「ねえお父さん、お母さん。僕はね、大きくなったらヒーローみたいな人になるんだ!」
何だ?俺は夢でも見ているのか?何故目の前に小さい頃の俺と男性と女性がいるんだ?
「それでね!それでね!皆を僕が守るんだ!」
小さい頃の俺の言葉を聞いて男性と女性は微笑んでるな。まさか、あの二人が俺の父さんと母さん!?
「っ!!あがっ!!」
頭が割れるように痛てえ!!意識が飛びそうだ、けど飛ばすわけにはいかない!
「行きなさい風雨、後ろを振り返らず真っ直ぐ走るのよ!」
こ、れは!そうだ、あれは確か!
「で、ても。お父さんとお母さんは!?」
「……俺達なら大丈夫だ、向かってくる敵を倒してくるだけだよ。」
「駄目だよお父さん!!数百人もいるんだよ!?そんなことしたらお父さんやお母さんは!!」
そうだ、俺が無能な存在を知った奴等が俺を抹消しに来たんだ。
「大丈夫よ風雨、あんな奴等にお父さんとお母さんは負けないわよ。」
「そういうことだ、風雨。お前は言ったな、皆を守るヒーローになりたいと。だったらここに記してある場所に行きなさい。」
「さあ!走るのよ風雨!決して振り返らないでね!」
「わあああああああ!!!」
父さんと母さんはこの後死んだんだ。俺をあの島から逃がす為に。
病室
「…………。」
目を開けると白い天井が見えた。おそらく病室か?消毒液の臭いもするし。にしても薄暗いな、夜か?
「確か、ブラドに殺されたんだったな。」
何故生きてるのかって?死んだら身代わりになってくれる木札を持っていったからな。一度だけなら死は免れる物だよ。今はボロボロに砕け散ったけど。
「風ちゃん、風ちゃん……。」
体を起こすとベットに突っ伏して寝ている白雪がいた。ずっと俺を看病してくれてたのか。
「行かないで、何処にも、行かないで。」
「……ごめんな白雪。心配ばかりかけさせて。」
多分たくさん泣いたんだな、目の周りに涙の痕が残っている。
「でも、行かなきゃ。ブラドの事を知らせないとな。」
俺は白雪の頭を撫でてからベットから降りる。ッ、体中が痛むな。けど関係無い。
「起きたか、随分と遅い目覚めだな。」
病室の服から武偵の制服に着替えてると後ろから声が掛かってきた。ああ、俺はこの人も忘れていたんだな。
「あんたが助けてくれたのか?」
「私が助けた訳ではない、銀髪の二人組が貴様を助けた。私は少し治療をしただけだ。」
結局助けてくれたんじゃねえか、素直じゃねえな。
「どれくらい俺は寝てたんだ?」
「二週間程だ。そこで寝ている女に感謝しろ、寝ずにずっと貴様を看てたんだからな。」
「ああ、分かってるさ
俺の発言で後ろにいる師匠は驚いているな。いや、師匠じゃなかったなここで言うのは。
「それか、女たらしさん?」
「それは貴様もだろう!?全く、その台詞が出てきたということは
「ああ、その通りだよ。」
お陰様でな、まあ俺の過去は後程ゆっくり話すことにしよう。今はこの三股が何故ここにいるのかを聞かないとな。
「だから私は三股などしていない!!まあ、こういうやりとりも久し振りだな。」
「俺は心の中で思ってただけで口には出してないんだけど師匠?」
「表情に全て書いてあるぞ山本。」
マジか、ポーカーフェイスは難しいな。
「さて、冗談はこれくらいにしてっ!!」
この殺気、まさかまた現れたか!!
「貴様を殺った吸血鬼か。それで、そんなボロボロの体で何処に行こうというのだね?」
「ブラドをぶん殴ってくる。」
戦ってるのはアリアとキンジと理子だろうな。だったら、こんなところで寝てる訳にはいかねえ。
「その体でか?死に急ぐようなものだ。」
「分かってる、けどあいつらを見捨てる訳にはいかない。決めたんだ、もう二度と誰も失わせないと!!」
キンジやアリアなら、対策は練っているんだろうけど、嫌な予感しかしないんだ。それが的中してあいつらが死んだらどうする?
