

 

 

 ここで彼女がこちらを振り向く。

 浮かべる笑みは誰が何と言おうと()()。だが凄みを持たせたそれは―――()()()()()

 

 

 

 「―――私は()()()()()()()()()()()()。ああ、うっかり手が滑るかもしれないな」

 

 

 

 ―――。

 ―――助けて、ママ。

 

 

 

 「………………」

 「()()()()()を見誤るなよ。君に与えられた名前は、君が思うより、ずっと重い」

 

 

 

 黙り込む…というか、半ば呆然とする俺を、彼女はもう視界には入れない。

 その後一瞥すらくれることなく、彼女は正門側に向かう道の奥に消えていってしまった。

 

 ()()()()()()()

 

 

 「…難儀なものだな」

 

 

 一言。呟いた言葉には万感が乗る。いやどうしたん。あの子マジで俺のこと嫌いやん。好感度調整とかミリも必要ないやん、だってあれ以上上がるビジョン見えないし。俺の努力全否定やんか。あれから上げろって言うんじゃねぇだろうなクソジジイ…どうせ言ってるんだろうなぁ。

 

 

 ということで。昨日のゆーちゃんといい、今朝の大和武蔵姉妹といい、そして今の磯風といい。「俺は果たしてまともに艦娘と話ができるのか??」という不安がムクムク増大している今日この頃でありますが。

 

 ああ、忘れないように何度でも言おう。これはまだ11月20日、2()()()()()()()であると同時に、開始から()2()()()()()()()()7()()()の出来事でもあるのだ。いくら理不尽かつ横暴を極めた選択肢や出来事がやって来たとしても、それは単に俺の生きる経過でしかない。既にこれほど精神的ダメージを負っているというのに。

 

 

 ―――そして俺は、()()6()()()()()()()

 加えて()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 これが意味することは分かるだろう。正直、もうじき限界が来そうだ。()()()

 

 

 

 

 

 ―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 ヤバい。これはマジでヤバい。

 何故か。恋愛シミュレーションゲームで考えればわかる。たとえるなら俺は今、「攻略対象のヒロインに素でキレる主人公」である。それも、そのヒロインをもともと攻略する気がないわけではなく、攻略するはずのヒロインをだんだんと嫌いになっていく感じの。

 

 ほら、さっきの物騒な会話あったじゃん。あれな、2周目3周目あたりはな、もっとオブラートに包んだ優しい言い方だったんだよ。それが今やハッタリかまそうとして「殺す」でしょ??

 これはヤバい。何がヤバいって、今後悪化していくことが容易に想像できるからヤバい。恐らくあと3、4回ぐらい、磯風ちゃんに同じ反応されたらマジギレするかもしれない。『お前、いい加減にしろよ、()()()()()()()()()()()()()()()、何故言うことを聞かない』って。

 

 

 ほんと馬鹿だわ。俺がいつも思っていたことじゃないか。提督諸氏の思考回路の中で、艦娘が「俺の為に存在している」と考えるのは、必死に生きる艦娘に対する最大限の侮辱ではなかったのか。艦娘をあたかも道具のように扱うことは、提督として、人として許せないことではなかったのか。

 

 ああ、気が済むまで言おう。()()()()()()()()()。兵器でも道具でもない。

 それは転生してから強く思うこと。あれほどまでに可愛くて、感情的で、自分の意思で行動して、信念を持つ彼女らを、俺は精巧なロボットだとかAIだとか、あるいは作り物のキャラクターだとか、そういう機械的・メタ的な次元では一切見れない。ただただかわいくて、何考えてるか分からなくて、お砂糖とスパイスと素敵な何かで出来た、()()()()()()なのだ。

 

 前置きが長くなってしまった。ここまでのことを総合してみよう。

 

 

 

 

 

 俺は今、自分の不運を「人間である艦娘のせい」にしようとした挙句、「上手くいかないのは()()()()()()()()()」と、自分をまるで()()()()()()()であるかの如く扱っているではないか。

 

 

 

 

 

 「()()」。

 これが今の俺にかけられるべき提督諸氏からの罵倒であり、この上ない正論である。

 

