気付けば、俺は天井を見ていた。
『知らない天井だ』
「何を言ってるんだドライグ、どう見ても我が家の天井だぞ」
起き上がり、身体の感覚を確かめるように動かすと全然平気そうである。
そうだ、ヴァーリの奴はどうしたんだろう。
『奴なら治療された後、旅立った』
「何だと、まだ決着はついてない」
『奴からの伝言だ、次は勝つだと』
次は勝つ、アイツはそう言ったのか。
だが、あの時先に気絶したのは俺であった。
アイツは自分が負けたと思っているようだが、それは俺も同じである。
怪我が治った俺は、部屋から出て一階に降りる。
一階では、オーフィスがテレビを見ていた。
黒歌は猫の状態で白い猫と戯れてるし、いつもの光景である。
あれ、アーシアはどこだ?
「あっ、イッセーだニャ!」
「おはようございます……先輩?」
「喋った、だと!?」
猫二匹が此方に気づき声を掛けてくる。
思わずその光景にびっくりした。
だって、黒歌妹の方は初めて喋ったからだ。
コイツも妖怪仙人の端くれ、喋ったりするか。
なんだ、驚いて損した。
「おい、アーシアはどこだ?」
「我、知らない」
「買い物じゃないかニャ?そろそろ夕飯だし」
そうか、お礼を言おうと思ったんだが出かけていたのか。
どれ、俺の見聞色で……あれ?
「ちょっと、出かけてくる」
「うん?分かったニャ」
黒歌に一言そう告げて俺は家を出る。
おかしい、やはりアーシアの気配がどこにもない。
俺の索敵範囲を超えているのだろうか、だが街中であれば分かるはずである。
「ドライグ、どういうことだと思う」
『敵は悪魔だ、特殊訓練を受けた悪魔だ』
「どういうことなんだ?」
『いや、確かアーシアを狙った悪魔がいたような気がするんだ』
なに、それは本当かとドライグに確認をしたらどうもアーシアが教会から追い出される話を聞かされた。
そう言えば、元々は教会から追い出された身だったことを思い出す。
アーシアを無一文で追い出すとか教会って最低だな。
でもって、その理由が悪魔を助けたことらしいのだがそもそも悪魔が教会にいる事自体おかしいらしい。
『敵対勢力のど真ん中にいる件について』
「カチコミか?」
『ボロボロで?馬鹿なの、死ぬの?』
確かに、治してもらったなら戦闘を続行すればいいのに逃げるなんて恥を知るべきである。
えっ、そういう話じゃない?そもそもカチコミじゃないだって?
ふむふむ、なるほどな、自作自演だったのか。
「もしや、ソイツがアーシアを拐ったのか?」
『名前は、名前は……忘れた』
「きっとグレモリーの仕業に違いないな、ちょっと行くか」
この街の悪魔関係はグレモリー関連である。
ならば、グレモリーって奴が何もかも悪いに違いない。
なので、学校に行くことにした。
学校に着くと、来客手続きをさせられた。
その際グレモリーって奴に会いたいと言ったら、出資者なだけでここにはいないと言われた。
用務員さんは普通の人間なので、悪魔を知らない。
うむ、これは困った。
「どうする」
『相棒、今こそアレを使うときだ』
「そうだ、俺にはアレがあった」
『てってれー、悪魔発見機』
俺は懐から、アーシアに渡された聖書を取り出す。
片手サイズのちっちゃい奴で、新約と旧約がある。
取り敢えず、神様が人間ぶっ殺しまくったりしてる内容で、たまに良いことを言うくらいの本である。
ちなみに、その内容を言葉にすると悪魔には難しすぎて頭が痛くなるのだ。
聖書の一節を音読しながら校内を見学する。
部活終わりの学生達が俺の顔を見るなり、信じられない者を見たかのように驚き逃げるが何かしただろうか。
しばらくすると、生徒会という腕章を付けた奴が近づいて来た。
「おい、そこのイタタタ」
「むっ、貴様はもしや悪魔か」
「何故、それを」
ここであったら百年目と、俺はその男の顔をブン殴る。
百年目も何も初対面だが、許せ少年。
よし、気絶したか。