「この手で守ると誓ったんだ。俺は父さんと母さんを見殺しにした。だから、もう誰かを見殺しにするのは嫌なんだ!!」
「貴様の行動は無意味に終わるかもしれないぞ?」
「それでも、やっておけば良かったっていう後悔はしたくない。後悔するなら行動して後悔した何倍もましだ!!」
俺はそう言い師匠の方を向く。白い髪に褐色の肌、黒の軽鎧を着ている人が俺を鋭い眼差しで見ている。
「やはり貴様はよく似ている。」
師匠はそう言うと呆れた表情でため息を付いた。俺と師匠?ないない、皮肉で悲観的な師匠だぞ?俺がそんな奴な訳がない。
「似ているって誰にだよ?」
「こちらの話さ、行くなら急いだ方がいい。銀髪の子も吸血鬼に挑みに行ったそうだぞ?」
銀髪の子、ジャンヌか!?
「ああ、ありがとう師匠。」
「礼などいらん。私と同じ道は歩むなよ山本風雨。」
同じ道か、歩むつもりはない。全てが救えないなら、手の届く範囲のものを全力で救うだけだ。
「それから、私が教えた技術は覚えているかね?」
「覚えているさ、でも大部分は出力が落ちていると思う。」
「ふん、これから精進しろ。」
そう言って師匠は消えていったな。どういう体の構造してんだよ?普通体が消えるなんてあり得ないだろ。
「まあいいや、久し振りに師匠の顔も見れたし。行くか。」
白雪、直ぐ帰ってくるからな。我が儘な俺を許してくれ、埋め合わせはきちんとするからな。
「う、ん。行って、らっしゃい。」
起きたのか?いや寝言か。でも安らかな顔をしてるな白雪。いい夢見れてるんだな。
「はは、行ってくる。」
病室の扉を開けてと、そう言えば籠手は外されなかったな。本当に取り外し不可なのかよ。手術した医師涙目だっただろうに。
「さて、覚悟しとけよブラド。てめえは絶対捕まえてやるからな。」
「……また無茶をする。」
「うわっ!?セーラいたのかよ!?」
気配が全く感じなかったぞ?ジト目で見てくるし。
「本当なら風を無理矢理でもベットに寝かしたい。でも行くんでしょ?」
「悪いなセーラ。心配してくれてるのに無茶してばっかりで。」
「べべ別に心配なんかしてない!!」
おっ!セーラの顔真っ赤、写真撮ろう。
「風が死なれると私が困る。生きて帰ってきて。」
「任せろ、もう死なねえよ。」
セーラの頭をポンポンっと撫でてから玄関に向かう。セーラはムスッとしてたけど、なんでかね?
ランドマークタワー
ようやく着いた。ってなんか終わりそうな雰囲気を感じるな。ここ地上だけど。
「確か、エレベーターがあるはずだ。」
それに乗り込み、屋上へ行くスイッチを押してポケットに入っている機械のスイッチを押す。この機械は盗聴用に持っていたもの。キンジの制服のポケットに隠し付けてるぞ。
「ブラドぉ!!」
この声は理子か、本当に終わりそうだな。嫌な予感は取越苦労だったみたいだな。
「4世っ!!」
ブラドが叫んだ後に銃弾が放たれる音が4回聞こえた、ということは4つの弱点を同時に撃ったんだな。
「ぶわぁーか。」
多分ブラドに向けてあっかんべーでもしてるんだろう。理子ならやりかねないな。
「は……ハハハハハ。」
「やったな。理子。」
まだ屋上には着かないか。キンジやアリアがエレベーターを使うときに鉢合わせたらなんて言おう?気まず過ぎる。
「まさか、こんな無能にやられるとはな。」
「ブラド、逮捕よ!!」
「グァババババ!!逮捕?何勝ったつもりでいやがるんだ鼠共?」
ブラドがそう言った瞬間にズシンと地響きが起こったぞ!?なんだ?何が起きている!?
「遠山、まだ伝えていなかったなァ?ヒステリアモードには、
「アリア!!」
キンジの叫び声と同時に誰かが吹き飛ばされる音がした、アリアが吹き飛ばされたのか!?
