目が覚めると、目の前に幼女がいた。
「問おう、貴方がマスターだな」
「うにゅ?ドライグ久しい」
首を傾げる幼女。
幼女だ、きっとヘラクレスのマスターである。
アイツやっぱりロリコンだった。
『久しいな、オーフィス』
「知ってるのかドライグ!?」
『ソイツは世界最強の幼女。人は、うわようじょつおいと言う』
「我、見た目は幼女中身はドラゴン。その名も無限の龍神オーフィス」
シャキーンと効果音を発しながら幼女がポーズを決めた。
な、なんだって!?世界最強とかスゴイ。
「ドライグ、我と一緒にグレートレッド倒す」
「グレートレッド?」
「真なる赤龍神帝、夢幻を司る龍神」
「倒せないのか?」
幼女は首を上下に振る。
しかし、ここで疑問が発生する。
「お前は最強なんだろ?」
「我、最強」
「だったら倒せばいいだろ」
「無理、我と互角」
「じゃあ最強じゃないじゃないか」
「ッ!?」
幼女の顔が驚愕に染まる。
その衝撃は計り知れない。
「我、最強じゃない?」
「一番強いやつがナンバーワンではないのか?」
「なん……だと……」
両手を地面に着き、幼女ことオーフィスは落ち込んでいた。
すまない、だが事実なんだ。
「驚愕の事実、我、凹む」
「どうして倒したいんだ?」
「我、静寂が欲しい」
「耳栓をすれば良いのでは?」
「ッ!?」
幼女の顔が驚愕に染まる。
そうだよな、子供だから気付かなかったんだな。
「なんてことだ、その発想はなかった」
「イッセー大丈夫かニャ!あっ、大丈夫そうニャ」
オーフィスと話していると、パァーンとドアを開けた黒歌がいた。
どうしたそんなに慌てて、びっくりするだろう。
「早く逃げるニャ!曹操が怒り心頭ニャ!」
「何故逃げないと行けないんだ?」
「今、理由を言ったニャ!オーフィスが話があるって言うから乗り込んで来ないだけで止めるのも大変だったニャ!」
ほぉ、助かる。
流石最強、最強の名は伊達じゃない。
「ダメ、ドライグは我と探し物がある」
「ぐぬぬ、でも連れてかないとオーフィスがいない時に危ないニャ」
「ダメな物はダメ」
「分かったニャ、その探し物は逃げ切ったら見つけるニャ」
オーフィスは首を傾げた後、熟考の末に頷いた。
俺が言うのも何だが、良いのかそんなに簡単に信用して?チョロいなコイツ。
まぁ、それはそれとして俺は逃げない。
どんな奴の挑戦も受けて立つ。
「待て待て待て、どうして動こうとする。どこ行くニャ」
「曹操、倒す」
「ダメニャ!えっと、そう!お互いもっと強くなってからのほうが良いニャ。!禍根を残すって言うニャ!言うとおりにした方が良いニャ」
「後悔なんて有る訳ない」
「今だけニャ、今はそう思うのニャ!そう思ってするのが後悔、そういうもんだニャ!分かったら、言うこと聞くニャ!」
ふむ、コイツは猫だが妖怪になるくらい長生きだ。
なら、一理あるのだろうか。
確かに後悔しないと思ってるが、そういうもんだと言っている。
そういうものなら、後悔するかもしれない。
そうだな、やめておこう。
「よし、分かった」
「ドライグ、チョロい」
「何だと!この口が言うのか」
「ひはい、はひほふふ」
悪口を言うオーフィスの頬を引っ張る。
フハハハ、そのモチ肌を引っ張られるのはさぞかし辛かろう。
早く謝るのだ。
「何してるニャ、早く行くニャ!早い方にはコンビニでコロッケを買ってあげるニャ」
「なんだって、それは本当か」
「我、コロッケ好き。先に行く」
『その程度で釣られるとは、子供か貴様ら!』
「待てオーフィス、それはズルいぞ」
黒歌のご褒美に釣られて、俺達は禍の団を後にした。
その後、コロッケを買った俺達は実家に帰省することにした。
オーフィスはコンビニで耳栓を買ったが、首を左右に振っていたのでどうやら静寂は手に入らなかったらしい。
「静寂、微妙」
