やってきた校庭には人の姿はなかった。
だが、そんなことに騙される俺ではない。
この肌で何かが来ることを察していた。
「来る!」
「我、参上」
「なんだ、ただのオーフィスか」
シャキーンとセルフ効果音と共にオーフィスが校庭に降り立つ。
メチャクチャ強い奴が来るのかと思って焦ったじゃないか。
そう思うのも束の間、今度はワラワラと複数の気配が現れる。
「何ィ!?赤龍帝だァ!?」
「おっ、誰か来たようだ」
声がしたと思えば、上空の方から男の驚きの声が聞こえた。
空には複数のローブを着た者達がおり、その一人が発した声だと察した。
なんか魔法陣に乗ってるし、逆さまの人もいる。
どういうことだろう、魔法使いだろうか。
「えっ、赤龍帝」
「アイツ裏切ったんじゃ」
「でもいるけど、なんで?」
ざわざわとした空気が辺りに漂う。
そんな空気をぶち壊すように、少女が校庭に降り立った。
「誰だ」
「みんな私に力を貸して!へ~んしん!」
「あ、アレは!?」
少女の身体がピンク色の光に包まれる。
一体何が起きているんです?
「魔法少女の変身シーンだ」
「魔法少女マジカル☆レヴィアたん、登場!」
「オーフィスの言うとおりじゃないか、やるねぇ……」
これは負けてられないと、俺も片腕をゆっくりと回しながらジャンプする。
行くぞ相棒!俺は赤い光に包まれてドラゴン態になった。
「変身!」
「おぉー、イッセー変身した」
「あ、貴方は!もしや仮面ライダー赤龍帝!」
「初めましてだな、魔法少女マジカル☆レヴィアたん」
『ここだけ何かスーパーヒーロータイムな件』
俺と魔法少女マジカル☆レヴィアたんが相対する。
お互いに迂闊に動けない。
奴からは凄みという物を感じる。
「今だ、やれ!」
「そこまでだ!」
「今度は誰だ!」
黒い羽根が空から落ちてくる。
その発生源には黄金のロボットがいた。
「我が名はアザゼル!堕天使の総督なり」
『痛たたた、閃光と暗黒の龍絶剣がやってきたぞ』
「何故、俺の黒歴史を知ってやがる!」
良くわからないがドライグの知り合いらしい、強そう。
光と闇が合わさり最強に見える二つ名だ。
えっ、二つ名じゃなくて神器の名前?それでも強そうだ。
「まさか赤龍帝がテロに加担するなんてな」
「えっ?」
「えっ?」
「良い所に現れましたわね赤龍帝!これで終わりよアザゼル」
俺の横に知らない女が現れる。
誰だコイツ、偉そうな奴だな。
「フハハハ、新たな世界に貴方達は必要ないのです!やってしまいなさい赤龍帝!」
「俺に指図すんな、オラァ!」
「きゃぁぁぁぁ!?」
よくわからないで仲間ヅラする不審者のケツに蹴りを叩き込む。
お尻を抑えて女は吹っ飛んでいった。
「よし!」
「よしじゃねーよ!お前ら仲間じゃなかったのか!」
「うるせぇ!」
そんなことより妹救出である。
あんな女知らん。
「我の、我の蛇!じゃーん!」
「どうしたオーフィス?」
「なっ、私の蛇を返しなさい!無限の龍神!」
「なんだって、あのガキが無限の龍神オーフィス!」
オーフィスが黒い蛇を拾って俺に自慢してくる、微笑ましい。
そんな光景に外野が驚いていた。
フッ、有名人はスゴイなオーフィス。
「和んでる場合かぁ!何をしてるニャ、魔王と堕天使の総督だニャ!もうダメニャ、おしまいニャ!」
「それはどうかな?我のターンは終わってない」
「くっ、オーフィスの参戦かよ。これはヤバイぜ」
片腕を抑えながらロボットが呻く。
アザゼルだっけ、どうした片腕が疼くのか?
そんなことより妹どこだよ、妹出せよオラァ!