 …はは、すまん。シリアスは封印するつもりだったんだが、どうやら無理そうだ。

 

 

 

 明らかに精神が参っている体を引きずって歩く。もういっそ、とか考えだしちゃうあたり、心のポジティヴをネガティヴがみなまで掃討しているらしい。しんどい。何がしんどいって精神もそうだけど、何より白露型の皆様が俺を怪訝そうに見るのがしんどい。あーくそ、なんでいつ見ても一緒に居るのさ君たちかわいいかよ美しいかよ女神かよいやもうほんと仲良さそうで尊みボンバーしてるし俺のこと見てくれるなんて嬉しさで頭がボンバーしそうだしそこに美少女の絡みがあると想像すると最早止まれないしキマシおったてそうだしいやー今日もパンが美味い…―――あれ??俺の本質あんま変わってなくね??

 …まぁ、周囲の目線や心があげる軋んだ悲鳴を無視したり誤魔化したりしつつ、どうにかこうにか、部屋に着いた。

 

 それはもうドアの前にバターンと。スイッチが突然切れたカラクリ人形のように。

 口からは意識することなく、本音がまろびでていた。

 

 

 「あ゛ーーーーーーーーーーーーー………しんど」

 

 

 さっきは茶化したが、至極真面目に、今はしんどい。…しかたのないことである。

 まあ理由についてはさんざん喚き散らしてきたし、今更語ってもくどいだけだけど。

 

 もう何もしたくない。超虚無。「ああああああああ」っていう、テキトーに決めた名前みたいな声が口の端から湧き出る湧き出る。自信をもって言えることだが、ニート時代に培われた無気力精神は、いくらガワが変わっても消えない。性根が腐っているのは自他ともに認めるところだからな。むしろよくここまで隠せているまである。

 というかそれ以上に、緊張感を取り去ったことで、一気に眠気が襲ってきた。まぁ、今んとこ三大欲求どれも満たせてないからな…ボディ的にはいくら食っても腹が減る超燃費の悪い空母ボディだし、睡眠に関しても、1日の自分の行動を振り返って日記にまとめてたりすると、途端に日付回るからなぁ。ここ最近だと、緊張感の糸を張ってることが増えて来たから、それが切れるとホントにすぐ寝てしまう。性根変わらないのに、肉体は割とすぐ変わるんだよな。そのくせパラメータはリセットでしょ??ほんと殺したいあのジジイ。

 

 ―――え??性欲??…たまる一方ですが何か??知ってる??軽巡って超エロいんやで??大井っぱいは非常に眼福だし、川内様や天龍様のふとももは健康的でよきだし、阿賀野型なんてもう男の理想そのものじゃん。軽巡以外から離れてみても、重巡空母戦艦は言うまでもないし、駆逐艦や海防艦ですら、露出を抑えた健康的なエロスに溢れている。そんな子たちが(好感度0とはいえ)視界に入る生活を62日。しかも慰めるのすら選択肢かもしれないと考えると、安易に処理も出来ない。―――なんで俺の理性、擦り減るだけで済んでるんだろうな?

 

 

 こんなくだらないことを考えていたら、本当に瞼が落ちてくる。眠かった時、複雑なことでもくだらないことでも、とにかく何か考えていれば、気づいたら寝てましたー、みたいなことはよくある。まぁ、楽しくなっちゃうとそれはそれで寝られなくなるんだけど…正直今は何考えてもネガティヴな感想しか浮かんでこないし、同時に過去のトラウマまで発掘されちゃって死にたくなってるレベルだし…いやー、かつての3-2、なーんで駆逐艦まともに育ててないのにいけると思ったのかね。事前の準備一切無しに突っ込んでって、駆逐1隻沈めて3隻大破させたの未だに馬鹿だと思ってるからな、過去の俺。

 

 

 

 

 

 『―――執務室、提督より伝令。空母信濃。空母信濃。至急、1号棟3階執務室に来られたし。繰り返す。執務室、提督より伝令』

 

 

 

 

 

 ―――忘れてた。あのクソジジイ、俺の「休息」を容赦なく奪ってくるんだった。

 

