その後も特に何か起きるわけでもなく過ごしたぞ。強いて言うなら白雪が青森にある星伽神社に行った事と、ジャンヌが武偵高に来たことだな。
「はぁ、風雨。俺の受けてる依頼変わってくれないか?」
今は放課後、キンジと一緒に歩いているぞ。
「嫌だ、アリアと一緒に依頼なんかしたくないな。面倒くせえもん。」
俺がそう言うと隣にいたキンジは深いため息をついたな。まあがんばれ!
「明日から二週間も住み込みで仕事しないといけねえんだぞ?」
理子の計画で紅鳴館にある十字架を取りにいくんだろ?上手くやれよ?
「頑張ってねー!」
さて、土足に履き替えて帰るとす、何か手紙が入ってるな。何だ?
「どうした風雨?手紙?誰かのイタズラじゃねえか?」
「だといいんだけどな。」
中身を拝借っと、ははん、なるほどねぇ。
「……。」
「お、おい風雨!?何手紙を破いているんだよ!?何が書いてあったんだよ!?」
「ただのイタズラだから腹が立ったから破った。キンジ、俺先に帰ってるからな。」
「お、おう。」
土足に履き替えて俺は止めてあった車に乗って寮の部屋に帰る。手紙の内容、これは他人には言えねえな。
「白雪は出掛けてる、セーラも多分出掛けてるな。」
問題はジャンヌだな、俺の部屋にいない事を祈るぞ。
「服装はこのまんまでいいな、おっ、着いたな。」
考えながら車を走らせてたらいつの間にか寮の前に来てたな。
「部屋に誰もいませんよーに。」
車から降りて、ダッシュで部屋に向かう。玄関開けたら俺以外の靴は、ありましたね。
「おっ、帰ったか山本。」
ジャンヌがソファーで本を読んでいたな。好都合だ、そのまま読んでいてくれよ?
「ジャンヌ、ちょっとしたら出掛けてくるからな。」
俺はジャンヌにそう言って自分専用の部屋に入る。出し惜しみは無しでフル装備でいかねえとな。
「よし、忘れ物はねえな。」
手榴弾は持ったし、刀も持った。弓矢は置いていこう、多分効かねえだろ。
「よし、行ってくる。」
「待て山本。お前何処に行くつもりだ?」
ジャンヌの方を向けば不安そうな表情をしていた。あれ?バレたか?
「ちょっと依頼でな、まあすぐに帰ってくる。」
「……嘘だな、山本は嘘を付くとき耳を動かすからな。」
マジか、そんな細かい所まで見てるのかよジャンヌ。
「正直に言ってくれ。まさかブラドとた「すまん!」うっ!!」
ジャンヌにドイツの時にも使った薬を顔に投げる。ごめんな、帰ったら土下座して謝るから許してくれ。
「さて、死地へと向かいますか。」
何処かの広い創庫
「ここだな、奴が指定してきた場所。」
時間は夜、にしてもジャンヌには申し訳ねえ事をしたな本当に。
「そろそろ来る頃ッ!!」
何だ?この尋常じゃない殺気は!?全身が総毛立つぞこれ!
「これはこれは、ちゃんと時間通りに来てくれましたね。遅刻をしないのは偉いですよ。」
「小夜鳴先生、あんただったのか。」
小夜鳴徹、うちの武偵高の救護科の先生だ。
「さて、ここに山本君を呼んだのは訳がありましてね。あの出来損ないのグズに加担する前に殺そうと思ったんですよ。」
「出来損ない?理子の事か?」
「おや、これだけの情報で分かったって事はあの出来損ないの過去を聞いたか調べた訳ですね。勉強熱心で感心です。」
本当にこいつは俺の知ってる小夜鳴先生なのか?気配が全然違うぞ?
まるで人格が入れ替わったような。
「さて、山本君。ここで一つ授業をしましょう。」
こいつは今行動不能にさせた方がいい。けど、動いたら殺される!