「妹はどこだ」
「急にどうした、何の話だ!」
「あくまで隠すか、押し通る!」
きっと校舎が怪しいと俺は校舎に向かっていく。
「させない!はぁぁぁぁ!」
「無駄だ!」
マジカル☆レヴィアたんが氷の魔法をぶつけてくるが、透過の能力で俺の後ろにスルーする。
物理も魔法も無効化する今の状態は、いわばスターである。
無駄無駄無駄である。
「そんな、どうして!」
「そこまでだ!」
「サーゼクスちゃん!」
マジカル☆レヴィアたんを無視して校舎に近づくと、俺の感じる気配の中でもっとも強そうな奴が現れた。
コイツは強そうだ。きっと、一番強い。
「魔王、覚悟!」
「喰らえ」
「うおぉぉぉ!」
「少し、静かにしてもらおうか」
ボンっ、と奴の身体から周囲に圧倒的な魔力が発生して威圧する。
ピリピリとした感覚が肌を突き刺す。
見れば、空にいた魔法使い達が泡を吹いて気絶していた。
「覇王色の覇気か」
『違います』
「そんなぁー!」
どうやら違うらしいが、細かいことは気にしてはいけない。
「どうして、和平の邪魔をする」
「どうでもいい、妹を寄越せ」
「リアスを……どうやら戦わないといけない理由が出来たよ」
奴の身体が光になっていく。
なんだアレは、アイツも変身出来るのか。
「その姿は!」
「見ろ、アレが奴の超越者と呼ばれる所以。滅びの魔力そのものだ」
滅びの魔力、強そうである。
アレか、なんかそういう感じの悪魔ってことだな。
『気を付けろイッセー、奴はホロホロの実を食べた滅び人間。というか悪魔だ、触れたら滅ぶぞ』
「具体的に」
『消える』
「危ない!?」
触ることは出来ないということか。
じゃあ、どうやって奴は地面の上に立っているのか。
全くもって謎である。
「私の本気とは、私自身が滅びの魔力となることだ」
『相棒、透過だ!』
「行くぞ、うおぉぉぉぉ!」
俺のパンチが、魔王ことサーゼクスの顔に入り込む。
コイツ、ガードすらしないってどういうことだ?
「無駄だ、そんな攻撃は――」
「我知ってる。自分を無敵と勘違いしてきた自然系の寿命は短い」
「――効かな、ぐあぁぁぁぁぁ!」
俺は拳を振り切った形で、固まる。
なんだ普通に殴れるじゃん、やったぜ。
「ば、馬鹿な!」
「今だ!」
「待て、リアスは渡さない!」
まぁ、大したダメージは与えられなかったのかすぐに立ち上がるサーゼクス。
やはり強い、戦ってもいいが勝ち目はないだろう。
目的は妹の奪還、戦わないでおこう。
『Boost!!Boost!!Boost!!』
「な、なんて速さなんだ!いや違う、動いてないのに動いている!?」
「アイツやりやがった、空間に倍加して距離を倍にしたんだ!」
「気付くのが早いな、流石堕天使の総督だ」
あの一瞬でそこに気付けるとは天才か。
だが、もう遅い。校舎まであと少しだ。
むっ、何か来る。
「相棒」
『Boost!!Boost!!Boost!!』
「フン!」
真横に向かって拳を振り抜くと、ドシンとした衝撃が拳に入る。
何者かの攻撃に対して俺が迎撃したからだ。
見れば、白い男が拳を振り抜いた状態で立っていた。
そう、白龍皇ヴァーリである。
「随分な挨拶じゃないか」
「正面からとは気に入ったぞ赤龍帝」
「今はお前にかまっている暇はない」
恐らく魔力か何かを飛ばしたのだろう。
俺はそれを拳で打ち砕いた。
そんな状態の俺に対してヴァーリは好戦的な雰囲気を滾らせる。
やめろよ、興奮するじゃないか。
「探し物なら、アレが回収しているぞ」
「イッセーやったニャ!何故か固まってたから見つけられたニャ!」
「我、見つけた。我、偉い?」
ヴァーリ―が背後を視線で指し示すと、固まった状態の女学生を横に抱えた黒歌とぴょんぴょんするオーフィスがいた。
うむ、ミッションコンプリートってことか。
「よくやったぞ、ヴァーリ!お前はなんだかんだ裏切るかなとか思ってた俺を許してくれ」
「アザゼル、俺は禍の団に入るぞ。俺は戦いたいんだ」
「やっぱり裏切るのかよ!畜生が!二天龍がいるテロ組織とか、ヤバすぎるだろ!」
アザゼルとやらが悔しそうに喚いていた。
まぁ、そういうときもある。
しかし、今にも始めそうな雰囲気だが今ので白けてしまった。
「なぁ」
「あぁ、勝負は別の機会にしよう。俺も、そこらの魔王らに邪魔されるのは好きじゃないからな」
「分かってるじゃないか。というわけだ、俺達はここから帰らせてもらう」
「逃げられると思ってるのか?」
「俺だって馬鹿じゃない、逃げられるさ」
見せてやる、俺の秘策!
行くぞ、相棒!
俺の只ならぬ雰囲気に、奴らの注目が集まる。
それが貴様らの敗因である。
『Boost!!Boost!!Boost!!』
「太陽拳!」
「「「目がぁぁぁぁぁ」」」
「フハハハ、さらばだ!」
この後、家までダッシュで帰った。