第一種目が始まってすぐ、私は第一関門と第二関門を一跳びして第三関門へと到達していた。ちゃんと走り抜けたから問題は無いはずだよね。どうも殆どは気付いてすらいないみたいだけど。
大体1kmくらいずつで関門が待ち構えている以上、この第三関門が最後だろう。そしてここはとてもいい場所だ。
まず、平地だ。そして広い。邪魔なものが埋まってこそいるけれど、それは地面に震脚を叩きこんでその振動と衝撃で地上に露出させ、全部しまってしまえばいい。
それが終わったら、あとは簡単。ちゃんと誰もが見せ場を作れるように、全員がここに到着するまで足止めを続ける。そして全員が揃ったら、やっと本番って感じかな?
殺意の結界はちょっとまずいので、覇気と闘気の混合で結界を作る。ただ、耐えられて先に行かれちゃっても困るからこの場の半分より
あれ、えっと、Hunter×Hunterの念と似たような感じ。知らない人にとって悪意のあるそれを受け続けるのは吹雪の中で防寒対策全く無しで放り出されるのと同じ、みたいなやつ。ああなるらしい。まだ対策ができなかった頃のかっちゃんが言ってたから多分間違いない。
ちなみに私は念能力は使えない。気功があるから問題ないんだけど、ちょっと憧れるよね、ああいうのも。
念能力は使えなくても、今の私の力で先頭付近を進んでいる人達の足止めに成功している。闘気と覇気の二つに飲まれて足止めになっている人達が大半だけれど、一部はそれを越えて殺気の結界にまで入り込んでくる。流石にそこで止まるのだけれど、呼吸まで止まりそうになっている何人かはかっちゃんが引きずり出してくれるから大丈夫そうだ。
遠距離から攻撃してくる人もいるけど、大体は気当たりと指を弾いた時の衝撃波で消し飛ばせる。近接系の個性持ちは近付こうとして近付けず、遠距離から攻撃できる個性持ちは反撃の指弾きによる衝撃波と飛ばした空気の塊で打ち崩される。まあ、もう少し待ってね、悪いけど。
指弾きによる衝撃波や空気弾は距離が離れれば離れるほど急速に威力が落ちる。調整が難しいけど……あっちにかっちゃんがいるから大分楽だね。かっちゃんなら衝撃波も空気弾も割と簡単に打ち消してくれるし、不測の事態があってもかっちゃんなら大丈夫。最悪空間爆砕で一時的に空間同士の繋がりを爆砕して対物理においては最強クラスの盾を作れるしね。一秒の百分の一も持たないらしいけど。
さて、まだ来てない人達はどうやら失格になってるみたいだし、そろそろ始めようかな。
デクからの信頼が重すぎて笑えない。覇気と闘気の結界で詰まっている奴はまだしも、殺気の結界で詰まられると俺が助けに行かないと最悪死ぬから行かないわけにはいかないし、ちょこちょこ飛んでいく衝撃波や空気弾も威力を見て高すぎだと思ったら俺がある程度相殺あるいは減衰させてやらないと頭蓋骨ごと脳味噌まで砕けて死んじまう。人間の限界を勘違いしてないかあいつ。
ただ、こっからどうするかが問題だ。半分野郎は殺気の結界に触れてしばらくは使い物にならねえだろう。さっきから首やら胸やらに触れているから少し前に比べていくらかましになったと思うが、多分あれだな、首を切り落とされたり頭をカチ割られたり心臓を貫かれたり全身を微塵にされたり胴体を両断されたりしたんだろうな。そういうのが見えるってのはおかしいことじゃないが、心が弱いなこいつら。ヒーロー目指すんだったらこれからの成長に期待、って感じか。
「……っか、はぁ……俺は、生きてる……のか……?」
「起きんのが遅えよ半分野郎。あれに触れてどんな死に方したのかは知ったこっちゃねえがさっさと立って構えろ」
「……爆豪……?」
「立て。構えろ。
そこまで言ってもまだぼんやりしている半分野郎に、デクから弱めの衝撃弾が飛んできた。普段だったら食らったところでほとんど効果は無いと思うが、今の半分野郎は気が抜けている。絶体絶命の状況から抜け出すことに成功した直後の小動物といった感じだ。
そんな小動物が、デクの指から放たれた衝撃波を纏って拡散することを防ぎながら直進してくる空気弾なんてものの直撃を受けたらどうなるか。考えるまでもねぇ。消し飛ぶことこそないものの、かなりのダメージは負うだろうよ。
つーかもうあれだ、この重圧と『この程度超えられないで先に進めると思うな人間共』とか言いそうな雰囲気。ゲームで言うラスボスとか魔王とかそういうレベルだ。
ここからいったい何が来る? デクの性格と状況からしてまずはふるい落としが来るはずだ。その内容は?