「ゲハハハハ!!おいおいなんだよ、さっきよりもスゲェ力が出るゼェ。」
「ブラド!!お前!!」
「おう4世?初代を超えた気分を味わえて良かったなァ?」
まさか、死に瀕した時に発動するとかそんな奴か!?だったらまずい、ブラドの一撃は経験した俺がよく知っている。アリアは戦闘不可能だ!!
「そ、んな。」
「ゲハハハハ!!所詮てめえは俺から逃げられねぇんだよ!!」
まだ着かないのか!?くそ、階段で掛け上がれば良かったか?いや、この体でそんなことしたら途中で力尽きる。くそが!!
「ブラド!!」
誰だ?この声はキンジでもアリアでも理子でもない。まさかジャンヌか!?
「久し振りだなジャンヌ・ダルク。山本の仇でも取りに来たかァ?」
「風雨の仇?どういうことだブラド!?」
「そう言えば話してなかったな、てめえらが紅鳴館に来る前に4世と同じ無能を殺して置いたんだよォ!!」
「貴様ァァァァァ!!」
駄目だジャンヌ、普通のブラドならともかく、更に強化されたブラドには勝てない!!
「ジャンヌ!!」
「あぐっ!!」
金属が弾き合う音、ジャンヌが持っている剣とブラドが持っている金属の何かがぶつかったのか。
「どうしたジャンヌ・ダルク?てめえも無能だな。」
「ブラド!!こっちを向け!!」
キンジのベレッタの発砲音か、そうだ、1秒でもブラドを足止めしてくれ!!
「無理だよ、もう無理だよ。」
「ああああぁぁぁぁ!!」
「いい声で鳴くじゃねえか?もっと聞かせろよ?」
「ジャンヌを放せ!!」
ジャンヌの叫び声!?ブラドの奴に掴まれたか!?
「ゲハハハハ!!そうら返すぜ遠山ァ!!」
「「「あぐっ!!」」」
誰かにぶつかった音と壁に激突した音、ブラドが掴んでいたジャンヌをキンジの方に向けて投げたのか。
「そろそろ飽きたなァ。4世、てめえのすがる奴等全員串刺しにしてまた檻に入れてやるよゲゥババババ!!」
「キ、ンジ。ごめん、もっと対策を練るべきだった。」
「謝らなくてもいいよアリア。アリアはよくやった。」
あと少しで屋上に着く、もう少しだ!!
「遠山、私は!!」
「ジャンヌ、無理はしないでくれ。そんな傷だらけの君は見たくない。きっと風雨も悲しんでる筈だ。」
「キー君。」
「そんなに震えなくても大丈夫だよ理子。理子を狙う悪い奴は俺が退治するからね。理子は一人じゃないんだよ?」
「グァババババ!!美しき友情ってやつかァ!?だがそれもてめえらを殺せば無意味だけどなァ!!」
着いた!!間に合ってくれよ!!
「山本から説教でも受けてくるんだな、グァババババ!!」
「「「キンジ(キー君)!!」」」
詠唱なんか中二病臭いからやりたくねえけど、やらねえと発動できないからな!!
「
「「「「「!!!」」」」」
っち、七つのうち二つしか出せなかったか。けど、ブラドの突進は止めれたからよしだな。
「そうだぜ。理子、お前は一人なんかじゃねえんだ。アリアやキンジやジャンヌ、それに武偵高の皆もいるんだ。もうそんな男に縛られなくていいんだ。」
「嘘、何で、ここに。」
「フウフウ?」
ジャンヌは俺を見て涙を流してるな。まあ、死んだと思ってた人間が現れたらそうなるよな。
理子とアリアは唖然としてるな。無理もないか。
「状況は
「大丈夫だ風雨。」
「てめえ山本ォ!!何故生きている!?」
「てめえの串刺しが甘かったからじゃねえの?人一人串刺しで殺せねえなんて、腕が落ちたんじゃねえのブラド?」
俺の言葉を聞いたブラドは怒り狂ってるな。それでいい、精々怒ってろ。
「こうしてキンジと二人で戦うって久し振りだな。」
俺は小太刀を二本取り出して装備する。時間はあまり掛けられねえな。
「そうだな、足を引っ張るなよ風雨?」
「そっちこそなキンジ!!」