わたおれヒロアカ7
雄英に向かって走り出す。電車? バス? しゃらくさい。このくらいの距離なら走った方がいい。遅れるわけでもないし、これからは雄英までの登校時間分訓練時間が短くなるんだから、訓練できるところで訓練しないといけない。
幸い私の足は電車より早い。家から雄英まで5分とかからないし、個性を使っていないから全く問題なく到着できる。ちなみに地下鉄を使うと徒歩を含めて40分くらいで到着する。
そして到着した教室、ヒーロー科1-Aでは、入試の時にも見かけた人がそこそこ居た。目につくところだと、眼鏡で足が太くて個性が『エンジン』という足が速くなる効果を持ったヒーロー一家の末っ子、ターボヒーローインゲニウムこと飯田天晴の弟で、生真面目すぎる上に冗談が通じない真面目一直線。誕生日は8月22日、身長179cm体重76±2kg、血液型A型……個性である『エンジン』の主な燃料は100%オレンジジュース、炭酸系ではエンストしてしまうが、長距離走ならばかなりの速度を出すことができ、ついでに段階を踏まずに一気にトルクを上げることで10秒程度の超加速ができるがかわりにエンストしてしまう、飯田天哉と言う少年がそこに居た。
今はまだこのくらいしか調べていないけれど、体育祭までにゆっくりしっかり調べていこう。
「おや、君は……」
「早いね~。私、緑谷出久。よろしく、飯田くん」
「おや、ボ……俺は自己紹介をしたかな?」
「してないけど、知ってるよ。結構有名だからね。インゲニウムの弟さんと、あとエンデヴァーの息子さんが、今年雄英に入れる歳になるって。あとはちょっと調べれば……ねぇ?」
まあ、実のところちょっと違法なこともやってるんだけど、私の場合は日本に居るときは居るだけで違法だから仕方ない。個性を使ってはいけないという法律があるけれど、私の個性は常時発動型で自分の意思ではどうしようもない物だってある。だからこそ基本的には『個性で人を傷つけないこと』が法律で決められているんだけれど、使うだけでも原則禁止って言われてるからね。傷つける個性こそ無いけれど、個性を使って傷つけることはできなくもない。胸にしまっちゃえば、窒息させて殺すことくらいならできるしね。
まあ、やらないけどね。やったところで正直あまり意味がないし、なによりリスクとリターンの釣り合いがまるでとれていない。正当防衛として相手が明らかにこちらを殺そうとしていてかつ個性を使って来ていれば私が素の身体能力で半死半生にまで追い込んでも情状酌量だとかそういう面倒なのでどうとでもなるだろうし、そもそも私の倉庫は私以外出し入れできないからしまいっぱなしにしておけばバレることはまず無いんだけどね。
殺すこと自体に忌避感は……なくはない、って程度かな? それが私やかっちゃんのために必要なら、その場でリスクとリターン計算してリターンがリスクを大幅に上回ればまあやるかな? ってくらい。
「おお!兄のことを知っているのかい?」
「勿論。インゲニウムと言えば、東京に事務所をもって65人もの相棒を雇っている大人気ヒーローなんだから、ヒーローのことが好きなんだったら知らない人の方が少ないんじゃないかな?」
私の場合はヒーローが好きだから知っている訳じゃなくて、戸籍から同年代の人を割り出してその個性と家族構成を調べあげたから知ってるだけなんだけど、まあ私がヒーロー好きだとは言ってないから別にいいか。嘘は言ってないし。
それに、知っていることも言ったことも事実なんだからおべっかを使っている訳じゃない。単に事実がそうだってだけだし、コミュニケーションにはこういうのも大事だ。相手を知る努力を怠るのは良くないことだからね。
でも、そうして話をしているとどうしてかかっちゃんが少し不機嫌になっているように見える。どうしてかなー不思議だなー何か嫌な事でもあったのかなー。
まあそんなこんながあって、なんでか突然個性把握テストらしい。なんなんだろうねいきなり。
個性把握テスト。他のクラスが入学式に参加している中でいきなりこれってのは中々驚かされたが、それがこの学校のやり方だってんならそれに合わせてやればいい。
「緑谷。中学の時ソフトボール投げ何mだった」
「1338091mです」
「……個性無しでだぞ」
「個性無しでですけど」
「……」
いや、これマジな話なんだよな。本当はもっと行くらしいが、一回目に投げたボールが一瞬で空の彼方に消え去った挙句に雲に大穴開けて赤熱化して大気摩擦で燃え尽きたから手抜きした結果それってのがまた頭おかしい。
「……個性を使ったらどうなる?」
「変わらないと思いますよ? ただ、以前は本気でやったら大気圏を抜ける前に燃え尽きちゃったので手を抜いた覚えがありますけど」
「……じゃあ爆豪。お前は中学のソフトボール投げ、記録いくつだった」
「703m」
「…………個性は」
「使ってねえ」
「………………じゃあまあ、個性を使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。思いっきりな」
言葉の前の頭が痛いって感じのやつが気になったが、まあデクの周りだったらよくあることだ。
俺の個性は『爆発』。手の汗腺から爆発物を出して、それを爆発させることができる。
で、その爆発の威力はある程度限度があるんだが、それに関してデクと一緒に考えて色々とやってみた。
瞬間的な爆発の威力を高めるために、まず爆発物を一度に出すことができる量の増加と、その爆発に耐えられる掌を作るためにデクを相手にミット受け。掌の皮がねじ切れるんじゃないかってくらいに叩き込まれたお蔭で大概の爆発には耐えられるようになった。
それから爆発物そのものの改良。通常のものだけではなく、音は凄いが光も煙も出ないもの、光と音はでかいが威力はそうでもないもの、光は出ないが煙がかなり出るものなど、色々と出せるようにした。
今回使うのは、ひたすらに爆発の威力だけを求めたもの。その爆風をボールに乗せてやれば───
「死ねや!!」
……三倍は固い。
思った通り、出た結果は2311m。予想より少し飛んだが……今の感覚だともうちょい行けるな。
よし、やっか。