少なくとも、ある程度簡単に対処できる奴のはずだ。同時に防御するにしても回避するにしても何らかの形で妨害あるいは難点がある方法だろう。同時に全体に効果があるものだと思われる。考えろ。
そして、デクが少しずつ、しかし大きく息を吸い込んでいることに気付く。となれば対処は簡単だ。
「おい、半分野郎!壁出せ壁!」
「は? なに言って……」
「いいから早く出せ!」
そう叫んだ直後にデクが動きを止める。この状況で思い切り息を吸い終えたなら、やることは一つ。全力で叫ぶ。それしかないだろう。
氷でできた壁が反り立つ。その後ろに飛び込んで両手を打ち鳴らし、同時に指向性を持たせた爆音を響かせる。デクの声ですでにひび割れていた氷の壁を爆音と衝撃で砕いて声を散らし、冷やされた大気を一気に熱して更に爆音を響かせる。かなり疲れるが被害はかなり抑えられただろう。
だが気を抜いている暇はない。音より早く近づいてきたデクが半分野郎をコースから弾き出す。コースアウトは失格だ。高速で移動しながら手近な相手を投げ、弾き、浮かせ、吹き飛ばして次々にコースアウトさせていく。投げられたりするのがわかっていれば俺のように空中で踏みとどまることもできるだろうが、ほとんどの奴はデクの速度に眼が追いついていない。ただただ投げ飛ばされるだけの無様なカカシだ。
俺はなんとか追いついている。と言っても明らかに加減したデクが俺に向かってきているのを察知したらそこに手を置いて流したり爆破して移動したりという対応しかできていないが、それでも全く何もできないまま吹き飛ばされている奴よりいくらかましだろう。
俺の見る限り何とか対応できているのは、吹き飛ばされても場外になる前に氷で止まれる半分野郎くらいだ。その他の奴らは防御ごと吹き飛ばされ、止まろうとしても止まり切れず、ほぼ全員が場外に叩きだされている。……これはもしかしたら、マジで今年の雄英体育祭は―――
「油断だね?」
「しまっ―――」
……後から聞いた話だが、この時俺は側頭部を踵で蹴り飛ばされ、何十回転もしながらコース横に植えられていた樹に叩きつけられたらしい。そして俺の邪魔がなくなったデクは凄まじい速度で全体を蹂躙し、本当に一学年全員をコースアウトさせて失格させてしまったらしい。
失格と言うのはそこから先の体育祭に参加する権利を失うという事。つまり、その時点でデクしか参加者がいなくなたために雄英体育祭は前代未聞の第一種目にて全ての決着がつくという珍事が起きてしまったようだ。まあ、大体の奴が気絶して最低でも数時間は起きれなかったんだから仕方ないとは思うけどな。なお俺は除く。
あと、デクは金輪際体育祭に出場禁止となった。当然の措置だ。
これで今回の連続投稿はおしまいになります。次回の投稿はまた切りの良い所まで書き終えたらになります。