 至極当然であるかのように睡眠を取ろうとした俺は、突然の呼び出しに不機嫌な眼を向ける。完璧に忘れてたのか、はたまた考えないようにしていただけなのか―――なんにせよ、今の今まで意識の外にあったのだが…実は本日11月20日、磯風ちゃんと会うことのほかに、もう一個、毎周必ず発生するイベントがあるのだ。それがこの呼び出し。

 

 「―――クッソ、そういえばあったな、これ…」

 

 …毎度毎度、いーい感じのタイミングで変な呼び出しかけるのホントやめろよボケ…。あの提督(クソ野郎)、今確信したが本格的に馬が合わない。やっぱ初対面の時点で一発殴っとけばよかった。好感度がゼロ固定なら、1周くらい提督ブン殴るだけのルートあってもよくない??俺は推奨したい。

 

 くだらないことばかり考える、仕事を拒否する心と体に、俺は力を無理やり入れて、床から起き上がる。

 

 

 「―――ぁ」

 

 

 だがそのとき、態勢をいきなり変えたせいで、体中の血液が突然動かされる嫌な感覚が、急に俺に襲ってきた。不快感と共に、意識が一瞬真っ白になる。

 …もう一度視界が晴れたとき、俺の体には、重だるい諦念と二酸化炭素が、血液に運ばれて、全身にいきわたっていた。

 

 

 「やる気出ねー…」

 

 

 悪態。それもそのはず、この呼び出しイベント、数あるイベントの中でもトップクラスに面白くないイベントなのである。

 

 だって毎周必ず、ということは、7周目を迎えた俺は、同じことをもう6回は言われているわけで、当然()()()()()()()()。それにこれが固定イベントである以上、その内容はまず変わらない。普通のギャルゲーなら間違いなくスキップ連打だ。

 

 しかも、さらに面白くない点として、これだけスキップ推奨のグダイベントが、(7周目)の俺にはある理由でスキップ出来ないのである。…うん、まぁ、ある理由っつーか、ぶっちゃけ俺、このイベントを()()()()()()()()()()んスけどね、はは…。

 

 いやまぁだってさ、選択肢が自由記述っつー空前絶後のクソゲーが、たかだか6周で攻略出来たらそれこそバグでしょ。俺そもそも頭いいほうじゃないし、何より某蜂のSTGより人類の心を壊すこのマゾゲーを、たやすくクリアできるほど経験値を積んでいるわけでもない。それに、その数少ない経験である60日には、5周目(バッドエンド)6周目(発狂中)が含まれている。俺がちゃんと選んだのは実質4回分しかない。流石にもうちょっと選ぶ余地はあるやろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――さて。

 話はずれるが、少しここで、ちょっとメタ的な話をさせていただきたい。

 

 

 

 実は今回の話で、俺はこの呼び出しイベントを()()()()()()()()()()()()()()。―――「えっどうして??お前選択肢について分からないことが多すぎて頭抱えてたやん」という指摘はごもっとも。だって俺基本愚痴ってるもんな。運命に対してシュプレヒコールを並べ立ててるからな。そりゃ何にもわかってないって思うだろうよ。

 じゃあなんで、こう言い切れるのか。

 

 

 

 

 クソジジイがくれたあの()()に、()()()()()()()()()()からである。

 

 

 

 

 

 ―――念のためもう一度説明しておくと、この手帳は、曖昧で風化していく俺の記憶を補完してくれる「記録」を、次のループにも持ち込むことが出来るという、今の俺にとっての最強のマジックアイテムである。AIBOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOと言っても過言ではない。

 

 

 

 それを踏まえて、ちょっと考えて欲しい。

 

 5周目、バッドエンドルートに突入し、好きな人からゴミを見る目を向けられ、無碍に扱われ、絶望のどん底に叩き落されて、生きる気力をなくした。そして次の周で発狂。ここまでは想像できただろうか。正直、このゲームを体感した常人なら、まず間違いなくこうなると思う。どこぞのレベル0や英霊の偽物みたいに、何十年何億年とかいう単位で絶望を耐えきる強靭なメンタルは普通はない。当然ない。ましてや俺なんて、前世は主人公でもなんでもないただのDQNニート。ネット上で煽られたらすぐに反撃する辺り、逆にメンタルは常人より弱いはずなのだ。

 

 

 そんな前世DQNニートでクソ雑魚メンタルで総括してもゴミ虫みたいな俺が、6周目。

 

 

 

 

 

 ―――なんで()()()()()()()()()()()()()()と思いますか??