「安心しろ、軽い脳震盪だ」
『聞こえてないし、脳震盪って危険な状態なんだが』
取り敢えず、誰もいなさそうな教室に連れ込み聖書を押し付ける。
すると、痛みが気付けになったのかすぐに目を覚ました。
「ぎゃぁぁぁぁ!?」
「なんだ?やはり、悪魔には効くのか」
『聖書アレルギーなんだ、やめてやれ』
世の中にはそんなことがあるのかと、聖書を押し付けるのをやめる。
これで取り敢えず起きたようで安心である。
「言え」
「な、なんだ。何がどうなってやがる」
「言え」
「何を言えっていうんだ!」
「アーシアはどこだ」
「知らない、止せ!やめろ!ぎゃぁぁぁあ!?」
少年がまた声を上げるが、嘘を吐いたんだから仕方ない。
前歯を折ったり、腕を折ったりしてないだけ優しいと思う。
何故か煙が出ているが、なんだ聖書を押し付けると煙が出るとかアレルギーってスゴイんだな。
「何事ですか!あ、貴方は」
「誰だ貴様」
「匙!」
「か、会長ぅ……」
少年が縋るようにやってきた女を見る。
会長、そうか生徒会長だな。
悪魔の所属する生徒会の会長ってことはきっと悪魔だろ。
「どのような理由があるかは知りませんが――」
「アーシアはどこだ」
「えっ?」
「えっ?」
「知らないのか?」
「知りません」
どういうことだ、ドライグはいるって言ってたんだがおかしいぞ。
俺はドライグを問いただす。
『やだなぁ、悪魔が関係してるって言っただけでコイツらが犯人なんて言ってないぞ』
「そうか、俺の勘違いだすまない。ところで、アーシアについて知らないか?」
「アーシアというと、魔女アーシアでしょうか?すみません、分かりません」
「そんなはずはない、悪魔に攫われたはずだ」
そうか、コイツは悪魔だ。
きっと、悪魔だから庇っているのだろう。
すると、犯人は……学校にいないグレモリーだな。
「グレモリーって奴が拐ったんだろ」
「まさか、リアスは結婚してから学校になんて来てませんよ」
「なに、グレモリーとやらは通ってないのか?」
「前はいましたが、今は自主退学しました」
では、グレモリーとやらではないのか。
クソ、ヴァーリとの戦いでボロボロになってしまったことが悔やまれる。
だが、悪魔が関わっていることは間違いないのである。
ドライグが言うんだから、間違いない。
悪魔が関わっていて、そしてこの街ではない、そうか分かったぞ。
「アーシアは冥界にいるんだな」
「えっ、ちょ」
「よし、邪魔したな」
「待って、話を聞いて」
もうやることは決まったので学校を出る。
会長とやらが何か言ってたが、もう用はない。
取り敢えず冥界に行って、そっから考えようと思う。
家に帰ると、アーシアの帰りが遅いと心配する両親の姿があった。
黒歌やオーフィスも流石に気付いたのか、何かあったのかと聞いてくる。
俺は冥界だと一言だけ告げ、冥界へと行く方法をどうするか考える。
やっぱり一回死ぬとかそういうことしないといけないのだろうか、分からない。
「一誠、アーシアいない」
「あぁ」
「冥界、アーシアいる?」
「あぁ」
「我、分かった」
そう言って、オーフィスが虚空を殴る。
すると、景色に亀裂が走って真っ黒い穴があいた。
なんだこれ、良くわからないぞ。
「なんだこれは」
「入り口、我も行く」
「そうか、殴れば良かったのか」
たぶん、冥界と俺のいる場所に次元の壁的なのがあるんだろう。
それを不思議パワーで殴れば良かったんだ。
さすがオーフィス、幼女でも無限の龍神なだけある。
一緒に冥界に入ると、オーフィスがどこかを見て頷いた。
「我の蛇がいる」
「それがどうしたんだ」
『相棒、思い出したぞ。その悪魔はオーフィスの蛇を持っている、つまりそこにアーシアがいるんだ』
「な、なんだってー!?」
「フフッ、我、お手柄」
それは良いことを聞いたと、ドラゴン態に変身してオーフィスを乗せて蛇のいる場所へと向かった。