早いところ助けが来るか、あるいは
……こっそり吹き飛ばした志村転弧と黒霧の方にも飛ばしてるのは秘密ね。霧の所にばっかり当たってるからほとんど効果ないけど。
と言うか脳無って本当にタフだね。普通ここまでやれば死ぬし、ここまでやらなくても死ぬよ? 超再生で再生する分のエネルギーはどこから持ってきてるんだか。……オールマイトがあの威力を出すのになんでか作用反作用の法則が仕事をしていないで地面が割れないとか、八百万さんが脂肪を変換して別の分子やら原子やらに変換して配列を変えている筈なのに明らかに体重よりも重い物を作れていたりするのと同じ感じかな? 変換の過程で増幅してるのかも。
そうなると、あまり溜めていられない私は体力面で凄く不利だね。やっぱり身体は資本だからもっと鍛えなくちゃ。
「……おうデク、何やってんだお前」
「痛みを感じない上に何回斬り捨てても再生してオールマイト並みの威力で殴ろうとして来るから殴るために必要な手足が再生されないように斬り落とし続けてるの。あ、それとあっちの方に手の人と靄の人を飛ばしておいたから適当に縛り上げるなり両腕両脚を爆破して焼き潰して二度と立ったり歩いたりできないようにするなり好きにして」
「お前が俺をどういう目で見てるのかよく分かったよ」
「かっちゃんの事だから『他の奴助けたいんだったら一人で行け。俺はあのワープゲートぶっ殺す』とか切島君に言ってそうな気がしたんだけど」
「うっはお前爆豪完璧に読まれてんじゃねぇかよ!」
「うっせクソ髪殺すぞ!」
「かっちゃん。こういう場でだったらまだいいけど、せめてヒーロー免許の試験とか仮免許の試験とかではもうちょっと猫かぶってね。落とされちゃうよ?」
「うっせ!うっせ!」
そうやって反発しながらもちゃんと守ろうとしてくれるかっちゃんが好き。かっちゃんは本当にかっこいいし可愛いよね。だからほんと、引き離した奴は許せないよね。殺さないけど。殺しちゃったら怒られるし。最悪捕まって刑務所だ。割に合わない。
そんな割に合わないことをするくらいなら、ちょっと我慢して今まで通り暮らして行った方がまだましだ。ちょっと手が滑るくらいは人間誰しもあることだから仕方ないよね。個性を使わず敵に対して偶然怪我を負わせることは一応法的にはぎりぎりグレーな範囲内ではあるけれどセーフだし。個性使ってたらアウトだけど。
それに、かっちゃんの方も黒霧と志村転弧を縛り上げ始めている。黒霧の方は正直どうやって縛っても転移されれば逃げられてしまうからかなり適当だけど、志村転弧の方は両掌を合わせてそれをその上から縛ると言う形をとっている。五指が全て触れた物を崩壊させる個性なんだから、そうやっておくのは当たり前だよね。
本当にしっかりと対策するなら指を何本か根元から毟り取っておくところなんだけど、それはヒーロー的にはやり過ぎになってしまう。腱だけ切っておけばいいかもしれないけれど、私のこれだと綺麗に斬りすぎて切断面をくっつけたら普通にくっついてしまう。砂粒でも入れておきたいけど、この距離だと流石にね。それに近くにかっちゃんが居るから、万が一にも間違えたら大変なことになっちゃう可能性もなくはない。
そういうことを考えると、ここでやっちゃうのは得策じゃないよね。人前でやるのはリスクがねぇ……。
「私が来……た?」
「あ、オールマイト先生」
これはいったいどういったことだろうか。飯田少年の話では凄まじいピンチだと言う事だったが、この場は既に死屍累々。相澤君は確かに腕をへし折られているが、気絶もしていないように見える。
そして、緑谷少女が凄まじい勢いで筋骨隆々だったらしい敵をひたすら切り裂き続けているし、爆豪少年は……
「俺が『怪しい動きをした』と判断したら爆破する! ! 今お前靄少し動かしたろう! 何をする気だったんだお前! 怪しいな! 爆破だァ!」
ズドンッ!!
「! お前今靄を散らしたな!さてはお前他の奴の所に転移して人質を取ったりするつもりだったろう! 怪しいな! 爆破だァ!」
ズドォンッ!!
「! お前今身体を僅かに痙攣させたな! さてはどこかに繋いで気が緩んで身体を動かしたな! 怪しいな! 爆破だァ!」
ズドォォンッ!!
「! お前靄にしてた身体を元に戻したな! 何する気だお前! 怪しいな! 爆破だァ!」
ドゴォォンッ!!
「! お前今戻した身体をまた靄にしたな! ワープゲートに使える靄を増やして何考えてんだ! 怪しいな! 爆破だァ!」
ズドゴォォンッ!!
「! お前今」
「おいやめろ爆豪! そいつ死んじまうぞ!」
「こいつが怪しい動きをしてんのが悪ぃ! 今だって見てみろ! 靄がロープを覆ってんじゃねぇか! これでロープと自分の身体の間にゲートを作って縄抜けする気に違いねぇ! 怪しいだろ! 有言実行だ! 爆破しねぇと!」
「靄が出てくる中心がそいつなんだからそりゃロープが靄に包まれるくらいあるだろ!?」
「可能性としてあるかもしれないだろうが! 事前に潰せる可能性を潰しておかないで何がヒーローだ! それとクソ髪! そっちの手まみれ野郎はしっかり押さえてんだろうな! 手に触るとボロボロに崩れるみてぇだから絶対触んなよ! 死ぬぞ!」
「……お、おう」
「それはそれとして怪しいから爆破だァ!」
爆音が響き、爆風が広がる。何だろうか、この二人がやってること
思えばこの二人は私の初授業の時から明らかに対人戦闘をしっかりと見据えたような行動をとっていた。不意打ち、奇襲、罠と使えるものを何でも使って勝ちを取りに行く。ただ、やってる行為自体は間違いなくできる限り被害を小さくするため、あるいは目的を達成するための物であることは間違いない。
……そもそも、個性を人に使うことなど早々無いだろう。特に爆豪少年のような個性では、どこまでやれば死んでしまうかとか、そういうのはよくわからないまま感覚で使ってきているのではないだろうか。また、近くに居たのが緑谷少女だけだったせいか人間の身体の頑丈さというものを誤解している可能性もある。
……いかん、止めねば。考えてる場合じゃなかったな!