 

 

 

 

 

 結論から先に言おう、この手帳、記録したことを保持するだけに留まらない、本当に()()()()()()()()だと気づいたのである。

 

 

 前確か俺は、この手帳を「分かりづらいヒント」と形容したはずだ。文字通りに()()()()()()()()()()()()()()()()()ヒント。しかもこれ、その前の周に、この手帳に何かを書き込んでいないと全く意味をなさないヒントなのだ。こういうループゲーの中でもない限り、この手帳がすごいもんだとは気づかないだろう。ほんと回りくどい。

 ―――え、なんで1周目、ちゃんと手帳書いていたのかって??俺が重度のTw○tter民だったからですけど何か??起こった出来事は逐一報告、ふぁぼりつ度外視、報連相はハイパー大事!!!!

 

 そんな「ヒント」を忘却し、叫び疲れ、笑い疲れ、泣き疲れ、蔑まれ疲れて、ゲームを続ける気力を失い、ただ「生かされている」だけで、あとは死を待つだけだった、6周目の11月27日の真夜中。前世、寝る前にスマホを見るような感覚で、無意識のうちに手帳をパラパラとめくっていた俺は、ふと()()()()()()を覚えた。なんというか、こう、何かがおかしいんだけど、何がおかしいんだかわからない、言い知れないモヤモヤみたいなもの。

 

 

 

 その感じた違和感に名前をつけようとして、俺は重要なことに気づいた。

 「この手帳の()()()()」ともいえるぐらい、とんでもなく重要なことに。

 

 

 

 そして、この気づきこそ、俺を正気―――とはいかないまでも、7周目を「発狂していない」と形容できるぐらいのメンタルへと戻した主原因である。いやマジで、嬉しさと喜びで「おおおおおっ」って声が出た。艦これで言えば、大型建造が連続で成功するぐらいか??割とマジで希望の光を幻視したし、不覚にもクソジジイにときめきかけた。2秒で我に返ったけど。あのジジイはマジで殺したいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――感じた違和感の名前は「()()()」。

 ―――なんとこの手帳、ループごとに()()()()()()()()()()()()()()()()()というすぐれものなのである。

 

 

 

 

 

 

 えー、もっと具体的に言いますとですね。

 

 ギャルゲーで言えば、「()()()()()()()()()()()()()()()()()」ということが一目でわかる、ということなんです!!!!!!!素晴らしい!!!!!!素晴らしいぞ手帳君!!!!!!ディ・モールトだッ!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 きっかけは、5周目(バッドエンド)中の絶望に任せた殴り書きが、6周目に見たときにはほとんど消えていたことだった。2周目に感じた違和感は、1周目にたくさん書き込んだ割に、手帳に書かれている量が少なかったことによるもの。

 そこでもう一度、今度は一言一句見逃さぬように手帳を読み込んだら、この手帳にはいくつかのイベントに関することだけが書かれていて、()()()()()()()()()()5()()()()()()()()()()という、恐ろしい事実に気が付いた。それからはもう大フィーバー、超絶サタデーナイト。それまでの発狂とは別種の感情を込めて叫びまくったね。今思えば、あそこで俺は5周目で失くした喜怒哀楽を取り戻したのかもしれない。

 

 

 ―――まあ、捻くれた見方をすれば、それが正しいという保証はどこにもないし、()()()()()()()()()()()がハッキリと分かるわけでもない。そして何よりも、このヒントは、言い換えれば()()()()()()()()()()()()()()どれが「選択肢」か分かる、というだけなのだ。フラグがまだどこかに潜んでいる可能性はまだ残されているし、それを事前に知るすべは俺にはない。