「鼓膜を破れば静寂が得られるのでは?」
「うわぁ、えげつない方法だニャ」
「ッ!?」
その発想はなかったのか、オーフィスの顔が驚愕に染まる。
そして、そのまま躊躇なく耳に指を突き刺した。
うんうんと頷いてるので満足したらしい。
「やったな、見事なもんだ」
「?」
「そうか聞こえてないのか」
「なんか思ってたのと違う。静寂、不便」
「怖っ、幼女怖いニャ」
ボタボタ両耳から血を流しながら、オーフィスがやれやれだぜという顔をしていた。
お前、痛くないのかスゴイな。
そんな風に静寂の手に入れ方を考えながら家に帰るとアーシアが玄関を開けて飛び出して来た。
「一誠さん!何日も家を開けて何し……」
「オッス、我オーフィスよろしくな」
「黒歌ニャ」
「どういうことなの……」
アーシアが頭を抱えて疑問の言葉を口にした。
ううむ、ここは上手く説明しないといけないな。
禍の団とか英雄派とか夢幻の龍神とか、上手く説明する。
説明、説明か……そうだな。
「アレだ、拾った」
「それだけで説明できると思わないでください!」
「日本語が上手くなったな」
「何度も言わせてるからですよ!もう!」
アーシアが地団駄を踏んでいた。
すまない、苦労を掛ける。
「それに怪我してるじゃないですか。こっちに来なさい!なんですか、その破廉恥な格好は!」
「ドライグ、助ける」
「無理だ」
「薄情者、許さん」
アーシアに連れてかれるオーフィス。
オーフィスは犠牲になったのだ、俺達の平和の犠牲にな。
オーフィスが治療されることになりアーシアに連行されて行ったのを見送った後、お袋達に説明する。
拾ったと説明し、黒歌が猫になるとそういうこともあるのかと納得してもらえた。
うむ、アーシアには柔軟性が足りないな。
「ドライグ、見てみて、新しい服」
「アーシアのワンピースか。似合っている」
「むふー!我、可愛い!褒められた」
お袋達に黒歌を紹介していると、ワンピースを着てクルクル回るオーフィスがやってきた。
どうやら、アーシアに服を貰ったので自慢しに来たらしい。
気持ちは分かる。それは良いものだ。
「もう、事情は分かりませんけどオーフィスちゃんも私みたいな状況だったんでしょう。一誠さんは仕方ない人ですね」
「すまない」
「いいですよ、もう」
いつも苦労を掛ける。
そんなアーシアに悲しいお知らせである。
近々、黒歌の為に学園に用があるのでまた迷惑を掛けることが確定しているのだ。
俺は無言で土下座した。
それだけで、アーシアは察したのか大きくため息を吐いた。
新しい家族が増えて数日後、夜になって俺は学園に乗り込むことにした。
禍の団も来る予定なので、絡まれることを心配したオーフィスから新しい力を貰った。
それはオーフィスの一部、蛇と呼ばれる存在だ。
一種のドーピングアイテムらしく、楽して強くなれた。
新しい技、ドライグの透過の能力を得ることが出来た。
なんかすり抜けるらしい、スゴイ。
狙ったものだけ殴れる、その説明だけで最強に聞こえる。
「よし行くぞ」
「作戦はこうニャ、まず――」
「オラァ!」
パキンと校門の方から音が聞こえた。
試しに空間を透過させて結界だけ殴ってみたんだが、距離を関係なく殴れるとはスゴイ。
『あれぇ!?能力を無視できるだけのはずなんだが』
「ドライグ、出来たんだから可能なんだ」
「なんてことを!正面突破とか何を考えてるニャ!」
「……これも作戦だ」
「今の間は何ニャ!何も考えてなかったニャぁぁぁ!」
な、何故バレた。
いや、あれだ。俺はいいけど、ドラゴン的に考えてコソコソするのはダメだ。
そう、正面突破するしかなかったんだ。
「これしかなかったんだ」
「開き直ったニャ!もうこうなったら、このまま行くニャ!」
「安心しろ、邪魔する奴は殴る。白い猫を見つける。連れて帰るだろ」
俺達の戦いはこれからだ。