「遺伝子とは、気まぐれなものです。父と母、それぞれの長所が遺伝すれば有能な子、それぞれの短所が遺伝すれば無能な子になります。」
「まさか、理子は遺伝の
「その通りです。私は10年前にブラドに依頼されて、出来損ない、リュパン4世のDNAを調べた事があります。」
小夜鳴は携帯を取り出して何かを見てるな。一体何を見てやがる?片耳にイヤホンまで付けて?表情が興奮しているように見えるぞ。
「リュパン家の血を引きながらあの出来損ないは、
そう言う小夜鳴は、クククと笑っていた。本当にこいつ携帯で何を見てやがる?
「リュパン4世は
小夜鳴は、何を言ってやがる?俺が鬼?いや今1番聞きたいのは。
「俺が出来損ないだと?」
「おや、今は記憶を失っているんでしたね。実感が無いのも無理はないです。」
こいつも、俺の記憶を失っている事に気付いているのか?
「山本君、人間はね、遺伝子で決まるんですよ。優秀な遺伝子を持たない人間は、いくら努力を積んでも、すぐ限界を迎えるのです。」
「科学で人の価値を決めんじゃねえよ。」
「決まるものなのです。現に明日からあの無能は遠山君と神崎さんをつれて十字架を取り返しに来ます。」
理子の計画を知ってやがるのか!!
「さっきから携帯で何を見て聞いてやがる?答えろ小夜鳴!!」
「あの無能の絶望している表情を見て声を聞いているんです。本人がいればもっといいんですけどね、今夜はこれで充分です。」
理子の絶望している表情や声?そんなもの見て聞いて何になるんだ!?
「疑問ですよね?何故なら彼を呼ぶには絶望が必要なんです。今日はここに来るまでに数人の女性の絶望した表情や声を見て聞いて来ましたからね。」
「このゲス野郎が。」
「山本君、よく見ていて下さいよ?私は人に見られている方が、
見る?それにしてもこの感じ、何処かで見たことがあるような!
「まさか、ヒステリアモード!」
「遠山家でもないのによく知ってますね。そうです、これで彼が呼べます。」
遠山家以外にも使える奴がいるのかよ!!もし、それが増えれば、とんでもねぇ事になる!!
「さて、私が呼ぼうとしている方は誰かわかりますか?ヒントは『吸血』です。このくらいのヒントを出せば出来損ないの山本君でも分かるでしょう?」
吸血、そういえば武藤が言ってたな。小夜鳴先生が間借りしていた研究室から、フラフラになって出てきた女子がいたと。
「ブラド、吸血、鬼、ドラキュラ伯爵か!ルーマニアに実在した人物。またの名をワラキアの串刺し公、ブラド・ツェペシュ!」
「ご名答です。山本君、しはじの別れです。さあ、かれ、が、来たぞ!!」
ッ!!小夜鳴の雰囲気が更に変わっていく!!
「最後に山本君の疑問にお答えしましょう、私はね、動物虐待でも愉悦できる加虐嗜好の持ち主なんですよ。」
小夜鳴がそこまで言った時、小夜鳴が着ていた洒落なスーツが紙みたいに破け、その下から出てきた肌は赤褐色に変色していく。
「へ、変身!?」
肩や腕の筋肉は不気味な音を立てて雄牛のように盛り上がっていく。露出した脚はケモノのように毛むくじゃらだ。
「はは、嘘だろ?」
こんなバケモノが身近にいたのかよ。しかもジャンヌが描いた絵はかなり下手くそだったけど、嘘じゃなかったのかよ。嘘だったらどんなに良かったことか。
「
「お前がブラドか。」
くそっ、恐怖で足がすくむ。逃げるなよ俺、逃げたら白雪達までブラドに襲われる!!
「あの手紙を見て逃げないでここに来たのは褒めてやろう、だがてめえも4世と同じ出来損ないだ。」
「どうかな?科学で人の価値を決めつけるてめえらはボコボコにしてやる。遺伝子だけが人間の価値じゃねえ!」
逃げるな、立ち向かえ。たとえ絶対に勝てない相手でも逃げるな。立ち向かえ俺!!
「ほぉ?だったらてめえが証明してみせろ小鬼が!!」