 つまるところ、これは攻略本でも何でもない、単なるヒントの一つに過ぎないのだろう。選択肢が自由記述というところも変わっていないし、このループゲーが空前絶後のクソゲーである、ということが覆せるはずもない。

 

 だがこの発見は、俺にとって、クソゲーの難易度をルナティックからエクストラに落とすぐらいには大きなヒントとなったのだ。デ○マスで言えばマスプラからッマスターになったくらい。10日間の流れがある程度つかめるようになったし、心に少しの余裕が出来た、それだけでもうけもんというやつである。

 ―――あのジジイ、落として上げるなんて器用なこと出来たんだな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 閑話休題。話を元に戻そう。

 

 

 

 

 手帳を見返し、これまでの5周で俺がどんな行動をとって来たかを見る。

 ―――この呼び出しはほぼ確実に、20日の中でも非常に重要なもののはずだ。というかそうであってくれなきゃ困る。これだけ露骨な呼び出しが、ただの何でもない通過イベントと考えるとゾッとする。いや流石に大掛かりすぎませんかね。これがウソなら、さっきまで素晴らしさについて語ったこの手帳すらもフェイクになるやんね。もう何も信じられないわ…みんな死ぬしかないじゃない…。

 

 

 「―――まずは1周目か」

 

 

 ちょっぴり不安になりながらも1周目のページへ。1周目。

 この時の俺は、呼び出しには『きちんと行った』らしい。まあ、ありがちというか、どんだけ胡散臭くても、最初はとりあえず話を聞いてみようと思うのは当然の心理状態じゃない??いかに優秀なレイヴンでも、情報がなかったら「騙して悪いが」かどうかすらも判断できないだろうし。

 

 

 「はは、純粋じゃないか、俺」

 

 

 ―――つーか、よく考えたら、1周目の俺って()()()()()()()()()()()()()か。そりゃ純粋なゲーマー精神のまんまだよなぁ。絶望を知らないんだから。

 

 

 「………………」

 

 

 怖くなってページをめくる。2周目。

 この時の俺は『無視した』らしい。当然だろう、俺は2周目で1()()()()()()()()()()()()()を徹底したんだから。1周目で時間通りに行ったものには遅刻するかバックレるかの2択。マセガキ信濃くん爆誕である。ベーコンムシ○ムシャくんばりのネーミングセンス。しかも内容最悪だなオイ。

 

 

 

 ―――。

 さらにページを先へ送る。ここらへんからもう無心。 

 

 3周目。この時の俺は選択肢をつぶしに行ったようだ。『10分遅刻』。

 4周目。3周目の調整期間か??時間を変えただけの『25分遅刻』。

 5周目(バッドエンド)。―――読めない。

 6周目(発狂中)。判別不能。まだ発狂中だったから、意味不明な単語の羅列だ。ただ、この時の俺がどういう行動をとったのかは、悲しいけど容易に想像できる。

 

 

 

 俺はそのまま、空白の7周目のページまで紙を手繰ると、そこに栞を挟んで手帳を閉じた。

 そしてゆっくりと目を閉じる。

 

 

 

 はてさて7周目。6周目のリベンジをかけたこの1周、どう行動したもんか。

 そもそも、今の俺に分かっていることは、()()()()()()()()ということだけだ。記述欄がボーンと与えられて、『この問題についてはここに書きなさい』って言われているようなもん。まるで心理学のテストだ。過去問とか授業とかがないぶん、こちらのほうが圧倒的にタチが悪いけど。

 しかも遅刻に「何分か」がからんでいる時点で、最早考える時間すらもない。なんでこんなにシビアなんだろうねこのゲーム。製作者頭おかしいわ。

 

 

 

 「―――…さて、と」

 

 

 

 

 

 少し迷って、俺は目を開けた。

 

 

 

 

 

 

 




【11月21日へどのように進むか??】





【1.1周目と同じ選択をする】

【2.2周目と同じ選択をする】

【3.3周目と同じ選択をする】

【4.4周目と同じ選択をする】

【5.それまでと全く違う選択をする】

【6.6周目と同じ選択をする】

【7.進まない】

【8.私が神だ】



※この選択は運です。どれを正解にするかは私が神なので話の流れで決めます。
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