私が中学生になる頃には、かっちゃんノートが200ほど溜まった。かっちゃんとも仲良くやれているし、順風満帆。かっちゃんの物ばかり並んでいるとおかしいから、一応有名なヒーローの個性や戦い方やその他諸々もノートにしてその中にかっちゃんノートを一冊だけ紛れさせておいた。2000冊は書いたんだけど、ごめんね母さん。
あと、ほんとにごめんねかっちゃん。『知識』を大量に上げた時に手に入れた中に混じってた興奮剤と意識をぼんやりさせる薬、盛っちゃって。中学生だし、精通だって来てるのを知ってるし、と言うかわざわざこの為だけに『個性』の項目から鑑定能力まで身に付けたからね。そういうことに興味を持ち始めてるのも、私が抱きついた時に当たる胸に少しドキッとしちゃってたのも、知ってる。
そしてそういう状況で興奮剤と意識をぼんやりさせる……理性を効かなくする薬なんて使ったらどうなるかなんて火を見るより明らかなんだけど、使っちゃった。ごめんね?
でも、流石に初めて同士で抜かずの15回は大分多いと思うんだよね。大分と言うか、かなり。凄く。とても。私は大丈夫だったけど、かっちゃんの身体が少し心配。私も疲れたけど、かっちゃんは疲れたを通り越して衰弱までいっちゃってるような気もするし。
記憶は多分残るだろうけど、かっちゃんはあれで責任感は割と強いからかなり悩んでくれると思う。だから私は腰が治ったら早めにこの部屋を片付けて換気して、気絶してるかっちゃんをベッドに……あ、母さんが帰ってくる前にシーツや下着も何とかしないと。どろどろだし。
お風呂にも入らなくちゃいけないんだけど……かっちゃんの印象に残るようにこのままかっちゃんに組み敷かれたままにしておきたいなぁ……母さんがここに来る前に片付けておかないと駄目っぽいから片付けるけどね。残念だけど。
流石にこれが母さんに見られたら洒落にならないし、最後の方の薬が切れかかったときになんと言うかすごい衝撃を受けたような顔をしていたから現状認識そのものは終わってるみたいだしね。
かっちゃんを破滅させちゃうのは本意じゃない。この年で性犯罪者扱いされるのは、はっきり言ってまずい筈だ。私がなにも言わなければ大丈夫だとは思うけど、どうやらかなりショックは受けているみたいだし変に暴走されちゃうと困る。どうしようかなぁ?
……あ、そっか。起きてもらって、それからちゃんと話を……できるかな? 大分精神が不安定みたいだし、思考の表層部分を読んでみたら憧れの一つを穢してしまったと言う衝撃もあるようだし、ここでしっかりと扱えばかっちゃんと離れないようにできるかもしれない。
がんばろ。うん。
わからない。
なんでこうなったか。わかるようでわからない。
思考の速度は凄まじいと言う認識はあるが、その思考が全く定まらない。
ただ確実なのは。
「……か……ちゃん…………」
俺が、取り返しのつかないことをしてしまったと言う事実だけは、確かなことだ。
お互いにおよそなんでもできるもの同士で、勉強会をすることは多かった。運動においても大人以外で個性を使わないで俺についてこれる、あるいは俺に教えることのできる存在は俺の周りにはデクだけだった。
話し合いでもついてこれるのはお互いだけ。俺は様々なことで俺とデクを特別な存在として扱っていた。それこそ、俺とデクが一番凄くて、俺達以外は凄くない、とすら思っていた。
たからこそ、俺が何でこんなことをしたのかわからない。他の奴等が人間の女ではなく動物の牝にしか見えない中で、唯一俺と同じ人間の女に見える奴だ。大切にしなければいけない筈なのに、突然我慢ができなくなった。
普通に勉強していて、唇に視線が吸い寄せられ、胸元から立ち上るようなデクの臭いに意識が持ってかれて、気付いたらデクを押し倒していた。
唇を奪った覚えがある。首筋に噛みついたような記憶がある。服を破り捨てたような手応えがあった。そして、デクを穢し尽くした感覚があった。
夢じゃあなかった。幻覚でもなかった。現実として、俺はとんでもないことをしてしまった。
俺はヒーローを目指していた。きっと、ヒーローになった俺のとなりには、いつだってこいつが居るんだと思っていた。
だが、こんな俺が、そんなことを夢に見ていいのか。こんなことをした俺が、夢を追っていいのか。わからなくなった。人間を守るはずのヒーローを目指していた俺が、テレビ越しに見る人間ではなく直接見ることができる中では唯一認識することができる人間すら守れない、それどころか自分から傷付けておいて、ヒーローを目指すことが許されるのか。
なにもわからなくなった。
目の前が真っ暗になった。
俺がどうすればいいのか。
俺はどうするべきなのか。
底無し沼のような闇の中に意識が沈み込んでいく。全てが消えていくような絶望感の中、俺はゆっくりと倒れ伏していった。
そして意識を取り戻した時、俺はデクの顔を正面から見つめていた。
「……起きた?」
「……悪ぃ」
一番顔向けできない相手が目の前にいて、俺はそれ以外に何も言えなくなっていた。何より、何も変わらない態度でいられるのが一番きつい。
デクはゆっくりと俺の髪を撫でる。いつもなら振り払うところだが、どうにも振り払う気になれない。
「……私は、かっちゃんでよかったと思ってるよ」
いきなりすぎてちょっと驚いたけど、と笑いながら、デクは俺にそう言った。こいつは本当のことを言わないことはあっても、嘘を言うことはない。だから、少なくともそう思っていると言うのは本当なんだろう。
嫌なんだったら膝枕なんてしていないだろうし、眠っている俺を本気で殺しにかかってもおかしくない。むしろ、最中まで持っていけるかどうかも怪しい。こいつはある意味人間じゃないし。
「……次からは、もう少し優しくしてくれると嬉しいかな」
「……悪ぃ」
俺の口から出たのは、さっきと変わらない一言だけ。だが、なんでか心は軽くなっていた。
緑谷出久、14歳。爆豪勝己と結ばれる。
偶然にも、原作にてオールマイトと出会った日と同じ日の事だった。